神様に虚飾の権能と+α貰ったから取り敢えず旅する 作:供給が足りない
自分を通りすがりと言った。神秘的な女の子が手を鳴らした瞬間。須賀神社の階段も、目の前にいたはずの男の人の姿さえ、ふっと遠のいた。
落ちるんやない。
引き戻される感覚。
胸の奥に、ずっと空いていた穴が、
今になって急に「ここに来い」と呼び始めた。
——行ってらっしゃい。
私の声やない。
でも、確かに“自分の中”から聞こえた。
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暗闇。次の瞬間、ぱっと光が差す。
朝。古い天井。見慣れた部屋。
「……あれ?」
起き上がろうとして、手を見る。
小さい。
細い。
——自分の手。
懐かしさが、胸いっぱいに広がる。
「……糸守……」
言葉にした瞬間、喉が詰まった。
帰ってきた。
ずっと前に、失ったはずの場所。
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学校。
友達の声。笑い声。どうでもいい雑談。
『あら、今日は自分の名前覚えてるのね』
理由は分からん。顔も思い出せん。でも、胸の奥が、ずっと痛い。
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場面が切り替わる。
ノート。知らない字。でも、分かる。
【今日の三葉は——】
「……なに、これ……」
震える指でページをめくる。そこには、自分の字じゃないのに、自分のことを一番知っとる文章が並んどった。
癖。口調。考え方。
——この人、誰……?
心臓がどくん、と鳴る。見知らぬ身体。でも知ってる身体。見覚えのない部屋。でも、懐かしい。
東京。
夜景。
高いビル。
「……都会……?」
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
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また、切り替わる。
夕暮れ。山の上。カタワレ時。
オレンジ色の光の中で、
目の前に立つ男の子。
「……誰……?」
声が、震える。
でも、分かる。
——この人や。
名前が、どうしても出てこない。
焦る。
時間が、溶けていく。
「名前……!」
必死に呼びかける。でも、思い出せない。
次の瞬間。暗転。
轟音。赤い光。
彗星。
『……やだ……』
足が動かん。
叫び声。
崩れる町。
——たすけて。
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視界が揺れる。
酒の味。土の匂い。冷たい空気。
御神木。
『…なっ!?私、瀧くんになっとる!』
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クレーター。
御神木。
その縁で、出会い言葉を交わした。
『目が覚めても忘れないようにさ。名前、書いとこうぜ』
『うんっ!』
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糸守の朝。入れ替わった日々。笑った顔。怒った声。必死に走る背中。
そして。
——何度も、何度も、探してくれたこと。
涙が、止まらん。理由なんて、もうどうでもいい。
世界がどうなろうと。
時間が、引き裂こうと。
——この人は、私を探してくれた。
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——すべてが、戻った。
糸守の朝。入れ替わった日々。笑った顔。怒った声。必死に走る背中。
視界が、現実に戻る。須賀神社の階段。目の前に立つ、瀧。もう、分かる。
忘れとったわけやない。失くしとっただけや。
「……思い出したん?」
震える声で、そう聞いた。自分でも、笑ってるのか泣いとるのか、分からん。でも。
——ここにおる。やっと、会えた。
私は、一歩踏み出す。この瞬間を、もう二度と失わんために。
「…瀧くん!」
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「……思い出した」
まず、瀧が思わずと言ったように零した。それに続き、三葉が口を開く。
「……思い出したん?」
2人がお互いに一歩踏み出して、抱きしめ合う中。俺、シイは民家の屋根に腰掛けて上から見下ろしていた。
澄んだ青空。少し遠くに見える雲。昨日の雨の水溜り。コンクリートのひび割れから顔を出す雑草。そこから滴る雨雫。雨上がり特有の匂い。少し遠くからエンジンの音が聞こえる。
その全てが、瀧と三葉を引き立てる為だけに存在しているかのように感じる。
抱きしめ合う二人は、しばらく離れなかった。言葉はない。ただ、確かめ合うように、互いの存在を腕の中に留めている。須賀神社の階段に吹く風が、二人の髪を揺らす。その動きさえ、もう物語の一部みたいに見えた。
いやー胸を打つ光景だな。原作では見れなかった光景ってのを、しかも自分自身の手によって創り出したってのがそれをより引き立ててる。この後どうするかは決めてないけど、まぁなるようになるよなと思案しつつ、屋根瓦の冷たさを掌で感じながら、俺は小さく息を吐いた。
「ぁ…なあ、そこで見とるあんた、一体なにもんなんや?瀧くんもそう思うやろ?」
「ああ、そうだな三葉。俺もそう思う。すいません、貴女は一体?神様…でしょうか?」
"そこに居る"と、まるで確かめ合うように抱きしめ合っていた三葉と瀧がそういえばと思い出したかのように、こちらに視線を向けて疑問と困惑をありありと表情に浮かべながら二人は質問をして投げかけて来た。
「ふふ、私は神様ではありませんよ。確かに神様のようなことは出来なくはないですが」
神様に間違えられるとはな。だが確かに記憶を戻すという上位存在のようなことをしてたしな。そう考えるのも無理はないかな。
神様といえばだけど、今どうしているんだろう。次の世界に行く前に、一回神様のところに顔を出すとしますか。改めての感謝も伝えたいしな。
「神様じゃないんですか。俺はてっきり神様かと思いましたよ」
「いやほんまほんま。神様か思うぐらい凄い事できとるやん?なぁなぁ他になんか出来ることとかあるん?」
「そうですね、大体の事は出来ますよ。何かリクエストなどあれば、一つなら叶えてあげましょうか?」
せっかく満を辞して登場したのにこれで、解散〜とかつまらないからな。と俺は優しく微笑む。
「「え?……?!」」
「どうしよ瀧くん!?」
「お、落ち着くんだ三葉。一旦冷静になろう。落ち着いて呼吸をするんだ。はい、ヒッヒッフー」
「それは違うのでは?」
やっぱ面白いなこの二人、これ見てると君の名はのギャグパート結構好きなことを思い出すわ。俺はハッピーエンドだったり幸せな光景が広がっているのが好きだからこういう光景を見ているとつい頬が緩みそうだわ。
そうこうしている間に二人は一旦考えさせてくださいと少しの間相談タイムに入った。どうしようかどうしようかと階段の踊り場で二人は身を寄せてあれはこれはと意見を出し合っている。
数分経ち、二人は頷きこちらを見る。答えが決まったようなので聞いてみる。さてとどんなリクエストかな。
「さて、決まったようですのでお聞かせかださい」
「「俺/私達がまた離れ離れにならないように、ずっと続く結びを作ってほしいです」」
………おお〜鳥肌たったわ。結びを願うって普通思いつかないよね。それに、言語化しにくいけど二人とも結びによって出逢うことが出来たって何処かで察してるみたいだし。欲深な要望が来る事はないと思ってたけどまさかこう来るとはね。
「面白いですね。まさかそのような事を願うとは思っていませんでしたので。いいですよ、叶えてあげましょう」
「本当ですか!ありがとうございます!!」
よーし。どうせならカッコよくやったるか〜。目に見える証的なもんもつけとこうか。無言で世界に干渉するだけってのも面白くないしね。
「では、いきますね。………瀧と三葉が離れ離れになる事はない。二人は見えない結びにより繋がり続ける」
強い風がビュンッと吹き荒れ、瀧達は思わずと行った様子で顔を覆う。ハッと顔を上げると目の前に居たはずの人物は消えていた。周りを見渡してもそこには二人しか残されていない。
──では、お元気で
「…どこに行ったんだ?」
「分からへん。夢…やないしなぁ」
二人は少しの間探してみるが、やはり見つける事は出来なかった。諦めて一旦帰ろうかと階段を降りようとしたその時、三葉が気づいた。
「あれ?瀧くん腕のそれ…」
「え?これ…組紐?それに三葉も…」
「あれ?本当だ。これがあの子に貰った結びってやつなんかな〜。すっごい綺麗やね、これ」
二人の腕には水色と白色が混ざった、神聖さを漂わせて何処か透き通ったような組紐が腕に結ばれていた。
いやー我ながらなかなか良いデザインの物が出来たのではないかと思う。防水防火防腐防塵にしておいたし、ちょっとした怪我の重症化を抑える加護を付けておいたので完璧だね!ちゃんと無くしても戻ってくるようにしてもあるので盗まれる心配も無くす心配もない。
因みに、ずっと俺は姿を認識できないようにして見てました。ベンリ~
大体約十年ぐらいこの世界楽しんだし、そろそろ次の世界行くか。あ、ユキちゃん先生に挨拶してから行こうかな。