ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン)   作:ジュネープ

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ラフコフ戦まで行かなかったなぁ
それと……とかーーを使ってみました


準備

「ヤニーはん、それ……ホンマなんか?」

 

「……あぁ。本当だ」

 

 

 

昨晩の襲撃から一夜明けた朝。

 

俺たちはいつも通り、YSMの定例会議に顔を揃えていた。

 

本来なら、各自の作業報告を淡々と済ませ、すぐに持ち場へ戻るだけの時間だ。

だが、今朝だけは違う。

 

空気が、ぴんと張り詰めている。

 

 

 

発端は、俺のもとに届いた一通のメール。

 

差出人は、聖竜連合リーダー・ディアベル。

 

内容は、たった数行だった。

 

 

 

【夕暮れ時、攻略組はラフィン・コフィンの拠点に襲撃を仕掛ける】

 

 

 

酷く簡素な文面にラフコフのアジトのある拠点位置が記されており、その情報は寝ぼけ眼で集まっていたメンバーの脳天を直撃した。

 

 

リリィは、不安を隠せない表情で視線を落とし。

 

ボウは、昨日の一件が尾を引いているのか、珍しく無言のまま腕を組んでいる。

 

オッタルは、何かを思案するように俯き、指先で机を軽く叩いていた。

 

 

 

「今日の討伐が成功すれば、俺たちは元の生活に戻れる」

 

静かに言う。

 

「転売も襲撃も気にせずタバコ開発に集中できる」

 

 

「……なんか、腑に落ちへんのよな」

 

 

話は終わり、会議を締めようとした俺の言葉をボウの低い呟きが止めた。

 

 

「何がだ?」

 

「見落としてはいけない何かを見落としてる気がするんや。なんやろな……気持ち悪い」

 

 

 

その言葉に、オッタルが顔を上げる。

 

 

 

「お主は今、多感な時期だ。単に心が落ち着いておらぬだけではないか?」

 

「……そうやとええんやがな」

 

なおも釈然としない様子のボウ。を置き去りに一旦会議を解散とした。

 

 

 

 

 

「さて……作業に戻るか」

 

一人、作業場に立つ。

深く息を吸い、集中する。

 

葉を選別し、刻み、均一に揃え、紙に敷き詰める。

 

巻いて封をする。

 

切り揃える。

 

その一連の動作を、機械のような精度で繰り返し、常人では到底追いつけない速度でタバコが量産されていく。

 

 

 

タバコ作りはいい。

単純でありながら、奥が深い。葉の配分ひとつで吸い心地は天と地ほど変わる。

 

その差を均一に抑え込むのが、腕の見せ所だ。

 

 

 

 

「……」

 

脳裏に浮かぶのは、昨日の光景。

 

「……何で、あいつらは撤退した?」

 

 

 

勝ち目がなかったから?

 

違う

 

 

赤目のザザとジョニー・ブラックがいる以上、苦戦は必至だった。

増援でアイツらのリーダーが来ていれば、俺も奥の手を切らざるを得なかった。

 

 

(あの撤退は早すぎる)

 

 

「……なんでだ?」

 

 

 

無の境地で作業をする事が多いが、今日だけは思考は昨日へと引き戻される。

 

 

「……っ!」

 

脳裏に、稲妻のような閃きが走った。

 

 

「待て……撤退する時、あいつら何て言った?」

 

 

ジョニー・ブラックの言葉がフラッシュバックされる。

 

 

 

『これ以上、数を減らされたら……明日の作戦、失敗する。』

 

 

 

(明日の作戦……まさか?!)

 

 

今日の夕暮れ時に攻略組がラフィン・コフィンを襲撃する。

 

だが、ラフコフ側が察知していて事前に作戦を立ててたとしたら?

 

 

「……攻略組の情報が漏洩しているのか?」

 

 

俺は即座に立ち上がりギルドメンバーにメッセージを送信した

 

 

【全員、作業中断だ。至急、会議室に集まれ】

 

 

 

 

「あの、ヤニーさん……大丈夫ですか?」

 

「あぁ。大丈夫だ」

 

再招集に応じて駆けつけたメンバーは俺の顔を見た瞬間、わずかにたじろいだ。

 

普段感情を表に出さない俺が、明らかに何かを必死で堪えるような表情で椅子に座っていたからだ。

 

「ヤニーはん……もしかして」

 

「……お前も同じ結論に至ったようだな」

 

短いやり取りだが、ボウはすぐに察したらしい。

 

「吾輩たちにも分かるように説明してくれんか?」

 

二人だけが通じ合っている状況に苛立ったのか、オッタルが低く問いただす。

 

俺は一度目を閉じ、昨夜の出来事、ザザが撤退時に口にした言葉を、順を追って説明した。

 

『これ以上、数を減らされたら……明日の作戦、失敗する』

 

それが意味する最悪の未来が、ラフコフが討伐部隊に対して待ち伏せをするかもしれないという事。

 

全てを話し終えたとき、部屋の空気は重く沈んでいた。

 

リリィは青ざめた顔で俯き、オッタルは拳を握り締める。

 

「なぜ吾輩たちにそれを報告しなかった?!」

 

怒気を含んだ声が響く。

 

「言ったところで起きた事実は変わらないと思っていた……すまん」

 

「“すまん”で済む話ではない!」

 

机を叩く音。

 

「これから死ぬかもしれん者たちに後で土下座して許しを乞うのか?……笑止!今考えるべきは、これからどう動くかじゃ!」

 

「……まったくその通りだ」

 

「それで……どうするんですか?」

 

おずおずと、尋ねたリリィに俺は真っ直ぐ見つめる。

 

「応援に行くに決まってる。待ち伏せされたら下手すりゃ全滅だ」

 

一瞬の沈黙。

 

「さすがやな、リーダー」

 

ボウが口元を歪める。

 

「出るのは俺、ボウ、オッタルの三人だ。リリィは討伐が終わるまで拠点で待機。何かあればすぐ連絡を回せ」

 

「……分かりました。必ず無事で帰ってきてください」

 

 

オッタルが俺に肩を回す。

 

「化け物以外と対峙するのは久しいのぉ。腕が鳴るわい」

 

「これは本気で行かな、ワイらがやられるで」

 

ボウの声は昨夜よりも柔らかなモノだったが、飄々とした態度にどこか緊張感を孕んでいた。

 

 

 

それから俺達は手早く、粛々と装備を整えた。

 

「行くぞ」

 

予想とは裏腹に、三人の戦意は静かに燃えている。

 

そして俺たちは戦場へ向けて、拠点を後にした。




次の話で特殊なタバコを一本出すか。
それと早くGGOにいかせたい
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