常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する 作:鋼鉄の山本
「今ノペンギンズデ勝テル? NO! 低イLevelニ合ワセナイ」
それは明確な拒否。それと同時に特別扱いを認める発言でもあった。
「なるほど、幸村の獲得は
「フゥン? 去年ヨリ下ッテ何位?」
首脳陣の中では最年長である上谷ヘッドコーチに対してもバッサリと切り捨てる。
険悪な空気の流れる中、長い腕を大きく広げると、大きな身体を使い今のペンギンズへの想いを叫ぶ。
「20年前、コノチームスゴク強カッタ。チョードサラマンダーズミタイナ。デモチームズット弱イ、ズーーーット弱イ。ミーンナ悲シイ、ソレダメ。勝タナイト」
「勝たないと……と言いますが実際勝てていないじゃないですか。チーム内に広がっている不協和音こそが一番の原因ではないのですか?」
そんな大々的な演説もピシャリ。
上谷ヘッドの含みある鋭い視線がモーリスを指す。
……指すがその返答はあまりにも的外れだ。
「ソーイウコト言ッテナイ。日本語デ、So……『最後に咲う』意味」
なにせウォルカー・モーリスにとって
「勝タナイト意味今勝ツ違ウ。GoalハリーグNo.1。最低デモAクラス、ジャナイトダメヨ」
「この最悪の状況でですか? 随分とおめでたい考えですね」
「ナラコノチームデ何ヲ目指ス?」
「目指すもなにも、まずは目の前の一勝に全力を尽くす! たとえ長いリーグ戦でも、それが戦う基本でしょう! 長い目で見るといえば聞こえはいいですが、現状は勝つべき試合を落として無駄に敗北を重ねているようにしか思えない! これでは真剣に戦う選手達に失礼だ!」
だが、たった一人の想定内は他のコーチ達……いや、チーム全体では想定外である。
その代表が上谷ヘッドだ。
大きな音を立て倒れる椅子に目もくれず、監督であるモーリスへ向かっていく。
誰だって最下位にはなりたくない、15年ぶりにCSにも出たい。
だが、そのための敗北などあってはいけないと。
——真夜中の会議は、まだ続いていく。
——————
「うーん、あんまり良い案思いつかないですね」
「注目されている中で投げるのが怖いって……結局場数をこなして慣れてくってのが結論だよな。プレッシャーに勝つのだって少しずつ実績を積み上げて自信をつけるのが一番。どっちにしろ一朝一夕で身につくものじゃないな」
「ご、ごめんね三人とも」
話し合いを始めてからすでに30分が経過している。
だが、出てくる案は全て時間が掛かるもの。
結局、心にせよ技術にせよ、すぐに身につけられるものでプロの世界は戦っていけない。
やっぱり一番は地道にやっていくしかない。
ぶっちゃけると俺もそれが正解だと思う。けれど石崎当覇にとっては酷な選択。
「俺には時間がないのに……!」
「時間がないって、トーハさんまだ1年目じゃないですか」
「いや、このままだと持って2年ってところだと思うぜ。高卒ドラ1のお前には理解しづらいかもだけど、下位指名の寿命は本当に短いんだ」
俺も高卒でとはいえ、下位指名での入団だったからよくわかる。
俺たちの首は上位指名の奴らと比べなくとも圧倒的に軽い。何より新しい選手は毎年どんどん入ってくるんだ。役に立てない選手をどんどん入れ替えられるのは自然なこと。
俺だって、3年ぐらいファームにいただけで育成落ちしそうだったしな。
「千葉は確か7位で入ってるだろ? お前ならその気持ちわかるんじゃないか?」
「えーっと、割と最初からファームで結果出せてたんで、そういうのはあんまりなかったかなぁ……って」
「…………」
「時間かかったのは怪我と身体作りが長引いただけで……」
「…………」
「なんか、ごめんなさい」
……ともかく、こいつは大学を経由してからの社会人出身。しかも手薄なリリーフ投手として獲得されている。
要するに即戦力として期待してるのに、まともに投げれるまであと数年かかります、ではドラフトで獲った意味がない。
こいつの焦りも至極もっともなもの。
「じゃあ幸村さんは何か案とかないんですか? 速攻性があってトーハさんの弱点を補えるなにか」
「あるよ」
「そうっすよね。……でもトーハさん投げれるようになったらすごく助かると思って、るんで……すけど——」
「ごめんユキ、今案があるって聞こえたんだけど?」
信じられないものでも見ているかのように、ギョッとした様相でこちらを見る三人。
そんなに驚くことかよ。そもそも何も考えてなかったら二日目に突入してない。昨日は当覇の状態の確認で、今日はそれを教えるために集まったのだから。
「じゃあなんで俺らに聞いたんですか!」
「そうですよ、意味ないじゃないですか!」
「三人よれば文殊の知恵、てよくいうだろ? 俺の案って再現性も安全性もないから教えたくないんだよ。だから他に良い案出ないかなって」
……なんで頭抱えんだよ。なんででかいため息ついてんだよ。俺先輩だぞ、おい。
「照貴、ちょっと防具つけてこっち来い!」
「了解っ!」
「えっと、テル君に投げているところをアドバイスしてくれる感じかな?」
「違う、俺が投げるの見てろ」
「……は?」
ブルペンに入るの久しぶりだな。遊びでも最後に入ったのは……確かトレード決まる前ぐらいか? 勢いよく見てろと言ったけれど、うまく投げれるかどうかは不安だ。
後ろが少し騒がしいが、ある程度肩が温まった段階で捕手を座らせる。
さて、ミットまで届くと良いけれど。
まずは全身を脱力。セットポジションから逆足を少しだけ浮かして踏み込む。踏み込み幅は短く、その分運動エネルギーを最小限の動きで最大限ボールへと伝える。
スパン、と乾いた音が鳴る。……こんなボールでも綺麗な捕球音を鳴らせる照貴に感心する。
「思ったより速……っていうか今のフォームって」
「トーハさんのフォーム」
速い、っていっても多分140も出てないけどな。
それに、わかりやすいようにこう投げたわけではない。元々俺の投げ方がこれなんだ。
似ているのは俺たちの参考元が同じだから。
「確認だけど、当覇って吉城暁のフォームに影響受けてるよね」
「あ、やっぱりわかる? そうなんだ。体格も近いから結構しっくりきて、大学4年の時ぐらいからずっとこれで投げてる」
ブルペンで投げているのを見た時からずっと気になっていた。
まっすぐの質も、ウイニングショットがフォークなところも、あまりに吉さんのボールにそっくりだったのだから。
「そんなに吉城さんと似てるんですか。俺ら対戦したことなくてよくわからないんですけど」
「ほとんど瓜二つ。あとは試合で投げれるボールを4〜5球種ぐらい増やして、フォークのスピードを上げて、マウンドで見下してる感を出して、マウンド捌きをもっと上手くして、ピンチにこそ実力を発揮してくれれば——それはもう吉城暁だ」
「なるほど、メロンときゅうりぐらいは似てるってことですね」
それはさておき……と、横で凹んでいる当覇に声をかける。何球かは投げるつもりだけれど、5回に1回できれば上等のボールなんだからしっかり見てろと。
「それで幸村さん。吉城さんが関係あるのは分かったんですけど、なんでそんな出し渋ってるんですか」
「その……吉さんも関係あるっていうか、技術的にも難しいし、精神的にも相当アレっていうか」
「良いから教えてくれ。どんな方法でもやりきって見せる!」
……視線で射抜かれるとはこういうことを言うのだろう。
どんな手を使ってでも一軍にあがりたい、プロ野球選手として生きていきたい。そんな気持ちがありありと伝わって来る。……わかるよ、死ぬほど共感できる。
……共感できるからこそ、これを伝えて良いのか、ものすごく……
「その……俺は今から真剣に話すよ」
「御託はいいんでさっさと言ってくださいよ」
後輩達に冷たくあしらわれながらも重たい口をようやく開く。
俺の知る、メンタルの弱さを克服した成功例。
メンタルだけが課題とされ、その枷を無くした昨シーズンは最多奪三振を獲得した友人のやり方。
「あのさ、