いつか百合ハーレムを作る女主人公は男の俺から見ても可愛い   作:豚の神になりたい

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第一話 初恋の少女は失恋した後見ても可愛い

 

 

 

 

 ――――俺の好きになった人は将来百合ハーレムを作る魔性の女の子でした。

 

 俺、空宮碧(そらみやあおい)には幼少期からの幼馴染がいる。

 甘織(あまおり)れな子、という名前の少女。どこにでもいるような黒髪の俺とは違い少し珍しいピンク色の髪をしていてアメジストのように透き通った紫色の瞳をした幼馴染。

 

 性格はどこか引っ込み思案で自分の感情を表に出すのが得意ではない。

 男の子と話すのも少し苦手なようで俺以外の男子と話している所は今までほとんど見たことはない。とはいえ俺も男だったからか最初の頃は仲良くなるのにとても苦労した。家がお隣で子供が同年代だったこともあって親同士の仲もよく、物心ついた辺りから引き合わされた俺たちだったが二人きりになってもあっちから話しかけてくることはほとんどなく場を持たせようと積極的に話しかけても言葉は返ってこなかった。でも、そんな行為を続けているうちにれな子も俺に心を開いてくれたようで途切れ途切れだった最初の方とは打って変わって二人とも小学生になる頃には同性の友達と話すような感覚で気軽に話せるような関係性になっていた。

 

 そして、そんな関係で一緒に過ごしていたうちに俺は彼女に惹かれていたように思う。端的にいうと、好きになってしまったのだ。

 自分の恋心に気づいた俺は一時期れな子の恋愛対象になるよう猛烈にアピールしていた時期があった。

 最終的に俺は小学生を卒業する頃にれな子に告白をしようという計画を立てていたが、……その考えが現実で実行されることはなかった。

 

 何故か?

 実は告白しようと思っていた前日に俺は酷い熱を出してしまい、その時に偶然思い出すことになったのだ。

 自分の前世の記憶を。

 まぁ前世の記憶を思い出したといっても前世の全ての記憶を思い出したというわけではなく、思い出すことができたのは一部の記憶だけ。それも正直思い出したから何?といえるような使えない記憶しか思い出すことができず、前世の記憶を思い出しても俺という存在に特にこれといった変化は起こらなかった。

 

 ただそんな無駄と思えるような記憶の中に一つだけとても重要な記憶があった。

 それは俺の幼馴染である甘織れな子がわたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(……じゃなかった!?)、略称わたなれという百合作品の主人公で将来百合ハーレムを作ることになる少女だということだ。

 俺はショックを受けた。確かにあいつはいつも「こういう男女でも一緒に遊べる友達の関係って気楽でいいよね」、と笑いながら俺に言ってきたことがあるが、まさかれな子が同性愛者だったとは。

 

 え?何でれな子が同性愛者だと思うのかだって?

 普通に考えてそうだろ、百合作品ということは女の子同士がイチャイチャしあう作品ということ。ならばそこに登場する登場人物(少なくとも主人公であるれな子)は女の子が好きということだ。今まで一緒にいてれな子のそんな気配は微塵も感じなかったが、まぁ隠していたということだろう。全然気づかなかった。

 正直、れな子がわたなれという作品の主人公であるということとその作品が百合作品であるということ、あと他にれな子が百合ハーレムを作ることくらいの情報しかわたなれに関しての記憶は思い出すことはできなかったが、それだけの情報があればれな子を女性趣味だと考えるのは早計ではないはずだ。

 つまり、俺は最初から恋愛対象外。告白(戦う)前から負けていたというわけだ。

 

 人の人生には三回の恋があると聞いたことがある。

 一度目は、おとぎ話のような理想を求める「正しいように見える恋」、二度目は辛いけれど糧になる「努力したけど叶わなかった恋」、そして最後の三度目は気付かないうちにやってくる「正しいとわかる恋」。

 俺は今回の件で一度目の恋と二度目の恋を経験したのだろう。俺の初恋は告白する前に儚く散ることになったのだった。

 

 だがまぁ告白する前に失恋したので俺たちの関係が気まずくなることは特になく、高校生に成長した今でも変わらない関係は続いている。

 

 その証拠に俺は今現在……、

 

「お、おい!左から声するゾンビ来てるぞ!」

「分かってるって!……わ、次右から来てる!」

 

 れな子の部屋で一緒に騒ぎながら全力でゾンビの頭を撃ち抜くゲームを楽しんでいた。

 

「はぁ、疲れた。やっぱ難易度上げるとやり慣れててもきついな。」

「まぁ、碧がゲーム下手っていうのもあるけどね。どのゲームも始めたのは私より先なのに全部私より下手だし!」

 

 あれから一時間ほどゲームをプレイしたあまりに興奮したせいで疲れた俺たちはゲームのコントローラーを置いて少し休憩していた。

 失敬な、俺のゲームの腕は普通だ。少なくとも俺はそう思ってる。確かに昔かられな子以外の友達と対戦用のゲームで遊んだ時にあいつゲーム好きだけど弱いからすぐ勝てるぜ、って言われたことがあるような気もするがきっと気のせいだろう。そうに違いない。

 

 それにしても。

 俺は興奮して汗をかいたのか、自分の手を顔の方にパタパタしているれな子の方を見る。

 

 中学生の長髪とは打って変わって高校生から心機一転として髪をバッサリ切ったことでボブカットになった桃髪に透き通った紫の瞳と整った顔立ち、高校になってから少し大きくなった胸の膨らみ、自分のことを地味な女と自称している奴にしてはあまりにも魅力的な容姿に対していつもながら思う。

 

「……?……黙ってこっち見て来てどうかした?」

「いや、いつもながら可愛いな、と思って。」

「……ッ!か、可愛い!?そ、そういう冗談はいつもやめてって言ってるじゃん!?」

 

 冗談じゃないんだがな。年々美人になっていきやがって。今の顔を赤くしながら慌ててる顔も可愛かったし。昔から美人に成長すると思っていたが、まさかここまでとは。これで同性愛者じゃなかったら、ノンストップで告白するんだがな。現実というのは非情だ。

 まぁ俺個人として同性愛にどうこうつもりはない。美少女同士が触れ合うのは目の保養にもいいし。

 

「もう、馬鹿なこと言ってないでゲームしよう!今度は対戦ゲームとかどう?」

「なぁ、れな子。」

「何?次馬鹿なこと言ったら一発殴るけど。」

「好きな女の子ってい……あ、いたっ!!」

「次馬鹿なこと言ったら殴るって言ったでしょ!てか、その質問する立場普通逆でしょ!」

 

 そんなことはない。俺の記憶が正しければれな子は将来百合ハーレムを作ることになる。

 正直中学生までは仲のいい女友達もいなくてあれこれ原作本当に始まるのか?と不安にもなったがそんな心配は杞憂だった。

 

 高校生になってかられな子には四人の女の子の友達ができた。彼女らは全員一人残らずれなこクラスの美少女(少なくとも俺視点では。本人は否定している)で俺は彼女達がれな子のヒロインであることを悟った。

 ならば長年付き添って来た幼馴染として恋に敗れた男としてれな子のいつか来る恋をサポートしてやらなくてはならない。そう思った俺はれな子と一緒にそのグループと話すようになり今現在六月頃にはとんどのメンバーと気軽に話すことができるようになった。

 代わりにその代償として高校では男友達がまるでと言っていいほどにできていないが、まあ仕方ない。

 

「そんなことはないさ、で、誰が好きなんだ?」

「誰がって言われても……。」

「やっぱ王子様系完璧金髪美少女の真唯(まい)か?それとも天使のような抱擁系茶髪お姉さんの紫陽花(あじさい)さん?他には頭脳明晰クール系長髪黒髪美少女の沙月(さつき)さんや、短髪の緑髪活発元気っ娘の香穂(かほ)ちゃんか?」

「しかもなんでその四人限定なの!?」

「え、誰か他に好きな奴でもいるのか?」

「え、そ、それは……。」

 

 れな子が顔を朱色に染めながらもじもじしている。あれは自分の好きな人を言うことを躊躇っている証拠。

 つまり、れな子には今好きな人がいると言うことだ。

 え、誰?四人の名前で反応しなかったと言うことは少なくとも四人のうちの誰かではないはず。

 ば、馬鹿な!俺が見逃しているヒロインがいただと。

 いや、でも待て。確かに俺は四六時中れな子と一緒に行動しているわけじゃない。俺が知らない、ヒロインの一人や二人いたっておかしくない。

 

「碧お兄ちゃん、そろそろ帰る時間じゃない……?」

「あ、遥奈(はるな)ちゃん。」

「…………。」

「……二人とも……何やってんの?も、もしかして私邪魔だった?」

 

 何やってるのか?って。

 そうだな、一人顔を赤くして蹲っているれな子とその姿を見つめている俺がいるだけだけど。あれ、これって側から見ると俺がれな子を何らかの方法で辱めてるようにしか見えなくない?

 

「大丈夫、大丈夫。特に何もなかったから。な、れな子。」

「……う、うん。」

 

 おい、なんだその何かを訴えかけるような目は。実際何も無かっただろ。

 

「……ふーん。」

 

 遥奈ちゃんもこっちにジト目をぶつけてくるのやめてもらっていいですか?全く小さい頃はお兄ちゃん、お兄ちゃんもっと懐いてくれていたのに。最近になって少しよそよそしくなった気がする。

 俺とれな子を見つめる彼女の名前は甘織遥奈(あまおりはるな)。れな子の妹だ。れな子と同じ桃髪のポニーテールに同じ色の瞳、れな子の体(ついでに胸も)を少し小さくしたような姿をしている。

 性格は姉とは違い卑屈でもなく陰か陽でキャラを区別するとしたら間違いなく陽の部類に入る女の子。正直とても可愛いし、どちらかと言うと俺の好みの女の子のタイプなのだが俺にとって彼女は妹みたいな者なので恋愛対象には入っていない。まぁ彼女の方も俺なんてお断りだろうけど。

 

「は、遥奈さん何でそんな目で見てくるんですか?」

「……強いて言うならお兄ちゃんが鈍感だから、かな。」

「え?鈍感?何で?」

「「はぁ……。」」

「何でため息つくんだよ!」

 

 人の言葉を聞いて姉妹仲良くため息なんてつきやがって!普通に何か悪いことしたみたいな気分になってくるのでやめて欲しい!

 

「まぁお兄ちゃんが鈍感なのは置いといて。」

「いや、置いとくな。」

「今日はどうする、昨日みたいにまた一緒に夜ご飯食べる?」

 

 無視しやがって。

 本当にいい性格に育ったよ、遥奈ちゃん。それにしても夕飯か。実は平日は俺の家にはいつも両親がいない。親は仕事で帰ってくるのが遅いのも相まって夕飯はいつも一人だ。それを不憫に思ってくれたれな子のお母さんに誘われれな子ん家の夕食を一緒に食べることも多いのだが……、

 

「いや、今日は帰るよ。いつも一緒に食べるのもおばさんに迷惑かけるみたいで悪いし。」

「そういうところは碧っていつも遠慮するよね。お母さんも遥奈も良いって言ってるんだから、遠慮しなくて良いのに。」

「失礼だな、俺はいつも他人のことを慮って生きているとも。それじゃあれな子、遥奈ちゃん、また明日。」

「うん、また明日ね。」

「はい、碧お兄ちゃん、また明日。」

 

 二人見送られながら俺はれな子の家を出る。

 

 正直家で食べる夕飯よりもれな子の家で食べるご飯の方が美味しいし、多分いつもだったら一緒に夕飯を食べて帰っていたのだが、今日は少し用事がある。

 実は今日はれな子に内緒でやっている美少女ゲームのライブ配信がやる日なのだ。とっとと帰って配信に備えなくては。俺は心を踊らせながらスキップしてれな子の家の真横にある自分の家に帰宅するのだった。

 

 あれ、そういえばれな子の好きな人って結局誰だったんだろうか?まぁ、いつか聞ければ良いか。

 

 

 

◯◯◯◯

 

「それにしてもお姉ちゃん、さっきなんであんなに顔赤くしてたの?」

 

 碧がいなくなった後のれな子の私室、そこで妹である遥奈がれな子に質問をする。

 

「そ、それは……。」

「何?もしかして何か言えないことでもしてたの?」

「そ、そんなんじゃないって!ただ……」

「ただ?」

「碧に私の好きな人を聞かれて……。」

 

 顔を赤らめながらそう呟く、姉の姿を見ながら遥奈はため息を吐く。合点がいった。どうして姉があそこまで挙動不審になっていたのか、なんせ……。

 

「ああ、お姉ちゃん、お兄ちゃんのこと好きだしね。」

「…………うん。」

 

 否定することなく、首を縦に動かして頷くれな子。

 その恋心を自覚したのは、中学生の頃だった。一緒にいると安心して気楽に接することができる唯一の異性。好きになるのは時間の問題だったのかもしれない。気づけばれな子にとっての理想の男性は小さい頃からの付き合いである幼馴染になっていたのだ。

 

「お兄ちゃん、あの鈍感具合だから間接的にアピールしても、気持ち伝わらないよ。告白すれば良いのに。」

「……ぅう。そんな簡単に言われても……。」

「なんなら、私がお兄ちゃんの好きな人聞いて来てあげよっか?」

「それは前に聞いた。今は……いないって。」

 

 そこまで聞いているのに告白はできないのか。遥奈は姉の気弱さに少し呆れながら同時に、そんな姉の好意に全く気づかない碧に苛立ちを覚えていた。

 

「これは……まだ半年、いや、一年かかるかな?」

「え、今何か言った?」

「何もー。」

 

 姉の積極性のなさ、そして碧の鈍感さ。それらが悪い方に噛み合って二人が付き合うにはまだまだ時間がかかりそうだとそう思う遥奈なのであった。

 

 

 

 

 






 空宮碧:本作の主人公。前世の記憶を思い出し、れな子は女性のことが好きだと勘違いしたバカ。その結果、れな子からアピールされても全く気づかないクソボケ具合を手に入れた。

 甘織れな子:(多分)この作品のヒロイン。好意に全く気づかないクソボケに惚れてしまった被害者(一号)。まぁ本人も原作だと大分クソボケなので人のことは言えない。早く告白してしまえば一瞬で付き合えるのになかなかその勇気が出ない。
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