常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

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第五十八話 それぞれのエピローグ/幸村と〇〇

 目の前で見た幸村選手の逆転ツーランホームラン。でも今日一日の締めはここじゃない。

 私の話にはまだ続きがある。

 

 試合が終わり、弟の手元には幸村選手第一号のホームランボール。そして、選手入場口で選手がサインを書いてくれているとのこと。

 

 当然、ミーハーな弟はサインを求めに行く。もちろん、私もお兄さんであるかどうか確認するためについて行った。

 

「幸村選手! ホームランボール取りました! これにサインください!」

「……あれ? お昼の子!?」

 

 まさかというか、案の定というか……幸村選手は本当にあのお兄さんだった。なんなら向こうも私たちを認識していた。

 ……なんでスタッフに混じっていたんだろう。

 

「俺、剣持選手が良かったけど、今日だけは幸村選手が良い!」

「こら、だけははいらない!」

 

 余計な一言すぎるでしょ全く。来年から2年生なんだし、そろそろ言っていいことと悪いことの区別を覚えてほしい。

 ……あれ? ちょっと待って。

 

 泣く弟をあやす、アイスを買わせる、そもそもプロと気が付かない、そして今の発言……これ3アウト(失礼)どころか、4アウト(無礼千万)じゃない?

 

 と思っていたが、嬉しそうに眉を下げてサインペンを手に取ってくれる。

 

「わかるよ、剣持選手カッコいいもんね。それにしてもまさか、俺の初本塁打が君の手に渡るなんて……運命かな」

「……ん、あれ!? さっきのお兄さん!? なんで!?」

「あんた今気づいたんかい!」

 

 そして改めて渡されたボール。そこには一本一本、丁寧に、大きく読みやすく書かれた「幸」の一文字……。

 

「……えっこれがサイン?」

「わかりやすい方が良いと思って」

「サインってそういうものじゃないと思います!」

 

 思わず口に出してしまうほど立派な楷書体。

 記念のホームランボールは、一瞬で怪しげな幸運グッズへと変貌を遂げる。

 いや、誰のサインかわかりやすいけど、わかりやすいけれども!

 

「……次は、一軍の試合においでよ。今度こそ剣持(けん)さんと会えるといいね」

 

 そんな私たちの様子にへにゃりと笑ってくれると、優しく、それでいて少し不慣れな様子で弟の頭を撫でる。

 

——その時の瞳を私は生涯忘れないだろう。

 

「その時は俺も一軍(そこ)にいるから。剣持選手と同じぐらい活躍するから、今度はよく見ててね!」

 

 弟に合わせた優しい言葉。けれどその目は雄弁に語っている。剣持選手を超える活躍をしてみせると……いや、それ以上の野望が覗いて見える。

 

 さっきまで少し抜けてる優しいお兄さんだったのに、試合中の幸村選手に代わっていた。

 ただ見るだけで、こちらの背筋すら凍ってしまう威圧感。けれど決して不快なものなのではない。野球を知らない私でも、試合に掛ける驚異的な集中力によるものだとわかるから。

 

 ……いわゆるギャップ萌え、というやつなのだろう。

 

 決めた。この人を応援しよう。また、見にこよう。

 この状態の最高時に打ったホームランが頭から離れない。それをもう一度、今度は一軍の球場で見てみたい。

 

 これが、私が幸村選手のファンになったきっかけ。

 

「そうだ、お姉ちゃん」

「え、私ですか?」

 

 一度立ち去ろうとした幸村選手は、何かを思いたったのか近くにいたスタッフに耳打ちをする。

 

「今日一日お疲れ様。その様子だと慣れない場所で大変だったでしょ」

「い、いえそんな! 全然へっちゃらです! あの、す、すごくかっこよかったです! 初めて野球を見にきたんですけど、すごく面白くて……その、もしよかったら、私にも……」

 

 さっきまで普通に出来ていたのに、一度自覚してしまったせいで、それも突然話しかけられたからにはうまく口が動かない。

 でも、せっかくのチャンスだ。私にも何かサインを……そう言おうとした時、手に丸いものを持たされる。

 

「今取りに行ってもらってさ。ご褒美に……なんて言ったら調子に乗りすぎかな!? ……もしよかったら貰ってよ。また、見に来てくれると、すごく嬉しい」

 

 そう言い残して今度こそいなくなる幸村選手。

 そして、改めて見るとそこには弟が手に持つものと同じ「幸」のボール。

 

「……よかったね、お姉ちゃんも貰えて」

「……うん」

 

 

 

「あ、二人とも幸村選手には会えた?」

「あ、おとうさん! 会えたしサイン貰えた! それと幸村選手はさっきのお兄さんだった」

「……ん? どういうこと?」

 

 ようやく合流するも、はしゃぐ弟の発言に困惑する父。

 ……いつもだったら、ここで私が注意するのだけれど、そんな余裕は今ない。

 

「えっ、これがサインボール? 書道じゃん」

「だよね! でも、ちゃんと書いて貰ったんだ!」

「そっか、よかったよかった! いやー、うん。怪我の功名ってやつかな!」

「……うん」

 

 いつもなら、ここで入るはずのツッコミがないことで流石の父も私の異変に気づく。

 そして、私の手にも同じものを持っていると気づくと、一人で大きく頷いた。

 

「そっか、お姉ちゃんも幸村選手か」

「……うん」

「……本当に、今日来てよかったね」

「……うん」

「あれ、お姉ちゃんそれの裏……」

 

 わざわざ取りに行ってまで書いて貰ったサインボール。改めてまじまじと見ると弟のものよりもだいぶ土がついていて傷だらけだ。

 

 ……貰ったことの高揚感でいっぱいになっていたため、最初に見つけたのは弟。

 

 そこに書かれていたのは、別にメッセージでもなんでもない。

 サインの正反対に書かれていたのはたった五文字。

 

「これって」

「7回の……!」

 

 サインとは違い、少し小さく控えめに書かれた『第2号HR』。

 ……この瞬間から私は幸村選手の大ファンになったのだ。

 

442:幸村ネキ

これが私が幸村選手を応援し始めたきっかけです。

ご清聴ありがとうございました

 

443:名無しのペンギン

うそやろ、今まで全部スレやったんかい!

 

444:名無しのペンギン

一体何レス分使ってんのや……

 

445:幸村絶対許さないぞBOT

その名前出し過ぎ……

 

446:名無しのペンギン

誰やねん。幸ネキに軽々しく聞いたの!

 

447:名無しのペンギン

すまん俺や。まさかこんな長くなるとは

 

448:名無しのペンギン

いや、でもあのホームランは痺れたな。開幕戦の二盗、三盗といい良いところで活躍してくれるから最高やね。幸ネキやないけど俺も好きになってきたで

 

449:幸村絶対許さないぞBOT

その名前を出すな……

 

450:名無しのペンギン

なおペ

 

451:名無しのペンギン

知ってた

 

452:名無しのペンギン

いい加減勝ってくれよ

 

453:名無しのペンギン

やっぱ有永出すべきじゃなかったって!

投手陣崩壊してんじゃん!

 

454:名無しのペンギン

ギン「俺はもう……お前ら(他チーム)についていけねえぞ」

リリーグ「なに!?」

ギン「俺のチームは……一段階退化する」

 

ギン「皆・二軍(みな・セカンド)!」

 

455:名無しのペンギン

カスのワ◯ピやめろや

 

456:名無しのペンギン

もうこのチーム応援するの疲れた

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