常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

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第二十七話

4回裏ノーアウトランナー一塁

 

 3番の水嶋がヒットで出塁し、ノーアウトのランナーが出てしまう。

 インコースにきたシュート気味のストレートを、うまく腕をたたみ打ち返す見事なヒット。

 

 打席には4番のブライズ。第一打席はライト前ヒットで出塁している。

 

 彼の意表をつくためか、初球から連続でスローカーブを投じるバッテリー。

 しかし、ハナからカーブを捨てているのか微動だにしない。カウント1ボール1ストライク。

 

 3球目、スライダー。外角外れてボール。

 4球目、インコース厳しいところにストレート。これに手を出させる……ファール。強い当たりが一塁席へと飛んでいく。

 

 5球目、アウトコースにスライダー。左バッターのブライズから逃げるような変化のボール。

 ――これが本命だったのか、左足を踏み込むと、ボールの外側を強く叩くように打ち返す。

 

 強烈な当たりはショートの頭を超えて左中間を破る長打コース……になっただろう。並のショートであれば。

 

 タイミング良くジャンプする京水。そのミットにボールがすっぽりと入っている。

 

「ナイスジャンプだ、京水!」

「ナイスキャッチショート!」

「1アウトです。打たせていきましょう」

 

 このファインプレーにグラウンドが沸く。値千金の守備。当の京水は逆に淡々としているが、それもなかなか頼もしい。

 

 続くは5番の小島。ギャロップスの日本人では屈指のスラッガー。初球から振ってくるバッター。

 そういう打者こそ、郡さんが得意なタイプ。

 

 初球アウトローにストレート、ストライク。2球目同じコースからカット気味のストレート、これに手を出してファール。2ストライク。

 

 3球目、インハイに138キロのストレート。対角線とスローカーブを意識しすぎたかふり遅れる。サードが捌いて一塁に送球。ランナーは二塁に進むも2アウト。

 

 次のバッターは6番打者の尾形。先ほどはショートフライ。大卒2年目の中距離砲にどう対処するか。

 

 初球、アウトコースストレート、ボール。

 2球目インロー見逃して1ストライク。

 3球目、スローカーブ。体が反応していたがなんとかバットを止める。2ボール1ストライク。

 4球目、インハイ、139キロのストレート。これを空振り2ボール2ストライク。

 

 打席の尾形は、一度タイムを取るとバッターボックスを離れ何度か素振りをする。

 そして打席に戻る前、バットを頭につけ、ほんの1〜2秒祈るように集中する。

 

 5球目、スローカーブ。今度はストライクゾーンに入る軌道。かろうじてバットを出す。ファール。

 6球目、決め球に選んだのはアウトコースへの速い球。わかっていても、スローカーブを意識しているほど打てなくなるボール。

 

 ――しかし、迷わずバットが振り抜かれる。

 

「センター!!」

 

 打球の行方はセンター、レフト、ショートのちょうど間。しかし、ライトから叫ぶもレフトの畑さんが突っ込んでいく。

 

「畑さん飛び込むな! 俺がとる!」

 

 だが、信頼関係のある堀江さんの言葉は届くようだ。あと一歩で飛び込みそうなところをグッと我慢してくれる。

 ワンバウンドしたところで堀江さんが補球し、すぐに送球体勢に入る。

 しかし、二塁ランナーの水嶋さんは三塁へ到達。2アウトランナー一三塁。

 

 一度タイムを取り、マウンドに内野手が集まる。

 ギャロップスから、もう点を取ることは難しい。だからこそなんとかこのピンチを0で抑えたい。

 

 タイムが明けると森谷さんが立ち上がる。……敬遠か。バッターの坂井さんは、去年あまり打率は良くなかったが長打率5割後半と飛ばしてくる選手。

 

 2アウトだし、満塁にして8番の山浦と勝負するのも確かにアリな場面。

 だが、嫌な予感がする。遠く(ライト)から見ても、1打席目と全く雰囲気が違う。

 勝手なイメージだが、うちの京水と同じで高い守備力を持っているものの、最低限以下の打力のせいでレギュラーまであと一歩といったイメージだったが……。

 

――――

 

「ふぅー…………」

 

 願っていたとはいえ、まさかいきなりリベンジの舞台が用意されるとは……。

 2アウトランナー満塁。ヒット1本で2塁ランナーまで帰れば逆転できる。

 

 なんとしてでも、二塁ランナー(尾形ちゃん)まで返してみせる。

 好投手の郡からここまでのチャンスを作るのも難しい。勝つためにはここで逆転をしたい。今日の百瀬さんなら2点を取れれば十分、そのためのシチュエーションとして完璧だ。

 

「ボール!」

 初球はスローカーブ。外角のボール。今回はボールだったが、これを外角いっぱいのストライクゾーンに投げ込めるのが厄介だ。

 

「ストライク!」

 なんて、少しでも思考するとこれだ。異様なほどにテンポが速い。球速はそんなにないが、これのせいで体が前に流れて凡打が量産される。

 

「ストライク、ツー!」

 今度はインハイ。だが、俺の狙うボールじゃない。

 

「ファール!」

「ファール!」

 それぞれストレートとカーブを投げられるも、なんとかカットで粘る。

 

 この人のストレートは厄介。スローカーブを打てるビジョンがわかない。だが、あのボールだけはなんとかできるイメージが湧く。こい、あの球を投げろ!

 

 6球目、バックドアへのスライダー。しかしギリギリストライクゾーンには入ってこない。俺を引っ掛けさせるためのボール。

 

 ――この球に喰らいつけ!

 

 力強く左足を踏み込むと、入ってくるスライダーの側面を叩く。

 

 鋭い打球は一二塁間を破り、ライトへ!

 

「しゃぁ!」

 

 三塁ランナーは余裕で生還できる。ライトの幸村は外野に不慣れな選手だ。いけ! 狙える!

 

「帰ってこい、尾形(おが)ぁぁぁ!」

 

 その声に呼応するように、尾形が三塁を蹴る。尾形はなにげに足が速い。十分だ、帰ってこれ――。

 

 ――突然、俺の視界を突如横切ったのは、見慣れたその白球は、なんだ?

 

「アウトぉぉぉ!!」

 

 主審が手を高く上げているのはなぜだ?

 頭の中にたくさんのクエスチョンマークが浮かぶ。……嘘だろ……まじか。

 ようやく動き出した頭は、最悪の事実を解答する。

 

 俺の渾身の一打は、ギャロップスの希望の一打は……またしても幸村早南也の手によって、握りつぶされたのである。

 

ペンギンズ1-ギャロップス1

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