ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン) 作:ジュネープ
即席とはいえ、最強格のメンバーで構成されたチーム。道中の敵は、ことごとく瞬殺されていった。
「アスナ!ボウ!行くぞ!!」
「わかった!」
「任せとけ!!」
キリト、アスナ、ボウの三人は、いずれもAGIが突出して高い。
接敵と同時にトップスピードで距離を詰め、敵が武器を振り抜く前に仕留める様は、まるで1つの生き物のような連携だった。
キリトの一閃で怯ませ、
アスナの刺突で吹き飛ばし、
最後はボウの打撃で粉砕する。
その一連の動きはあまりにも速く、俺たちが交戦距離に入る頃には、すでに敵は粒子となって消えている。
そんな光景が、何度も繰り返されていた。
「何度見てもすげぇな。さすがパンチングマシーンだぜ」
クラインの呟きに、俺は歩み寄る。
「……なぁ、ひとつ聞いていいか?」
「ん?」
「なんであいつ、パンチングマシーンなんて呼ばれてるんだ?」
「あー、又聞きだけどな。低層から中層まで、体術1本で戦ってたらしいぞ」
「……なるほどな」
(思った以上に闇が深そうだな。詮索はやめておくか)
そんなことを考えた、その時――
『うわぁぁぁぁぁぁーーー!!』
遠方から絶叫が響いた。
その声が融和派の連中である事は明白だった。
「アスナッ!!」
「うん……!」
最前列にいたキリトとアスナが、互いに視線を交わす。次の瞬間、2人は迷宮の奥へと駆け出していた。
「あ、おい……!クソッ!!」
クラインが呼び止めようとした瞬間。
前後左右に、新たなモンスターがポップして道が断たれてしまった。
「ボウ。あいつらを追え」
「りょーかい!!」
奇跡的に包囲の外側にいたボウに指示を出し、彼らを追従させる。残された俺たちは、その場で迎撃に回るしかなかった。
俺は《革命家の葉巻》を取り出し、口に咥える。
その間にも、クラインは敵の一撃を刀で受け止め、鍔迫り合いに持ち込んでいた。
焦らずゆっくりと煙を吸い込み、肺に溜める。
そして――吐き出す。
「……やるか」
呟きと同時に、地面を蹴った。
《スモーキング・リーパー》を二分割し、両手鎌へと変形させる。
鍔迫り合いをしているモンスターの背後へ滑り込み、そのまま背中を切り裂く。
仰け反ったところを、股関節から斬り上げ、さらに蹴りを叩き込む。
吹き飛んだモンスターは、後方の仲間を巻き込みながら粒子へと変わった。
生まれた隙に俺は声を張り上げる。
「風林火山は後方を抑えろ!リリィ、オッタルは左右を受け持て!」
一拍置いて、続ける。
「――道は、俺が切り開く」
「っは……!了解だ!行くぞテメェら!!」
「「「うぉぉぉ!!!」」」
side クライン
【草刈り鎌でモンスターを狩っているプレイヤーがいる】
そんな噂を初めて耳にした時、変わり者がいるもんだ程度にしか思っていなかった。
この世界――SAOにおいて、武器は基本的に一振りしか装備できない。
ソードスキルの発動条件もそれに依存している以上、武器の選択はそのまま戦闘力に直結する。
だが、例外がある。
草刈り鎌だ。
正確には草刈り鎌を含めた攻撃能力のあるアイテムだが、それは武器カテゴリではなく、あくまでガーデニング用のツールとして扱われている。そのためシステム的な制約を受けず、理論上は複数同時に装備することが可能だ。
極端な話、3本持って某海賊王を目指す少年が出てくる作品の三刀流を再現する事だってできる。
もっとも、そんな真似をする奴はいない。
理由は単純だ。ツール扱いのアイテムは、戦闘用武器と比べて基礎ダメージが大きく劣る。
なによりこの世界の死は現実世界での死を意味する為、実戦で使おうと考えるプレイヤーは皆無だった。
そんなソードスキルを発動することのできないアイテムをわざわざ選ぶ理由がないのである
――ヤニーを除いては。
あいつの戦いを初めて見たのは、ラフコフとの戦闘だった。
ソードスキルに頼らない戦闘で速く、正確に敵を崩す様は、蔑称で呼ばれていた《ヤニカス》を畏怖を持って呼ばれるに値するに充分だった。
「っふ!!」
その声が聞こえると目の前のモンスターが崩れ落ちる。
本来、この世界のモンスター相手に意味を成さないと考えられていた関節技を決め、体勢を利用して他個体の攻撃を誘導。
さらには、チョークスリーパーで首を抑えたモンスターを盾代わりに使い、周囲の攻撃を躊躇させる。
そして、一瞬の隙に締めていた腕を引き抜くと同時に、引き抜いた手に持った鎌が閃く。
頭部が飛んだが、気にすることなく返す刀で蹴りを叩き込み、胴体を吹き飛ばす。巻き込まれたモンスターが体勢を崩し、さらに隙が生まれる。
「……なんなんだ、ありゃ。ゲームのキャラかよ」
俺がようやく1体を斬り伏せる時間でヤニーは複数体を粒子に変えていた。
「オッタルさんよ。あいつの動き、どうなってるんだ」
近くで2体同時に相手取っていた、YMSのメンバーに声をかける。
「吾輩にも理解できん」
即答だった。だが、そう続けて淡々とこう言う。
「気にする必要があるか?」
「……は?」
「この世界において、強さは正義であると同時に命綱だ。理由を求めるのは、戦士の仕事ではない」
「……なるほどな」
完成されたロールプレイだ。
そう思いながらも、俺たちは目の前の敵を全て片付け、キリトとアスナ、そして先行したボウがいる最奥へと駆け出した。
ーーーーーーーー
「おい、どうなってるんだ……?!」
俺たちの中で最初にキリトの元に到着したクラインは目の前の光景に息を呑む
「この場では転移結晶が使えない。俺たちが切り込めば退路を開けるかもしれないが……」
「何とか出来ないのかよ?!」
苦々しげに呟く少年に、彼はそう呟くことしかできなかった。
それほどまでに目の前の光景は悲惨だった。
「……恐らく、重度のニコチン中毒やろうな。正常な判断が出来とらん」
「他人事みたいに言わないでッ!!」
淡々と呟くボウにアスナが噛みつく。このままだと手が出そうと判断した俺は手で制し、前方を見据えた。
「全員――突撃ィ!!」
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
ジョシュアの声だった。
苛立ちと焦燥を孕んだその号令に呼応し、融和派が一斉に突撃する。
「やめろ!!!」
キリトの叫びも、届かない。
ボスモンスターはそんな彼らを一瞥する。
次の瞬間。
口から吐き出されたブレスにより。全体にダメージが走る。怯んだ隙に持っていた武器で前列を薙ぎ払う。
それにとどまらず、振り上げられた剣が、無慈悲に振り下ろされた。
吹き飛ばされる面々。
その一人が、こちら側へと転がってくる。
「……ジョシュア」
驚愕に目を見開いたキリトは、即座に駆け寄ろうとした。
「……キリト、やめとけ」
「ッ……!でも――!!」
腕を掴み、代わりに俺が前に出た。
「……なぜ、こんな真似をした?」
ジョシュアは、途切れ途切れに言葉を絞り出した。
「……すべては……このゲームを……クリアするため……我々が……負けるなど……ありえ……な……」
言葉は、そこで途切れた。
次の瞬間
粒子となって、アバターが四散した。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
別の悲鳴が響く。
全員が視線を向けると、一人のプレイヤーがボスの目前で腰を抜かし、動けずにいた。
「ダメ……ダメよ……!」
ゆっくりと近づくモンスター。握った剣を振り下ろそうとしたその時
「……ダメぇぇぇぇ!!」
アスナが飛び込んだ。
「アスナッ!!」
キリトが追従する。
「……仕方ねぇな」
俺はそう呟くと、後ろの面々に語りかけた。
「耐久力のある奴は前に出ろ。タンク役だ。それ以外は攻撃に全振りしろ――行くぞ」
「おい待て!!」
突撃しようとした俺の肩にクラインの手が伸びる。
「予備戦力がいねぇじゃねぇか!もしもに備えられねぇだろうが!!」
間髪入れずに手首を、ひねり上げる。苦悶に呻く彼を無視して、怒りを堪えてら冷静に語りかける。
「準備不足だ」
低く告げる。
「…………」
「この人数で戦力を小出しにしたら、すり潰されるだけだ」
「……ッ」
突き放すようにクラインと解放すると、両手に《スモーキング・リーパー》を構えた。
その瞬間。
左右に、ボウとオッタル。そして背後には、リリィの陣形が自然と形成された。
「「「…………」」」
前衛の三人が、無言で視線を交わす。
同時に、アイテムボックスへ手を伸ばした。
ボウは《ストライク》
オッタルは《海の戦士の葉巻》
そして俺は《ネイティブ》
それぞれが、それぞれの獲物(タバコ)を咥え、深く吸う。
その瞳はいつもとは違う剣呑な雰囲気を秘めていて――戦う者の目をしていた。
俺らの周りに広がり、そして消えていく。
「……行くぞ」
まさに戦場だった。
俺たちがタバコを吸っている間にも、風林火山はプレイヤーの救助に奔走し、ボスモンスターは辛うじてキリトとアスナのコンビが抑え込んでいた。
「ぐぅ……っ!!」
振り下ろされた一撃の余波で、キリトが吹き飛ばされる。
タンク役を失った瞬間、モンスターは救助中の風林火山、そしてアインクラッド解放隊ごと薙ぎ払った。
「キリトはん。なーんかおかしくないか?」
「お前もそう思うか、ボウ」
動きにキレがない。そう判断した俺たちは、援護のため駆け出した。
その刹那、モンスターの刺突がキリトへと迫る。
ボウがさらに加速し、トンファーでその軌道を正確に逸らした。
「ッ! ボウ?!」
「戦闘中に考え事は感心せーへんなぁ?」
逸らされた攻撃に激昂したモンスターが薙ぎ払いに移ろうとした、その瞬間。
「甘いッ!!!!」
俺は突撃し、両手の武器でその手首を何重にも切り裂いた。
「グォォォォォォォ!!!!!」
怯んだ巨体の前に立ち塞がる。
「ヤニー!!!」
「待たせたな、バカヤロウ」
タバコを口から外し、煙を吐く。
その直後、キリトが全員に指示を飛ばした。
「みんな聞いてくれ!! 10秒……10秒だけ持ち堪えてくれ!!」
返事は一つ。
視線を向けた先では、アスナが無言で動き出していた。
「……あの2人、デキてるかもしれへんなぁ」
「は、はわわ……ホントですか?!」
「……今はそんな場合じゃねぇ。やるぞ!!」
最初に斬りかかったのはクラインだった。
雄叫びと共に脇腹を裂くが、ダメージは浅い。反撃で吹き飛ばされる。
追撃を振るうモンスターの攻撃は、アスナがパリィで弾いた。
「吾輩が此奴の意識を逸らさせる!!」
続いてオッタルの一撃。
重い薙ぎ払いが脇腹を深く抉る。
「グォォォォォォォ!!!」
明確なダメージに、モンスターは膝をついた。
「ワイらの出番やな! 行くでヤニーはん!!」
「なんでお前が仕切るんだよ」
ボウが肉薄し、《クロス・バレット》で目にも止まらぬ連撃を叩き込む。
「スイッチだ」
俺は《キリング・リーパー》を叩き込み、首を断とうとした。しかし、首は繋がったままHPは3割しか減少していない。
モンスターが立ち上がるが、周囲は濃霧のような煙幕に覆われていた。
「……この煙幕、モンスターにも効くんやな」
ボウの呟きを背に、俺は最後の切り札へ視線を向ける。リリィだ。
「ヤニーさん! ボウさん! 下がってください!!」
ヴァルキリーが召喚され、浮遊しながら槍を構える。
「了解した」
「はいよぉ!!」
距離を取ると同時に、ランス突撃と《リリィ・チャージ》が炸裂した。
「よし、いいぞ!!」
「聞こえたな? YMS、距離を取るぞ!!」
煙が晴れ、最初に視認したアスナへ斬撃が向かう。
だがその軌道は、肉薄したキリトによって弾かれた。
「……これは」
「マジかよ」
キリトは二刀流で構えていた。
「スターバースト……ストリーム!!!!!」
16連撃が敵を刻む。
圧倒的な手数と技量で、ボスを追い詰め――撃破した。
「……終わった……のか?」
その瞬間、
【Congratulations!!】
巨大な文字が浮かび上がり、キリトはその場に崩れ落ちた。
「リリィ、ポーションを用意しろ、ボウは護衛。オッタルは周囲警戒」
全員が駆け寄る中、最も早く膝をついたのはアスナだった。
「キリト君……!!」
彼は目を開く。
「俺は……どれくらい気を失ってた?」
「ほんの数秒よ……バカ」
涙を浮かべながら抱きつくアスナ。
キリトは苦笑する。
「締めすぎるとHPなくなるぞ」
そこへクラインが歩み寄る。
「……ジョシュア以外に、10人死んだ」
「……初めてだな、ボス攻略で犠牲が出たのは」
「こんなの、攻略って言えるかよ」
重い沈黙。
「……戦略物資の規制、俺たちが動くべきだったかもしれないな」
「結果論だ」
「せや。使い方は使う側の問題や」
キリトとオッタルがフォローしたが空気が重くなるのを感じた。
そんな中、空気を変えるようにクラインが声を上げる。
「それよりよ、キリト! ヤニー! あのスキルはなんなんだ?!」
「エクストラスキルだ……二刀流」
ざわめきが広がる。
「じゃあヤニーは?」
視線が集まる。
「スモークメイカー。俺もユニークスキルだ。SAOが始まって半年で取った」
さらにどよめきが広がる中、七星を咥え、煙を吐く。
「STR・VIT・DEX+5。それと鎌専用スキルが使える」
「……あの煙幕か」
「そういうことだ」
話を終え、クラインが次の階層を提案する。
だが俺もキリトも首を振った。
キリトはともかく、俺にはある事を決意した
――聖竜連合の問題を解決するために動くと
ヤニーのスキルはキリトよりかは強くないです。ただ素のプレイヤースキルがバケモンなだけです。
あと、お気に入りが100に届きそうなんで以前アンケートでした内容で記念話を書いてみます