いつか百合ハーレムを作る女主人公は男の俺から見ても可愛い 作:豚の神になりたい
「ねぁねぇ、この服とかれなちゃんに似合いそうじゃない?」
「あ、紫陽花さん!さっきから何で私の服を選んでるのかなぁ!?」
もう一人の少女の言葉に分かりやすくらいに動揺しながら慌てているれな子とそんな彼女の体に服を重ねてわざとらしい笑みを浮かべる紫陽花さん。
いやー、れな子、紫陽花さんに振り回されてるなぁ。まぁ気持ちはわからないでもない。あの優しい声音と可愛らしい笑顔で迫られたら誰でも紫陽花さんのペースに乗せられ戸惑ってしまうに違いない。
それほどに紫陽花さんの笑顔は強力だからな。
「さぁさぁ、れなちゃん着替えてきて。」
「え?あ、紫陽花さん!?」
おっとぉ??声が聞こえた方を見るとれな子が紫陽花さんに選んだ服を持たされ試着室の方に押し込まれているな。
どうやら少し考え事をしているうちに紫陽花さんがれな子に似合う服を見繕い終わっていたらしい。紫陽花さんはれな子を試着室に押し込み終えるといつも通りの笑顔を浮かべながら俺の方へ近づいてくる。
「れなちゃんが出てきたらちゃんと褒めてあげないとだめだよ。」
「……俺が?」
「うん、碧くんの褒め言葉がれなちゃんは一番嬉しいと思うから。」
え?何で?幼馴染だから?
正直俺から褒められるよりも紫陽花さんから褒められた方が誰だって嬉しいと思うけどな。俺だったらそっちの方が嬉しい。
あ、でもそういえばれな子が高校デビューをする時、妹に見繕ってもらった服をきて、俺に見せてきたことがあったけ。「どう?陽キャに混じっても違和感ないかな?」と少し顔を赤らめながら聞いてきたんだよな。
あまりにも似合いすぎてて服を見繕った遥奈ちゃんにグッジョブのサインをしたのもよく覚えてる。
いやー、れな子は元も可愛いが、おしゃれをするとあそこまで化けるとは正直予想外だった。
あいつ自分のことを地味とか言ってるけど、絶対そんなことないと思う。
「……ねぇ私、碧くんに一つ聞きたいことがあるんだけど。……碧君って好きな人いるの?」
「…………え!?そ、それは友達として好きとかみたいなやつ……?」
「ううん、男女の恋愛としての好きかな……。」
な、何で紫陽花さんがそんなことを俺に聞くんだ!?
も、もしかして紫陽花さんって俺のことが好き……な訳は流石にないか。でも、なら何で紫陽花さんは俺にそんな質問を?俺にどんな返答を期待してるんだ?
「えーっと、それは返答を間違えたら紫陽花さんからの好感度が下がったりするとかある感じ?」
「え!そ、そんなのじゃないよ!ただ碧くんって結構いろんな女の子と学校で話してるからその中に好きな子いるのかな?って思って。例えばれなちゃんとか。」
「ん?何でれな子?」
「れなちゃんって碧くんと一番仲良さそうに見えるし、もしかして好きなのかなぁーって。」
そんなことを呟きながら紫陽花さんが俺の返答に興味津々と言った顔で俺を見てくる。
「うーん、そうだな。友達としては好きだけど、異性としては意識してないかな。今はどちらかというと妹みたいな感じ。」
「えっ、そうなの?」
そりゃあ小さい頃はれな子に惚れてたし、今も時々一緒にいるとドキドキすることもあるけれど、俺はもうとっくにれな子に失恋している身だ。そんな俺が失恋を引っ張ってこれからのれな子の恋路を邪魔するべきじゃない。
だから、俺は高校生になってれな子の恋路を応援すると決めた時にれな子に対する未練はキッパリと捨てたんだ。(多分)
「本当に?私の前だから嘘ついてるとかじゃなくて?」
「うん、だってあいつ恥ずかしがったらすぐに叫ぶし、ちょっと落ち着きもないから。それに………。」
「…………それに?」
「…………え?」
ふと俺の動きが不自然に止まる。い、い、今俺と紫陽花さん以外に誰か喋らなかったか?
今の声は間違いなく紫陽花さんではない。紫陽花さんがあんな聞いただけで震え上がるような怖い声を出すはずがない。
なら、今の声の主はあいつしかいないだろう。
俺は少し震えながら試着室の方を見る。そこには、服を着替え終わったのか、新しい服に身を包みこちらを睨みつけているれな子が立っていた。
「れ、れな子さん?あのー、どうして機嫌が悪いんですか?」
「自分で考えてみれば……。」
こ、怖えー。まるでゴミでも見るような目でこっちを見てくる。
その睨みつけるような目は彼女の妹である甘織遥奈の姿を彷彿とさせる。やはり姉妹同士根本のところは似ているのだろうか。
それにしてもどうして怒っているのだろうか?
いや、考えれば分かることか。いかん、ちょっと調子に乗りすぎた。れな子がいないから少しばかり好き放題いいすぎたか。どうにかして、れな子の怒りを鎮めなければ。
ただ俺の経験則上、こんなふうにヘソを曲げたれな子は簡単には機嫌を直さない。
どうすればいい…………、そんなことを考えながら俺はふとれな子の方を見る。
そして、れな子の方へと視線を向けた瞬間、今まで張り巡らしていた思考は全て彼方へと吹っ飛び、俺の口は自然に開いて言葉を発した。
「れな子、その服似合ってるな。」
「……ッ、そんなこと言われて喜ぶほど、ちょろい女じゃないから。」
ちょろくないと言いつつも碧の言葉を聞いて少し動揺して頬を染めているれな子。
碧は瞬きすることなくそんなれな子の方をじっと見つめている。
可愛い。紫陽花さんのチョイスした服が日常で使える私服ではなく、寝る時に使うパジャマだった理由は正直不明だが、そこはこの際どうでもいい。
着ているパジャマはセパレートのタイプのもののようで上には白色のインナー系の服、下には桃色と白色のシマウマ模様のショートパンツを着ており、上着としてうさぎのフードがついたパーカーを羽織っている。
「白色メインの配色がれな子の髪や瞳の派手なピンク色と非常にマッチしてる。流石紫陽花さんだ。さらにうさぎのフードというところもナイスだな。れな子の小動物みが最大限に発揮されてる。」
「……ぐ、具体的に言わなくて良いから!」
「そう言われてもな。俺は思ったこと素直に言ってるだけだし。」
「……うう、私もう着替える!!」
れな子はそう叫ぶと俺を睨むことをやめ、試着室のカーテンを勢いよく閉める。
「何で、あいつあんなに恥ずかしがってたんだ。」
もうもはや俺の頭の中にはれな子の機嫌を取らなくてはならないなんていう思考は残ってはいない。
そこからの俺はただ静かにれな子が試着室から出ることを待つことにするのだった。
「……れなちゃんの一方通行ってことかな?でも、それにしては碧くんもれなちゃんのこと……。それとも小ちゃい頃からの幼馴染って皆あんな感じなのかな……?でも、真唯ちゃん達はあんな感じじゃないよね……。異性と同性の違いかな……?」
その後、服屋を出た俺たちは、次は上の階でも回ろうかという話になり、百貨店の中を歩いていた。
「結局それ買ったんだな。」
「……悪い?」
「いや、悪くないけど。普通に可愛いし。」
「うん、れなちゃん。やっぱりその服ちゃんと似合ってたよ。」
「そ、そうかなぁ!?ま、紫陽花さんがいうなら本当なんだろうけど!」
「おい、紫陽花さんがってことは俺の言葉は信じてないのかよ。」
「当たり前でしょ!碧の可愛い!って結構軽いから!」
俺の言葉にれな子が噛み付くような勢いでそう答える。
軽いって……。心の底からの本心なんだがいつも言っているせいか、冗談で言ってると思われているようだ。
本気度を示すためにこれからはあまり迂闊に可愛いとか言わないほうがいいか?でも、俺って思ったことはすぐ口に出しちゃうタイプなんだよなぁ。
「お、空宮。瀬名と甘織じゃん。買い物中?」
俺たちが歩いていると、こちらの方へそんな言葉をかけて近づいてくる二人のイケメンがいた。
「急に声をかけられて誰かと思えば清水と藤村か。その通りだけど、そっちこそ何で男二人だけで、こんなところに?」
清水と藤村、彼らは俺たちの学校の同級生で、運動部のイケメンだ。
いつも教室で目立って話しているのを遠目で見たことがある。れな子の言葉を借りてこの二人を表現するなら陽キャといったところだろう。
まぁ、俺からすれば同性ということもあって普通に話すことも多く、気軽に話せる知り合いのような存在だが。
「ああ、こいつの彼女の誕プレを買いに来ててな。」
「なるほどなぁ。良いのは見つかったか。」
「いやー、まぁぼちぼちって感じかな。目星はつけたよ。」
なるほど彼女の誕プレをね。そうかこいつら彼女持ちかよ。俺は高校生になってから彼女なんていないのに……。
告白もされたことないし、ずるいなぁ。
「それにしても彼女か……、いいなぁ。」
「……それをお前が言うのか。」
「え?何で俺?」
「……お前はそういう奴だったな、まぁいいや。」
純粋に疑問に思ってそう尋ねると、説明するのを諦めたような二人のため息が聞こえてくる。
彼らからすればため息の一つぐらい吐きたくもなる。はたから見れば今の碧はどこからどう見てもクラス、いや学園の中でも綺麗どころが集まる女の子の集団に居座ってそこにいる女子達と仲良くしているハーレム野郎だ。
少なくとも彼女持ちを羨む資格など彼にあるはずもなく他の男子からしてみれば碧にだけは羨ましいなどと口が裂けても言って欲しくないだらう。
むしろ、あの言葉を聞いてため息だけで済ませている清水と藤村は一般的な男子よりずっと優しい。
流石本物の陽キャ心の余裕が違う!優しい!!
「それよりもこれから一緒にお茶でも行かね?特に予定ないならさ。」
「……いきなりだな。」
「ん?悪いなんか用事でもあったか?」
二人の急な誘いに何処か口どもる俺。
正直俺一人だけが誘われたんだったら少し考えはすれどお茶ぐらい付き合うんだが、今日はこいつがいるからな。そんなことを考えながら俺は横目でれな子の方へ目をやる。
突如来た誘いに明らかに動揺して少し震えているれな子の姿が見える。予想通りだ。
れな子は俺以外の男の人と話すことにあまり慣れていない。日常での会話なら少しはできるが遊びなんて到底無理だ。ただでさえ、同性でクッソ優しい紫陽花さんと遊ぶのに俺も一緒について来てほしいと懇願するようなやつだぞ。男子と一緒にお茶とかどんな無理難題だよ。
「紫陽花さんの方はどう?」
「えー、どうしようかなー。」
二人の問いかけに紫陽花さんは笑いながらそう言葉を返す。
やばい、このままだと紫陽花さんあっちについていっちゃうかな?紫陽花さんが行くだけで終わるんなら、全然問題ないんだけど、こっちも一緒に行こうって誘われると……、あの二人からの誘いなら断れるけど、紫陽花さんからのお誘いを断れる自信が全くない。やばいどうしよう。
「れなちゃんはどうする?」
口を開いてれな子にそんな質問をする紫陽花さん。
いよいよまずい。れな子は動揺している様子から見てこの誘いを断ることは難しそうだし、俺が代わりに断るべきだろう。
れな子と俺は用事あるから紫陽花さんだけでも行ってきて良いよ、とでも言うとしよう。そう思ってれな子のフォローのために口を出そうとした瞬間……、れな子の手に服の袖を掴まれる。
何で?と思いれな子の方を見ると、こちらの方を見つめて俺にだけ聞こえる小さな声で「私が自分で言うから大丈夫」と言葉を口にする。
俺は静かに驚く。あのれな子がまさかそんなことを言うとは……。
そして、俺の袖から手を離したれな子は思いっきり息をすうと口を開き……、
「ごめん!私みんなとは――――。」
……と、途中まで声を発して、そのまま力尽きた。
力が抜けて床に崩れ落ちそうになるれな子の体を近くによって支える。倒れた理由は恐らく軽い貧血といったところだろう。
結局彼女は自分の意思を目の前の二人に最後まで伝えるきることはできなかったようだ。
でも……まぁれな子にしては頑張った方だと俺は思う。
れな子がなかなか動かない。
正確には意識は目覚めているのだが、先ほどまで貧血で倒れた影響もあってか俺の肩に頭を預けながらボーっと虚空を見つめているのだ。
「れなちゃんの様子どう?」
「んー、まだ気が抜けてるっぽい。」
自分で断ろうとした分相当MPを使ったのだろう。やはり俺が断った方が良かったかな?
俺が買ったポカリを呆然としながら飲むれな子を見ながらそんなことを考える。
ちなみに清水や藤村はもうここにはいない。二人には悪いが、正直いてもれな子のストレスにしかならないため先に帰ってもらった。まぁ、今回の埋め合わせはまた個人的にすると伝えてあるし大丈夫だろう。
「ごめんね、多分れなちゃんって初対面の人苦手なんだよね、特に男の人とか。私が断れば良かったよね。」
「いや、紫陽花さんは悪くないよ。こいつがちょっとコミュ……イタッ、お前喋らないくせに人の腕つねってくるのやめろって。」
意識あるんならしゃべってもらっていいですかね?
それとも反射!?何となく自分の悪口言ってる気がしたからなんとなくつねってきた!?
「でも紫陽花さんこそ良かったの?俺個人としては俺たちと別れてあの二人と一緒に行っても全然構わなかったんだけど。」
「そんなことしないよ。だって私は今日二人と遊びに来たんだもん。二人を置いていってつまんない気持ちにさせちゃったらダメでしょ?」
天使か?
やっぱり紫陽花さんは優しい。正直こんな良い子と友達になれたのは俺の人生の中でも五本の指に入る強運だろう。流石ヒロイン!性格も顔もいいとか完璧だろ!
「それにしても碧くんはれなちゃんのこといつも気遣ってるよね。今日だってれなちゃんが二人のお誘いを断ろうとした時、先に断ろうとしてたでしょ。」
「え?紫陽花さん気づいてたの!?」
「うん、碧くんが何かを言おうとしてれなちゃんが止めてるのが見えたからもしかしてって思ったけど、やっぱりそうだったんだ。」
うっ、鎌をかけられたみたいだ。まぁ別に特段隠しておくべきことでもないからバレても別段構わないのだが。
「次からはそういうことちゃんと説明してね。そういう事情ならちゃんと断るから。」
「はは、善処するよ。」
紫陽花さんの言葉に俺は苦笑いしながらそう答える。すると、紫陽花さんは俺の片手を自分の両手で握る。
「お願いね。」
俺の方をじっと見つめながらそう言葉を口にする紫陽花さん。
正直、距離が近い。至近距離で紫陽花さんの可愛い顔が見えていることで思考は今現在全くまとまっていない。ただ心臓が高速で動いていることしか分からない。
「は、はい。」
まとまらない思考の中、ただただ肯定をつぶやく俺。
彼女はそんな気の抜けた俺の返答を聞くと、そっと俺の手から自分の手を離しいつも通りの溢れんばかりの笑顔を浮かべて口を開いた。
「ふふふ、あのね弟たちにお説教するときもこうやると、恥ずかしがってちゃんと素直にいうこと聞いてくれるんだ、お姉ちゃんの智慧。碧くんにも効いて良かった。」
笑いながらそんなことを言う紫陽花さん。
その話を聞いて俺は紫陽花さんの弟に生まれなくて良かったと心底思う。だって、こんなのをお説教の度やられるとか俺が弟だったら絶対にメンタルが持たない。
「反則だって、火力高すぎる。」
俺は顔を伏せるとあまりの羞恥からそんな言葉を吐き捨てる。
赤い顔を隠すため顔に手をあてる、顔に血が集まっているのを感じる。
あの瞬間、あの笑顔を見せられたその時、俺は一瞬紫陽花さんの虜になってしまったかもしれない。心臓のドキドキも止まらない。
顔の赤さと心臓のドキドキを誤魔化すかのように俺はポカリと一緒に買ってきた冷たいお茶の蓋を開け、一気に飲み干していくのだった。
空宮碧 我らが主人公。今回は紫陽花さんの可愛さにやられた哀れな被害者。この子、俺のこと好きなんじゃと勘違いしなかっただけ立派なのかもしれない。
甘織れな子 実は途中から紫陽花さんと碧とのやり取りをしっかり聞いていた女 紫陽花さんと別れた後の二人きりでの帰り道はれな子の機嫌がいつもより少し悪かったらしい。
瀬名紫陽花 紫陽花さんに限ってそんなことはないだろうが、マジで無自覚に男の初恋を奪ってそうな気がする美少女。
主人公のことは恋愛的に好きではないが、友達としては好き。 れな子が主人公のことが好きなことには何となく気づいており陰ながら応援している。