眠りから覚めるように、俺の目の前が突然開けた。
煌々と光る何かが外で舞っているのが見える……外?
寝ぼけた頭で立ち上がろうと足を伸ばすと、天井にぶつかった。どうやら、自分は何かの中に居るらしい。
頭を擦りながら元の姿勢に戻る。扉?から入る微かな光になかが照らされる。なにやら、機械的な椅子とボタンが着いた肘掛がある。
見た目は座り心地が悪そうだが、自分の体からボキボキと音がしない辺り見かけによらないのだろう。背面や座る部分を触ってみると、意外や意外、かなり触り心地が良いクッションになっている。肘掛も同様に腕を置く場所はクッションとなっており、高さも丁度良い。高すぎて肩が凝る事も、低すぎて腰が痛くなる事もない丁度良い高さ。オーダーメイドの椅子に座っているような心地良さだ、オーダーメイドの椅子なんて座った事はないが。
此処に居るのも良いが、そろそろ外に出ないと周りの奴らに襲われそうだ。
まだ座りたいと嘆く体にムチを打ち、頭をぶつけない様に外に出る。
コクピット内の暗さに慣れていた俺は急激な光量の増加に一瞬目が眩む。1秒もしないうちに回復した俺は見る、きっと、この光景を忘れることは無いだろう。そう確信するほどの暴力的なまでの自然が目の前に広がっていた。
「何処ここ!」
ついでに叫んだ。
「なんやここ……月2つもあるし地球ではないか。なんで、地球じゃないんだよ。原作のある世界って言うから地球に転生するもんだと……いや待てよ、転生するんだったら赤ん坊からじゃね。」
違和感が頭の中を支配する、急な情報に頭は理解するが心がついていけていない。前世でも経験した事がある嫌な感覚に陥りかけるが、寸前のところで思考を止める。
「……一先ず他にも人が居ないか確認しよう。」
俺はコクピットの隣に落ちていた金属の棒を手に取りタイタンソードへと変形させる。劇中と同じように変形するその姿は、特典が正常に機能していること示していた。
胸に溢れる安心感をよそに、自分以外のコクピットもとい何かが無いか確認する。
偶然、コクピットから出たすぐ先に獣道があり、それ沿って歩いて行く。本来ならば獣道を歩く事は動物と鉢合わせる事があるので推奨されないが、今の自分なら動物程度何とかなる自信があった。
そのまま、獣道を10分ほど進むが何も無い。地球では見られないような巨体な虫や、羊に似た生物を見はしたが目的とする物とは出会うことはできなかった。
たが、少し収穫はあった。
獣道を歩いている間 視線の主を何度か見つけることができたが、すぐに隠れてしまい正体までは掴めなかった。ここの生物は、本能的に俺の力を感じ取っているのかもしれない。
少しの収穫のみで失った体力の方が多い結果となったが、まだ諦めるには早い。コクピットに発信機なり、発煙筒なりが有ればこの状況を脱する事が出来るかもしれない。
善は急げと脚を早め、最初の場所に帰ってくると、そこにあったのはコクピットの残骸であった。
隣には、犯人と思わしきデカイ猿が1匹と半分くらいの大きさの猿が4匹ほど居た。壊れる音が聞こえていないから、力で壊したのでは無く、構造を少なくとも理解して壊したのだろう。
つまり、この猿達は似た様な物体を壊した事がある、もしくは壊す所を見たことがあるのだろう。
か細くすぐに消えてしまいそうな希望をこの猿のおかげで見つける事ができた。さっきの10分ほどの探索よりも大きい発見だ、ホッと少し安心したが
「お前達を許す理由にはならんよな」
ふつふつと怒りが湧いてくる、今すぐあの猿共を殺したい。
だが、あの猿達を殺すには些かタイタンソードで心許無い。故に変形させるのは灼熱の剣ーーフレイムセイバー 体ごと変身させていない為に温度は7000℃には行かないが、猿を焼き殺す程度はある。
ボス猿含め猿達は5匹 ボス猿との距離は15m 一撃で倒してもそこから雑魚猿を倒す為に2、3m移動しないといけない。効率的に倒すためには、右腕に近い猿から殺していくのが最適。
殺し方は決めた、後は命を奪う覚悟だけ。
右手で掴んでいるフレイムセイバーが今か今かと俺にに熱を送ってくる、まるで堪えの効かない犬のようで少し笑が零れる。
隙を見逃さぬ様に猿共を見つめる、不意にボス猿が地面を見る。何か虫かなんかを見つけたのだろう、頭を下げてより注視しようとする。それが俺には介錯の時の俯きに見えた。
ドスン
ボス猿の頭は重く鈍い音が響く。
切り口は赤熱化しており、辺りには焼けた肉の匂いが漂う。初めての殺生に鼓動が早まる。興奮した脳は高揚感を生み出しながら次のタスクへと体を動かす。
音に気づいた周りの猿達を一足に近づいて殺していく、ボス猿の様に頭を落とす個体も居れば、竹のように真っ直ぐに斬られてる個体もいる。
この時の事はあまり覚えていない、興奮しきった体は脳の司令を受け取る前に、反射的に猿を殺していた。
我に返った時には既に辺りは血の海であった。
コクピットは分解されており、復旧はその手の知識が無いと不可能だろう。心が沈むのが分かる。たが、次の瞬間にはもう次の策を考えていた。
異常なまでの気持ちの切り替え、本人が自覚するほどの切り替えの早さ、アークルのお陰かオルタリングのお陰か 今は知る術が無い。
俺はおへそ辺りを触りながら口に出す。
「俺が思う以上にアークルの神経は伸びているのかもしれない」
口に出した事でより鮮明になった違和感、この星に着陸した事 おそらく記憶喪失な事 アークルの神経が脳にまで届いている事 内に秘めるアギトの力が膨大な事 そして、コクピットに乗っていたこと。
アークルやアギトの力は神様のサービスと考えられるが……
やはり、失った記憶が鍵になるのだろう。
「この星に俺以外の地球人が居ると良いが」
葬られたコクピットと猿達の死骸を背に、俺は獣道を歩いて行く。未だ視線は途切れない。
20分ほど歩いて崖に着く、この頃には既に視線を寄越す者も居なくなっていた。
崖は開けており、霧のせいで遠くを見通すことはできないがある程度大きい構造物を判別する事はできた。
「何だ…アレ。宇宙世紀なのか?それにしてもデカすぎるし…」
夜の暗さと濃霧によって細部は分からないが一際大きい人工物がそこにはあった。
「明らかな人口物、遠くてイマイチ分からないが俺が乗っていたコクピットと同じ様な技術で構成されている気がする。……もしかすると俺は彼処にある宇宙船に所属していたパイロット、もしくは構成員だったのかもしれない。たとえ、違くてもデータくらいはあるはず…だ。」
1株の不安を抱えながら俺はデカイ宇宙船を目指して歩き出す。
坂をくだり平坦な道を歩く、夜故に原生生物も寝ているようだ。
「やっぱり別の星なんだなぁ、何もかもがデケェし。」
俺は寝ている原生生物に近づき観察する、前世の地球ではこんなに光沢を宿した生物は居なかったと思う。表面は金属のように月明かりを反射している、かと思えば原生生物の呼吸と共に上下すなど柔軟性も持っている様だ。
「ふむ…いや、こんな所で時間を費やすのは無駄か。」
原生生物を横目に再び歩き出す。
次に歩くのは天然の橋、下は霧で見えないが波の音がするので海や湖なのだろう。気温はそこまでたが、未知の星の海は危険すぎる。落ちないように注意しておこう。
橋の上の原生生物も寝ているお陰で道中の危険は無かったが、時折大きい個体が此方を伺うことはあった。アイツらも俺の力を本能的に察知している様だ。
この現象が良いのか悪いのか分からないが、面倒臭いイベントが減るのは利点だろう。
橋を超えると平原に出る。
目の前に宇宙船らしき大きな人工物がある、近くで見るとより大きく感じる。水色の結晶も近く見ると普通の結晶ではないことが分かる。透明度はあまり高くないがかなり頑丈であり、匂いも無い、人工的に作られた事がわかる。
考えるに、宇宙船が墜落した時に展開する事で衝撃を宇宙船に伝えない、もしくは損傷を抑える目的なのだろう。
「見れば見る程、前世との技術の差に驚くな。より発展した世界の地理なのだろうか。」
宇宙船に沿って歩いて行くと、見るかに入口らしき物が見えた。
入口(仮定)には門番らしきロボットと人間も居る。彼らと同じ言語なら酔いが……
意を決して門番の前に体を晒す。勿論、戦闘の意思がない事を示すために手を上にあげる。
門番達は一瞬 携帯していた武器を構えるが、自分が戦闘の意思が無い事を示していたお陰か直ぐに武器を下ろす。門番達の顔に驚きの感情が現れる、確かに原生生物が跋扈するこんな未知の星に一人でここまでたどり着いたら驚かれるだろう。
「なあ、あれって」
「上に連絡しろ!生存者1人確認 と」
「先輩、どうすれば良いですかね?」
「俺に聞くなよ…俺もわからねぇって。」
「それなら君が話しかけてきたら、俺達男が近づいても警戒されるだろうしな」
「「おぉー」」
「おぉー じゃないですよ!あの人が暴力的な人だったらどうするんですか!私死ぬかもしれないんですよ。」
「大丈夫だって、死んでも白鯨のデータベースを見つけたら生き返れるって」
「「そうそう」」
「もぉ〜!」
なにやら話し合っていたが、決まったようだ。
黒髪の女性が近づいてくる。此方に警戒を抱かせない為に送り出されたのだろう、少し不憫に感じながら近づいてきた女性に話しかける。
「こんばんは」
「Good evening」
えっ