環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:暁司令官
ニホンレットウ諸島にPRTO軍とルーントルーパーズが移動してしばらくが経った頃、継承帝国が強力な存在を味方につけた事とその存在が動き出したとの情報が各所を廻っていた。
これを受けてマリースアとその周辺国がこちらの味方になったがPRTOとしてはその点は内心どうでも良かった。
問題は帝国が味方につけたとされる存在だった。
ハワイ・オアフ島
中央作戦本部
各国の各方面のトップが集まったこの会議室ではある一つの議題に対しての内容が独占していた。
「貴国の持つトマホークや
アメリカ太平洋軍司令長官に就任したチェスター・ニミッツの言葉に自衛隊の幕僚は渋い顔をする。
「残念ながら我が国にもこれほどの規模の敵を瞬殺するような兵器は現状存在しません」
その言葉に室内は唸り声と重苦しい空気に包まれる。
この議題に上がるほど今回の敵は強力なのだ。
「それにしても…
モニターに映し出された衛星画像を見ながら英軍戦略軍司令官が呆れた様子で答える。
彷徨える竜巣
転移してきた世界に伝わる幻の浮遊島。
竜人族と呼ばれる古代種族が住んでいるとされており、彼らにとっても未だに謎の多い存在らしい。
これがニホンレットウ諸島へと進路をとりつつあるとの情報を衛星でキャッチしたPRTOは対策案を話し合っていたが、これと言った結論は至っていない。
「核が使えればな……」
誰かがポツリと呟いた。
ニミッツの副官に抜擢されたアーレイ・バーグ大佐だ。
ニミッツ「大佐。仮に使えたとしてもあの島を沈められるとは限らんぞ?それにだ、放射性物質が風に乗って何処に流れるか分からん以上核も最適解とは言えん」
バーグ「ハッ失礼しました」
現在日本の技術規制緩和により、反応動力に関する情報もここ数年で各国に渡りつつある。
しかし各国の反応兵器ー特に原爆や核ーに対する研究は慎重であった。
その要因の一つともいうのが統一戦争緒戦で起きた在日合衆国艦隊壊滅の情報は大きい。
短時間で反応動力空母2隻が大破、1隻が撃沈、通常動力空母1隻も沈められるという余りの被害は充分衝撃的であり各国が慎重になるのも無理はなかった。
「とにかく、この敵は通常兵器による撃破しかないというのが分かったな」
山本五十六作戦本部長もやむ得ない様子で言う。
反応兵器そのものが使えない、使えたとしてもその先に不安がある。
その点では各国の指揮官らも納得した。
別の議題は現地でも上がっていた。
土居「やはり、避難はできませんか」
ニホンレットウ諸島に置かれたPRTO軍指揮所に土居一佐はいた。
多数の援軍を迎え入れると同時に彼らは現地へと移り住み始めた元戦奴や流れ着いた他の部族達だけでも二万人近く居る。
そこが戦場になったとすれば、あとは目に見えてる。
「……土居君、君の言いたいことは我々としても痛いほど分かる。だが無理だ」
腕組みして彼の方を向いてるのはルーントルーパーズ(陸自)を預かる陸上自衛隊第八師団の柳田林太郎陸将であった。
柳田「避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせる事だ。簡単に言わんでくれ」
彼も土居の意見はよく分かる。同じ自衛官としても、日本人としても。
柳田「それにだ。仮に彼らを島の外に出せたとして、それを受け入れる場所は?今更"もと来た大陸に帰ってくれ"と言っても絶対に彼らは"はい"とは言わんだろうし、それにマリースアに受け入れを要請しても"はい分かりました"なんてすぐには返ってこん。待ってる間に敵が来るかもしれない」
土居「…だから身近なフィリピンやオーストラリアに……」
柳田「そこまでの道のり、いや船旅に彼らが耐えられると思うかい?輸送船や航空機を使ってうまく現地に送り届けられたとしてだ、受け入れる準備のできてない現地民との間で問題は多少なり起こる」
何事にも準備というのが必要だ。
それができてない、何かしらの不備があっては必ずと言っていい程問題は起こる。
柳田「……だから土居君、私としてはこんな事は言いたくはないが………島民の島外への避難は諦めてくれ」
土居「……分かりました」
土居は諦めて指揮所を後にする。だがまだ完全に絶望し切ったわけではない、宿営地に戻るまでの道で土居はふと陣地や塹壕の設営を行ってる部隊に目を向けた。
彼らがその話を聞かされたのはニホンレットウ諸島へ物資が届き始めた頃だ。
"遠く離れた北の大陸に別の地球からやってきた自衛隊がいる"
そう聞かされたときは耳を疑ったものだ、それにその異世界の自衛隊までも協力するも聞いたときは余計に混乱した。
彼らが現地にやってきて顔を合わせてもイマイチ実感は違う世界の自衛官という感じは湧かなかった。
彼らの歴史と自分達の歴史が酷似してるからだろうか?
世界観が一緒だから?
識別の為
土居「まさか他にも自衛隊がいたとはな……」
特地派遣群もニホンレットウ諸島に少なからず自分達の装備を持ち込んでいた。
【35mm2連装高射機関砲 L-90】【87式自走高射機関砲】【75式155mm自走りゅう弾砲】【74式戦車】といった土居達にも馴染みのある兵器を多数取り揃えている。
だがそれ以上にPRTO軍もそれ以上のものを持ち込んでいた。
帝国陸軍は多数の【七年式三十糎榴弾砲】を半没式陣地に設置して強固な陣地を構築。
アメリカ陸軍はお得意の物量と生産能力で【M114】【M101】【M50】等の自走砲や榴弾砲を島の各所に配備。
イギリスは【ランドマットレス】の配置や【BL 7.2インチ榴弾砲】の到着を急いでいる。
台湾、カナダは共にブービートラップや地雷の設置を集中的に行っている。
並行自衛隊は【25式地対艦誘導弾】【12式地対艦誘導弾】といった事実上の巡航ミサイル。【03式中距離地対空誘導弾】【11式短距離地対空誘導弾】【93式近距離地対空誘導弾】【パトリオット】等の防空兵装だけでは飽き足らず、教導連隊所属の【82式中戦車改二型】【68式中戦車改三型】を呼び寄せている。
豪州陸軍は先述の【パトリオット】以外にも貴重な【HIMARS】や【M1エイブラムス】などの旧世界の合衆国のお土産を配置している。
航空戦力も空母や基地航空隊を含めれば相当の数と種類の機体がこのニホンレットウ諸島とその周辺に存在する。
ニホンレットウ諸島は鉄壁の要塞へと変わりつつあった。
陽が水平線の向こうへ隠れようと徐々に迫りつつある時間になり、スコップを振るう手がようやく止まる。
椰子の木の合間で、砂だらけの小隊が整列している。
久世は重労働に疲れの色が見える部下達に長い訓示はせず、手短に作業を終了させた。最近はアメヨコ・ロードでくつろぐのが隊員達の楽しみだ。宿営地まで全員を戻すより、現地解散させた方が皆喜ぶ。
久世「本日の作業終了、各班ごとに別れ」
「別れます」
敬礼が終わると、整列していた隊員達が一斉に弛緩した。
これから課業後、自由時間だ。久世は幹部として、まだ襟を弛めるわけにはいかないが。彼は砂浜に出て他の部隊の作業具合を確認した。
現在陸自が行っているのはいわゆる陣地構築で、伝統的な陸自の防衛戦略である水際防衛の準備だった。
日本は島国である。よって、海岸線に強固な防衛陣地を作り、敵が内陸部に上陸侵攻するのを阻止するのが基本方針である。この島でも、それは常識的な判断といえた。
いえた、のだが……
久世「なんだかなぁ……」
久世はここのところ陣地構築の必要性に疑問を感じつつあった。
何せ各国ー特に並行自衛隊ーが大量の防空兵装や戦闘機を持ち込んでくる。海に目を向ければイージス艦もいれば時代錯誤な戦艦もいる。
幾ら異世界の人間が恐る古代種族の住処といえど、これだけの超戦力があればこの島を守りきれるような気しないではなかった。
だが《攻撃があたる》のと《確実に仕留められる》のとでは訳が違う。
最悪、島のど真ん中に強行着陸してくる可能性も捨てきれない。
その為の装備はあるに越したことはないが……
「やぁ、こんにちはクゼ戦騎長」
久世「ああ、こんにちは」
「だいぶ進んだんじゃないか?これで帝国が来てもへっちゃらだね」
土砂や切り倒した木の製材など、作業を全面的に手伝っているライカン族やキュルク族の人々が笑顔を向けてくれる。
久世は、自分達が島を守る手伝いをしているのが嬉しそうな彼らに、PRTO軍の容赦ない防衛計画の内容を話す気になれなかった。
彼らの助力もあって、確かに陣地構築は予想よりも早く進んでいる。一週間はかかる陣地がほぼ三日かからず完成している計算だ。
海側に向けた銃眼を備えた半地下式陣地は大小含めて数百カ所に昇る、その陣地間を連結する塹壕も完成しつつある。切り倒した木を加工してのように尖らせて敷設し、上陸障害物も置く予定だ。
要塞砲や榴弾砲の敷設は各自でやっているようだが、久世にもその全貌は分からない。
鉄壁の守りである。敵がその通りに来てくれれば、だが。
久世はそんなことを考えていると誰かが彼に声をかけた。
「あー君、ちょっといいかな?」
久世が振り返った先には三十路で何処か冴えない感じの陸上自衛官が立っていた。
久世「はい。どうかしました?」
見慣れない顔だ。
並行世界の自衛隊かと思ったが、ふと彼の左腕に【特地派遣群】の腕章が目に入る。
「実は君たちのところの指揮所に作業内容の報告に行きたいだけど…まだ場所を覚えてなくて…」
申し訳なさそうに言う彼の肩には二等陸尉を示す階級章が付いていた。
久世(あ、こんな人でも上官なんだ)
久世は内心そう思いながらも彼から感じる妙な雰囲気に親近感のようなものを覚える。
久世「良いですよ、同じ自衛官ですし。僕は久世啓幸です」
伊丹「俺は伊丹耀司。よろしく久世くん」
互いの自己紹介をした二人の自衛官は互いに握手を交わした。
【82式中戦車改二型】【68式中戦車改三型】
統一戦争で大多数が鹵獲される。
半数以上の68式は合衆国や英国などの国に輸出される。
82式も一部の車輌が合衆国に渡るが、その大多数は未だに日本国内にあり実験部隊や教導部隊を中心に運用されている。