ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン)   作:ジュネープ

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やっぱSAOにはヒロイン的な存在って必要ですよね


ネイティブな味わい

 

 

「なぁあんた、HPは大丈夫か?」

 

新しいタバコを取り出し、火をつける。

どうやらフィールド内であれば、目の前にプレイヤーがいても喫煙による警告メッセージは表示されないようだ。

 

「はい、大丈夫です・・・あ、あの。助けてくれてありがとうございます!!」

 

そう言って、彼女は深く頭を下げた。

 

身長はおそらく160センチ台。

体型は普通で、見た目も地味だ。

 

こんな女の子が一人で森を歩いていたとは、正直考えにくい。

 

「なんで一人で森なんか散策してたんだ?」

 

タバコから口を離し、声をかける。

びくっと体を震わせた彼女は、ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「あの・・・・・私、こんな世界になって。何かしないとって思って・・・それで、ガーデニングをやろうかなって。でも、ガーデニングをするために必要な種は森で手に入れないといけないって聞いて・・・・それで、自分を奮い立たせて入ったんです」

 

「なるほどなぁ。ガーデニングかぁ・・・・・・ん?」

 

うなずきながらタバコを吸っているうちに、俺の中で一つの考えが浮かんだ。

 

(待てよ・・・・・もし葉巻の葉を栽培できるなら、毎回フィールドに出なくても済むんじゃないか?)

 

「なぁあんた。植物を育てるのって得意か?」

 

「あ・・・・・はい。現実世界でも、いろんな花を育ててましたから。得意だと・・・・・思います」

 

語尾が小さくなっていく。

どうやら、人付き合いはあまり得意じゃないらしい。

 

「そうか。実はな、頼みたいことがあるんだ」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「その話は宿についてからだ。俺についてきてくれ」

 

「は、はい」

 

彼女は素直にうなずき、とぼとぼと後をついてくる。

 

「そういや、自己紹介がまだだったな。俺の名前はヤニーだ。あんたの名前は?」

 

「わ、私はリリィです」

 

「リリィか。よろしくな」

 

「は、はい。よろしく・・・・・です」

 

俺が泊まっている宿の自室に到着すると、さっそく彼女の目の前でタバコを作る工程を見せた。

 

少し前にアイテムショップで購入したコンロに火をつけ、葉に直接引火しないよう注意しながら炙っていく。

以前はマッチを使っていたが、それだと乾燥した葉になるまで10分ほどかかっていた。

しかしコンロを使えば、その時間は半分程度に短縮される。

 

作業効率が上がったことで、他のプレイヤーに販売できるだけの在庫を確保できるようになった、というわけだ。

 

葉の形状が乾燥した状態へ変化したのを確認し、火を止める。

 

「いいか、リリィ。この乾燥した葉を使えば、最大で一箱分のタバコが作れる。この葉を栽培したいんだが、やってくれないか? 売り上げに応じて、ちゃんと金は出す」

 

「へ・・・・? タバコの、栽培?」

 

「あぁ、そうだ」

 

「ちょうど・・・お金にも困ってましたから・・・・・・やってみます」

 

こうして俺は、すんなりとリリィを仲間に引き入れることに成功した。

 

 

翌日

 

フレンド登録をしたリリィから連絡が入った。

どうやら、すでに栽培に成功したらしい。

 

「よぉ、リリィ。もう栽培に成功したのか?。もう少し時間がかかると思ってたが、ずいぶん早いな」

 

「ちょっとしたコツがあるんです・・・・・」

 

「コツ?」

 

俺の問いかけに、リリィは気恥ずかしそうに視線を逸らしながら答えた。

曰く、雑魚モンスターの骨を砕いて肥料として使ったところ、急速に成長したらしい。

 

「なるほどなぁ。早いのにはちゃんと理由があるわけか。早速、作ってくれた葉を見せてくれないか?」

 

「は、はい。これです」

 

 

《高品質な葉巻の葉》

モンスターの栄養を大量に摂取した葉。

 

 

モンスターの栄養って……つまり骨か?

それにしても、骨で育つことに気づくとは大したもんだ。

 

「よくそんな方法思いついたな」

 

「わ、わたし、クラフト系のゲームが好きで・・・・・その時も、骨を使うと作物が早く育つって分かってたんです」

 

「マジか。お手柄じゃねぇか!」

 

そう言って、俺はリリィの頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

「こ、子供扱いしないでください・・・・私、これでも十八歳なんですよ」

 

「マジか。てっきり、もう少し年下かと思ってたんだが・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

 

気まずくなったので、その場を離れることにした。

 

何はともあれ、収穫の算段は整った。

俺は森へ出かけ、大量の葉を採取してリリィに渡す。

リリィはそこから種を抽出し、栽培を行う。

 

この一連の流れによって、

タバコの葉は以前の倍以上の量を安定して確保できるようになった。

 

一段落ついた俺は、自室に戻り、

最初にリリィが渡してくれた高品質な葉巻の葉をテーブルに広げる。

 

「さて、この葉なら何ができるか」

 

SAOサービス開始以来、何百何千と繰り返してきた動作。

だが、失敗の可能性は常にある。

俺は最大限の注意を払いながら葉を乾燥させ、

慎重に、慎重に、紙で包んでいった。

 

「・・・・・できた」

 

 

《ネイティブ》

他の葉巻よりも長時間の喫煙を可能にした葉。

仄かな酸味の香りとは裏腹に、辛味と甘味のバランスが取れた王道タバコの究極系。

集中力急上昇、反応速度上昇。

全ステータスに一時的に+5。

中程度の依存性あり。

 

 

「・・・・名前的に、なんかアレっぽいな」

 

そんなことを思いながら、早速火をつける。

 

目を閉じると、懐かしい記憶が脳裏に蘇った。

タバコを吸い始めた頃。

見た目が気に入って買った、あのパッケージ。

長く吸える満足感。

 

次々と浮かぶ記憶に、俺は目を見開き、思わず叫んだ。

 

「やっぱアメ◯ピじゃねーかよ!!」

 




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