氷見汐梨の大暴走   作:スピリタス3世

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第六話 氷上の舞姫

  裏梅視点

 

 私と汐梨は開始早々、西へと向かった。桃曰く分担して呪霊を探す、とのこと。まあ妥当な戦略だろう。ただ………

 

「よぉ、天才1年。早く八ツ橋寄越せ!」

「あっ、おっぱいちゃんやん!」

 

 それは相手も同じ。私たちは早速東京校の人に出会(でくわ)した。茶髪の女で、汐梨と同じ1年生。初対面時と同様ガラが悪い。おまけに右手には金槌(かなづち)を持っている。この交流戦はある程度の妨害も許可されており、怪我を負わせる態度なら普通にあり。だからからか、いきなりの臨戦態勢だ。

 

「いきなり人のことを乳呼ばわり〜?なになに〜、そんなに私の胸が欲しいか〜?」

「うん、むっちゃ欲しい‼︎それで狙いの子をオトすからな!」

「それやっても変態しか寄ってこねえだろ!」

「それはそれで………アリやな♪」ジュルリ

「うわっ、キモっ‼︎」

 

 そして、いきなりの猥談。流石汐梨だ。開始早々相手に精神的攻撃を与える。ついでに私にも精神的攻撃を与える。こんなのの相手をしなければならない奴が可哀想だな。私が同調してあげよう。

 

「仕方ない。此奴は類い稀なる阿婆擦れだからな。貴様の気持ちも分かる。」

「うわっ、宿儺みたいになんか出てきたっ⁉︎」

「おい裏梅!出てくるな言うたやんけ!またタマ蹴られたいん⁉︎」

「だからそれだけはやめろ‼︎」

「何、コイツ………?」

「裏梅言うてな、ウチの身体に勝手に受肉してきた平安時代の男や。ホンマキモいやろ?」

「お互い様って言葉、知ってるか?」

「「あぁ⁉︎」」

 

 同調した私が馬鹿だった。ふざけるなよ、この女‼︎私だって勝手に受肉した訳ではないのだぞ⁉︎こんな阿婆擦れに受肉するって聞いていたら、私は絶対に断ったのに‼︎

 

「まあいいや。1級だかなんだか知らねえが、この野薔薇様の凄さを教えてやるよ!」

「望むところや、野薔薇ちゃん‼︎この新田汐梨の実力、見せたる!」

「勝手に新と結婚するな‼︎貴様の苗字は氷見だろう⁉︎」

 

 まあいい。ひとまず此奴らの戦いを見るとしよう。

 

「氷凝呪法 直瀑・(はく)‼︎」

「おいおい、どうした⁉︎全然違うとこいってるぞ‼︎」

「分かってへんな〜、野薔薇ちゃん。ウチらは今から勝負するんやで………」

 

 最初は汐梨の攻撃………なのだが、薄い直瀑を、何故か全然関係ないところで発生させた。これだとただ別の場所に氷の膜を張っただけだが………此奴、何を考えている…………?

 

「スケートでな‼︎」

 

 は?

 

「あ、裏梅は分からんやろな。スケートっちゅうんは、氷の上で踊る舞みたいなもんや!綺麗に踊れた方が勝ちって決まりやで!」

「ふざけている場合か、貴様⁉︎」

 

 この女は頭がおかしいのか⁉︎踊りで勝負する⁉︎今呪術の交流戦中だぞ⁉︎相手もそんなこと認めるわけないだろ!

 

「いいじゃねえか‼︎東北の舞姫と呼ばれた私の実力、見せてやんよ‼︎」

「お前ものるなぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

「なぁ裏梅、ウチらの本業はこっちやで?」

「平安の古びた脳みそじゃ分からねえのかもな。」

「そんなわけあるか‼︎大人しく呪術をしろ‼︎」

 

 なんで2人とも馬鹿なんだよ⁉︎完全に遊んでるだけじゃないか‼︎歌姫、頼むから此奴らを叱ってくれ‼︎

 

「それじゃあ先攻は私な!」

「いいん、野薔薇ちゃん?」

「ああ…………大丈夫だ‼︎」

 

 ということで、馬鹿2人による氷舞踊(すけーと)対決が始まってしまった。まずは野薔薇の番。華麗に氷へと向かっていった彼女は………

 

「あっ………」ツルッ、バタン‼︎

 

 すぐに足を滑らせて転んだ。

 

「貴様、東北の舞姫はどうした?」

「頭の中では浮かんでたんだよ‼︎私が華麗に踊る姿が‼︎」

「頭の中で出来ても駄目だろう⁉︎」

 

 此奴、自信満々に宣言した割にこれか⁉︎本当にどうしようもないな‼︎意外と知能が汐梨に近いのでは………?

 

「次はウチの番やな!」

「私みたいにとっととこけろ‼︎」

「その通りだ。早くこの茶番を終わらせてくれ。」

 

 まあいいや。とりあえず次は汐梨。どうせ此奴も踊れないのだろうな………

 

「………あかん。滑られへん。」

 

 と思ったら、まさかの氷を前にして立ち止まった。

 

「何をしている、貴様?」

「私が転んだのを見て怖気付いたのか⁉︎」

「ちゃう。」

 

 急に怖くなったか。それとも冷静になったか、あるいはやる事を思い出したか。いや、それとも…………

 

「靴があかん。この靴ブレード付いてへん。」

「「そこ⁉︎」」

 

 なんでだよ⁉︎靴の問題ではないだろ⁉︎というかそもそも滑るな!普通にやれ!

 

「貴様についてないのは常識だ‼︎」

「ブレードの無い靴で滑るなんて、スケート選手として失格や……」

「貴様は呪術師だろ‼︎」

「つーか、私は普通の靴でやったんだぞ‼︎だからお前もやれ!」

「いや、やらなくていい……」

「しゃーないな。ほなやったるわ。」

「やらなくていいだろ‼︎」

 

 しかも仕方なしで茶番を続けるな‼︎なんなんだこの馬鹿どもは‼︎いい加減にしてくれ‼︎とりあえず、さっさと転んで無様を晒してくれ‼︎

 

 そう思っていたのだが…………

 

「はぁ⁉︎お前めちゃくちゃ滑れるじゃん‼︎マジ⁉︎」

「ウチはスケートやりたくて、この術式に目覚めたからな。」

「嘘でしょ⁉︎」

 

 この女、普通に滑れるだと⁉︎しかもめちゃくちゃ速く動くし、ぐるぐる回るから………

 

「貴様、それ以上動くなぁぁぁぁぁ⁉︎」

「裏梅、黙っとって。今から3回転アクセル飛ぶんやから。」

「吐くぅぅぅぅぅぅ‼︎」

 

 糞気持ち悪い!完全に酔った、吐きそうだ‼︎速すぎるし頭おかしくなってるから、反転術式が上手く使えん!まずい、出るぅぅぅぅぅぅぅ‼︎

 

「よっと♪」

「おお!3回転アクセル‼︎」

「おぇぇぇぇぇぇ‼︎」

「と、3回転吐瀉物………」

 

 ということで、私はゲロを3回転ぶちまけたのであった…………

 

 

 

 

 反転術式で酔いを治した後、私と汐梨はお互いを問い詰めた。

 

「貴様、呪術そっちのけで遊びやがって‼︎おかげで気持ち悪かったんだぞ‼︎」

「アンタこそふざけんなや!服にゲロかかって最悪なんやけど⁉︎まだ野薔薇ちゃんの性癖も聞いてないんやで⁉︎」

「仕方ないだろ‼︎あれだけ速く飛んだり回ったりするとは思わないし‼︎あと最後のは関係ない‼︎」

「自分のこと強いって思うんなら、それくらい何とかせえや‼︎」

「お前ら、お似合いだな♪」

「野薔薇ぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「そんな訳ないやろぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 本当に最悪だ。こんな思いをするのなら、この時代に受肉しなければよかった。羂索め、次会った時は覚えていろよ‼︎絶対に貴様を寸寸(ずたずた)になるまで引きずり回して、金玉を思いっきり蹴り上げてやるからな‼︎

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