ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン) 作:ジュネープ
ラフコフ戦後、攻略組は大きな転機を迎えていた。
2大ギルド聖竜連合のリーダーであったディアベルは、多数の死者を出した責任と後悔から自らその座を降り、後任として副リーダーのリンドが指揮を引き継ぐ。この一連の流れに反対する2つの派閥、排斥派と融和派が生まれた。
融和派を率いていたジョシュアは迷宮攻略中に死亡。同行していたメンバーも多数命を落とし、融和派は事実上壊滅。
さらに、融和派がアインクラッド解放隊と繋がりを持っていた事実が発覚。
排斥派は統率を持たない烏合の衆に過ぎず、時間の経過と共に自然消滅することが予想されていた。
結果として、組織の主導権はリンド率いる保守派に集中する形となる。
だが問題は別にあった。
壊滅した融和派の残党が、ジョシュアの意思を巡って解釈の違いから分裂して、泥沼の内紛となることを看破したヤニーは、迷宮攻略直後の融和派残党をマーテンにあるYSMギルドハウスに招待した――
YSMギルドハウス。
会議室では重苦しい空気が漂っていた。
円形のテーブルを囲むのは、生き残った融和派のメンバーと俺。
彼らは時折こちらに視線を向けては、隣と小声で何かを囁き合っている。
「……あの件からまだ1時間も経っていない中、この場に集まってくれたことに感謝する」
俺が口を開いた瞬間、ざわめきは止み、室内は静まり返った。
「お前たち融和派やその他の派閥に限らず、全プレイヤーが望んでいることについて話そうと思う」
「……【全プレイヤー】って、大きく出たわね」
言葉に食ってかかるように声を上げたのは、一人の女性プレイヤー。
紫の髪をまとめた大和撫子のような風貌で、値踏みするような視線をこちらに向けてくる。
「事実だからな。今から話すのは今、聖竜連合で起きている内紛を終わらせるための話だ」
「それは分かったけど、どうして今なの? 攻略が終わったばかりで、皆疲れ切っているわ。日を改めることだってできるはずよ」
「いや、今すぐやるべきだ」
遮るように言い切る。
一瞬、彼女の表情が険しくなるが、やがて無言で続きを促す姿勢に変わった。
「あの場には、お前たちだけじゃない。キリト、風林火山、そして血盟騎士団のアスナ……攻略組の主力が揃っていた」
「……」
「もし日を空ければ、お前たちの動きは確実に全プレイヤーへ伝わる。そうなれば――経済制裁どころか、それ以上の干渉が起きてもおかしくない」
「っ……それは……」
狼狽する彼女から視線を外し、周囲を見渡す。
全員が同じ理解に至ったのか、場の空気はさらに重く沈んだ。
「一つ聞かせろ。……ディアベルは、どうやってリーダーを辞めた?」
「……幹部にDMを送って、それきりよ」
「各派閥に、聖竜連合の幹部はいるのか?」
「いないわ。排斥派も、私たち融和派も……全員一般メンバーよ」
「――なるほどな」
一度、軽く息を吐く。
「じゃあ決まりだ。ディアベルは幹部だけで話を終わらせたんだ」
場の空気が一瞬止まる。
「お前らには何も降りてきてない。説明も、合意も、意思確認もだ」
「そ、それは……」
「結果、上だけで決まった話を、下は知らされないまま動いてた。だから食い違いが起きて、今回の件に繋がった。くだらねぇすれ違いで人が死んだだけだって事だな」
その言葉に、彼らは明確に動揺した。
「そんな事って……」
「トップダウン型の組織じゃよくある話だ。上の意志が、そのまま末端まで届くとは限らない」
それ以上、言葉は続かなかった。
彼らも理解している。ここから先は、何を言っても言い訳にしかならないと。
「……リンドには俺から連絡しておく。今回の内紛の原因は、単純。話してねぇからこうなったんだ」
それだけ言い切り、俺は席を立った。
Weekly Argo
聖竜連合紛争、ついに終結。
昨晩未明、聖竜連合のギルドマスターであるリンド氏は、同ギルド内で続いていた内部紛争の終結を正式に表明した。
本件は、前任ギルドマスターであるディアベル氏の離脱を契機に発生。方針を巡る対立が表面化し、結果としてギルド内に複数の派閥が形成される事態へと発展していた。これを受け、AUGからは経済制裁が課され、攻略活動にも少なからず影響が出ていたとみられる。
しかしながら、今回の声明において、対立の本質が「上層部と一般メンバー間の認識の乖離」、すなわちコミュニケーション不足に起因するものであったことが明らかとなった。
さらに、同日に発生した第74層攻略戦における死傷者の発生が、事態を大きく動かす契機となった模様だ。これを受け、聖竜連合は全メンバーを対象とした緊急集会を実施。各派閥間での情報共有と意思統一が図られたことで、内部対立は急速に収束へと向かった。
現在、ギルド内は再編に向けた動きを見せており、今後の攻略体制の立て直しが注目される。
⸻
衝撃!二刀流使いとYSMの真の実力!!
聖竜連合およびアインクラッド解放隊による大部隊を壊滅に追い込んだボスモンスター通称「青い悪魔」。これを撃破したのは、二刀流使いキリト氏と、生産ギルドYSMによる連携であった。
特筆すべきは、その戦闘内容である。二刀流による50連撃に加え、YSMによる統制の取れた連携攻撃が重なり、極めて短時間での討伐が実現した。
関係者の証言によれば、キリト氏はユニークスキル《二刀流》を所持。また、YSM所属のヤニー氏は《スモークメイカー》、リリィ氏は《戦乙女》といった、それぞれ異なるユニークスキルを保有していることが確認されている。
とりわけ注目されるのは、YSMの存在だ。本来、生産を主軸とするギルドでありながら、今回の戦闘においては攻略組上位の戦闘能力を発揮。その詳細な戦力、スキル構成は依然不明な点が多いものの、「生産ギルド」という枠組みを大きく逸脱した戦力を有していることは確実視されている。
今後、攻略組における勢力図にどのような影響を与えるのか。引き続き注目が集まる。
「………何だこれ」
驚愕のあまり、口に咥えていたタバコが床に落ちた。
執務室の椅子に深く腰掛け、何気なく開いた新聞に載っていたのは、あまりにも酷い物語だった。 驚かない方がどうかしている。
俺は即座にメンバー全員を招集した。
⸻
「……というわけなんだが」
「何で私のことが載ってるんですか?!」
リリィの声が素早く上がる。
当然の反応だ。
「そこなんだが……俺はあの場で、お前のことは一度も話していないはずだ」
そう言って、最も疑わしい人物に視線を向ける。
「………やったか?」
「………いいえ、やってないです」
「うそこけ。お前、口調が標準語になってるぞ」
俺の指摘に、ボウは分かりやすく視線を逸らした。その額にはじっとりとした汗が滲む。
その瞬間、この場の全員の認識が一致する。
(((こいつだ)))
「い、いや待てや?! 数ヶ月前にナンパした女の子といい感じになりたいから、色々喋るやろ?! ワイだって男や!! それの何があかんねん?!」
「最低ですね」
「男にあるまじき所業じゃな」
「……」
三者三様の反応に完全に追い詰められ、ボウはついに観念したのか、小さくなって謝罪した。
「……まぁいい。どうせ遅かれ早かれバレる話だ」
一度区切り、俺は新しいタバコに火をつける。
「問題はここからだ。今後、直売所や行商で確実に絡まれるようになる」
煙を吐きながら、続ける。
「表に出るのは俺とリリィだ。だが、しばらくは動けない。となると、販売はオッタルに任せるしかない」
「然り。だが、それでは《海賊の葉巻》の生産が滞る。吾輩の作業時間にも限度があるでな」
オッタルの言葉に頷き、全員を見渡す。
「だから提案だ。直売所にアルバイトを入れる」
「アルバイト……ですか?」
「あぁ。心当たりが一人いる――ユナだ」
その名が出た瞬間、場の空気が凍りついた。
脳裏に蘇る【地獄の黙示録】
提案した俺自身ですら、タバコを持つ手がわずかに震える。
「……信用できて、暇そうな奴ってなると……ユナちゃんしかおらんやろな」
「吾輩も……問題……ないと思う」
「私も……問題ないです」
全員が言葉を濁しながらも、最終的には同意した。
こうして、リリィ経由でユナへDMを送り、承諾を得ることで、無事アルバイト要員を確保することに成功した。
⸻
それから数分後。
通常の会議を続けていた最中――
俺の元に、一通のDMが届く。
差出人は、アスナだった。
いつもの文量にやっと戻れました。。やっぱこの程度の量がいっちゃんええな
それはそうと、無駄な思考描写に伴う文章増加を防ぐため、SW的なあらすじを入れたのですが、特に不評ではない限り適度に入れていきます。