環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】   作:短号司令官

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昇れよ 黒煙 濛々と

 

中央暦1639年 4月1日 夜

 ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

 

 

 ロウリア王国はロデニウス大陸の西半分を領有する大国であり、人口は3800万人を数えるが、亜人は全く存在していない。

 

それもそのはずで、ロウリアは国是として『亜人撲滅』を掲げており、この為クワ・トイネ公国・クイラ王国とは常に緊張状態にあった。

今、その王都ジン・ハークの中央にあるハーク城で、御前会議が行われようとしていた。

 

会議場には国王であるハーク・ロウリア34世の他、宰相や将軍達など国家の重鎮達が顔を揃えていたが、中には薄気味悪い黒装束の男達も何人かいる。

 

会議場には松明が幾つも灯され、参加者たちの顔を明るく照らしていた。

 

進行役である宰相のマオスが会議の開催を厳かに告げると、国王がまず最初に口火を切った。

 

「皆の者、私はこの場を借りて礼を述べたい。ある者は厳しい軍事訓練に耐え、ある者は寝る間も惜しんで戦争の財源確保のために奔走し、またある者は武器と兵器の生産に注力し、ある者は命を賭して敵の情報を届けてくれた。これらの者達の苦労と努力があったからこそ、我が国は悲願である大陸統一と亜人――害獣どもの撲滅に向けてようやく踏み出せる。本当にご苦労であった」

 

この一言が何を意味するか、そうロウリア王国によるクワ・トイネ、クイラ王国への侵攻であった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

中央暦1639年4月24日

 

 

クワ・トイネ公国が誇る一大軍港『マイハーク』に基地を置く、クワ・トイネ海軍第2艦隊は、保有する艦船のほぼ全てを集結させていた。

マイハーク湾を埋め尽くすが如くに停泊している木造の帆船は帆を畳み、水兵らが物資の積み込み作業を行っている。

 

 

「ふむ…これだけの艦船が揃っている所を見ると壮観だな」

 

 

そう呟くこの男、クワ・トイネ海軍第2艦隊司令官『パンカーレ』提督はオペラグラスでマイハーク湾を眺めている。

 

 

「全くです……ですが、敵は4000隻の艦船を保有するロウリア海軍です。はたしてこの艦隊の中でどれだけの人間が生き残れるか……」

 

 

側近が漏らした本音にパンカーレも、敵の圧倒的な物量の前に不安を感じざる得ない。

 

ロウリア王国による侵攻を何としても食い止めるため、クワ・トイネ公国は持てる戦力の全てを投じて、ロウリア軍による侵攻に備えつつあった。

今マイハーク湾に停泊しているこの第2艦隊も、ロウリア海軍が大艦隊を率いてマイハーク港に出港しつつありとの情報の基に用意された戦力である。

 

 

「提督!海軍本部より魔信による連絡が入りました!」

 

パンカーレ「読め!」

 

「はっ!『本日、日本国より護衛艦7隻、日本帝国より第一艦隊、アメリカ合衆国より太平洋艦隊、英国海軍より東洋艦隊、オーストラリアより護衛艦6隻が援軍としてマイハーク港に到着する。我々より先にロウリア艦隊に攻撃を行うため、観戦武官を彼らの戦艦に同乗させるよう命令する。』以上です」

 

パンカーレ「ふむ……第一艦隊と太平洋艦隊、東洋艦隊とやらの数は?」

 

「はい。第一艦隊は凡そ50隻、太平洋艦隊もほぼ同じ数です。東洋艦隊は多くて20隻と」

 

パンカーレ「三方、そして日本国とオーストラリアの船を合わせて凡そ113隻…我が艦隊を合わせてもたったの163隻か……」

 

パンカーレは被っていた帽子を取ると怒りに任せて地面に叩きつけた。

 

パンカーレ「ふざけているのか⁉︎10分の1にも満たない数で戦えだと⁉︎……ハァ……これで我々は終わったな……ならばせめて悔いのないよう最期を遂げる覚悟をするか……」

 

「それに観戦武官の派遣を要請するなんて…正気の沙汰とは思えません」

 

パンカーレ「そうだったな。して誰が行く?」

 

「……でしたら、私が参ります」

 

パンカーレの横から側近の一人であるブルーアイが名乗りを上げる。

 

パンカーレ「おぉ君か…だがいいのか……?」

 

ブルーアイ「はい、自慢するつもりはありませんが、私はこの中で一番剣術の腕が立ちますから」

 

パンカーレ「……分かった。すまんが、頼むぞ」

 

 

 

その日の昼過ぎ

 

マイハーク港は蜂の巣をつついたような騒ぎに見舞われていた。 

 

「うわぁ!何だあのデカブツは⁉︎」

 

「島が……島が近づいてくるぞ‼︎」

 

海軍基地や水兵達は、マイハーク湾沖合い現れた巨大な影にたちまちパニックになる。

 

パンカーレ「……なあ、私の目の錯覚かもしれんが……あの先頭にいる船、とんでもなく大きくないか?」

 

ブルーアイ「……ええ、そう見えます。常軌を逸した大きさですね……まるで山を浮かべたようです……」

 

 パンカーレ提督とブルーアイが呆然とした表情で、先頭に立つ船――戦艦を指さしながら言うと、他の幹部も口々に騒ぎ出す。

 

「なんて大きさだ……」

 

「まさかあれが日本帝国とアメリカの船なのか⁉︎」

 

その騒ぎは軍港のみならず、付近の町にも飛び火してゆく。兵士住民を問わず、誰もがあんぐりと口を開けて海の方角を見ていた。

すると、一隻の戦艦から小さな船――内火艇が降ろされ、港に向かってきた。 内火艇はパンカーレ達の居る桟橋に接近すると、中から紺色の軍服を着た軍人が現れ、パンカーレ達に敬礼した。

 

 

「クワ・トイネ公国海軍、第2艦隊長官のパンカーレ提督とお見受け致します。自分は連合艦隊司令部、連合艦隊司令長官の山本五十六と申します」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

同日夕刻

マイハーク港外 連合艦隊旗艦戦艦『紀伊』艦橋 

 

山本「それにしてもよかった。無事に到着できて」

 

宇垣「全くです。未知の海域故多少手こずりはしましたが、皆よくやってくれました」

 

艦隊は台湾島沖で米太平洋艦隊と合流の後マイハークへとやってきていた。未知の海域故当初より遅れが発生すると思われていたが無事到着する事ができた。

 

山本「宇垣君、もうそろそろじゃないか?海上自衛隊が到着するのも」

 

宇垣「時間的にも、もうすぐかと」

 

宇垣がそう言った直後、艦橋見張り員が声を上げた。

 

「北方より艦影! 海上自衛隊と豪海軍であると思われます!」

 

山本「来たか……どれ、見てみるか」

 

山本が双眼鏡を覗くと、艦橋の参謀たちもそれに倣う。

 

双眼鏡越しに見えた姿は、戦闘艦としてはシンプルな艦影が多数確認できた。大砲が一門しかない妙に角ばった艦がそうだ。

しかし別の4隻が彼らにとって規格外であった。

 

のっぺりとした艦橋が向かって左側にあり、不恰好な甲板(アングルド・デッキ)を持った2隻の空母。

その上には零式艦戦を遥かに上回る大きさの戦闘機が多数見受けられるが、これはジェット戦闘機であろう。

 

そして残る2隻。両者とも外観上の形状は酷似しているが片方は自分達の乗る紀伊型を裕に超える巨大な船体を持つ。

もう一方も大きいがこれが巡洋艦に見える程だ。

 

山本「空母にしても戦艦にしてもでかいな……」

 

宇垣「あれが…未来の大和の姿……」

 

何れも灰色の塗装が施されており、全体的に暗い色合いの帝国海軍の艦と比較すると、戦闘する船という感じがあまりなさそうであった。

しかし、帝国海軍・アメリカ海軍の参謀らは知っている。

その船が内に秘めている戦闘力は、自分たちが保有するどの艦よりも高いことを。

 

「なんと……巨大な戦艦だ…」

 

同じ頃、太平洋艦隊旗艦『メリーランド』の艦橋よりハズバンド・キンメル大将も双眼鏡で第二護衛群の『きい』『やまと』を見ていた。

 

キンメル(噂通りならそれぞれ20インチ砲と18インチ砲を搭載していると聞いたが……明日はその世界最強の砲撃を拝めるのか…)

 

劣等感はキンメルには無かった。寧ろ同じ海の男として頼もしくも感じると同時に高揚感に満たされていた。

何しろ世界最強の艦砲を搭載した戦艦が居るのだ。

 

キンメル「明日が楽しみだ」

 

キンメルはそう言って微笑みながら艦橋を後にする。

 

 

護衛艦やまと 艦橋

 

「あれが幻の《八八艦隊》か…」

 

やまと艦長の伊藤誠二郎一佐は感慨深そうに旧海軍の艨艟を見渡しながら呟いた。

 

「本当ですね。それに本来なら会う筈の無かった先輩方もいるそうですし」

 

伊藤「加賀型…天城型…紀伊型…いずれは過去の自分とも会う事になるかもな…」

 

「《きい》からすれば自分と同じ名前の船や沈めた相手がいますから、尚更不思議な気分でしょうね」

 

伊藤「あぁ…だがこちとら46cm砲だがそれだけじゃない。イージスシステムもあるし、連中のできない事は粗方できる」

 

「正直過剰戦力じゃないですかね?これって」

 

伊藤「ぼやいても仕方ないぞ。相手さんは4000隻だぞ?これくらいのお出迎えは必要さ」

 

艦橋内で会話が弾む中で伊藤は連合艦隊を見ながらある想いを巡らせていた。

 

伊藤(あの中に…………俺の曾祖父さん(伊藤整一)がいるのか……)

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同日夜

 ブルーアイの日記より

 

私は本日、無事に大日本帝国海軍の戦艦『紀伊』に搭乗することができた。

 

この艦は異常なほど大きく、また夜でも艦内は明るく、一定の温度が保たれている。

 先ほど山本司令長官と会見したが、彼らは我々よりも先に敵と交戦し、これを撃滅するらしい。既に敵艦隊の位置は掴んでおり、予想される進路も速度も把握できているという。

 

私は「無茶だ」と言ったが、山本長官は笑って「大船に乗ったつもりで居てください」と絶対的な自信を見せていた。

 

なるほど、水兵の数は我々の軍船よりも多いし、船上にある塔は上から火矢を射かけるにはもってこいだろう。それにこの船は鉄でできており、矢などで破壊するのは困難なはずだ。

 

また海上自衛隊やオーストラリアの軍船も支援してくれるらしい。こちらの船も負けず劣らず大きいので、同じことが可能だろう。

 

もしかしたら、勝利の瞬間を目撃できるかもしれない

 

 

 


 

 

 

翌日 早朝

 

東の空から朝陽が昇り辺りを朱色に染められていく中、発動機の音を響かせ、後ろに向かって傾けられた煙突から黒煙を吐きながら、艦隊は大陸沖を航行していた。

 

 

 

目指すは敵ロウリア艦隊4400隻である。

 

 

 

 

 

午前9時

 ロデニウス大陸北方海域 ロウリア艦隊

 

 

「いい景色だ。美しい」

 

ロウリア王国軍東方征伐海軍の海将シャークンは、そう独語して後ろを仰ぎ見た。

 

見渡す限り船、船、船で埋め尽くされ、海が見えないほどだ。

6年という月日を掛け、さらにパーパルディア皇国の援助も受けてまで完成させた4400隻の大艦隊。

シャークンは、自らが率いる艦隊の偉容に意気揚々としていた。

 

シャークン「相手はたかだか50隻程度、この戦いクワ・トイネには悪いが圧勝だな」

 

ロデニウス大陸付近の海域を我が物とせんと。ロウリア艦隊は東に向かってひたすら前進する。

 

「提督!前方より何かが飛んできます!」

 

シャークン「何?」

 

 

見張りからの報告にシャークンは一瞬だけ、クワ・トイネのワイバーンを疑ったが、やって来たのはワイバーンではなく、巨大な竹トンボに大きな羽音を響かせながらその場でホバリングする白い鉄の塊だった。

 

 

『こちらは日本国海上自衛隊です。あなた方はクワ・トイネ公国の領海に侵犯している。直ちにこの海域から立ち去りなさい!』

 

 

飛行物体から人の声が聞こえてくるが、シャークンは構わず反撃を指示し、水兵達がバリスタを発射する。

だが飛行物体はそれを容易く回避し暫く真上を旋回した後に、東の方向へと飛び去っていく。

 

「見ろ!我々に恐れをなして逃げ出したぞ!」

 

「お前らなんて怖くはないんだぞ!来るなら来い!」

 

そう水兵達は口々に豪語するが、一連の様子を見ていたシャークンは突然いい知れない不安に襲われた。

 

シャークン(なんだか……嫌な予感がする……)

 

彼の長年の勘がそう言うが、艦隊は再び進み始める。

 

 

 

 

 

米太平洋艦隊旗艦 メリーランド

 

キンメル「what's?」

 

キンメルは幕僚からの報告を聞いて思わず耳を疑った。

 

キンメル「では何だね。MSDFは敵に事前通告をしたというわけかね?」

 

「そういう事になります」

 

「司令、どうします。このままでは我々の奇襲は不可能になりました」

 

キンメル「あぁ分かっとる。だが慌てるな、彼らにどんな事情があるかは知らんがやってしまった以上はしょうがない。そうだとしても、この我々がどうやったら負ける?」

 

キンメルは窓の外の大艦隊を目にして言う。

まさに威風堂々、王者の風格を醸し出す多国籍連合艦隊は敢然と水塊をぶち破って進む。

 

キンメル「我々の勝利は揺るがない。絶対にこれからも、この先もだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!東方向より島の大群のようなモノが見えます!」

 

見張りをしていた水兵からの報告に、シャークンは東の水平線に目を向ける。

 

シャークン「あれは島……回りにあるケシ粒は小島か?」

 

だが彼の記憶の中には、この周辺には小島も岩礁地帯も無い。

 

シャークン「何なんだ?」

 

距離が詰まるに連れて小島達が動いているように見えてくる。望遠鏡で見てみると、その巨大な影の正体が判明する。

 

シャークン「な、何っ⁉︎船なのか⁈」 

 

その正体を見て驚きの表情に包まれた。

 

彼らの目の前に堂々と姿を見せた艦隊は、シャークンを含めた全ロウリア兵の度肝を抜いた。自分達の乗る船より巨大な鋼鉄製の船がそこら中にいる。

 

シャークン「な、何という大きさだ!」

 

彼が呻いた直後、敵船の前に付いている4本の棒が動き始めた。

棒は4本ともこっちを向くと、盛大に煙を吐き出した。

 

シャークン(何だ? 誘爆したの――)

 

シャークンの思考は突然断たれた。

突然前方にいる味方の船が十隻以上、白い水柱に包まれたからだ。船は全て転覆するか、木端微塵となって水夫と共に沈んでゆく。

一拍遅れて、雷鳴もかくやとばかりの音が轟き、鼓膜を叩く。

あり得ないことだった。

 

シャークン「な、何の攻撃だ? まさか――」

 

ロウリア側が狼狽している間にも、他の敵船も棒を向けていた。

 

シャークン「まさか………砲撃なのか!」 

 

自分達の常識外の破壊力を誇る、最初の砲撃での破壊でパニックになっていたロウリア艦隊を一瞬で更にパニックに陥れた。 

 

シャークン「何て威力だ!パーパルディアの魔導砲なんかの比じゃないぞ!」

 

様々な砲弾の爆発による衝撃波と波は、一度に何十隻単位のロウリア艦を吹き飛ばしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』

 

「初弾命中!」

 

帆船相手に主砲は勿体ない気もするが、相手は警告を無視して来た為こちらも盛大にお出迎えしなくてはならない。

 

フィリップス「素晴らしい。まるで海上の大演奏会だな」

 

絶え間なく続く砲撃音を聞きながらフィリップス提督はティーカップ片手に呟く。

辺りを見渡せば廃材と化した船だったものが敵水兵らと共に辺りを漂っている。

 

アーサー「えぇしかし陛下は嫌な顔をするでしょうな」

 

フィリップス「そうだな。これは我々海の漢の嗜みだからな…こんな事なら我々もセント級を無理矢理でも持ってくるべきだったかな?」

 

アーサー「それはお勧めしません。不安定とはいえ機関部に異常があっては何があるかわかりません」

 

このとき、派遣された東洋艦隊にはセント級は含まれていなかった。

その理由はシンガポールにて出港準備を整えていた最中、一番艦セント・アンドリューの燃料タンク及び配管系に亀裂が発見された事にある。

東洋艦隊所属の他艦も大事をとってセント級は、現在帝国日本は佐世保に回航され整備を受けている。

 

すると突然一際大きな砲撃音が響くと同時に閃光と水柱が起こる。

 

アーサー「⁉︎」

 

フィリップス「なんだ今のは⁉︎」

 

「海上自衛隊の……きいの砲撃です‼︎」

 

見張り員が片耳を抑えながら報告する。

きいの方を見ると主砲の周辺に煙が漂っていた。

 

アーサー「今のが51cm砲の砲撃……凄まじいものだ……」

 

余りの衝撃に一同は言葉を失っていたが、アーサー参謀がようやくそう口から絞り出した。

 

フィリップス「アレが……20インチ砲……」

 

フィリップス提督は改めて《きい》の方に視線を向けた。

派遣された艦隊の中でも最大級の巨体を誇るその船体はいつ見ても釘付けになる。

 

フィリップス「アレこそまさに海の王者……いや、帝王だ……」

 

 

キンメル「うぅ……これが…20インチ砲か…おい大丈夫か…?」

 

イギリス艦隊よりも近場にいたアメリカ艦隊では余りの砲撃音の大きさにキンメルやその場に居た幕僚らも何名かが転倒していた。

 

「イ…yes sir…一瞬鼓膜が破れたかと思いました」

 

キンメルは司令席にしがみつきながらようやく立つ。

 

キンメル「凄まじいものだ……だが我々も負けてられん‼︎撃ち続けろ‼︎ロウリア艦隊など我々の敵ではない‼︎」

 

耳を弄する砲声と閃光が辺りを包むが、新たな刺客が彼らに向かっていた。

 

 

『きい』CIC

 

「艦長、対空レーダーに感! 敵味方不明機接近中! 数、およそ250‼︎」

 

CICより出された警報に、艦長の有賀は唸り声を上げた。

これが敵であることは、西側から来たことで確信している。おそらくは「魔力通信」とやらで敵艦隊が呼び寄せたのだろう。

数秒間思考をめぐらし、結論を迅速に出す。

 

有賀「よし、準備出来次第迎撃する!『しょうかく』『エアーズロック』にも伝えて航空隊を上げろ!対空戦闘用意!帝国海軍とアメリカ海軍、英海軍にも連絡せよ!!」

 

「了!」

 

 

紀伊

 

「長官、海上自衛隊より緊急電です!『敵機多数来襲、これより航空隊を持って迎撃する』とのことです!」

 

山本「ほう、空襲か。来るとは思っていたが、意外と早いな。通信参謀、ニ航戦に連絡、直掩機の手配をさせろ」

 

「分かりました。伝えます」

 

護衛艦 『しょうかく』

 

アラームが鳴り響く艦内をパイロットスーツに身を包みヘルメットを片手に持ったパイロット達が一斉に甲板に駐機されているF-14J改S型へと走る。

 

飛び乗ったパイロット達はヘルメットを被り酸素マスクを装着して風防を閉めてカタパルトデッキへと機体を進める。

滑走シャトルにフックを引っ掛けてアフターバーナーを点火し主翼を開く、デフレクターが熱を受け止める。管制員のハンドサインと同時に蒸気カタパルトが勢いよく射出され、雄猫達は次々へと異世界の大空へと舞い上がる。

 

シャークン「クソ!こんなのが戦いであってたまるか!!」

 

激しい砲撃に晒さられ、大量の海水を浴びながらシャークンは叫ぶ。

既に艦隊のパニックは頂点に達しており、魔信を通じてロウリア軍のワイバーン部隊に援軍を要請したが、彼らが到着できる頃まで自分が無事で居られる保証はない。

 

シャークン「たったあれだけの船のために我が海軍の栄光は……消滅すると言うのか………我が艦隊に満たない敵艦隊のために……こんな現実が………こんな現実など……認められるものかぁぁぁ!!!」 

 

シャークンが吼えると同時に、副官が駆け寄ってきた。

 

「提督!!西の空を!」

 

シャークン「ん?……おぉ!!来たか!」

 

 

西の空を見ると、空を埋め尽くさんばかりのワイバーン部隊がやって来た。援軍として呼び寄せた、ロウリア軍のワイバーン部隊であった。

 

シャークン「よし!ワイバーンが来れば怖いもの無しだ!ワイバーンが敵の目を引き付けたら一気に距離を詰めるぞ!」

 

 

 

しかしそれに対し、既に魔の猫達は忍び寄っていた。

 

「藤沢見てみろ、偉大な先輩が飛んでるぞ」

 

コールサイン:カナリー1のパイロット榊翔一が言う。

後部座席の藤沢學は身を乗り出して見る。

 

藤沢「うわぁ凄いですねぇ、オタクが見たら大興奮でしょうね」

 

彼らの視線の先には先んじて上がっていた直掩のF4Fと零式艦戦が左前方を飛行していた。

 

機体を滑らせるようにして直掩隊に近づいてパイロットに手を振る。

相手側も最初は驚いたような表情で見ていたが、直ぐに頼もしそうに敬礼やハンドサインを返した。

 

藤沢「相手は中世の帆船群にドラゴン、それに対してこっちは戦艦にイージス戦艦に空母にジェット機とレシプロ戦闘機、もうお祭り状態ですよ」

 

榊「確かにな、まぁ連中には悪いがこっちも仕事なんでな。堕ちて海の藻屑になってもらうか」

 

榊は操縦桿を倒して敵の正面に回り込むように他の部隊を先導して進む。

 

目標をロックしたレーダーがアラームをけたたましく鳴らす。

 

榊「カナリー1目標を捕捉、Fox-2!」

 

藤沢「Fox-2!」

 

発射スイッチを押すと機体胴体部に搭載された04式空対空誘導弾が一斉に各機から発射され、何も知らずに迫ってくるワイバーンの群に突進していく。

 

 

 

魔力通信を受けて海域へと向かっていた竜騎士団は悠々と空域を進んでいた。

 

「ん? あれは何だ?」

 

目の良い竜騎士が真っ先に気づくと、他の竜騎士たちも気づきだす。

しかしそれは、彼らにとっては却って不幸であったのかもしれない。

竜騎士たちが見つけた「それ」は、一瞬で竜騎士たちとの距離を詰める。

 

「光の――矢⁉︎」

 

彼らが叫んだ瞬間、一瞬にして味方の半数近くが爆発と同時に肉片へと変貌し辺りに死骸を撒き散らす。

運良く避けたとしても光の矢はその跡を追ってくる為逃げられた者は運良くターゲットにされなかった者と後方で何も知らない味方だけであった。

 

「いっ…一体何が…あぁっ⁉︎」

 

次に彼らの前に現れたのは白色の機体に赤い日の丸をあしらった戦闘機とネイビーブルーに塗装された二種の戦闘機達だった。

先程とは打って変わって有視界戦闘となるが、騎士団には今度は7.7mmと12.7mmの銃弾の雨が降り注ぐのだった。

 

これを見た生き残りは果敢にも挑むが蜂の巣にされるか、逃げても空対空誘導弾の餌食になるという2パターンの末路を辿った。敵艦隊の姿を捉える事なく。

 

その光景を第二航空戦隊旗艦の飛龍の艦橋より双眼鏡で眺める山口多聞の姿があった。

 

山口「今日は……勝ったな…」

 

 

シャークン「我々は……一体何と戦っているんだ……」

 

ロウリア艦隊海将シャークンは絶望に染まった顔で、辛うじてそう呟いた。他の幹部や水夫達も、例外なく驚愕と絶望の表情をしている。竜騎士団が頭上に来た時、誰もが「勝った」と歓声を上げ、笑顔でワイバーンを見上げていた。しかし敵はその行為を「無駄だ」と嘲笑うかのように、ワイバーンを次々とよく分からない攻撃――おそらく魔導兵器――で撃ち落としていった。

 

竜騎士団は全滅、敵はこちらを寄せ付けない攻撃を繰り出す大軍団。

もはやいくら数を頼みに戦おうが結果は目に見えていた。

 

シャークン「降伏だ」

 

「え…」

 

シャークン「聞こえなかったのか?降伏だ……このまま戦っても相手にはかすり傷すら負わせられないだろう。それよりは降伏し、部下だけでも助けてくれるように相手の慈悲に縋ろう。私はもう敗軍の将だ。この命一つで部下が助かるなら安いものと思わなくては。皆、本当に申し訳ない……」

 

「提督……」

 

シャークンがそう言って頭を下げると、幹部達や部下の水夫達の間から嗚咽がもれた。直ちに戦闘中止命令が伝達されロウリア艦隊は戦闘態勢を解除し、降伏の合図である紋様を逆さにしたロウリア王国の旗をマストに掲げ、水兵達も手にしていた弓矢や槍、刀剣類等の武器を海に捨てて降伏の意思を示す。

 

これが後に「ロデニウス沖海戦」と呼ばれるようになる海戦の終わりであった。

 

 

 

 





F-14J改S型→前作におけるF-14SJ
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