神様に虚飾の権能と+α貰ったから取り敢えず旅する 作:供給が足りない
「着きましたね….」
バス停に来た。瀧が三葉を探しに、そしてそんな瀧の付き添いの奥寺先輩と司の3人が立ち寄ったバス停、でもなんだろう確かに感動はある。その筈なのに、映画のような美しさは感じられない
「現実になった弊害ですかね?」
来た時はとても美しい風景だと思ったのに、あの時の感情は興奮のせいだったのだろうか?アニメならここで音楽が入る。感情を導くための旋律が、見る側を安心させてくれる。現実には何もない。ただ虫の声と、遠くで鳴る風の音だけだ。
湖に着く。
ここから見える景色は確かに、あの景色だった。形も、位置も合っているのに。
けれど水面は静かすぎて、覗き込むのが少し怖く感じるな。作品では“美しい象徴”みたいな場所だったんだけどな
そして俺は気づいた。
作品の糸守町は、「見られること」を前提に作られていたのだと。
現実の糸守町は、誰かに見せるための場所じゃない。ただ、そこにあるだけだと。
「なるほど、違和感の正体はこの違いでしたか」
「考えてみれば分かりますね。誰かに見せる為に作られた場所ではなく、だれかが生活をするための場所ですからね」
2次元と現実の"ズレ"に気づいた俺は、そのことを意識しながら次々と映画で見た印象的な場所を巡っていく。映画のような神秘的な雰囲気などなく、アニメのような誰かに見せるためのような、温かい光で包まれたいわけでもない、現実の街灯は白く、照らす範囲も狭い。光が届かない場所は、最初から存在しなかったみたいに闇に沈んでいる。
「一通り記憶にある限りは回りきりましたかね」
回りきり、バス停に戻り、ベンチに腰掛けた俺は考える。
やっぱり、ここは画面で見たような場所じゃない。
だけど、でも同時に思った。画面では見えてなかった"余白"がある。
壁のシミ。地面の細かな凹凸。風の流れ。虫の鳴き声。映画では表現しきれないモノがそこにはある。
「感動はあまりありませんが、落ち着く雰囲気はありますね。まるでわたしもここで生活してきたと錯覚すらしてしまいそうな"日常"を感じます」
一息入れたところで思う。ここは一体いつの糸守町なのか。時系列はどうなっているのか。
スマホでもあったらちょちょいっと確認できるんだけどな。
と考え、権能があるじゃん!と思い立った俺は、権能を使う。
「わたしの手元には購入して、事前設定が終わっている現代の最先端のiPhoneがあり、握られている」
数瞬の間もなくわたしの手にiPhone5sが握られていた。
ふむ、完璧だな。さっさと今がいつなのか確認するか!
え〜っと?2013年9月21日土曜日?………原作始まってね?なんなら結構経ってね?
いや正確な開始日はわかんないけど9月らへんなのは覚えてるぞ?どうしようこんなにすぐ原作に、関わることになるとは思ってなかったな。
「これからどうしましょう?」
これからどうするかを考えようとしたその時。その出会いは訪れた。
「あら?貴女こんな所で何をしているんですか?」
俯いて考えている所に、声をかけられた。驚いた俺はビクッとなり顔を勢いよく上げる。
其処には、友情出演による登場をした雪野先生がいた。