環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:暁司令官
事態急変
中央歴1648年 7月4日
ハワイ・オアフ島 パールハーバー軍港
異世界へとやってきた早10年が経とうとするこの頃、パールハーバー軍港内に設けられた『ハワイ中央作戦本部』のとある一室には各国の高官達が集まりある議題について話し合っていた。
「しかし事実なのか?よりにもよって
寄せられた資料を見ながらアーレイ・バーグ大佐はふと呟いた。
「しかし信頼できる筋からの情報だそうだ。無視はできん」
その横で草鹿任一が念を押すようにバーグ大佐に言った。
バーグ「だがこれはいくら何でもそう言いたくなる。君たちSDFもそう思うだろう?」
「大佐の言い分は分からなくはありません。これでは我々がトラブルメーカーのようですから」
近藤信孝一佐も難しそうに顔を顰めてそう彼に返した。
近藤「ですがウチのSRIの情報収集能力は随一、間違いなんて事は無いと思います」
草鹿「はぁ……まるで神の嫌がらせだな…」
草鹿は頭を掻きながらテーブルの中央に広げられた地図を見た。
地図の南太平洋に相当する地域には大きな赤丸が記されており、そこに向かって大きな矢印と共に『
同日同時国 ハワイ南方15海里地点
バーグ大佐達が魔法帝国復活に対して話をしていたのと同じ頃、ハワイ南方海域では日帝米台加による軍事演習が行われていた。
「しっかし台湾とカナダもってかなりの肝入りだね」
護衛艦さざなみのCDC内のモニターから周辺の状況を見ていた千葉斉人一佐は感心したような呆れたような物言いだった。
「カナダはともかく、台湾は独立後初めての合同軍事演習ですから気合いの入りようが違うんですよ」
横から副長の大竹三佐が答える。千葉と異なり大分歳食った風貌の彼だがもう間も無く定年退職だ。
この演習にはミッチャー中将麾下の第8艦隊の他、山口中将の指揮する第二航空艦隊、そして千葉達の所属する第5護衛隊群にはいずもがある。
訓練内容としてはと実弾を使用した標的演習とオアフ島より飛来する第二飛行教導群所属のSu-27/33との模擬空戦も含まれている。
千葉「気合いと言えば、出港前に米軍の連中もそうだったな。えらく力んでたな」
大竹「あぁそれはほら、独立記念日ですよ」
千葉「そういう事か、それなら気合いも入るわな。そんな日に演習で負けたとは聞きたく無いだろうし」
リラックスした雰囲気がさざなみの艦内で広がる一方、旗艦のいずもではまた違った空気感を一人だけ感じていた。
「どうしたんですか?今朝から何か浮かない顔をしていますが」
高山一佐は司令席にどっかりと座ったまま俯きがちに何かを考えている深町司令に話しかける。
深町「いやな…どうも胸騒ぎがすると言えばいいのか、今朝からどこと無く落ち着かなくてな…」
高山「大丈夫ですよ。初めての演習だからと言って台湾やカナダの連中が誤射しないとは言い切れませんが」
確かに台湾とカナダは特にそうだった。
最新鋭のミサイル駆逐艦「成功」「鄭和」「継光」の三隻に加えて航空巡洋艦「海容」を派遣している。
前者はアメリカが転移後初めて建造したバート級ミサイル駆逐艦を参考に建造された駆逐艦だった。
このバート級はかつて統一戦争で沈んだキッド級ミサイル駆逐艦を参考にアメリカが蓄積した技術力を解放/検証する目的で建造され、台湾の物はそれを独自のものにアレンジしてリファインした仕様となっている。
外観的な相違点としては艦橋のデザインがかつて海自が運用していた「たかつき型」のものによく似たものになっている。
ただ両艦種、否最近の各国海軍のミサイル駆逐艦に共通して言えるのは甲板にMk.41VLSを合計40セルずつ搭載している点かもしれない。
また「海容」は日本のしらね型やちとせ型のような上部構造物を右舷側に寄せたアイランド型として、上甲板は前後に全通した飛行甲板を持っており搭載機も海自がかつて運用していたFV-1Jを中心に搭載している。
そんな彼らの事を深町は思うが、実際の不安は言い知れない別なところにある気がした。
深町「すまないが、少し風に当たってくる」
高山「分かりました。開始時刻までには戻ってください」
軽く頷くと深町はCDCを出てブリッジへと上がる。
ブリッジでは乗組員らが変わらずいつものように操艦や見張りを行っていた。
深町「何か変わった事は?」
「敬礼」
司令の来訪でも慌てずに対応する点はやはりいつもと同じだった。
「はい、特に変わった点はありません。教導群の到着も予定通りですただ…」
深町「ただ…なんだ?」
歯切れの悪い航海長に深町は問いただす。
「はい。今日はハワイ全域で晴れの予報でしたよね?それなのに…」
航海長は窓から空を仰ぎ見てから視線を右舷/南側へと向けて言う。
「この辺りから南方にかけて空が段々と暗くなっているのがどうも……」
確かに彼の言う通り雲行きが南へ向かうにつれてグラデーションのように変化しているのがよく分かる。
深町「うむ……天候の変化なんてそう珍しくは」
言葉を繋げようとしたその瞬間だった。
突然辺り一体が一瞬にして闇夜のように真っ暗になった。それもその海域だけで無くまるで
「⁉︎」
だがほんの一瞬でいつも通りの昼間に戻り、深町をはじめとするブリッジに居た者は茫然としていた。
「い……今のは一体……?」
航海長がようやく声を絞り出して放った一言だったがそれに対する返答が得られるはずもなかった。
だが深町は違った。
深町(まさか………蘇ったのか……⁉︎)
だがこの予想は半分正解であり半分間違っていた。