環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:暁司令官
発艦したF-35の部隊は海面から15mの高さを低空飛行で飛んでいた。
『こちらウィンドウズ01。目標との距離150マイル。間も無く索敵圏内に入る』
『ドライブ01コピー』
警戒機からの指示を受けた編隊長慣れた口調で答えた。
『さて…もうそろそろご挨拶といこうか』
『後方の米帝の他各機もスタンバイ完了』
報告を聞いた編隊長:町田一佐は静かにスロットルを上げる。
ここから先全員の命を預かるのは自分の役目、発艦前に軽口叩いていた部下達も気を引き締めているのか一言も発する事はなかった。
聞き慣れたF135エンジンの爆音が不思議と心を落ち着かせてくれる。
町田『見えた』
その声にはこれといった感情は込められていなかった。
ただその一言でパイロット達の集中力を叩き起こすには充分だった。
だんだんと視界に大きくなってくる一隻の護衛艦の姿が映し出される。
見た目はよく見る現代的なミサイル駆逐艦ー日本では護衛艦ーのフォルムそのもの、だが微妙に違うと言えば違った。艦橋はこんごう型護衛艦のそれによく似ていた。他
は特に差異は無いように見受けられるが今はそれよりも、彼らの鼻先を掠めて飛ぶ事がやるべき事だった。
堕とされる確率?勿論ある、だがそうとも言い切れない。
町田は静かに祈った。誰も何も起こすなよーと向こうが撃つならこちらも撃たねばならない、逆に自分達から仕掛ければ向こう側も撃つ条件を満たしてしまう。
そして気がつけば艦の細部まで見える距離にまで達していた。
遠目ながらウィングにいる乗組員の顔も見える。
町田(怖いだろう…恐ろしいだろう…だがそれは我々も同じ事だ…‼︎)
彼は恐怖を押し殺すように操縦桿を引き起こす。身体中の血液が下半身の方に流れそうになるのがじわじわと伝わってくる。
気がつけば高度は150m前後にまで上がっていた。
周囲を確認すれば僚機は一機も欠けている様子はなかった。後続の部隊も上手く高度を上げるなどして様子を伺えたようだ。
『ウィンドウズから各隊へ告げる。不明艦の奥地に陸地を確認した。現状の高度を維持しつつ周辺地域の偵察を開始せよ』
『ドライブ01コピー』
再びスロットルを前に倒す。その手にもはや迷いや恐怖は無かった。
セイロード城での極秘会談を行っていた蕪木紀夫の元にその一報が入ったのはF-35がいぶきの真上を通過したのとほぼ同じタイミングだった。
蕪木「なに?それは本当か⁉︎」
手にしていた無線機に向かって彼は珍しく声を荒げていた。
『間違いありません。機数は10前後。最初に通過した機体は我々の目が正しければアメリカが配備を始めたばかりのF-35で間違いありません』
蕪木は無線機を目にしたまま足早にベランダへと出て正面に見える海を凝視した。
「どうしたのじゃ、カブラギ将軍」
彼の後を追って出てきたのは彼らが拠点としている国ーマリースア南海王国連合の王女ハミエーアだった。
見た目はまだ子供と言っても差し支えない年齢だが、王女というに相応しい技量と風格は持ち合わせている。
蕪木「実は…」
「あれは…⁉︎」
彼が言葉を続けようとしたそのとき、一緒に出てきた加藤修二二等海佐が驚きの声を上げる。
その声に釣られて他の者も思わずその報告に目を向ける。
ある者が見ればそれは漆黒の羽ばたかない龍に見え、ある者からすればそれは最新鋭の兵器に見える。
4機のF-35はそのままセイロード城の真上を悠々と通過して、今度はその街並みを一望するかのように大きく旋回を始めた。
蕪木「迎撃は可能か?」
蕪木は冷静に無線機の向こうにいるいぶきの艦長に問いただした。
『無理です。
蕪木「なに⁉︎」
ここに来て同族の、それも同じ組織と来て流石の彼も困惑を隠せなかった。
何をどう説明すべきか、いやそもそも彼らは何者なのかも分からない。
自分達の持ってるはずのない装備に、その仕様まで大きく異なる以上、彼らが自分達と同じ世界の自衛隊とは限らない……
そういつになく蕪木が頭を抱えるのを見て加藤も現状がただならぬ事態であると言う事は百も承知だった。
横でカルダが何やらハミエーアと言葉を交わしてその場を足早に去った。
恐らく出るつもりだろうがそれを止めるには間に合わない。
いや、仮に間に合ったとて他の戦士団の者がアルゲンタビスに乗って空へと上がろうが無駄足だろう……
そう加藤が思い詰めていると誰かが肩を叩いている、そちらに顔を向ければ陸自の彼ー久世啓幸三等陸尉ーが海を指差しながら言う。
久世「加藤二佐…あれって……もしかして」
彼の指差す方はー海だ。この世界に来て幾度と見て綺麗だと思う海だった。しかし今回はそこに自分達の世界では絶対にあり得ない代物の数々があった。
天高く聳える様々な形をした檣楼、前部に備えたーいぶきのそれは比較にならない程巨大な主砲、そしてその船体の大きさ。
確かいぶきは『灰色の魔王』と巷で呼ばれていただろうか?
その異名は彼らのほうが相応しい。
加藤「ハハハ……今度は戦艦かよ……」
こちらに向かって進んでくる戦艦の大群を前に加藤は諦めを通り越して笑いが出た。
異世界だから何が起こっても不思議ではない、そして驚く事はないと思っていたがこれはもう笑うしかなかった。
加藤二佐が壊れたのかと久世が心配そうに見守る横で彼の腕を引く1人のエルフがいた。
「ねぇ…アレもクゼ君達の…ルーントルーパーズの仲間なの……?」
久世「あ……あぁ…あれは……」
そのエルフーハイエルフのルーに聞かれた久世はなんとか言葉を搾り出して答えた。
久世「…あれは、やまとだ……」
ルー「ヤマト……?」
ルーは久世の視線の先にある一隻の巨船に目を向けた。
久世にとってみればそれは確かに現代的な護衛艦のような見た目をしているが、そのシルエットにははっきりとその面影が残っていた。
かつて世界最強の戦艦として生まれて、その力を発揮する事なく世界の新しい波によって沈んだ日本人の誇りとも言うべきその船の名はー大和ー
否ー超大型護衛艦やまとー
やまと CDC
「なるほど、結構綺麗な場所じゃないか」
CDC内のディスプレイに映し出されたマリースアの街並みを見ながら伊藤は頷く。
伊藤「まぁこんなやり方でいいとは思わないが、始めちまったもんはしょうがない…君もそうだろ?」
伊藤は振り返ってあの特徴的な名前の砲雷長を呼んだ。
伊藤「
藤堂「自分はこのトリガーを、あの街と彼らに向かって引く事がいなように祈ってます」