機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 〜Crimson Temptation〜 作:ズレス
ーー時間は前後する。
ミケール捕縛作戦の決行の朝。キラたちが王城の中で、ユーラシアの将官たちを交えた最終確認を行っていたのと同じ頃。
ファウンデーション王国の首都イシュタリアには、無数の紙が舞い散っていた。旧い時代よりコズミック・イラの今にかけて、なおも世間一般に多く流通する紙質のもの。それは、新聞の号外だった。
「?」
「なんだ、これ」
戸惑いながらも、上空から落ちてくるそれらを手に取り、そしてそれが降ってきたであろう空を見上げる一般市民たち。
果たしてそこには、楕円形の大きな影。ヘリウムガスによって浮き、プロペラによって推進するそれは、大型の飛行船。
その船底からイシュタリア中へと、新聞の号外がばらまかれていたのだ。
新聞は更にそこからだけでなく、何人かの派手な……首元に新聞社の社章を、腕には大きな腕章を付けている……服装をした者たちの手で道行く人々へと手渡されていた。
その紙面へと手をやる市民。20代の若い男性である彼は、それを見て思わず視線を釘付けにされた。
(うわっ……なんだこの美人……!? こんな人がこの国に居たのか!?)
紅の髪を持ち、見たこともないほどの色気を漂わせた若い女の写真がそこにあった。身を包むのは、ファウンデーション及びその周辺地域の意匠を残す大胆なドレス。
更にその女の傍らには、白い服の男の姿がある。その男が誰か知らぬのは、恐らく今の世界では物心つかぬ子供だけというほどに著名な男。戦争を二度も終わらせた、英雄の中の英雄。
市民は更に紙面を捲る。どの面にも、紅の髪の女性と、白い服の男の二人が写り込んだものばかりが載せられていた。他はあってもせいぜい、女性側の経歴や統治者たるアウラや宰相のオルフェとの関係についての記述と併せて載せられた、紹介のためと思しき顔写真や全身写真だけ。
剣を振るう女性を後ろから男が見守る姿。
連れ立って歩く姿。
湖畔の様な場所で、女が男を抱きしめる姿。
そしてーー舞踏会の会場で、女と男が抱き合って踊っている姿。
いずれもが、その二人の
と、その横で、新聞の配布係の一人がまるで紙吹雪がごとくその新聞を撒き散らした。
「号外! ごうがーい!! コンパスのキラ・ヤマト准将と、この国の政務官の間に秘密のカンケイ!!! 美貌の19歳、フレイ・アルスターとは!!!??」
恐らく10代後半だろう、少女と言っていい若いその女性はそう叫びながら、更に新聞を撒く。上空から降ってくるものと接触し、それは更に広く広く撒き散らされた。
或いは、そんな美貌の少女がこれまで政治関係の仕事についていたなどというニュースは一度もこの国で流れたことが
市民たちはそれを手に取り、眺める。美しい女に魅了されたかのように、誰もがその新聞に目を通す。そして、認識する。
ーーフレイ・アルスター……どうやらかねてよりこの国の
ーーキラ・ヤマト……世界平和維持機構コンパスのモビルスーツ部隊の隊長。
彼ら二人はそういう関係なのだ、と。
当人たちが止めようがないタイミングで行われた、そんなたった一度の号外新聞のばら撒きで、この国の中でそれは
「……時間か……」
そしてそんなイシュタリアの裏通りを、
昨日のことを、思い出す。議事堂前で計画の最終確認を行っていた折、キラ・ヤマトとフレイ・アルスターとニアミスしたときのことを。計画が急に修正されたとかで、二人が来る時間がずれたらしい。その結果、顔を見られそうになった。
だが、今日に至るも特に目立った報告は上がってきていない。どうやら対処は完了していたらしい。
これで、安心して計画を実行できる。
そう思い、彼は裏路地を歩いていく。だが、ふとその最中。
「おい、アンタ!!」
裏路地が十字に交差する場所。そこで、脇から声を掛けられた。
「アンタ! その
うんうんと唸るその声の主は、みすぼらしい服装をしていた。恐らくは浮浪者だ。イシュタリアには、こういう連中が存在していると
「とにかく! その組織に、ザフトから来てる人なんだろ! そういう人がその制服を着てるって話だった! こっち来てくれ!! この国の、本当の姿をっ」
手を差し伸べてくる浮浪者。
その手を、彼は。
「汚い」
乱雑に、振り払った。
「えっ!?」
困惑する浮浪者。その前で、
ーーこいつらは、偉大なるデスティニープランによって、弾かれるべき対象と断定された存在。つまりは。
「死ぬべきクズか。よし死ね」
瞬間、銃声が鳴った。
取ってもらえるはずと信じた手を払われた浮浪者は、その驚愕の表情のまま永遠に動かなくなった。
それを見て、男はまた歩き出した。
そして、時間は戻る。
キラたちコンパス一行は、ファウンデーションの海沿いにアークエンジェルとミレニアムを停泊させつつ、モビルスーツ隊だけは先行して王城付近に戻ってきていた。
ミケールは既に逮捕され、ミレニアムの艦内に勾留されている。キラたちコンパスのモビルスーツ部隊だけが此処に先行して帰還したのは、万が一まだここを狙っている伏兵がいた場合の警戒だ。ブラックナイトはその索敵のために、怪しい場所を虱潰しにしつつあえてゆっくりと移動して戻ってきている。
そして王城上空。ファウンデーション側から着陸地点として指定されたその中庭を眼下に捉えたキラ……ライジングフリーダムのカメラの中に、ピンク色の機影が映り込む。
ブラックナイトスコード・カーマ。先程、ブルーコスモスの部隊をほぼ無傷、かつ誰一人殺すことなく投降させてのけた、驚異の機体。
「……フレイ」
その搭乗者の名前を呼びながら、キラはその機体の付近……向かい合うような位置へ、ライジングフリーダムを着陸させた。ブラックナイトスコードほどの基礎スペックではないにせよ、ライジングフリーダムとて最新鋭機の一角。その着陸はつつがなく行われ、ライジングフリーダムは着陸すると同時に片膝を付くような姿勢となる。その姿勢変化の間にヘルメットを脱ぎ捨てるキラ。
そして、コクピットハッチが解放された。シートの上の方に空いた穴からキラは速やかに出て、跪く機体のボディを伝って王城の石畳の上に足を下ろす。
「ふうっ」
キラは戦闘の緊張からか思わずよろけ、少しかがみ込むような体勢となった。
「キラっ♡」
そんな彼の耳に、甘い声が届く。
「フレ、むぅっっ!!??」
顔をあげようとした瞬間、彼の顔面は暖かく柔らかいものに押し潰される。
フレイが、キラに抱きついて顔を胸に埋めさせたのだった。パイロットスーツはやはり相当な薄手の仕様だったためか、サラサラとしたその生地の感触だけでなく、柔らかい肌の質感までもが伝わってくるようにまでキラには思えた。
「おかえりなさい♡ 怪我してない? 痛いところはない? 大丈夫?」
そしてフレイは自分の身体にキラを捕らえつつ、心配するような言葉をかける。
もごもごと動き、キラはどうにかその甘い牢獄から顔を脱出させた。
「ーーぷはっ!! だ、大丈夫。怪我はないよ。……フレイこそ、本当に大丈夫なの? 君があんなふうに戦うなんて……」
「えへ、心配してくれるの? 嬉しい♡ 私なら大丈夫よ。みーんな、私のしもべになっちゃったんだから♡」
「しもべ……」
キラの脳裏に、さっきの戦闘で見た光景がフラッシュバックする。投げキッスのポーズをとるブラックナイトスコード・カーマ。その足元で恍惚とした表情を浮かべる、ブルーコスモスの兵士たち。
「キラ。もう私を守る必要はないわ。私のために戦わなくていいのよ。いいえ、むしろ逆よ。これからは私があなたを守ってあげる。私に任せて。……私に、守らせて……?」
何処かうっとりとした様相でそんなことを言うフレイ。だが今のキラには、その妖艶な笑みをただ従容と受け入れることはできなかった。
「フレイ。あの機能は何? あんなものこれまで見たことなかった。ただのコンピュータウィルスじゃないよね。それだけでパイロットまであんなふうになるはずがない。あんなの、
キラは真剣な声色で言葉を紡ぐ。あの兵士たちは明らかに普通ではなかった。
「機体を操るだけじゃなくて、それに乗っている人間まで操ってしまうだなんて。……僕には分かる。アレは、今の時代を一変させかねないとんでもない兵器だ。かつて発明された時の、フェイズシフト装甲やニュートロンジャマーキャンセラーみたいな」
キラの危惧の核心は、それだった。
これまでこのコズミック・イラの宇宙では様々な驚異的にして脅威的な兵器が開発されてきた。大量破壊兵器たる核兵器と、それを無効化したニュートロンジャマー。
だがそれらは、どれもこれも、物理的な現象を起こすことにとどまるものばかりだった。
あの兵器は、しかし、違う。人間の精神を変える兵器。そんなものはこれまで一度も実用化などされてきていない。
ーーあの兵器は、危険。キラはフレイに魅了されながらも、それを直感的に理解していたのだ。
そして。
その兵器の能力を加味してみてもーーやはり。
やはり、今のフレイは、いや。
「それだけじゃないよ。……あの強さ、あれは機体の性能に頼り切って出せるものじゃない。君は四年前じゃ、モビルスーツを使う経験なんて一度もしてなかったはずだ。ううん、それ以前にだって、モビルスーツや機械に関わることなんかほとんどなかったはずだ!」
今のフレイの、
まして、ナチュラルでしかなかったはずのフレイがそんな能力を会得しているなど。
これでは。
これでは、まるで。
ーー
「この四年間……君は……君は、此処で一体どんなことをしていたんだ……!?」
何処か険のある声色で、キラはフレイへとそう問いかけた。
ーーそれに。
「……くす♡」
フレイは、ただ、優しく優しく微笑んで、キラの肩に自分の手を置いた。
そして、少し身体を下げて、目と目をあわせる。
「キラったらもう。
そして、甘い光が放たれた。
(ぁ……?)
またしても、キラの身体と頭脳から力が抜ける。そんな彼を優しく見つめながら、フレイは口元に指先をあてて言葉を紡ぐ。
「この四年間、ずっとここでいろんな訓練を受けてたの。色んな運動や事務仕事、他にも色んな仕事のこと……。モビルスーツの操縦もその一環。ものすごいスパルタだったわ。けどそれは自分で希望したことだった。貴方の隣に、もう一度、今度は無力じゃない姿で立ってみたかったから。だからこそ、一通りのことは出来るようになった……」
かつてのそういった訓練のときのことを思い起こしているのか。フレイはどこか、感慨深い表情だった。
「そして、カーマは私専用にデザインされたブラックナイトだから、クセとかも全部私に最適化されてるの。だからこそあれだけの動きができたのよ」
フレイはそう言うと振り返り、紅の騎士を見た。
「例えばストライクダガーとか、ジンとか……。そういう量産の機体を使ったら、多分私はキラたちほど上手くは出来ないと思うわ。良くても、平均的なパイロットより少し上手いくらいにしか出来ないんじゃないかな。カーマが私専用のモビルスーツっていうより、私がカーマ専属のパイロットなのよ。私がうまく戦えるのは、カーマに乗っているときだけなの」
(あの機体……だけ?)
その言葉に、沈静化されていたこともあって思わずキラは納得しそうになる。
「……あのテンプテイション・システムもね。特別な精神波が必要な武器なの」
「精神波……?」
「心の力……ある種のテレパシーって言ったら良いのかな。私にはそう言うのを使う才能があったらしいの。……遺伝子に刻まれた才能が……」
「……才能……」
「それが……その。あのヤキン・ドゥーエの時に大けがをしちゃったときのショックで目覚めたらしいわ。……あのシステムはそういう遺伝子を持つ人間、つまり私にしか使えないものなのよ。だからアウラ様も私を重用してくださったの。特別にいろんな訓練をしてくださったのも、そのおかげなの」
「その通りじゃ」
その時、ふと横合いから別な声が飛んでくる。
見ると、そこにはいつのまにか大勢の人影があった。
先頭にいたのは、今声をかけてきたアウラ。それ以外にもオルフェや、何人もの兵士や行政官、そしてカメラを携えた者たちの姿がある。
ラクスとユーラシア高官らの姿は見えない。どうやらまだ此処には来ていない様子だった。
「昨日も語った通り、この国は身分も人種も関係なく能力ある者を重用しておる。アルスター政務官の能力は希少じゃった。政務官という身分もそのためじゃ」
そして、とアウラは続けた。
「それだけではない。そもそもそのヤキン・ドゥーエの時、なぜ彼女がそのような力に目覚めたと思う? ヤマト准将」
「え?」
「それはの。お主のおかげなのじゃ」
「!?」
思いがけぬ言葉に面食らうキラ。そんな彼に、フレイは潤んだ目を向ける。
「……あの時、あの灰色のモビルスーツに撃たれたとき、ね……」
彼女の脳裏に蘇るのは、ヤキン・ドゥーエの戦いで脱出艇に乗っていた時のこと。プロヴィデンスガンダムに撃ち抜かれた瞬間のこと。
ーーキラに、本当の想いを告げようとしたときのこと。
「私は、貴方のことを強く、強く想っていた。……貴方に、想いを届けたかった。その気持ちが、私に力を与えてくれたのよ?」
「フレイが……僕の、ことを……?」
「そう。……もしかして、私の生まれたままの姿とか、見えちゃってたんじゃない♡?」
「ッッ!!!」
そうつぶやくフレイに、思わず頬を染めるキラ。そんな二人を見て笑いながら、アウラが横から口を挟んだ。
「ああいった精神波の素養には、幾つもの強烈な感情を経験することが必要不可欠。彼女はかつて誰よりも深い憎しみを持ち、そして悲しみを、孤独を、愛情を知った。それらの強い感情の力が覚醒させたのじゃ。彼女の潜在能力を、な」
「……陛下、ですがそうだとしても……」
「ヤマト准将は彼女の変わりぶりに驚いておるらしいが、安心するがよい。察するにお主は、彼女が極論、成り代わった別人かもしれぬと疑っているのじゃろう? それは杞憂というものよ。そも、そうであったならどうしてラクス総帥に謝罪など出来るのじゃ? 当時のことを知っておる者が、此処にいるとでも言うのか?」
「……それは……」
アウラの指摘は正鵠を射ていた。
昨日行われた、フレイによるラクスへの謝罪の理由。つまり、フレイがラクスを人質に取ろうとした一件を知っているのは、当時アークエンジェルのブリッジにいた僅かな人員と後からそれを
そのことに一人、納得するキラ。だがそれと対照的に、フレイは納得できぬと言わんばかりに頬を膨らませた。
「ええっ!? キラ! 私が偽物じゃないかって思ったの!??」
「そ、そうじゃない。そうじゃないけど……!!」
「そんなの……っ」
キラへと詰め寄るフレイ。そして、その時ーーファウンデーションの宰相は、暗い笑みを浮かべて。
(ふふ。……今だな)
瞬間、オルフェからフレイへと、見えない
「……もう。……そんなに疑うなら、これで確かめてみる……?」
その
そして彼女はーーキラへと、唇を突き出した。
「な、何を!!」
「キスするの!! 前だってキスしてたでしょ!! ほら早く!!!」
「そっ! そんなの! だめだよっ!!」
「え……」
「キラ。私と、キスはいや……?」
その時。
ーー離れた場所から、キラにとっては聞き慣れた声が聞こえてきた。
「キラ、フレイさん!? 一体なにをっ」
声を上げたのは、ラクスだった。傍らにはユーラシアの高官たちの姿がある。どうやら今になって、城の広場に出てきたようだった。慌てた様子で、彼女はキラとフレイのもとへと歩み寄ってきている。
「ラクス!! これはっ」
そんな彼女に血相を変えるキラ。と、その刹那。
(これも、貴方のためです。ーーお許しを)
ずぐん。と。訓練を施されたアコードの精神波は、憔悴によって隙が出来た
『許してあげなさい』
瞬間、ラクスの精神は黒に飲まれた。
或いは、フレイが現れ、ラクスの心をかき乱していなければ、彼女は生来の能力を以てそれをはねつけることが出来たのかもしれなかったがーー今この瞬間、それは叶わなかった。
故に彼女は、
「ーーキラ」
静かな、どこまでも静かな口調で、ラクスは言葉を紡ぐ。
「受け入れてあげなさい。私はそんなことで怒ったりはしません。一度は愛した女性でしょう?」
「ら、ラクス!?」
思いがけぬその言葉に動揺したキラ。瞬間、フレイは破顔して。
「わーい♡ はい、それじゃチュー♡」
「むうっ!!??」
かつてそうしていたように、その唇をキラの唇と密着させた。
「ね♡ 私でしょ?」
微笑むフレイ。
「……う、うん……」
そんな彼女に、キラはもはや何も言えず、頷くしか無かった。
そんな状態で。
ーーバシャ。
唐突に、それは聞こえた。
「!?」
バシャバシャバシャ、バシャバシャーーーーーーー!!!!!
驚愕するキラ。連続して響くのは、カメラのシャッター音。そしてフラッシュの光が、何度も何度も瞬いた。
その光に叩き起こされるようにして、二人の少女は正気を取り戻した。
「ーーえ……ぁ……?」
思わず狼狽したのは、ラクス。
(わた、わたくしは、いま。何をっっ……!!!!????)
心中で、自分自身の言動に驚愕していた。目の前で起きた出来事も、自分が言ったことも、何一つとして彼女には受け入れることが出来なかった。
「……あれ……? 私……? ……ッッ! そんなッ……!!」
他方、フレイは顔を赤らめ、次いでラクスの表情を見て青ざめさせた。
温度差こそあれど、揃って困惑する二人の少女。その様子を見てーーアウラは、唐突に哄笑を始める。
「ふふ、はははは! こうも睦まじい様子を見せつけてくれるとは、中々にお熱いではないか!!」
バッと両手を横に翳し、胸を張って、まるで宣言でもするかのような大声を張り上げる。
「いや、それにしても先のものは実に素晴らしい戦いであった!! かたや自由の剣、キラ・ヤマト! 果敢なる戦いであの巨人……デストロイをも撃破してみせたその武勇。天晴である!」
「かたや慈愛の盾、フレイ・アルスター! 可憐にして優美なる舞い。数多の敵を傷つけることなく降伏させし姿。天女の如し!」
キラを、フレイを、続けて名指しすると同時にカメラを持つ者たち……報道陣の方へと振り返るアウラ。
「自由と慈愛! 正しく、混迷する世界を切り開く双刃と呼べよう!! これほどまでに似つかわしい男女が、ほかにおろうか!! なあオルフェよ!!」
「ええ。お似合いです。
水を向けられたオルフェは微笑みを浮かべた。
「皆、それが分かっていたのでしょう。だからこそこんなにも多くの取材陣が訪れていた……。この画を見るために」
「ーー」
キラたちは今なお鳴り止まぬシャッター音の中で、ただただ佇んでいたーー。
そして、それと同時刻。
イシュタリア議事堂、その正門前。
そこにーー
裏路地を進み、浮浪者を殺害し、全ての準備を整えて今ここに。
「私はジューダス・クリストフ!!! コンパスの隊員であり、ラクス様に生命を捧げしザフトの兵士!!!」
唐突に放たれた大音声に、道行く人々は困惑と共に立ち止まった。
「この国は!! デスティニープランを導入しているッ!!!! 宰相オルフェ・ラム・タオの主導のもとで!!!!」
その事実を指摘すると同時に、拳を意図的にわなわなと震わせる。怒りで燃えている
「ファウンデーション王国こそ、あの呪わしきギルバート・デュランダルの後継なのだッッ!!!! こんな邪悪は断じて許せない!!! 故に私は、この国に正義の鉄槌を下すことを決めたッッ!!!!」
予め決められた台本通り、ジューダスは叫びを上げてーー軍服のポケットから、スイッチを取り出す。それを押せば、事前にここに敷設された多数の爆弾へと一挙に信号が伝わる様に仕込まれていた。
「ラクス様、ばんざーーーーーーーーいっっっ!!!!」
最期にあげられるのは、偽りの忠誠。かつて己が真に忠誠を誓ったギルバート・デュランダルを殺した怨敵の名。それを叫び、彼はスイッチを押し込んだ。
ーー瞬間。
議事堂で、爆炎が上がった。