環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:短号司令官
時間を少し遡った、中央暦1639年11月10日
この日、パーパルディア皇国軍がアルタラス王国へと侵攻、開戦準備の整っていなかった王国軍の大多数を奇襲によって壊滅させ、同日首都ル・ブリアスを占領した。
国王ターラ14世はわずかな兵を率いて出陣したが死亡し、わずか1日でアルタラスは組織的な抵抗力を喪失した。100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。これらの戦力により真正面から轢き潰されたのであった。
国民の中には絶望する者、地下組織化して抵抗を試みる様々であった。
だが悪い話ばかりではない。
実は皇国軍侵攻の直前、ターラ14世の娘の「ルミエス」が奇跡的に国外へと脱出する事に成功。
その後、配下の者と海を漂流している際に帝国海軍の伊号潜水艦に救助され、その足で日本に辿り着く。ルミエスは祖国アルタラス王国奪還のため日本へと協力を要請。
四カ国の政府は地理的に皇国に1番近いアルタラス王国を前線基地とする計画を立てていたため、ルミエスからの要請は渡りに船とばかりに、要請を受諾した。
その為にまずは駐留する皇国軍を掃討すべくフェン派遣艦隊とは別に討伐部隊を送り込む必要があるとし、各国はそれぞれ協議した。
中央暦1640年5月11日
アルタラス王国が陥落して約半年、旧首都ル・ブリアスから数十キロの海上を、1騎のワイバーンロードが飛行していた。
「しっかしまあ、哨戒飛行は暇だなあ・・・・・・」
己が跨っているワイバーン以外に聞くものがいない空中で、騎上の竜騎士がぼやく。華々しい戦闘に比べれば、この任務は格段に地味であった。
「地上の奴ら、大して活躍して無いくせに好き放題しやがって・・・・・・」
思わず握った手綱に力が入る。アルタラスのワイバーンを全滅させ、慌てて出てきた王国軍を導力火炎弾で焼き払った彼であったが、後からやって来た陸軍の部隊による略奪には辟易としていた。
節操もなく旧アルタラス王国民を虐げる様を見て、不快感を覚える程度には、彼はパーパルディア軍の中ではまともであった。
「あちこちで喧嘩の声がして寝られたもんじゃねえ……ん?何だ……?」
愚痴を呟きながら飛行していた彼だが、突如として何かに気づいた。
「馬鹿みてえに高い位置を飛んでやがる……報告に戻るか…!」
絶対にワイバーンロードでは届かない位置を飛行している物体が、彼の目に映った。
彼は急いで基地へと帰還し、謎の飛行物体の事を上官に報告した。しかし報告を聞いた上官は、
「ワイバーンロードより高く飛ぶ飛行物体?馬鹿馬鹿しい、そんな代物が存在するわけがない。見間違いだろ、疲れてるんじゃないか?」
と彼の報告を一蹴し、彼をワイバーンロードから降ろし休暇に回してしまった。
真面目に勤務していただけなのに乗騎から降ろされ休暇を言い渡され、複雑な心境の彼であったが、この措置によって彼は1週間後生き残る事となるのだった。
中央歴1640年5月22日
AM1:00
アルタラス島近海で不自然に動く無数の光点があった。
現代であれば間違いなく通報される不自然さだが、中世よくても19世紀の知識しか持たない人間達しかいないこの島であればこの辺りにまで出張ってくる物好きはいなかった。
「上陸は順調なようだな」
LST-1級戦車揚陸艦の艦首から擱座着岸して兵員・車両が揚陸していく様子を米第一海兵師団師団長アレクサンダー・ヴァンテグリフトは満足げに見ていた。
彼の視線の先にはここ半年の間に米軍が自衛隊から払い下げられた装備(自衛隊側にとっては旧式だが帝米英にとっては新装備に該当するもの)を研究した上で量産が開始されたものがあった。
その筆頭にあるのはM41軽戦車なのだが、読者の多くはふと疑問に思っただろう。
その理由としては自衛隊側にあった。
国交樹立後、技術供与を行うにあたって旧式装備の選別が行われたのだが彼らが供与するつもりだったM4中戦車なのだが70年代に61式が配備されて以降早い段階で殆どがスクラップ化されてしまった為供与しようにもできなかった。そこで苦肉の策としてまだ纏まった数の供与ができる上で技術的、時代的にも無理のない本車輛に白羽の矢がたったのであった。
そして何故ここに米海兵隊が上陸を開始しているのか、それは翌日から開始されるアルタラス島解放作戦の水上艦艇の攻撃開始に合わせて国内に残るレジスタンス勢力と共闘して皇国軍を一掃する為である。
帝国陸軍も第二師団を派遣しているが彼らも新型の四式中戦車を現地に寄越していた。
「閣下、全軍上陸完了しました。これより内陸への侵攻を開始します」
アレクサンダー「ご苦労、準備できた部隊から出発させろ」
彼は袖を捲って腕時計の文字盤を見る。
時刻は【AM1:50】この時間なら夜明けまでに首都近郊まで進むのに苦労はない。
彼は指揮用のM3ハーフトラックに乗り込んで海岸の近くにある森の中に上陸部隊と共に姿を消した。
1640年5月22日
AM6:30
アルタラス島沖
帝国海軍 アルタラス島派遣艦隊旗艦:白龍
「長官、偵察機からの報告では敵は先週と変わらず未だ 我が艦隊の接近には気づいていないとの事です。しかし付近には警備用の艦艇と思われる艦が多数見受けられるとの報告があります」
幕僚からの報告を受けた艦隊司令長官:小沢治三郎はゆっくりと振り返った。
小沢「分かった。警備の数は?」
「はッ。凡そ25隻 いずれも戦列艦であると見られます」
小沢「他の戦闘艦に動きは無いんだな?」
「はい、間違いありません」
幕僚の報告を聞いて、小沢は再び艦橋の外に見える海原に目をやる。
天候は快晴、敵味方どちらも対象の発見が容易い気候だ。
小沢「手を打つなら今しかないな……航空参謀、各艦に通達。直ちに艦載機を発進させる、バルゼーと自衛隊、英海軍にも伝えるんだ」
「了解!」
報告は直ぐに全艦へと行き渡る。
一番行動が早かった白龍以下帝国海軍4空母の甲板上には最新鋭ターボプロップ艦上戦闘機『烈風』が発進態勢に入っている。
誘導員が合図の旗を上げると一番乗りで発艦していく。
戦闘機が終わると今度は爆装した『流星改』が発艦していく。
アメリカ海軍 アルタラス解放艦隊旗艦:エセックス
ハルゼー「我々も機を上げる。発艦させろッ‼︎」
「「イエッサー‼︎」」
風上に艦首を向けるべく回答させる。
その甲板上にはバルバリアの海賊こと『コルセア』が折り畳んでいた主翼を展開させエンジンを回す。
合図と共に甲板上を駆け出し、意気揚々と大空へと舞い上がる。
そこから遅れて『アヴェンジャー雷撃機』も次々に飛び上がっていく。
そして同時に英空母イラストリアスからもB.17 ファイアブランドが遅ればせながら発艦していく。
海上自衛隊 第二機動任務群 ほうしょう
「帝国海軍、アメリカ海軍、英海軍より艦載機の発艦を確認しました」
報告を受けた艦長の吉田半亮一佐は待ってましたというような顔で命令を下す。
吉田「我々も遅れをとるわけにはいかん。発艦させろ!」
吉田の命令で甲板上に駐機していたF-35・ヴァルキリーに搭乗員達が乗り込んでいく。
F35は向かって左舷側にあるスキージャンプ式甲板から滑走し飛び上がる。一方のヴァルキリーは右舷側の電磁カタパルトから次々と射出される。
攻撃隊発艦から凡そ1時間後
「ん?」
はじめに異変に気付いたのは、哨戒中のワイバーンロードに跨がる竜騎士であった。眠気に苛まれつつの任務を全うしていた彼は、何やら海の方からやってくる何かに首を傾げ・・・・・・そのわずか2秒後に黒焦げの肉片となって海面へと散らばった。
「目標撃墜」
護衛のヴァルキリーが04式でワイバーンを撃破するが、これでほぼ20騎目である。
攻撃隊の目標は停泊する皇国艦隊とその周辺施設である。
爆装のF35・流星改・アヴェンジャー・アルバコアが意気揚々と直掩機によって作られた道を進んでいく。
帝国海軍攻撃隊を率いるは嶋崎重和少佐である。
彼は操縦桿を握りしめつつ、航路図でアルタラス島の位置を確認した。
嶋崎「このまま行けば後30分で着くぞ……」
何事も無く過ぎて欲しいと彼らは思った。
自衛隊のヴァルキリーや烈風、コルセアといった優秀な護衛がいなかったとしても、この流星改の速度であれば悠々と敵の追撃をかわすことは可能だ。
それでも不安は残る。
緊張と不安が入り混じる中、攻撃隊は遂に目標の首都のル・ブリアスに併設する軍港をその目に捉えた。
嶋崎「見えたッ…‼︎」
淵田はすかさず「トラ・トラ・トラ」のトラ連送を母艦の白龍に向けて発信した。
白龍 戦闘指揮所
この白龍は帝国海軍で初めてCICを導入した空母である。
ロデニウス沖海戦でその利便性や機能性を痛感した小沢は早速独自に研究を開始、情報処理用の電算機の開発も技術者に依頼したところ簡易的なものは完成した。
また電探室も兼任している為、敵が来たとしてもその場で直ぐに報告を受けることができるようになされている。
戦闘時、指揮官はここに移って事の推移を見てその場で直ぐに現場指揮官に命令を伝達できるようにもなった為利便性は確かにあった。
戦闘用の赤色灯と電探の光が薄く灯る部屋の中で、小沢は淵田機からの報告を受け取る。
小沢「嶋崎君達はやってくれたな。陸軍さん達に予定通り、敵の主要施設の破壊に向かうよう伝達してくれ」
「はっ!」
その頃、ル・ブリアス港は阿鼻叫喚の様相を呈していた。
襲撃部隊の先陣を切ったF-35が港湾施設に向けてJDAMを投下、これを破壊する。
何が起こったのか分からずにいる皇国海軍に向けて二の矢となる、帝米英爆撃隊が襲い掛かる。
淵田「ヨーソロ…よぉ〜い……てぇ‼︎」
停泊する戦列艦に対して800キロ爆弾を投下する。
木製の部分が多い為、甲板を易々と貫通するが内部で信管が作動し爆炎と共に一撃で轟沈する。
他の機も続々と水平爆撃、急降下爆撃を敢行していくのを偵察に出ていた日本兵が確認する。
「本部に連絡、作戦開始!繰り返す作戦開始!」
手回し式電話の受話器に通信員が同じ言葉を二、三回連呼しそれを受け取った本隊は部隊を前進させる。
ル・ブリアス近郊 ハイペリオン基地
偶然にも爆撃を逃れた司令室内のリージャック中将の元に敵部隊上陸の報が届けられたのは、最初の爆撃からおおよそ3時間後の出来事だった。
『総数は不明なれどもその数膨大、敵先頭に地竜らしき物体あり』
殴り書きされた報告書を見て彼は現実から目を背けるように眉間の皺を摘んでため息を吐いた。
リージャック「……それで…迎撃に出た部隊はどうなんだ?」
「そ……それが」
同時刻 ルバイル平野
「目標!前方距離一万二千!弾種徹甲。撃ッ‼︎」
首都ル・ブリアスに程近いルバイル平野にて日米戦車部隊はほぼ一方的に皇国陸軍を攻撃し続けていた。
「Fuh!これで今日は3匹目だ‼︎」
「ハハ!あぁにしてもすげぇなこの新型はよ。軽戦車のくせして76mmを積んでる!全く最高だぜ!」
耳をつんざく砲声と共に砲弾が飛び出すとコンマ数秒後には遥か彼方にいた地龍が頭が粉々になって吹き飛んだ。
「ん?今度は歩兵のお出ましか、歩兵を前に出せ!同軸機銃と車載機銃で一掃するぞ」
ハッチを開けて搭載されたM134に手をかけ、発射ボタンを押した。
M2以上の制圧力を戦車に持たせたいと考えた米陸軍が日本からのノックダウン生産を受けて搭載された本兵器はここでもその威力を発揮した。
低く持続的な射撃音は盾を構えて進んでいた皇国兵を次々と盾ごと真っ二つに引き裂いていった。長期的な連射はできないが威力は十分だった。
アレクサンダー「素晴らしい……上出来だ」
一連の様子を見ていたヴァンテグリフトはM3ハーフトラックの荷台から双眼機を覗いていた。
「これなら首都及び敵の総司令部は叩けそうですな」
アレクサンダー「うむ。通信!全軍に通達しろ、古びた騎士どもに我々の力が如何程のものか思い知らせてやれ‼︎突撃だ‼︎」
彼の命令から2時間半後の【PM12:00】アルタラス島駐留軍は壊滅し、現地住民達に手厚いお迎えを受けた日米戦車部隊は『解放軍』と後々まで語り継がれ、ヴァンテグリフトはアルタラス島解放の功績を讃えられ翌月米海兵隊総司令官の職に任ぜられるのだった。
一方で残された警備艦隊は…
海上警備隊旗艦:ヒデル
「なに⁉︎軍港が空襲だと⁉︎」
報告を受けた艦長のダースは部下からの報告を受けて思わず大きな声をあげてしまう。
「艦長!」
ダース「おぉ…そうだったすまない…この事を他に知ってるのは?」
「提督と幕僚…そして私と艦長、貴方だけです」
ダース「何処の者がやったか分かるか?」
「分かりません。空襲を受けたというのが最期だったので…」
ダース「むぅ……」
ダースは腕を組んで考え込むが、二つの選択肢があった。
まず一つ目に軍港に戻って詳細を確かめ生存者を探す事。
もう一つは空襲をやった相手を探し出すという手段だ。
まず仮に軍港に戻ったとしよう、巷で噂の地下組織が襲撃している可能性がある為危険だ。次に敵を探すという手段だが、詳細が分からない為手の打ちようが無い。
謂わば八方塞がりだった。
ダースは考えを整理しようと水平線上に目をやるが、その先に何やら蠢く影を見た。
ダース「なんだ……アレは?」
彼は目を擦ってもう一度よく確かめる。
大きな島と周りに小さなケシ粒があるように見える、よく確かめようと望遠鏡を覗くとそれが島では無い事が瞬時に分かった。
ダース「ふ…船だと⁉︎」
護衛艦:きい CIC
「レーダーが敵艦を捉えました。凡そ25隻」
「例の警備艦か…」
報告を受けた艦長の有賀雄介一佐は静かに頷く。
先程航空隊から空襲成功の報告を受けた有賀は残された役目である、残敵処理に移ろうとしていた。
有賀「進路このまま、主砲射撃用意ッ‼︎」
「主砲、射撃よぉーい‼︎」
有賀の命令で前部に装備された60口径51cm砲がゆっくりと持ち上がる。
それに遅れて戦艦長門の41cm連装砲二基が、アイオワの41cm三連装砲が、各艦の主砲がゆっくりとその砲口を警備艦隊へと向ける。
「照準よし!距離よし!方位よし‼︎」
有賀「余り長引かせると敵さんが可哀想だ。一斉射で仕留める‼︎撃ちー方!始めぇぇ‼︎」
「ってぇぇぇ‼︎」
轟音・閃光と共に発射された砲弾は警備艦隊へ向けて真っ直ぐ飛翔する。
刹那ダース達警備艦隊は爆炎・轟音・水塊が一瞬にして襲い掛かった事により、あっという間に海の藻屑と化したのだった。
M41と征途自衛隊
征途作中に於ける60年代の自衛隊の国内の様子というのがよく分からないので作者の妄想です。
史実と異なり61式が120mm砲装備で次の主力である86式まで大分間があった事、重量50tとかなりの重量である事と北海道を中心に配備されてるであろう事から本州以南の機甲部隊に配備されるのにかなり時間がかかる事から迅速な配備が可能で南方からの敵にも対応可能という観点から年代的にM41が大多数輸入、導入され2000年代まで74式に相当する活躍をした……
という妄想です。