環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:暁司令官
帰還した各潜水艦より齎された情報がハワイに集約と同時に精査された。
いずれの内容に共通しているのは「伝承にあるような強力な軍隊は何処にも存在しない」という点が挙げられた。
ただ一つ、海自の「じんげい」が魚雷による迎撃を受けたという点を除いて……………
ハワイ・オアフ島
パールハーバー司令部
「それで、我々はどうするのだ?」
参加していたイギリス海軍の幹部が口を開いた。
会議は始まってから既に数日が経過しており、中々答えが出ていない。
先の「じんげい」の一件を受けて日本国および日本帝国とアメリカは攻勢に踏み切るべきという意見だが、イギリスとカナダそれに台湾とオーストラリアは時期尚早とする意見で割れていた。
ただここまで会議が延長すると自ずと判断にも変化が現れるものであり、前者3か国にはやや変化が見られた。
「ここまでの情報を統合すれば確かに相手側が魔法帝国であるという可能性はやや低いというのも分からなくはないが……」
「だが転移のタイミングで世界中が真っ暗になったと報告がある。状況証拠だけで見るなら間違いなく帝国だ!」
「まぁ待て君たちの意見にも確かに一理あるのは確かだが、転移からこれ程時間が経っているのに何もしてこないのは流石におかしいだろ?他国は別として」
日帝軍人を宥めるようにアメリカ軍の参謀が言葉をかける。
現に異変を感じているPRTO各国はそうだが、世界的に見たらまだかなりの混乱が見られる。
第一文明圏ではミリシアル帝国を中心に「対魔法帝国連合」なる多国籍軍を編成すべく各国の勢力が集まりつつある。
第二文明圏はまだ幾らか距離もあるため冷静に行動できている。
ムーは「必要があれば直ちに救援に向かう」と通達してきているが、グラ・バルカスに関しては何一つコメントを発表しておらず勢力圏に危害が及ぶまでは傍観すると決め込んでいる様子だった。
第三文明圏は当初こそ混乱はあったがPRTOの勢力圏ギリギリということもあって中央世界よりの地域に民間人を段階的に疎開させる程度に治っている。
「だが我々もいつまでも手をこまねいている訳にもいかない。少数でもなんでも良いから艦隊を派遣すべきかもな」
「台湾の人間にしては中々良い意見だね。だがそう中途半端な艦隊ではアレだ」
「となると艦隊には戦艦が必要か?」
「まぁ待てそうなると決まった訳では…」
そこから会議はさらに数日間に渡って続いた後、艦隊派遣が決定した。
転移から凡そ一ヶ月が経とうとした頃
パールハーバー軍港から出港したPRTO多国籍艦隊:通称『バトル7』は偵察衛星から割り出された情報を元に「じんげい」への攻撃を行ったアンノウン艦がいるとされる国家のありそうな地域に進路を取っていた。
空母シャングリラ
「ここにきてやっと行動開始か…やれやれハワイでもう少しバカンスを楽しめると思ったのだが」
皮肉を込めた笑みを浮かべてフランク・J・フレッチャーは副官に向かってそう言うと彼も同感ですと言いながら言葉を続けた。
「何も起きないのが一番良いというのが一般論ですが、軍人としては嬉しいようなつまらないようなそんな心境ですな」
フレッチャー「全くだよ」
彼の心中には『不安』の二文字は存在しなかった。
それもその筈だ、派遣されたバトル7の中には多数の最新鋭艦が含まれていたからだ。
イギリス海軍は就役から1年余りのジブラルタル級航空母艦を参加させている。この空母は俗に言う『CVA-01』としてお釈迦になった幻の艦をイギリスが情報やイメージ図から作り出した艦であった。
搭載機はバッカニアと対潜ヘリのみに絞ってあるが、その能力はミッドウェイ級と比較しても遜色ないレベルであった。
事に凄いのはカナダの艦だった。
まず何が凄いのかと言うと存在しない国の戦艦を自国のものとして建造し運用している点だろう。
その筆頭として挙げられるのが戦艦レインボウだ。
名前は1910年代に退役した防護巡洋艦が由来のものだが、その外観は見る人が見ればフランス海軍リシリュー級戦艦と艦上構造物以外が酷似していた。特徴的な四連装砲を三基搭載している他は対空火器にはVADSを転用した対空機銃にエリコン35mm機関砲を搭載している他、ハープーンや連装ミサイル発射装置を備えている。
それだけに留まらず同じく巡洋戦艦ウガンダ。
こちらはドイツ海軍のシャルンホルスト級と8割似通っていた。
主砲は原型艦と同じ物を装備しているが、副砲は唯一異なりアメリカ軍が開発したM1 240mm榴弾砲を転用して開発した連想砲を搭載している。
その他対空火器に関してはレインボウと同様である。
何故あからさま自国の艦ではないのかと分かるものをカナダ人が建造したのかは定かではないが、有力な説として考えられるのは「別に存在しない国の戦艦を我が国の戦艦だと言って使っても文句はないよな?」という細かい事は気にしないカナダ人らしい考え方によるものだと言われている。
空母マグニフィセントに関しても正史コーラル・シー(SCB-110)のような外観をしているあたり、余り周囲の反応を気にしていない節がある。
兎も角、厳重警戒を敷いたバトル7は一時たりともそれを緩める事なく目的地へとひたすら海をかけて行った。
報告は突然だった。警戒に出ていた海自のE-3Bから全軍に「アンノウン艦と陸地に城下町を発見した」との報告が回ったのはパールハーバーを出て一週間が経とうとしていたタイミングだった。
だが彼らに慌てる様子はなかった、彼らは予定通りの行動に出た。
まず前衛に海自のやまとを筆頭に帝国海軍の長門と諏訪を、次にアメリカ海軍のフロリダとモンタナを布陣させ両翼をそれぞれイギリスとカナダの戦艦が固める。
そして後方にはいずもを中心とした空母群を囲むようにして護衛艦や巡洋艦、駆逐艦が陣形を組んだ。
護衛艦いずも
「しかし上は何考えてんだか。いきなりアンノウン艦を対空ギリギリで掠め飛んでその上城の周りを各国の戦闘機隊と一緒に旋回しろだ?」
「全く俺たちはブルーインパルスじゃないっての」
命令を受けたパイロット達は口々に文句を言っているがその表情には全く不満は感じられなかった。
むしろ「こうなって嬉しい」という雰囲気すら感じさせる様子すらある。
「さぁてアンノウン艦からSAMで撃ち落とされんかだけが心配だが行きますか‼︎」
5分後、いずもの飛行甲板よりF-35BとCがそれぞれ二機ずつ発艦しそれに続くようにシャングリラ、ジブラルタル、エアーズロック、海容から続々と少数ながら戦闘機隊が発艦した。