ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン)   作:ジュネープ

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煙と共に去りぬ

 

そういえば、このタバコには銘柄というものがあるのだろうか。

 

紫煙を吐きながら、俺は何気なくフレーバーテキストを確認した。

 

《低品質な葉巻》

低品質な葉から作られた葉巻。

1時間【幸福】状態になるが、摂取から30分後に【イライラ】状態に陥る。

 

現実のタバコの再現か?

だが「低品質」と書いてある以上、上位の品が存在するはずだ。

 

俺は始まりの街のショップを一通り回った。

だが、どこも置いてあるのは低品質な葉巻ばかり。

 

落胆しながら一服し、今後の行動を考える。

 

「・・・作ればいいじゃないか」

 

思い立ったが吉日。

俺はフィールドへ出た。目的は葉巻の原材料探しだ。

 

確か、葉巻の葉は日当たりのいい場所に生えると言う話を聞いた覚えがある。

森ではなく、まずは草原を探索したが、成果はない。

 

諦めかけたその時、森の縁が目に入った。

 

(もしかしたら・・・)

 

望みを託し、森へ足を踏み入れる。

道中のモンスターを苦労しつつ倒し、ステータスを振り分けながら探索を続ける。

 

そして、ついに見つけた。

 

《葉巻の葉》

 

雑草のような見た目だが、どうやらこれが原材料らしい。

試しにアイテムボックスから紙を取り出し、葉を包み、マッチで火をつけて吸ってみる。

 

「ごほっ、ごほっ!」

 

・・・ダメだ。乾燥させないと話にならないらしい。

 

とりあえず大量に収穫し、街へ戻る。

モンスター討伐で得たコルで宿を取り、備え付けの机に葉を広げた。

 

乾燥方法が分からない。

燃やしたら意味がない。

 

・・・とりあえず、炙ってみるか。

 

何度もマッチを近づけるが、変化はない。

 

諦めずに繰り返し・・・・そしてついに最後の一本に火をつけた瞬間、葉が反応した。

 

《低品質な葉巻の乾燥葉》

 

「・・・・マジか」

 

どうやらそこら辺のシステムは簡略化されているらしい。

 

乾燥葉を紙で包む。

 

《手作りの低品質葉巻》

とても吸えたものではないが、葉巻としての体裁をかろうじて保っている。

 

フレーバーテキストに軽く目を通し火をつけて吸う。

 

「・・・まずっ」

 

とんでもない味だ。

だが、ここで俺は一つの仮説に辿り着いた。

 

SAOには熟練度がある。

生産行為にも適用されるのではないか?

 

俺はすべての葉を取り出し、ひたすら炙り続けた。

 

 

 

二日後。

 

「できた・・・!」

 

机の上に置かれた一本の葉巻。

 

《職人の葉巻》

吸いごたえのある味わい。

疲労軽減、反応速度向上効果。

軽度な依存性あり。

 

ステータス画面には《葉巻スキル》が追加されていた。

乾燥や巻く行為で経験値も加算されている。

 

火をつける。

 

すぅ〜〜〜はぁ。

 

・・・・懐かしい。現実で買っていた、年寄り向けのあの味だ

 

「成功だな」

 

同品質の葉巻を三箱分作り、俺は城壁へ向かった。

景色の良い場所で吸うタバコは、やはり最高だ。

 

三本目を消費した頃、背後から声がした。

 

「隣、いいかな?」

 

声をかけてきたのは若い男だった。

 

「・・・・どうぞ」

 

俺が答えると男は隣に腰掛けた。

 

「剣でもなく、攻略でもなく、タバコ作りとは。君は実に興味深いプレイをしている」

 

 

「・・・・なぜ知っている?」

 

「だって、ずっと見ていたからね」

 

「・・・・・お前、茅場晶彦の仲間か?」

 

男は目を瞬き、微笑む。

 

「いや。私こそが、茅場晶彦だ」

 

「・・・・そうか」

 

「随分と落ち着いているね」

 

「俺は、タバコを吸いたいだけだ」

 

攻略も英雄も興味ない。

うまいタバコに囲まれて生きたいだけだ。

 

そう答えた俺に茅場は楽しそうに笑った。

 

「君はオリジナルスキル取得条件を満たしている。この世界に一つだけのスキル。。タバコを極めた者に与えられる力だ。その条件に達成するのは途方もない時間がかかるだろう。君の1日に吸うタバコの本数を元に取得までにかかる時間は・・・・」

 

そこまで言うと茅場はすこし呆気に取られた顔をした。

 

「・・・・10日もかからないだろうね」

 

「ヤニカスを甘く見ない方がいいぞ」

 

ついジト目になった俺を無視して話を続ける

 

「この世界を、存分に楽しんでくれ」

 

そう言い残し、茅場の姿は光とともに消えた。

 

「・・・・なんだったんだ。この時間は」

 

昼下がりの空に一筋の煙が舞い上がる

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