神様に虚飾の権能と+α貰ったから取り敢えず旅する   作:供給が足りない

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唐突な始まり。日常の終わり。

 

■ 9月22日(日)夕方

ユキちゃん先生の家

 

なんとか顔見せも済んだな。あとは、原作までをゆっくり待つだけ。

 

「夕飯はカレーでいい?」

「ええ、いいですよ。ありがとうございます」

 

ユキちゃん先生はあんまり干渉をしてくる人じゃないようだな。

ちょっと寂しいような気もしてくる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーダイジェスト

 

 

■ 9月23日(月)午前

町内

 

役場の簡易手続き、駐在への顔見せ、近所への最低限の説明。

「雪野先生のところで預かっている、記憶の曖昧な子」という扱いが、町の中で静かに共有されていった。

 

流石の田舎ネットワークだな。でも悪意を抱いてる人は居ないようだし、ありがたいな。

 

「こんにちは」

 

「ええ、こんにちは」

 

町民とすれ違うも、珍しい容姿に目を丸くしつつ挨拶はしっかりとしてくれる。俺の前世の所じゃ、こんな経験は出来なかったな。いろんな場所に行き、写真を撮った。

 

 

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■ 9月下旬

 

俺の日常は早くも完成してきていた。

 

・昼は雪野先生が学校に行く。

・俺は家で留守番、簡単な家事を手伝う。

・夕方、散歩がてらに映画では描写しきれていない町を楽しむ。

・そして、権能でできる範囲の確認。

・ロマンである飛行の練習

 

誰かと深く、関わってはいない。しかし俺は「町の風景の一部」になってきているという実感が持てた。いろんな場所に行き、写真を撮った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーダイジェストオワリ

 

 

◾️10月3日(木)

 

今日の俺は趣向を変えて、三葉の家に行っている。もちろん権能で認識されないようにしている。ベンリダナー

 

三葉の家の玄関外の階段下に俺はいた。(…不審者?)

そんな時、四葉と三葉が出てきた。今まで遠目で見たことはあったがこんなに近いのは初めてかもな。

 

「「行ってきまーす」」

 

お、出てきたな。通学中はちらっと見たことあるけど、全部は見たことなかったんだ。…なんか三葉の顔が不自然だな、なんというか決意めいているというか。思い詰めているような顔というか。

 

手押しポンプがある場所を通り過ぎる時、そのセリフが呟かれた。

 

「私、ちょっと東京行ってくる」

「えっ?今から!?なんで!?」

「あー…デートっ!」

「えっ!?おねぇちゃん東京に彼氏おったの!?」

「私のデートやなくて、う〜ん…夜には帰るからっ!」

 

…まじで?このセリフってことは…今日が瀧に会いに行く日かよ!?おいおい唐突だな。でも丁度いい、原作をこの目で見るチャンスだ。着いていくぞ!…ストーカーみたいだな。…写真撮っとくか。

 

 

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三葉は、少し大きめのバッグを抱えて駅のホームに立っていた。視線は前を向いているが、焦点は合っていない。決意と不安が、同じ割合で混ざった表情だった。

 

電車が来る。

少し、古びたエンジン音が、山に反響する。

 

三葉が乗ったすぐ後に、俺も乗る。少し距離を空けて、席についた。気づかれてないか、不安になっちまうな。

 

電車が走り出す。

窓の外で、糸守町が少しずつ遠ざかっていく。

 

田んぼ、民家、山の影。

見慣れたはずの風景が、まるで「戻れないもの」であるかのように、ゆっくり後退していく。

 

三葉は、窓に映る自分の顔を一度だけ見て、すぐに目を逸らした。

 

 

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次々に乗り換えていく。

電車の中、三葉はつり革につかまりながら、路線図を何度も見ていた。慣れない揺れ、知らない人々、聞き慣れないアナウンス。

俺は、その背後に立ち、同じ景色を見ていた。

 

街が変わる。

建物が高くなり、空が細くなり、人の流れが速くなる。

 

東京駅。

巨大な構内。

交差する無数の足音。

 

三葉が立ち止まり、スマートフォンを握りしめる。

表示された名前。

連絡は、つかない。周囲の喧騒が、急に遠くなったように感じられた。

 

俺は、隣でその様子を見ていた。現実でこの風景を見ていると、まるでただのなんでもない一場面のように感じる。駅で、誰かを探すような、連絡を取ろうとしているだけの、一般人。そのように感じる。

 

 

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電車に乗り、街を歩き、バスに乗る。時間が経つほどに、その表情には不安の色が増えていく。

 

空がオレンジに染まり始めた頃。

歩道橋の上でもう一度、三葉は電話をかける。

やはり、連絡はつかない。

 

「大丈夫ですよ。」

 

バッ!と三葉は周りを見渡す。しかし、そこには誰もいない。

 

お、びっくりしてーら。つい喋りかけちまった。ま、適度に存在感を出しとかなきゃな。ふふふ。

 

勘違いだと思ったのか、少しして三葉は歩き出す。瀧くんを見つけるために。

 

東京のどこか、珍しく人が居ない駅で三葉と、そして俺。2人で電車を待つ。まぁ1人みたいなもんだけどな。

電車がやってくる。三葉は電車内に目を向け、その人を探す。そして、とうとうこの時がやってきた。

 

「っあ!」

 

駆け出す三葉。そして追従する俺。

ドアが開く。

 

「すいませんっ」

 

人々の間に、割り込んで中へ、中へと進んでいく。そして、それを見て俺は思っていた。…ここちょっと狭くない?入れる?

 

ここで何を思ったか。俺は空を飛んで電車内の人の頭上をすり抜けるように狭い電車の内側、その天井に張り付いた。…いやキモ。パンドラの容姿でもキモいもんはキモいぞ。笑えねぇ。見えてなくてよかったわ。ほんと。あ、髪の毛長すぎて下にいる人にかかってる。しっかり支えておこう。

 

 

そんな蜘蛛みたいな俺のことより、だ。

とうとう向かい合わせになった2人。頬を染め、三葉は目の前の少年に目を向けた。そして、名前を呼んだ。瀧くん、と。

 

天井に張り付くように飛んでいる奴が、見守る中で。

 

 

 

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