ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン) 作:ジュネープ
ジョニーとザザの理解が浅いからか、特徴がいまいち掴めない
ジョニーはネタになったシーンが強烈すぎて通常の話し方忘れた、ザザはそもそも話す出番が他と比べて少ないから描くのに時間がかかる
森の空気が、わずかに歪んだ。
「2人とも、気づくの早いじゃないですか〜?」
軽薄な声が、闇の奥から響く。
「そんな大所帯で来られたらな。気づかない方がどうかしてる」
俺たちを囲むように、影が一斉に動いた。
木々の間から姿を現したのは、フードを被った複数のラフィン・コフィンの構成員たちだ。
俺は両手に鎌。
ボウはトンファー。
背中合わせに立ち、自然と間合いを取る。
「・・・・こいつら、あの時の奴らだ」
ボウの低い呟きに、別の声が応じる。
「ザザくん。何か知ってるの?」
感情の起伏を感じさせない声。
「トンファーを装備した男を、殺す予定だった。だが、邪魔が入って、殺せなかった」
その言葉を聞いた瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。
「・・・っ。お前、もしかして赤目のザザか?」
「そう、呼ばれてる」
赤目のザザ。
SAO内で十人以上を殺害したプレイヤー。
生き残った者は皆、彼の“赤い眼”を恐れるようになったと言われる、悪名高いPKだ。
「ってことは」
ボウの視線はもう一人に向ける。
「お前はジョニー・ブラックでええか?」
「正解〜♩ 君、冴えてるねぇ」
赤目のザザと並び称される、大量殺戮者。
その二人が、今、目の前にいる。
空気が、明確に変わった。
だが俺は、あえて視線を逸らし、パイプタバコを取り出した。
火をつけ、ゆっくりと吸い込む。
「・・・・へぇ〜?」
ジョニーが、目を細める。
「それ、なにそれ?初めて見るんだけど〜」
「パイプタバコだ。少々値は張るが、長く楽しめる優れもんだ」
その瞬間、彼の表情が変わった。
明確な欲の色。
周囲の構成員に何事かを囁き、彼は構えを取る。
「ってことはさぁ・・・ボスが探してた“タバコ作ってるプレイヤー”って、君たちのこと?」
「ボス?知らんな。ただ、タバコなら全部うちのギルドが作ってる」
一拍。
「・・・・これ、当たりだね♩」
ジョニーの声が弾む。
「早く殺して、奪おう」
その言葉に、構成員たちの気配が一斉に殺気へと変わった。
「ヤニーはん」
ボウが、低く言う。
「これは、本気出さんと、ウチら死ぬで?」
「あぁ。分かってる」
腹の奥に、覚悟を落とす。
「・・・・やるぞ!」
その一言で、ボウの緊張が霧散した。
代わりに灯ったのは、研ぎ澄まされた戦意。
「抵抗、するなら、殺す。抵抗、しなくても、殺す」
「そうだねぇ。パーッとやっちゃおうか!!」
次の瞬間。
ラフィン・コフィンの構成員たちが、一斉に駆け出した。
「来るぞ!」
「せやな・・・・・」
ボウが、獰猛に笑う。
「――ぶち殺してやる」
フィールドに、2人分の雄叫びが響き渡った。
同時刻
聖竜連合本部
執務室
蝋燭の淡い灯りに照らされ、青髪のプレイヤーが一人、机に向かって思案に沈んでいた。
ディアベルだ。
「ヤニーさんたちに、うちから護衛を出すべきだったのかな」
ぽつりと漏れた声は、静まり返った執務室に吸い込まれる。
ラフィン・コフィン討伐に割く戦力。
そして、YSM・・・特にボウとヤニーを守るための護衛戦力。
どちらかを厚くすれば、もう片方が薄くなる。
どちらも中途半端では、どちらの目的も果たせない。
その板挟みに、ディアベルは苛まれていた。
思考が煮詰まったのか、彼は引き出しを開け、一本のタバコを取り出す。
メンソールの《ケンタ》。
火をつけ、一息吸い込む。
数秒後、ゆっくりと煙を吐き出した。
脳に回るニコチンが、わずかな浮遊感をもたらす。
「・・・ボウさんは“パンチングマシーン”って呼ばれてたけど、それも中層での話だ」
独り言にしては、やや大きな声。
だが、この部屋でそれを咎める者はいない。
「今のレベル帯を考えれば・・・見劣りするのは確実だろう」
灰を落とし、視線を伏せる。
「ヤニーさんに至っては、そもそも生産寄りの人だ。二人程度なら何とかなるにしても・・・数で来られたら、さすがに厳しい」
合理的な判断。
指揮官として、間違ってはいない。
だが
そこに、決定的な誤算があった。
ボウは、YSMに身を置いてからも鍛錬を怠っていない。
人目を避け、対人を想定したレベリングを続けている。
ヤニーに至っては、
素の戦闘力が攻略組水準であることも、
未公表のソードスキルを抱えていることも、
ディアベルは知らない。
腕のいい情報屋を雇っていたとしても、掴めない情報。
それが彼の分析を誤らせた。
「ヤニーさんたち、無事でいてくれればいいんだけど」
そう呟いたディアベルの声は、
天井へと昇る煙とともに、静かに消えていった。
彼が想像している以上の【地獄】が、すでに始まっているとも知らずに。
場面はヤニーたちへ戻る。
ディアベルが懸念していた通り、その場には地獄が広がっていた。
もっとも、彼が想像していたものとは、だいぶ趣が違っているようだ。
「ふぅっ!!」
振り抜いた鎌が、目の前のプレイヤーの首を刎ねる。
一瞬の硬直。
次の瞬間、粒子となって消滅。
その隙を好機と見た後方の構成員が、迷いなく突撃してくる。
「死ね!!」
横合いから飛び込んだボウのトンファーが、脇腹を正確に穿つ。
鈍い衝撃音。
吹き飛んだプレイヤーは、空中で粒子へと変わった。
「助かった」
「おう!。あと何人や?」
「・・・・5人ほどだな」
包囲していたラフコフの人数は、15人から5人へ。
それにより、彼らの空気が明らかに変わった。
残った構成員たちは距離を取り、円を広げるように後退した。
「これは、予想外」
赤目のザザが呟く。
「ですねぇ〜?あなた達、躊躇なく殺すんですもん。実力を見誤ってたみたいですねぇ・・・ヤニーさ〜ん?」
ジョニーが愉快そうに笑う。
「ホンマにそうやな」
ボウが軽く肩を回す。
「ここまでとは思わんかったで?ヤニーはん?」
敵と味方、両方の視線を受けながら、俺は小さく笑った。
「こっちはタバコ採取に命かけてるんだ」
両手の鎌を、静かに交差させる。
「簡単に死なないよう鍛えるに決まってるだろ」
空気が張り詰める。
残った五人の足が、わずかに揺らいだ。
「これ以上、数を減らされたら・・明日の作戦、失敗する」
ザザの声。
ジョニーが肩をすくめる。
「ですねぇ〜皆さん、ここは撤退で行きましょうか」
数秒の沈黙。
そして
ラフコフの構成員たちは、次々と森の闇へ溶けていった。
一瞬の静寂。
それでも俺たちは、構えを解かない。
視線だけで周囲を走査する。
「・・・・奴さん、もうおらんみたいや」
ボウが低く囁く。
「ああ」
ようやく息を吐くが、完全には緩めない。
俺たちはそのまま、警戒を保ったまま全速力で走り出した。
背後を振り返ることなく駆け抜ける。
安全圏の街へ。
この夜を最後に、ラフィン・コフィンは狩る側から狩られる側へと変わった。
ディアベルが想定していたものとは、明らかに違っていた。
次回でラフコフ討伐戦が始まるようにしたい。
あと、SAOのラストは投稿までに1週間程度時間が開く予定です。
最後の1話にーーーとか……とかの記号をマシマシに使っていい感じにしたいからね