ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン) 作:ジュネープ
悪ふざけが過ぎたかな?
ある昼下がり
俺はリリィから栽培した葉を受け取るため、タフトのカフェで待ち合わせしていた。
「ヤニーはん。ちょっとだけヤニ入れてもええか?」
「好きにしろ。なんでお前もついてきてるんだよ」
「タバコの販売は夕方からやし、フロストミントも夜にならんと咲かへん。暇なんや」
「レベリングなり、他にもやることあるだろ・・・・」
腑抜けた顔で理由を言うボウに、俺は呆れた視線を向けた。
「お待たせしました・・・・待ちましたか?」
そんなやり取りをしていると、リリィが来店し、今日の受け渡し分を差し出してくる。
「確かに受け取った。これはお前の取り分だ」
「ありがとうございます」
「よし、宿に戻るとするか」
そう言って席を立とうとした瞬間。
「ちょい待て!!!!」
用は済んだとばかりに立ち上がる俺とリリィを見て、ボウが思わず声を張り上げた。
「全員揃ったんやし、少し雑談とかせんか?」
「いや、特に話すことは無い」
「・・・・わたしも、特に」
即答する俺たちに、ボウは頭を掻きむしりながら再び席へ戻るよう促した。
「ワイが加入してから、ずっとこんな単調なやり取りばっかやんけ。少し雑談でもして、ギルドメンバー同士の仲を深めようって気は起きんのか?!」
「え・・・・えーっと。私は、話すのが苦手で・・・・だから今までは特に不便に思ったことはなくて・・・・」
リリィの言葉に俺も内心で同意しつつ、ボウの言い分も一理あると感じていた。
「俺も、人と馴れ合うようなことはあまりしなかったからな・・・・だが、悪くない考えかもしれない」
「よし!ほな、それぞれ自己紹介から始めていこか!・・・・・まずはワイからや!」
そう言ってボウは席を立ち、胸を張って宣言した。
「ワイの名前はボウ!。歳は23や。
趣味は酒を飲むこと、女の子とイチャイチャすることや!」
言い切ると満足げに席へ戻り、今度は俺に視線を向けてくる。
「次は俺ってことか・・・・」
俺も席を立つ。
「俺はヤニー。歳は25。趣味はタバコを吸うことだ」
席に座ると同時に、今度はリリィが立ち上がった。
「わ、私の名前はリリィ・・・・です。年齢は20歳で、趣味は・・・・絵を描くことと、お花を育てることです」
「よし。それじゃあ次は、自分を除いた二人に対して、疑問に思ってることを一つ用意して答えていこか!」
「なんでお前が司会してるんだ・・・・」
呆れ気味に言うと、ボウは少しムッとした顔で言い返す。
「だって適任は他におらんやろ?。せやからワイがやるんや!!」
「そうか・・・・とりあえずリーダーの俺からやればいいんだな?」
俺は考え込んだ。
どんな質問をするべきかタバコを作っている時以上に、真剣に。
「じゃあ、最初はリリィに質問だ」
「は、はい」
「お前の趣味はインドア寄りだよな。でも正直、ゲームが好きって印象はなかった。なんでこのゲームを始めようと思ったんだ?」
リリィは一瞬だけ視線を落とし、少し躊躇ってから口を開いた。
「えっと・・・・実は、私の両親が友達のいない私を心配して・・・・それでVRなら友達作りができるかもしれないって買ってくれたんです・・・・」
「へぇ〜。リリィちゃん、めっちゃ両親から愛されとるやん」
「え・・・・と、そうですね・・・・」
「本当に、良いご両親だな」
少し気恥ずかしそうに笑うリリィを一瞥し、俺は次に視線をボウへ向ける。
「次はボウか・・・・・お前の話す関西弁、前から思ってたんだがちょっと変だよな。どこの出身なんだ?」
「ゲームの中で出身地聞くんはマナー違反やで?普通に答えてもおもろないし、当ててみ?」
挑発するような言い方に、俺とリリィは同時に考え込んだ。
「・・・・京都、ですか?」
「残念!。京都ちゃうで〜」
「じゃあ、三重県か?」
「あ〜惜しい!!!」
二人とも不正解だったらしい。
満足した様子のボウが、もったいぶって答えを告げる。
「正解は・・・・東京でした〜」
「関西要素全く無いじゃねーか?!」
「ヤニーさん!キャラが崩れてます!!」
「・・・・っは!!」
思わずツッコミを入れてしまい、俺は慌てて咳払いをした。
「これはな、関西弁っぽいけど関西弁ちゃう・・・・猛虎弁や!!」
「そんな誇らしげに言うもんじゃない」
「猛虎弁・・・・って、なんですか?」
不思議そうに首を傾げるリリィに、俺は即答した。
「リリィは知らなくていい。知ってても何も得しないからな」
「は、はい・・・・」
場の空気が少し和んだところで俺は軽く息を吐く。
「じゃあ次は、リリィの番だな」
そう言って、俺はバトンをリリィに渡した
「えっと・・・・じゃあ、ヤニーさんに質問です」
少し緊張した様子で、リリィがこちらを見る。
「ヤニーさんって、なんでタバコを作ってるんですか?」
「答えは単純だ」
俺は一度言葉を切り、
リリィ、ボウの順に目線を合わせる。
そして、どこまでも澄んだ空を見るような目で、はっきりと言った。
「そこにタバコがあったからだ」
「そうなんやな」
「・・・・はい、ありがとうございます」
「おい、反応が薄すぎないか?」
ツッコミを入れたが、二人はすでに次の質問へと意識を移していた。
「次は・・・・ボウさんですね」
リリィは少し考えてから、恐る恐る口を開く。
「えっと、ボウさんって・・・・なんで猛虎弁?・・・を使うようになったんですか?」
「・・・・・・・・」
その質問を聞いた瞬間、ボウは言葉を失った。
しばらくの沈黙。
やがて、少しだけ視線を逸らしながら答えた。
「・・・・そうやな。ネットの黒歴史から逃避するため・・・・やろうね。細かいことは聞かんといてくれ」
「は、はい・・・・なんだか、すみません」
「ええよ。話せるようになってから話すわ」
そう言って、ボウは話題を切り替える。
「それより次は、ワイの番やな!まずはリリィちゃんから!」
俺の言葉に、リリィはハッとしたように背筋を伸ばした。
「リリィちゃんの好きな花って、何や?」
「えっと・・・白百合、でしょうか」
「ほぉ。それはまたなんでや?」
す
「えっと・・・・花言葉が、純粋とか無垢って意味らしくて・・・・特別な感じがするなぁって」
「そんな意味があったんか」
「はい! 花言葉って面白いんですよ! 特に百合は色によって色々あって・・・・あっ」
話しているうちに熱が入ったのか、リリィはふと我に返り、少し肩をすぼめた。
「すみません・・・・つい」
「ええって、ええって」
ボウは豪快に笑った。
「そういうギャップが、男には堪らんのやで!・・・・さて、次はヤニーはんやな」
その瞬間、ボウの雰囲気が変わった。
飄々とした態度は影を潜め、
その瞳は獲物を見定める狩人のような光を帯びていた。
「アンタ・・・・ほんまは強いやろ?なんで隠してるんや?」
誤魔化すことも考えたが、彼はすでに確信している。
嘘は通じないと判断し、俺は正直に答えることにした。
「ああ。いつも顔を合わせる攻略組の連中よりは、確実に強いだろうな」
「せやのに、攻略には参加せぇへんのか?」
「俺はな・・・・タバコを吸って吸って吸いまくる、堕落した生活が好きなんだよ」
タバコをくわえ、ゆっくりと煙を吐く。
「このゲームだってそのために買っただけだ。攻略組の連中とは、正直ウマが合わない」
「・・・・そーゆーことか」
ボウは小さく頷いた。
「ウマが合わへんってのは、ワイも同じかもしれんな」
場の空気が、少しだけ重くなる。
それを察したのか、ボウは急に明るい声を出し、アイテムボックスを開いた。
「さて!! 次はな、あるホビー系ギルドが販売しとる新作オモチャで遊ぼうや!」
「【茅場危機一髪!】と、カードゲームの【ビーター】やっていくで!!」
「いや、この会いつまで続くんだよ」
俺のツッコミは、虚空へと消えていった。
その日、
YSMのメンバーの距離は、確かに少しだけ縮まった。
茅場危機一髪!
リトルペネントに飲み込まれそうな茅場晶彦を救い出す為、付属の剣をリトルペネントに突き刺していくゲーム。
茅場の救出に成功したらリトルペネントは消え、茅場人形が土下座をしてお礼を言うボイスが流れる。
失敗した場合、情けない声で絶叫するボイスが流れる。
ボイスは茅場晶彦の声真似が得意なプレイヤーにより収録されており、クオリティが高い。
一回プレイしたら遊べなくなる玩具だが、フラストレーションが溜まったプレイヤーから絶大な支持を得てる。
何故か血盟騎士団内では御法度な玩具。
ビーター
プレイヤーカードを組み合わせて役を作り出すゲーム
ベータテスターの役を複数作りビーターの役を作ったプレイヤーが勝利する。
カードのパッケージデザインがどこか見覚えのある黒い剣士が描かれている。