ヤニカスがVRMMOにログインしました(旧題:ニコチン・オンライン)   作:ジュネープ

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話多めは少しくどくなりますね。
それはさておき書いたので投稿します


メンソールの気配

 

「キリト、話を聞こうじゃないか」

 

キリトを彼らから半ば強引に連れ出し、タフトのこぢんまりとしたカフェに腰を下ろした。

 

どこか息が詰まるような空気。

俺の一声で口を閉ざしていたキリトは、しばらく俯いたまま沈黙し、やがてポツリポツリと語り始めた。

 

攻略組から距離を置いていること。

偶然出会った人たちのチームに入ったこと。

 

一通り話を聞き終え、俺は口に加えていた《ネイティブ》を外し、ため息混じりに煙を吐いた。

 

「なかなか良い青春を送ってるじゃねぇか」

 

「・・・・あんたに何がわかるんだ」

 

「おいおい。俺にだって学生だった時代はあるんだぜ?今のお前くらいの頃なんて、悩みまくってたし、自分の現状について何度も考え込んださ」

 

タバコを吸い、煙を吐く。

 

「当たり前だがな。大人ってのはみんな、お前たちが今経験してるようなことを、何かしら乗り越えて生きてるんだよ」

 

少し説教臭くなったのか、キリトは目の前に置かれたドリンクに口を付けた。

対する俺は、再びタバコを吸い、ゆっくりと煙を吐く。

 

「じゃあ、どうすればいいんだ?」

 

「その答えを見つけるのは、お前自身だ。自分の心に聞いてみろよ」

 

「・・・・わからないんだ。

心に従って行動して、嫌われたらどうしようって思うと、怖いんだっ!!」

 

肩を震わせて叫ぶキリトを見て、俺は思った。

あぁ、こいつはまだ、歳相応の子供なんだな、と。

 

「・・・・なぁ、キリト。お前、タバコを吸ったことあるか?」

 

「?! いきなり何を言うんだ。あるわけないだろ」

 

完全に燃え切った灰を、自作の灰皿に落とす。

VRの世界では意味のない行為だが、どうしても癖でやってしまう。

 

「なかなか良い家庭環境で育ったみたいだな。

世の中にはな、お前より年下でもタバコを吸ってる奴がいる」

 

遠くを見るように語る俺の視線の先にいたのは、キリトではなく、過去の自分だった。

 

「そういう奴らはな、無理やり大人にならざるを得なかったんだ。周りからはいっぱしの大人として扱われる。でも、自分の心の中を覗いてくれる奴なんて、誰一人いない」

 

煙を吐き、目の前に置かれたブラックコーヒーで唇を湿らせる。

 

「本当の自分の心の狭さってもんを、大人になってから思い知らされる」

 

「でもな、ガキの頃に直すべきだったことって、大人になると直す機会そのものを失っちまうんだ」

 

再びタバコを口に加え、キリトと目線を合わせる。

 

「・・・・何が言いたいんだ」

 

俺の視線から逃れるように、キリトはさらに身を縮こませた。

 

「お前が育った環境は、きっとマトモだったんだろうな。だからこそ、無理に大人になる必要もなく、今こうして一人の子供として悩めてる」

 

俺は、真っ直ぐキリトを見た。

 

「だったら、全部伝えちまえよ。アイツらに」

 

その言葉を聞いた瞬間、キリトは勢いよく席を立ち、怒鳴った。

 

「ヤニカスに俺の何がわかるって言うんだ!!

俺はビーターなんだぞ?!周りの奴らは、ただ俺を責め立てるだけだった!!」

 

「そういう奴らは大人とは言わない」

 

静かに、はっきりと言った。

 

「【大人になれてない子供】って言うんだよ」

 

荒い息を吐くキリトとは対照的に、俺の声は落ち着いていた。

その言葉は、しっかりとキリトの耳に届いたようだ。

 

彼は大きく息を吐き、席に座り直す。

 

「大人になりきれてる大人なんて、この世にはほとんどいない。俺だって年齢だけ見りゃお前より年上だが、心の中はガキのままだ」

 

煙を吐き、肩をすくめる。

 

「何か言ってくる奴の言葉なんて、ちゃっちいもんだと思って無視しちまえ」

 

「それができたら、苦労しないよ」

 

ため息混じりに返され、俺は小さく笑った。

 

「お前が入ってる・・・・月夜の黒猫団の連中だって、おそらく今頃、お前と同じで頭の中ぐちゃぐちゃになってるだろうよ」

 

「そういう時はな、心の中に溜まってるもんを、全部アイツらに吐き出せばいい。今、俺に言ったみたいにな」

 

少しの沈黙

 

「なんか・・・・すまん。長話は慣れないな」

 

キリトは苦笑し、席を立つ。

 

「ここで話してても、何も解決しないってことだけは分かったよ。ありがとな、ヤニー」

 

「気にするな。全部ぶつけてこい」

 

店を出ていくキリトの背中を横目に、

俺は目の前に置かれたコーヒーを一口すすり、静かな時間を過ごした。

 

 

翌日。

 

俺はキリトからの連絡を受け、指定された酒場に足を踏み入れた。

ホールを見渡すと、すぐに見知った顔が目に入る。

 

昨日助けた《月夜の黒猫団》のメンバーと、キリトだ。

 

「よう、昨日ぶりだな」

 

片手を軽く上げて挨拶しながら、彼らの席へ向かう。

 

月夜の黒猫団の面々は、どこか気まずそうな空気を纏っていた。

誰もが言葉を探しているようで、視線が宙を泳いでいる。

 

「あ、あのっ! 昨日は助けていただいて、本当にありがとうございます!」

 

少し声を張り上げ、深く頭を下げたのは、このギルドのリーダー、ケイタだった。

 

それに続くように、他のメンバーも次々と頭を下げる。

 

「そんなにかしこまらなくていい。それより・・・タバコの煙は平気か?」

 

一拍置いて、全員が無言で頷いたのを確認する。

 

俺はタバコを取り出し、口に咥えた。

ケイタに促されるまま、空いている席に腰を下ろす。

 

「それで、一体俺に何の用だ? キリト」

 

「昨日の件についてだ・・ここにいる全員に、正直に話したんだ」

 

「そうか・・・・・」

 

俺は一度だけ息を吐いた。

 

「まだ一緒に行動してるってことは、うまく仲直りできたってわけだな。おめでと」

 

飾り気のない祝福の言葉に、少年少女たちは気恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「で、お前らはこれからどうするんだ?」

 

俺の問いに、キリトが答える。

 

「とりあえず、攻略組に戻ることにするよ。心配かけたな」

 

「その言葉は、俺じゃなくて攻略組の連中に言ってやれ」

 

「はは・・・・確かに」

 

場の空気が、ふっと緩むのを感じた。

 

俺は続いて、ケイタへと視線を向ける。

 

少し緊張した様子で、彼は口を開いた。

 

「俺たちは・・・・自分たちのペースで、ゆっくりでもいいから前に進もうと思います。無理はしないで」

 

「まぁ、なんだ」

 

タバコを一口吸い、煙を吐く。

 

「お前らくらいの年齢だと、色々こじれやすいからな。早いうちにぶつかって、話ができたのは良かったと思うぞ」

 

そう言って、タバコの補充にもう一本取り出し、火をつける。

 

「・・・なぁ、ヤニー。一つ相談があるんだが」

 

「なんだ?」

 

「お前も、攻略組に参加する気はないか?

昨日の動きを見た限り、十分通用するレベルだと思うんだが」

 

「悪いな。本格的に参加する理由が、今の俺にはない」

 

「・・・・どういう意味だ?」

 

少しだけ間を置いて、俺は答えた。

 

「まぁ・・・・このゲームをクリアした時にでも話してやるよ」

 

それ以上は言わず、俺は席を立った。

 

口が裂けても言えるわけがない。

自分の肺にこびりついたタールを洗い流すためだけに、

 

俺が参加しない事で攻略スピードを、ほんの少しでも鈍らせようとしている

 

そんな浅はかな考えを。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの!」

 

酒場の出口付近で呼び止められ、俺は足を止めて振り向いた。

 

声の主は、月夜の黒猫団の紅一点

サチだった。

 

「みんなで、どんなお礼がいいか考えてたんです。でも・・・あなたに見合うだけのお金もなくて、、、」

 

言葉尻がしぼみ、サチは少しうつむき加減にもじもじと視線を泳がせる。

 

「別に、もらえるもんだったら何でもいいぞ。で、何を渡したいんだ?」

 

そう言うと、サチは無言のままアイテムを差し出してきた。

 

《フロストミントの葉》

満月の夜にしか咲かない花から採取できる葉。

使用すると一定時間、氷属性の状態異常耐性を付与する。

 

「・・・・・これは、初めて見る素材だな。どこで手に入れた?」

 

「月夜の黒猫団を結成した日に採取したんです。満月の夜にしか咲かない《フローズンフラワー》から取れる葉で・・・・この階層のフィールド一面に、その花が咲くんです」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが繋がった。

 

「っ!・・・・もしかして」

 

「え?! ヤニーさん?! どこに行くんですか?!」

 

背後からの呼び止める声を無視し、俺は踵を返した。

 

一目散に、宿へ向かって走り出す。

 

もしかしたら

いや、きっと。

 

【この葉を使えば、メンソールを作れる】

 

胸に小さな、だが確かな希望を抱えながら、俺は夜の街を駆け抜けた。




完全蛇足ですが、この作品、ほぼ音声入力で書いてるんですよね。
ここ数年スマホのサイズが適正じゃないからか、フリック入力が誤字りやすくなってしまったので思い切って音声入力で書いてる訳です。
悲しきかな、音声入力の方が手動入力より正確なんだ。

そうなると部屋に1人でブツブツ臭いセリフを言いまくってるやべー奴が出来上がる訳です。

インプット
カクカッコ ナカグロ ナカグロ ナカグロあんたに何がわかるんだカクカッコトジ
アウトプット
「・ ・ ・あんたに、何がわかるんだ」

ってな感じですねー
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