常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

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まず……投稿を一週間以上サボってしまい申し訳ございません!!今日から再開します!
リアルで何かあったとかでは無く、シンプルにリーフグリーンやってました。ごめんなさい。

投稿をサボ…休んでいる間にも、たくさんの人に読んでいただけて…ってレベルじゃないですね。評価バーが真っ赤、コメントがいくつも、日間ランキング8位。…あの、何があったの? 投稿止まってたよね!?
…まあ、私の困惑はさておき、おかげ様でなんとか戻って来れました。本当にありがとうございます。

これからも、ちょくちょく投稿が止まってしまうかもしれませんが、なんとか完結までは持っていけるように頑張っていきます。

これからもよろしくお願いします。



第三十六話

湘南シープス9―大江戸ペンギンズ4

 

「こっちが久しぶりに打ったと思ったらよー! やってくれたなぁ、なんで9点も取られてんだろうなぁ!」

「珍しい言うてもうてますやん。千葉なんかは普段頑張ってたし、たまにはこういう日もありますよ」

「たまにっつーか、いつもじゃねーか!」

 

 まずいな、今日の敗戦でペンギンズの連敗は6に増えてしまった。

 最下位が定位置と言われて長いが今年は特に、いや去年並みにひどい。

 さらに試合前のやりとりがあったせいか、ロッカールームには一触即発の空気が流れる。

 

「つーかなんなんだあのオカマ! あのタイミングで伊東だったり石崎を出す理由がわかんねーんだよ!」

「あんたどこまで噛み付くつもりや! 一本出たからって調子乗りすぎやで!」

「一試合も活躍してないやつに言われたくないんだよ! 敗戦処理だからってあっさり点取られやがって!」

 

 一試合も活躍していない、実際柿田はオープン戦の乱調、さらに今日は2回を投げて1失点。まだ、登板数が少ないと言えばそうだがあまりよくない成績。

 でも、そんなことを一番わかっているのは本人だ。荒れる畑さんのその一言は、なんとか宥めようとする柿田の導火線に火をつける。

 柿田のやつは畑さんにヅカヅカと詰め寄ると、その胸ぐらを掴み、応戦し始めてしまう。

 

「あんたかて今日以外何本打ったんや! ようやっと打率2割超えたところやないか! チームにとやかく言える資格あるんは郡さんとユキだけとちゃいますか!」

「あぁ! 今は郡さんと幸村の話はしてねぇんだよ! というかよ、言う資格があるとかないとかは成績で決めるものじゃねーだろ! 不平不満あるやつが声出さねーと意味がないだろうが!」

「バカバカ、何そこまで熱くなってんだあんたら!」

 

 さすがにやりすぎだ、黒田や森谷さんと共に止めに入る。でも、どちらも止まる気配がまったくない!

 

「去年までおとなしかったくせに幸村幸村って鬱陶しいんだよ! そんなに幸村が偉いか! 幸村はこのチームで何をしたんだ! あぁ!?」

「そんなにユキが嫌いですか! 今一番活躍してる選手やろ! 逆になんでそないに嫌っとるんですか!? 幸村が生意気やったからですか! でもあんたが不満あるやつが声出すべき言うたばっかやないか!」

 

 あの、そんなに俺で揉めないでよ……。

 複数人がかりでなんとか距離を離すので精一杯だ。

 それにも関わらず、二人の口論らますますヒートアップしていく。

 

「ユキもなんか言ったれや!」

 

 そんな中、ついに痺れを切らした柿田は、ただ必死に止めるだけの俺に意見を求めてくる。おそらくだが郡派を代表して何かを言い返して欲しいのだろう。

 郡派(彼ら)の中で、俺は唯一神田派に対して物申せる切り札のようなもの、とでも思われているんだろう。……それは少し、腹が立つ。

 

「――何期待してるかわかんないけど、言い方が悪いだけで俺も畑さんと大体同意見だよ」

「――は?」

 

 怒号飛び交うロッカーの空気が一転する。突然の裏切りに困惑する柿田とそれ以上に目を見開く畑さん。

 

「開幕戦の時に色々言ったけどさ、あれは神田派に行ったわけじゃなくて、大江戸ペンギンズ全体に言ったつもりなんだ。勝つための最善を尽くすどころか、試合をほぼ放棄してるようなものだって」

「おま、何、を……」

 

 だって、そうだろう。試合間際だと言うのに華金間際の給湯室みたいな空気の連中がどうして試合に出られるのか。どうして気に食わない奴らばかりが試合に出続けているのか。

 その答えこそが、このチームのもう一つの問題点。

 

「その点で言えば、今日の畑さんはすごかったよ。もし、動機が俺や郡派(おまえら)への怒り、黙らせたいって強い感情で動いていたとする。それで自分の本来の実力を発揮してくれてたなら、開幕戦、いや昨日までの畑さんよりずっと良い」

「お、おう」

 

 畑さんVS柿田の対決だったはずなのに、いつの間にか俺の独壇場のようだ。

 静まり返る中、もう一度柿田の方を振り返る。

 

「――その点、お前らはなんだ。勝ちたい、ってずっと言っているけどどうやって勝つつもりだったんだ」

「……やめろ」

「練習している、頑張っている。それはわかった。痛いほどわかってる。でも、それだけだ。そんなもの、誰だってやってんだよ」

「……やめろや」

「前言ったよな、練習量だけならサラマンダーズより多いって。でも、それはあくまでチームでの練習量の話だ。自主練……自分のための練習は、このチームの方が圧倒的に少ないんだよ」

「もう、やめろ言うてるやろ!」

「今日何を思ってマウンドに上がった? ブルペンでは何を考えていた? いつもの練習の意味は? ……言われたくないの承知で言うよ。今の郡派(お前ら)をプロ野球選手とは思いたくないよ」

 

 神田派(邪魔者)を何年経っても追い出せない。足踏みをする彼らすら追い越せない圧倒的な弱さ。

 努力している自分達に酔い、未熟者同士で傷を舐め合っている。その馴れ合いは、芽吹くはずの蕾の根をいくつも腐らせてしまっている。

 

「……いい加減に、しろや!」

 

 フツフツと溜め込んだものが爆発する。――一番最悪な形として。

 

 呆気に取られた黒田の腕が緩んでいた。柿田自身も威嚇のつもりだった。……俺も、そんな手段を取らないと思っていた。

 

 近くにあっただろう誰かのスマートフォン。軽く……とは言っても仮にもプロ野球選手の投擲。投げられたそれは弧を描くと言うよりは、ほぼ水平に飛ぶ。

 俺を目掛けて投げられたスマホ。それをつい反射で躱してしまう。……俺の後ろを気にせずに。

 

 ごつん、かつん、かつん。無機質で間抜けな音がロッカールームに響く。

 

「――ああ、なんか、もう全部どうでもよくなってきた……いい加減にしろやテメェ!」

「ちょっ! 今のはダメだろ、謝れカキ! ……カキ?」

「お前らいつまでここにっ……!? おい、一体なんの騒ぎだ!」

 

 いまだに誰も出てこないのを怪しんだ南ヘッドコーチ。だが入ってくるタイミングが最悪すぎる。

 乱雑に飛び交う備品、慌てる若手、何もできない中堅、項垂れる柿田を何度も揺する畑さん……。

 

 結局南ヘッドの応援により一時的にだが騒動は鎮火。

 しかしその後の事情聴取により、采配批判及びチームメイトへの暴言が確認された畑さん、そして物理的な攻撃という手段を取ってしまった柿田は二軍行きが決定。また、二人には約二週間の対外試合への出場禁止処分が下された。

 

 ……その一方で、この事件の引き金を引いた俺には――何もなかった。

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