読んでいただければ幸いです。
「リュカ、リュカよ・・・」
「う、うん・・・?」
ある晩秋の日の朝方。
まだ布団に包まり、微睡みの中にいた青年国王に対して何者かが声を掛けて来た、それはとても暖かくて安らぎに満ちたエナジーの塊であり、最初は心の中に感覚として伝わって来ていたのだが次第に意識がハッキリしてくるに従ってリュカは頭でその感覚の内容を、言語化する事が出来るようになっていたのだ。
「・・・あなたは“マスタードラゴン”!!?どうして」
「挨拶は良いのだよ。それよりもな?お前の120000年程前の因縁がいま、見事に解消されようとしている。いやそれどころかより素晴らしいモノに昇華しようとさえしているよ?本当に見事なモノだ。でな?その褒美にお前が今の妻と、つまりビアンカと結ばれた切っ掛けを思い出させてやろうと思ってな?」
「・・・マスタードラゴンよ、それは一体どう言う?」
「詳しい話は後で聞く、今のお前なら過去世の傷跡にも必ずや耐え切れるであろうからな。まずは私に意識を私に集中させろ・・・!!!」
そう告げると“マスタードラゴン”は自身に向き直って瞑想し始めたリュカに対して右手を翳し、光りを放ち始めるモノの、すると程なくしてー。
「・・・・・っ!!!」
(これは・・・っ!!?)
リュカが思わず身構えてしまうがそれは今から約120000年前の世界での出来事であり、尚且つリュカにとっては何十世代も前の遙かな前世の記憶であった。
その世界での彼は洋上に浮かぶ楽園である“ムー大陸”で暮らす“カメオ”と言う名の一青年であり、見ると中々にイケメンである。
浅黒い健康的な肌をしていた彼は身長も今より5cm位は大きくて、穏やかな性質をしていた好青年であり、かてて加えて“ムー大陸”を守り支える軍隊の中でも特にエリート部隊として名を馳せていた“特殊部隊”に所属していたのだ。
そんなカメオには恋人がいた、“ブロウ”と言う青みがかった銀髪の女性だった、2人は輪廻転生の度に何世代にも渡って婚ぎ合って来た間柄だったのでありその為だろう、無用な喧嘩はしなくて済んでいる等、夫婦としての仲は決して悪いモノでは無かったのである。
ところが。
ある時、この“ブロウ”の噂を聞き付けた隣国レムリアの地方都市の領主“ベルゲルテ”が手下に命じてブロウを無理矢理に連れ去って行ってしまったのだ。
折り悪くこの時、カメオは任務で長期間に渡って故国を離れており、帰って来てから事の次第を知って周囲が止めるのも聞かず、大慌てでブロウを奪還する為に“レムリア”の地方都市“ベルゲルテ”領へと向かうモノの、時既に遅くブロウはベルゲルテに丸め込まれて蕩かされ、芯から彼のモノへと成り果ててしまっていた。
「帰ろう?ブロウ、頼むから!!!」
「・・・嫌よ?私はこのままここに残るわ、あなたこそこの場から立ち去って!!!」
カメオの必死の説得も虚しくブロウは首を横に振り、そして言った、“自分はもうベルゲルテの女だから”と。
そして。
あろう事かブロウは“それなら俺がベルゲルテを殺す”、“君をヤツから取り戻してみせる!!!”と言い放ったカメオに対して顔を
その姿を見てカメオは驚愕しつつも刃を振って彼女の短剣を防ぎ、止めるように促すモノのブロウは全く聞き耳を持たず、そしてそんな元恋人の変わり果てた有り様に絶望したカメオは泣く泣くその場を引き払い、故国に戻っていったのである。
そうしてムーに戻ったカメオは悲しみの余り、何も手につかなくなって酒に溺れるようになった、難しい任務を多数こなしていた彼にはそれなりの財産があったのだが、みんな日々の酒代に消えて行き“このままではアイツが死んでしまう”と誰もが思った、そんな矢先。
彼の元に一人の女性が現れた、顔は可愛い系で良く整っており双眸の色は青空色、そして腰まで垂らした長い金髪を揺らしつつカメオの元へと現れたこの少女こそが後にビアンカとして生を受ける事になる存在であり、この時の名を“クイートゥル”と言った。
彼女はカメオの同年代の幼馴染であり、だけどこの時はまだ恋人関係にはなっていなかったのである。
「カメオお願い、頑張って?私、あなたに立ち直って欲しい・・・!!!」
「・・・・・」
酒に酔っ払い、やさぐれつつも“放っておいてくれよ・・・”等と突っ伏すカメオに、しかしクイートゥルはその後も一生懸命寄り添い続けた、昼となく夜となく酒場まで足を運んでは彼を慰め、愚痴を聞き、帰ってからも熱心にカメオの世話をし続けた。
何故にここまで献身的にクイートゥルが幼馴染に寄り添ったのか、と言えば実は彼女もまたカメオの事を愛していたからだった、彼女は幼い頃から彼の事を深く深く愛し続けていたのであり、ずっとずっと思いを寄せ続けていたのである。
それは延々と続く輪廻転生の輪の中で、初めて巡り会った瞬間から始まった、長い長い初恋であり掛け替えのない純情の発露だったのだ、だけど。
彼女はその思いを、カメオには打ち明けられなかった、その頃のビアンカはお転婆で意地っ張りな性分があまりにも強すぎて、例え好きな人の前であろうともどうしても素直に自分をさらけ出す、と言う事が出来なかったのであり、ましてやその時、カメオにはブロウがいて2人は幸せそうにしていたから、それを見たビアンカ、即ちクイートゥルは尚更告白等は出来なくなってしまったのである。
(神様、お願い・・・)
そんなクイートゥルはしかし毎朝と毎晩、密かに神に祈りを捧げ続けていた、自分の心を脇に追いやりソッと幼馴染の青年の事を祝福していたのである、“カメオが幸せでありますように”と、“どんなに厳しい状況になっても必ず生きて帰って来てくれますように”と。
例え相手に振り向いてもらえなかったとしても良い、それでも自分の気持ちを貫き通して愛する人の幸せを一心に祈る、それこそが彼女の愛し方であり愛の形であったのだ。
「ねえカメオ、一緒に遊びに行こう?昔みたいに、ね?お願い・・・っ!!!」
「・・・・・」
そんな毎日を送る内に、段々とカメオはクイートゥルに心を開いて甘えるようになっていった、そして元来が優しくてお人好しな性分だった彼は、少しずつクイートゥルの言葉を聞くようになって行き、ブロウを失ってから1年半後には、なんとか酒浸りのその日暮らしな生活から立ち直る事が出来たのだ。
「クイートゥル、有り難う。君のお陰で目が覚めたよ、それになんとか立ち直れた・・・。だけど僕は弱虫だったんだな、こんなにも情けない男だったなんて。自分でも思っても見なかったよ・・・」
「・・・そんな事、ないわ?」
ある日の午後に二人で買い物に出掛けた先の公園で、ベンチに腰掛けながらもカメオはクイートゥルにシミジミと話し掛けた。
「あなたはね?とっても優しい人なの、そして愛が深い人なんだわ。それに、その・・・。それだけブロウさんの事が、大好きだったんだと思う」
「・・・・・」
俯き加減で口を開いた自分と同じように、下を向いてしまった幼馴染に対して少し考えてからカメオは再び言葉を発した。
「ねえ、クイートゥル。その・・・。もし嫌じゃなかったらさ?これからも僕の世話を焼いてくれないか・・・」
「・・・えっ、えっ?それってどう言う」
「だからさ、その・・・。これからも僕と一緒にいてくれないか、って言うか。お願いだから付き合って下さい!!!」
突然、自分に向き直ったカメオがそう言って来て焦った、つまりはクイートゥルはカメオに告白された訳だったのだ。
「・・・だ、だって。カメオ、私は!!!」
「頼むよ、クイートゥル。君と一緒にいる時だけは、僕は悲しくも苦しくも無かった。寂しさを忘れられたんだ!!!だから、お願いだ・・・」
「・・・・・っ!!!カ、カメオ」
“僕を1人にしないでくれ”と言う幼馴染の、心からの言葉に絆されたクイートゥルは最初は照れながらも気付けば“わ、私で良いんだったら・・・!!!”等とモゴモゴしながらも“OK”を口にしていた。
その可愛らしい顔を真っ赤にし、青空色の双眸を嬉し涙でグチャグチャに濡らしながら。
これは私の中では、と言うオチが付くのですが。
実は“カメオ”と“クイートゥル”を引き合わせたのは創造神である“グランゼニス”です、何度も生まれ変わる内に彼の“神官”や“巫女”としての生も経験していたカメオとクイートゥルはそのかどで“グランゼニス”に何かある度に常々祈りを捧げていた訳です←で、“グランゼニス”の方でも彼等の存在を知っていたのですね(そんな訳でして二人とも“創造神”との間にかなり強い縁と繋がりが出来ていたのです)。
そんな“グランゼニス”は実は以前からカメオとブロウの関係は知っていたのですが、一方でクイートゥルのカメオに対する一途な気持ちとその誠実な性格を高く評価していました、そこでカメオがブロウに振られ、落ち込んでいるタイミングでクイートゥルにその事を知らせ、“彼を立ち直らせてあげて欲しい”とだけ告げたのです(で、“その後の事は2人に任せよう”と思った訳ですね)。
そう言う次第だったのです、そして結ばれた2人は相性も気持ちもバッチリでした、特にクイートゥルはそれまで意地を張っていた分、彼氏に甘えてベッタリとなった訳ですが、そんな彼女と過ごす内にカメオはとうとうブロウの事を忘れる事が出来たのです(流石に“完全に”、とまでは行きませんでしたけど。それでも一々落ち込んだり憂鬱になる程では無くなったのです)。
ちなみにそんな二人はこの後は、何度生まれ変わろうともずっと一緒に過ごして来ました、仲の良い幼馴染として、熱情を抱き合う恋人として、そして唯一無二の絆と[[rb:真愛 > まな]]で結ばれた夫婦として。
ずっと仲睦まじく過ごして来たのです(ま、時には喧嘩もしましたけどね?)、そんな二人の幸せな日々を願っていた“グランゼニス”は実にご満悦だったそうです←あとついでに言えば“マスタードラゴン”をリュカの元に遣わしたのも“グランゼニス”です。
注)更にちょっとだけ説明させていただきますと、実は“カメオ”はちょっとよく解らないんですけど“クイートゥル”と“ブロウ”は“アイスランド”の言葉なんです。
意味は“クイートゥル”が“白”や“純白”を、そして“ブロウ”が“花”や“花びら”を表すそうです。
えっ、何処かで見たような相関図ですって?気のせいっすよ・・・。