ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン) 作:ジュネープ
「そうだ。リリィ、確かお前もう二十歳だろ?」
「は・・・・はい。そうです」
帰り道、俺はふと、リリィがすでに大人であることに気づいた。
この世界に閉じ込められてからというもの、見た目の年齢が変わらないせいか、年齢感覚が少し鈍っていたのかもしれない。
だが今日は違う。
メンソールタバコの開発に成功した余韻もあって、俺は祝い代わりに、ある品を渡すことにした。
「・・・・葉巻? あ、ありがとうございます」
「これはな、リリィが一度だけ栽培に成功した最高品質の葉を、全部使って作った葉巻だ」
本当は自分で吸いたい。
だが、それを口にするのはやめた。
「よく味わってくれよ?」
《革命家の葉巻》
優れた職人により作られた至高の一本。
世界に変革を望んだ革命家が愛用していた葉巻。
吸引後一時間以下、以下の効果を発動。
・一定時間、全ステータス+10
・HPが20%以下の時、即死攻撃の威力を90%カット
名残惜しさを押し殺し、俺はリリィに葉巻を手渡した。
どうやらマッチの扱いに慣れていないらしく、なかなか火がつかない。
「貸せ」
代わりに俺が火をつける。
葉巻の先が均一に燃えるまで、ゆっくり、じっくりと火を回す。
「ほら、着いた。楽しめ」
「ありがとうございます。では・・・・いただきます」
そう言って、リリィは思い切り煙を吸い込んだ。
瞬間。
「ゴホッ! ゴホゴホッ!!」
激しく咳き込み、葉巻を口から離す。
「ハハハハハハ! 吸い方がなってねぇな」
「初めてなんですよ!」
少しムッとした表情で言い返すリリィに、俺は肩をすくめた。
「まぁ、そのうち慣れる。ただし・・・・」
歩き出しながら、軽く振り返る。
「俺みたいになるんじゃねぇぞ?」
冗談めかしてそう言うと、俺とリリィは街へ向かって歩き出した。
「モンスターちゃんは、どこにおるかな〜♩」
ボウは街から離れたフィールドで、軽い足取りのまま周囲を見渡していた。
「お、モンスターはっけ〜ん♩」
高速歩行のモンスターを視界に捉えた瞬間、
目にも止まらぬ速さで距離を詰める。
モンスターが異変に気づいた時には、すでに遅かった。
ボウの武器・・・・トンファーが喉元を叩き、
反撃する間もなく、二撃目が叩き込まれる。
一瞬のやり取り。
モンスターは、粒子となって消えた。
「・・・・死んだか。次はどこやろなぁ♩」
剣呑な瞳と裏腹に能面のような表情から、一転。
さっきまでとは打って変わって、ヘラヘラとした笑顔を浮かべる。
そのまま、またルンルン気分で歩き出した。
しばらくして。
「・・・・あんたら、ワイになんの用や?」
前後を、ガラの悪いプレイヤーたちに囲まれていた。
普通なら身構える場面だが、ボウは冷静に周囲を観察する。
「今日の獲物はこいつですか、親分?」
「そうらしいな。やっちまえ」
中年の男の声に応じ、周囲のプレイヤーたちが一斉に武器を構える。
「もしかしてあんたら、PKっちゅー連中か?」
返事はない。
「悪いけどな・・・・ワイも、やられる気はあらへんのや」
ひょうひょうとした態度が消える。
ボウの瞳は、先ほどと同じ剣呑な色を宿した。
そして、一言。
「本気でいかせてもらう」
「・・・・何やってるんだ、アイツら」
「デュエル・・・・というわけではなさそうですね」
遠目から状況を確認した俺たちは、不穏な気配を感じ取り、現場へと走り出した。
視認できる距離まで近づいた頃には、
プレイヤーに襲いかかっていた連中の大半は、すでに粒子となって消えている。
残っていたのは二人。
プレイヤーとPKプレイヤー・・・・一対一の構図だった。
「おい。お前ら、こんなところで何をやってる?」
「見てのとーりや。PKプレイヤーを成敗しとるんですわ」
「・・・・なるほどな」
状況は、おおよそ理解できた。
関西風のプレイヤーを囲んで殺そうとしたが、返り討ちに遭った・・・・そんなところだろう。
「さっきお前が倒してた連中は、全員レッドだった。だが、こいつは違う」
俺は倒れている男に視線を向ける。
「こいつはレッドじゃない。殺すな。面倒なことになる」
「確かに・・・・殺したら厄介やな」
そう言い、彼は一度、武器を下ろした。
その時だった。
「なぁ、あんたら・・・・ここは一旦、取引しないか?」
横から、低い声が割り込んできた。
先ほどまでPKをしていた男だ。
焦りの色はない。
むしろ、異様なほど落ち着いている。
「この襲撃にはな、裏がある」
「ヤニーさん・・・・一旦、話だけ聞いてみるのはどうでしょうか?」
リリィの言葉に、俺と関西風のプレイヤーは、ひとまず聞く姿勢を取った。
「それで・・・・アンタの言う黒幕っちゅうのは、誰や?」
「・・・・あぁ。俺たちに依頼してきた奴がいてな」
男は言葉を続ける。
「【ボウって名前のプレイヤーを殺せ】ってな。前金もたんまり積まれてて・・・・断れなかった」
そこまでだった。
男の言葉が途切れた瞬間。
胸元に、二本のナイフが深々と突き刺さった。
「っ・・・・!!」
驚愕に目を見開いたまま、男はその場に崩れ落ちる。
「し・・・・死んだんですか?」
「いや、まだだ」
俺は即座に否定した。
「この程度で死ぬわけがない。恐らく麻痺だ・・・・警戒しろ!」
倒れた男の胸に刺さる二本のナイフ。
どちらも正確に心臓部分を貫いている
(相当な手練れだ)
周囲を警戒する俺、リリィ、ボウの前に、
フードを深く被ったプレイヤーが姿を現した。
「お前・・・・只者じゃないな。誰だ?」
問いかけに、男は答えない。
フードの奥から覗く視線は、ただ一点だけを見つめていた。
「知る・・・・必要は、ない」
それだけを告げると、男は腕を振る。
次の瞬間、どこから取り出したのか、
大量の短剣が宙を舞った。
「避けろ!!!」
俺の叫びに反応し、二人は即座に飛び退いた。
だが・・・・
短剣の軌道は、俺たちではなかった。
倒れている男へと向かう
「しまった!!」
俺の声と、
短剣が次々と突き刺さる音は、ほぼ同時だった。
驚愕に見開かれた男の身体は、
そのまま粒子となり、この世界からログアウトしていく。
「・・・・ショータイムは、終わりだ」
男はそう呟くと、
闇夜に溶け込むように姿を消した。
人死んだしここらでリリィのリカバリー話作らんとなぁ
でもめんどくせぇ。
ってか我ながら見切り発車でストックなんぞ存在しない中
音声入力執筆でようやれるわ