いつか百合ハーレムを作る女主人公は男の俺から見ても可愛い 作:豚の神になりたい
「はぁはぁ、忙しすぎて死にそう……。」
ドーナツを揚げる、揚げる、揚げる、揚げ続ける。無心で単調作業をずっと続けた結果、段々と疲れてきた俺はふとそんな弱音を口にする。
「弱音を言っている暇はないわよ。ちゃんと働いて。」
「あのー、俺一応ヘルプで入ってるんですけど。気遣いとかないわけ?」
「はいはい、感謝してるわよ。頑張ってー。」
「棒読みで応援するな。」
弱音をつぶやいた俺を嗜めるように口を出してくる黒髪の少女。彼女の名前は琴紗月(ことさつき)、俺の高校でのクラスメイトでもあり、高校でできた俺の友達の一人でもある。ロングの黒髪、赤い瞳、れな子や真唯、紫陽花さんといった美少女メンツにも負けないレベルの顔面偏差値をしているクール系美少女だ。
そして、今俺が連続でドーナツを揚げる作業をしている状況を作った原因でもある女性でもある。
いやぁ、まさか少し遠出をした際に遥奈ちゃんが『クイーン・ドーナツ』のドーナツ食べたいって言ってたことを思い出して買いに来たらちょうどバイトをしていた紗月さんに出会ったことで何となく仲良くなってバイトのヘルプに呼ばれるような仲になるとは、高校入ったばかりの頃は予想もできなかったぜ、本当に。
それにしてもシフトに入ってたバイトが急用で休みになって人手が足りないっていうからわざわざ少し離れたこの場所にヘルプに来たっていうのに、紗月さん俺に冷たくない?
言っておくけど俺の家からここって4駅くらい離れてるからね。まぁ電車に乗ればすぐに着くんだけど。しかも、今日休日だし。俺朝弱いからもう少し寝ていたかった。なのに頼まれたから来た俺にもう少し感謝してほしい、マジで!
彼女が着ているこの店『クイーンドーナツ』の不思議な国のアリスのような青と白の配色が施された制服はとても可愛らしいのに、着てる本人の顔の表情がまるで可愛らしくない。
触ったら怪我をする薔薇のようだ。
俺にもお客さんに接するような可愛い笑顔を向けてほしいものだ。
「疲れたんで紗月さん、スマイルひとつください。」
「疲れているのね、流石に休ませた方がいいかしら。」
おっとー、働きすぎて頭がおかしくなったやつみたいな扱いをされてる気がする。失敬な、これは素だ。
「まぁ、あと少しでピークも終わるでしょうし、時間が経てば私とあなたのシフトも終わる。あと少し頑張ることね。」
「はいはい、ちゃんと頑張りますよ。仕事はちゃんとやらなきゃな。」
紗月さんは本当に人使いがあらい。まぁ手伝うと一度言った手前、手抜きはできない。俺がミスをすれば俺を紹介した彼女の信用が落ちる。それは流石に申し訳ない。頑張らなくては。
……あれから、一時間ほど経った。
ヘルプで入った俺は紗月よりも早く上がらせてもらったが、一人で帰るのも忍びないので店の裏口で紗月さんが来るのを待っている状態だ。
「碧くーん、おつかれ〜。」
「お疲れ様です。」
俺よりも少し年上のお姉さんが俺に声をかけてくる。彼女は紗月さんのバイトの先輩であり、ヘルプでバイトに入っている時には俺も何かとお世話になった人でもある。
「今日も疲れたね。最近はピーク時が忙しくて大変だよ、今日は空宮くんがヘルプに入ってくれて助かったよ、ありがとね。」
「いえ、力になれたなら良かったです。」
「空宮くんってこれでヘルプに入ったのって何回目だっけ」
「一応まだ三回目ですね。」
「三回目!まだ三回しかヘルプ入ってないんだ。私たちと比べても遜色ない仕事ができるからもっと入ってると思ってたよ。」
そんなに少なかったんだねー、と笑いながら呟く先輩。
そりゃあ、できて当然だ。これでも前世はドーナツ屋でアルバイトしていたんだから。どこぞのミス◯ードーナツでアルバイトしていたが仕事の勝手はあっちとあまり変わらなくて安心した。
「それよりも前から聞きたいと思ってたんだけどぉ〜、琴ちゃんと空宮くんって一体どういう関係なのぉ?」
「え、ただの友達ですけど。」
「えー、恋人とかじゃないのぉ!?その割には二人とも結構仲が良さそうに見えるけど?」
「違いますよ!仲は確かにいいですけど!あくまで!!友達なんで!!」
「そうなんだ、つまないの。」
つまんないじゃないっすよ。俺とあいつが恋人同士とか冗談でもあいつが近くにいるこんなところでいうのはやめてほしい。もし、聞かれたらどうするつもりなんだか。機嫌が悪くなって俺に八つ当たり気味に暴言をぶつけてくるに決まってる!!
「待たせたわね、空宮……って先輩と何を話してるの?」
「琴ちゃんはいつも仕事を完璧にこなしてて凄いよねって話をしてたんだ。」
「……あ、はい、その通りです。」
「…………。」
本当に?という冷たい目で俺を見てくる紗月さん。いつも通りの鋭い目つきに少し怯んでしまうが、多分大丈夫だ。さっきまでの会話は聞かれてないはず。聞かれてるとしたら紗月さんがもっとキレててもおかしくないからな。
「まぁ、いいわ。行きましょう。」
「はいはい。」
その後近くにいた先輩にお疲れ様の挨拶をふると、俺と紗月さんは二人揃って歩き出す。
「今日は悪かったわね。最近忙しいのに来てもらって。」
お、珍しい。労ってくれとは思ったが、普通にお礼を言ってくれると思わなかった。まぁ礼儀知らずというわけでもないからそこまで意外というわけでもないんだが。
「いや、大丈夫だよ。困った時はお互い様だしな。」
「そう言われても私が頼ってばかりで私があなたに何かを返してることはあまりないと思うのだけれど。」
「そう?そんなことないと思うけど。手伝ってるお礼でドーナツ安く買えるから、俺としてはリターンはそれで十分なんだよな。」
手に持ってるドーナツをかざしながら紗月さんにそう呟く。ヘルプに入った日は『クイーン・ドーナツ』のドーナツを割引料金で買うことができる。あそこのドーナツは普通に美味しいのでそれが定価以下で買える時点でリターンとしては釣り合っていると個人的には思うのだが。(れな子や遥奈ちゃんへのお土産として買うこともできるし。)
「で、紗月はこれからどうするんだ?家に帰るのか?」
「いや、図書館に行って勉強するつもりよ。次の期末テスト、あいつにもあなたにも負けるつもりないから。」
「おいおい、勉強するのは立派だけど。少しは息抜きしないと辛いぞ。昨日も放課後図書館行ってただろ。」
「私の勝手でしょ。あなたとは意気込みが違うのよ。」
胸を張りながら意気込むように力強く呟く紗月。
今日は休日だぞ。せっかく朝イチから入ったおかげで2時くらいに上がらせてもらって、昼は自由に使える時間があるんだから少しは息抜きすればいいのに。余計なお世話だと分かってはいるが……。
どうにか紗月さんに息抜きさせる方法はないものか……。
「んー、なら今日のヘルプの埋め合わせで俺が行きたい場所についてきてもらっていいかな?一時間だけしか時間とらせないからさ。」
「別に一時間とか時間制限なんてなくてもいいわよ。空宮にはバイト関係で助けてもらってるし。1日くらいならあなたの誘いにだって付き合うわ。」
お、正直自分から誘っておいて何だが、ダメ元だったのに付き合ってくれるのか。
流石紗月さんだぜ。目つきが鋭いだけで性格はとても優しい。
「じゃあ、あそこ行こうぜ、紗月さん。」
「は、あそこってどこに行くつもり?」
「着けばわかるよ。」
よし、許可は取れたから後は善は急げだ。
目的の場所へ向かうとしよう。
◯◯◯◯
「あそこって……、ゲームセンターのことだったのね。」
「こん詰めすぎても体に悪いしな。今日は遊ぼうぜ。」
呆れたような声を出す紗月さんにそんな言葉をかける俺。
それにしてもゲームセンターに来るのは俺も久しぶりだ。
外でみた建物よりもどこか広く感じる店内は天井からのネオンの光に包まれており、クレーンゲームのアームの音や音ゲーの音楽、ゲームをプレイして遊ぶ人たちの喧騒が騒がしく響き渡っている。
「やってみたいゲームとかあるか?」
「いいえ、特にはないわ……。あなたの方がここには詳しいようだし、プランはあなたに任せるわ。」
「オッケー、じゃあ色々回ってみるとするか。」
というわけでゲームセンター内を歩き回ることになった俺は紗月さんと歩いている途中で昔れな子とよくプレイしていたゾンビを二人で撃ち殺すシューティングゲームを見つけることになった。
「おっ、このゲーム久しぶり見たな。紗月さん、これ遊んでみないか?ちょうど二人プレイのゲームだし。」
「別に構わないけれど女子を誘って最初にやるゲームがこれ?」
「え?ダメか?俺の友達の女子なら喜んで一緒にプレイするんだが。」
「……その子、少し変わってるんじゃない?」
言われてるぞ、れな子くん。
確かにゾンビをバカスカ撃ち倒すのが好きな女子高生は変わっているといえば変わっていると思うが、でも俺はそんなれな子くんの趣味嫌いじゃないぜ。
「まぁ、やってみようぜ。意外と面白いから紗月さんも楽しめるさ。」
「言っておくけど、私操作方法とかまるで分からないら足引っ張っても知らないわよ。」
「大丈夫だって、フォローくらいするから。」
こちとらこういうゲームを何年プレイしてると思ってるんだ。いつもれな子に「碧ってゲームが好きな割には下手だよねぇ」、と言われてる俺だが初心者のフォローくらいはできる。
数分後……………、
「ああやばい!やばい!左から来てる!フォロー頼む!」
「あんなに自信満々で任せろって言ってたのに、こっちにフォロー求めてるんじゃないわよ!」
バッキャロー!しょうがないだろ!もう近くまでゾンビ来てるんだから!触れられたらGAMEOVERなんですよ!
「あっ……。」
「……。」
あ、しまった。完全に俺のミスでGAMEOVERになってしまった。紗月さんが何かいいたげそうな顔をしながらこちらをみてくる。
うう、目線が痛い。フォローするって言ったのにフォローを求めたことは流石に俺も気にしてるんだ。気まずい。
「あなたって……。」
「…………。」
「……ゲーム下手なのね。」
「……そうだよ!」
好きなのにゲームド下手なのが俺だよ!いつもはれな子にキャリーしてもらってます!!
そして、それからは紗月さんといろんなゲームをプレイした。レースゲームをプレイしてはじめてプレイした紗月さんに順位で負けたり、どこぞの太◯の達人のような音ゲーを楽しんだり、少しメダルゲームにも手を出して遊んだりした。
俺はゲームの腕はないが、運はいいのでこういうメダルゲームはめちゃくちゃ得意だ。逆に紗月さんはこういうゲームは苦手で今日は調子も良くなかったようでこのゲームをプレイ中は少し機嫌を悪くして気もするが、そこはまぁご愛嬌ということで。
その後いろんなゲームを一通り楽しんで当初の目的だった息抜きも済んだので、もうそろそろ帰ろうという話になったので店を出ようとしたその時。
突如、紗月さんがとあるクレーンゲームの前でふと足を止めた。
「紗月さん、どうかした?」
「いや、何でもないわ。」
そう言って足を止めたその場から立ち去ろうとする紗月さん。
紗月さんが足元を止めたクレーンゲームの景品を見るとそこには可愛らしいぬいぐるみがあった。
あれは何だろう?どこかでみたことあるような。
ああ、そうだ。前世でいうところのハ◯ーキ◯ィーやち◯かわのようなこの世界における世界的に人気なマスコットキャラだったはずだ。
紗月さん、ぬいぐるみが好きなんだろうか?いや、好きというよりは思ったよりも可愛らしかったから反射的に足を止めてしまった感じかな?可愛いところあるじゃないか、全く。
「俺が取ろうか?」
「いいわよ、ちょっと目に止まっただもの。気にしなくていいわ。」
「オッケー、任せろ。」
「聞いてないわね。」
百円を入れて適当にレバーを動かす。アームの動きを見る必要はない。勘でやればいい。
「ちょっと流石に適当にやりすぎじゃ………。」
「大丈夫。」
確かに俺はゲームの腕はそこまでじゃない。でもさっきのメダルゲームで分かったと思うけど運はいいんだ。
つまり何がいいたいかというと……。
「えっ……。」
紗月さんが驚いたような声をあげる。
それも当然だ。俺が適当に動かしたアームはしっかりと景品を掴み、獲得口へ景品をしっかりと落としたのだから。
俺はクレーンゲームを勘でやった場合に限り、少ない試行回数で大抵の商品を手に入れることができる。昔はこの長所を存分に生かして近所のゲーセンのクレーンゲームの景品を乱獲し、ゲームセンター出禁を言い渡されたものだ、懐かしい。
最近ではあんまりやらなくなったけど。正直勘で景品当てるの楽しくないし。今でもたまにしかやらない。
「はい。」
「ちょ、ちょっと。いらないわよ。」
ぬいぐるみを受け取ろうとしない紗月さんに強引にぬいぐるみを押し付ける。
「大丈夫、大丈夫。百円しか使ってないし。貸しっていうほどのものでもないよ。」
「そういう問題じゃ…………はぁ…………。」
俺の言葉を聞いて深くため息を吐く紗月さん。
どうしたんだろうか?
「あなたも王塚真唯みたいに大概自分勝手よね。」
「失礼な。俺だってあそこまでではないぞ!」
「私からしたらどっちも同じよ。」
紗月さん!言っていいことと悪いことがあるぜ。あの数十万かかる会員費をぽっと払うあの人と俺が一緒だと。その冗談は流石に笑えない。
不服の意を示してみるが、紗月さんはそんな俺の不満を一瞥しただけで無視する。悲しい。
「今日はどう?リラックスできたか?」
「むしろ、あなたに連れまわされて疲れたわよ。でもそうね、……楽しくはあったかも。」
「それは良かった。」
少し付き合いが短ければ絶対に気づかない程度に口角を上げてそう呟く紗月さん。俺の気のせいかもしれないが紗月さんの顔はここにくる前より少し明るく見える。いいリフレッシュになったんなら良かった。
「でも、そのせいで今日は全然勉強できなかったわ。夜は念入りにやらないと。」
「……。」
紗月さんはブレない。
その日の夜、同級生への勉強への意識の高さに危機感を抱き、夜遅くまで自宅で電気をつけながら勉強する男子高校生の姿があったらしいが、それはまた別のお話。
空宮碧 クレーンゲームで景品を乱獲していたのは中学生の時 ぬいぐるみがお気に入りで特に色々取りまくったため、実は彼の家の自室には山盛りのぬいぐるみが置かれている。
琴紗月 バイトをしているところを碧に見つかっだことをきっかけよく話すようになった。一緒に図書館で勉強することも多く、認めたくないことだが碧と一緒に勉強するようになってから自身の成績が少しだけ上がったことに最近気づいた。今では気のおけない友人として碧のことを見ており、仲も高校でできた友達の中ではトップクラスにいい。
碧との親密度ではほぼ確実に王塚真唯に勝っている女。