常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

39 / 46
第三十七話

畑、柿田懲罰降格!? ロッカールームで対立激化!

 

 朝方からとんでもないニュースが飛び込んできた。今季、全試合スタメン出場中の畑今日介外野手(29)と昇格一日目の柿田雅人投手(24)の降格、さらに一週間の対外試合の出場停止が発表された。

 球団発表では両名の口論がヒートアップした結果、取っ組み合いにまで発展したとのこと。

 

 詳しい理由こそ発表されていないが、関係者の話によると、直近の敗戦に対する異常な叱責が原因らしい。

 

 もしもこれが真実ならば、あまりにも子供じみた行為。仮にもプロ野球選手、否、社会人としてこれは言語道断だ。

 

 (中略)6連敗中でチーム内外の雰囲気が最悪の中でのこの騒動。

 はっきり言ってプロ野球選手らしからぬ行動だ。ファンやチームに対する裏切り行為と言ってもいい。

 今年のペンギンズにも期待をすべきではなさそうだ。

 

――――

 

「なーんじゃい、この記事!」

「これで大江戸スポーツNews(うち)よりPV数が多いのも嫌になるな」

 

 試合開始直前、いつもの記者席で話題になっているというペンギンズの記事を読んでみたが……なかなかの酷評ぶりだ。

 

 チームの主力である二名の離脱。しかも理由が喧嘩って……。ていうか他社にリークした関係者誰だよ、もう……。

 

 ここまでのペンギンズの雰囲気は最悪だと思っていた。打てない、守れない、ファンがいないと、三拍子揃わぬ現状をどうしようと。でも、まさかそれ以上が待っていようとは。

 

「あ、それ結構反響出たんですよね。僕が担当だったんですよ」

「……少なくとも私達(ペンギンズの番記者)に自慢することじゃないよね。なんでいるの?」

「あはは、僕今年から関東担当になったんですよ。せっかくペンギンズで記事を書いたからには今日ぐらいは見ようかと」

「相変わらず舐めてんなぁ、麻見(あさみ)

 

 記者にしておくにはもったいない爽やかな顔は、どこへ取材に行っても受けがいいらしい。

 伊春文芸社(いはるぶんげいしゃ)所属のスポーツライターの麻見記者が、最初からそこにいたかの様にひょっこりと顔を出す。

 

 そんな彼はごくごく自然に、それでいてこちらの感情を何も察していないのか、はたまたわざとか。数ある空席の中からしれっと私の横に座ってくる。マジでどんな思考回路してんだ。

 

「それにしてもいつにも増してガラガラですね、ここ。あ、でも僕だって、贔屓の球団が10連敗とかするところなんて見たくないからこんなもんか」

「まだ6だっつーの」

「まだとかも言わないでくださいよ! 今日こそ勝ちがつきますから!」

「「いやー無理だろ(でしょ)」」

 

 おい! なんでそこが被る!

 ……はぁ、ただでさえ気が重いのに麻見君が横にいながら試合を見るのか……憂鬱だぁ。

 

――――

 

 ……いやぁ、本当にまずいことになったな。

 

「なぁ……なんであの人は……」

「監督と……でもしたんじゃね?」

「急に使われ始めたのも……かぁ」

 

 神田さんと揉めていた時だってここまで露骨じゃなかった。

 それに柿田達(郡派)とはうまくいっていたと思っていた。最近は(一部の人を除いて)神田派の人達ともようやくいい関係が築けてきた所だと思っていた。

 

 ……でも、今回はそんな彼らを糾弾したのだ。ましてや、チームの中心である2人は罰せられたというのに、乱闘のきっかけを作ったはずの俺にはなんの処罰も無し。

 そんな俺と、この対応をした首脳陣に不満を持たれるのも仕方がない。

 

 でもここまで露骨に避けられるとなぁ……。

 

「そこまで気にするなんて、ユキさんにしては珍しいですね。結構自業自得だと思いますよ」

「最近気がついたけど、結構はっきり言うよな、お前(きょうすい)って。……さすがに、この状況だとな」

 

 ぱしん、ぱしんと心地よいリズムでグラブが鳴る。そろそろ試合前の練習を切り上げるべき時間なのだが……今ロッカーに戻ると影口大会にかち合ってしまうだろう。

 

 何もやましいことがなければ気にしないが、今回の件は間違いなく俺に原因がある。……本当に何のお咎めもないのが余計に気持ち悪い。俺が監督なら、三人まとめて二軍行きだ。

 

 そんな腫物の俺に、いつも通り付き合ってくれる京水には感謝だな。

 

「でも、誰かは言わなきゃいけないことだった。牛山(うし)さんが謝ってたぜ。またお前に言わせちまったって」

「神田さん」

 

 そんな俺を見かねてか、練習を切り上げたばかりの神田さんが声をかけてくれる。

 昨日のエラーのせいで、ベテランながら特守練習をやらされていたらしい。

 

「俺からすると、割と妥当だと思うがな。こいつは想像だが、昨日のやり取りが問題なら開幕戦時点でお前……それと、ここ数日の態度なら畑もとっくに降格しているはずだ。だから、今回の降格は手を出したかどうかで決まったんじゃないか?」

「……それでも気まずいですよ。やっぱり原因は俺にあると思うんで」

「タイミング以外で悪いところはないと思うんだがな。……本当に、新入りのお前に何を言わせてんだろうな」

 

 ……本当に優しい人だな神田さん。もしかしたら周りに誰も居なくなったタイミングを見計らって声をかけてくれたのか。

 彼のようなチームの中心人物にそういってもらえるだけで、幾分か気持ちが楽になる。

 

「……今日の夜空いてるか、()()? 少しこのチームのことで話したいことがあるんだ」

「あ、すみません、試合の後先約があるので、ちょっと……」

「え、ああそうなの!? ああ、じゃあ明日とかどうだ? 明日空けられる?」

「あ、明日なら、ハイ」

「「…………」」

「……はぁ、ユキさんそういうところっすよ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。