環太平洋機構召喚 【リメイク前:自由連合召喚】 作:短号司令官
ノウ「奴ら、何をするつもりだ?」
ロデニウス沖海戦から2ヶ月弱が経ったある夜、ロウリア軍東部諸侯団3万人は、エジェイの西5キロ地点に達していたが彼等はその場で進軍を止めて、夜営を開始したのだ
エジェイの西にある塀の上から、ロウリア軍の様子を見ていたノウは、敵の意図が読めなかった。
ノウ(ここまで来て何故進軍を止めたんだ?あの数ならエジェイを陥落させるなら充分な戦力の筈だが……………)
斥候に出していた偵察兵からも、敵が夜襲を仕掛けてる様子は無いとの報告があり、時々であるが小規模な敵部隊が嫌がらせのように自分達を貶すような言葉を大声で叫び、ある程度してから去っていく。
しかし、ある程度時間を置いてからまたその行為が繰り返し行われ、ノウを含めた西部方面師団の兵士達に苛立ちが目立ち始める。
ノウ「馬鹿にしおって………」
「閣下!連合軍の連絡兵がお目通り願いたいと!」
ノウ「何?通せ!」
「はっ!」
ノウの元に連絡要員として派遣されて来ていた陸上自衛隊第7師団第7特科連隊の観測員と無線員がやって来た。
「閣下、大内田師団長より提案があるとの事でお伝えに来ました」
ノウ「提案?」
「エジェイの西5キロ地点に布陣する武装勢力に対して、長距離攻撃を開始するので、周辺にクワ・トイネ兵が居ないか確認をしておきたいとの事です」
ノウ「長距離攻撃だと?ダイダル基地からロウリア軍の陣地まで直線距離で10キロはあるんだぞ。出来るのか?」
「はい。既に準備は完了していますので、後は閣下の許可が頂ければ、我々が目標位置の指示を送り次第、攻撃を開始します」
ノウは、彼等が言う長距離攻撃という言葉に僅かながら興味を抱いた。彼らは『ロデニウス沖海戦』で、敵艦隊を事実上「一隻残らず」殲滅し、あまつさえ増援に訪れたワイバーンも「全て」撃墜したというが、これとて信用できるものではなく、脚色が大幅に含まれているとノウは考えていた。軍内でもそんな噂となっている彼らの戦いを見れるなら見てみようと高見の見物を決め、あっさりと許可を出した。
ノウ「いいでしょう。貴方方の戦い方を見せてもらいたい」
「ありがとうございます。とっておきのSHOWをお見せしましょう」
観測員達は直ちに準備を開始し観測機材を使って5キロ先に布陣するロウリア軍陣地の詳細な位置を割り出して、無線でダイダル基地で待機している第7特科連隊に指示を送る。
「これは……一体……?」
連合軍砲撃陣地に運び込まれてきた兵器群を見て、牛島満が発した疑問の呟きを、大内田は聞き逃さなかった。
大内田「ああ、あれは『MLRS』という兵器でして、直訳すると『多連装ロケットシステム』といいます。この兵器は広範囲の面積に展開する敵を制圧するために米国で開発されたもので、あの箱状の中に12発のロケット弾が装填されていて、1発あたり644個の子弾が内蔵されています。あれが空中で炸裂すると、1台で7728個の子弾が敵陣に飛んで行く計算になります。我々第7師団はこれを12台持ってきているので、総数9万発以上の子弾を目標に対してばら撒けることが出来るということになります」
パットン「なんと!一度に9万発以上ですか……」
大内田「ええ。でもこれは本来は国際条約で使用禁止にされている弾種なんです。しかし、我々自衛隊の懐事情はお世辞にも良いものではありません。なので廃棄処分待ちのものから使おうということになったんです」
パットン「確かに子弾が一度に9万発も降ったら敵の姿は酷いものになるでしょうな」
牛島「パットン少将に同意します」
大内田「しかし、貴方方も我々に負けず劣らず凄いものですよ」
彼がそう言いながら視線を送った先には帝国陸軍用の特設陣地が設けられていた。
自衛隊はMLRSの他に「90式自走榴弾砲」を持ち込み、アメリカ陸軍は「M2A1 105mm榴弾砲」、「M1 4.5インチカノン砲」を準備させていた中、帝国陸軍は特に異彩を放っていた。
その筆頭にまず2024年3月20日に第104特科大隊の廃止により、全車退役したそれを買い取った「203mm自走砲」に混じって目を見張る程の巨大な砲台と、そこから延びる長い砲身の姿があった。
牛島「しかしまさか、海軍さんがあれを貸してくれるとはな」
目の前に聳え立つ砲は、かつて紀伊・尾張建造に於いて、広島県の亀ケ首で試射に使用された51センチ砲の試作品だった。
この砲は試験終了後、長らく防衛省技術研究所の地下に保管されていたのであるが異世界転移後に日本海軍が51cm砲の研究にこの砲を要望して晴れて日本帝国本土へと渡った。
そしてロウリア王国の迎撃に際して他の自走りゅう弾砲やその他の長距離・中距離攻撃火器の数の少なさを懸念し、陸軍が海軍に貸し出しを依頼する。
海軍としては研究に役立てたいが苦渋の末データ計測を条件に貸し出し、持ち込まれたのである。
大内田「敵に動きは無いか?」
指揮所で大内田は副官に尋ねる。
「ありません。敵は現在位置からは動いていない様子です。報告では付近にクワ・トイネ兵は居ないとの事でした」
大内田「砲撃用意!」
要塞砲の砲塔が旋回し90式、105mm砲、4.5インチ砲、203mm砲の砲身が西へと向けられた。
「各砲榴弾、装填完了。砲撃用意よし!」
パットン「射撃用意………………Fire!」
「砲撃始め!」
号令を受けた特科連隊の連隊長の合図と共に警報が鳴り響くと、雷のような轟音と共に要塞砲が砲撃を開始し、巨大な榴弾を西の方向へ向けて撃ち出した。
エジェイより西5キロ地点にもうけられたロウリア軍東部諸侯団の野営地では、3万人のロウリア兵がクワ・トイネとの戦闘に備えてテント内にて睡眠を取っていた。
「……………」
只1人、東部諸侯軍を指揮するジューンフィルアは専用テントから、夜空を見上げながら、今後の事を考えていた。
ジューン(数日掛けて相手を精神的に疲弊させてから、隙を突いて一気に正面から仕掛けたほうが少ない損害で、エジェイ攻略が出来る…………あのアデムが考えそうな事だな)
今回の侵攻作戦に於いて、戦略の全てはアデムの考案が基になっている。その殆どが、人を精神的に追い詰める物が中心で、少なくともジューンフィルアの観点からすれば卑怯この上ない作戦ばかりである。
しかし、数で圧倒的に劣っているクワ・トイネとはいえ、数が多いだけの自軍では、質的に優れているクワ・トイネとの差が出てしまうのは当然であり、それを挫くためには相手を精神的に疲弊させるしか方法は無い。
ジューンフィルアは軍人であるなら、上の命令には絶対服従をしなければならないと教えられているため、このような作戦でも素直に首を縦に振って従う事しかできなかった。
ジューン「明日は晴れそうだな」
無駄な考えを捨てて、戦う事だけを考える事にした彼は、星が綺麗に見える夜空を見上げる。
しかしジューンフィルアは突如、言いようも知れぬ嫌な予感を感じた。
その嫌な予感はたちまち形を成して、彼の心に大きな影を落としてゆく。もしかするとそれは、生き物としての本能的な危機察知能力が、彼に与えた警告だったのかもしれない。それが「死」であるとジューンフィルアが気づいた、その瞬間だった。
耳の鼓膜が破れそうな轟音と共に、強烈な閃光と爆風が辺りに広がった。
ジューン「ぐおっ⁉︎」
直後にやってきた衝撃波でジューンフィルアの体は木の葉のように舞い上がり、近くにあった木に叩きつけられた。
ジューン「うぅ……い…一体何が…?」
突然起きた謎の大爆発にジューンフィルアは霞む視界の中、痛む体を起こして辺りを見回す。
ジューン「これは……」
最初の爆発で、陣地内で兵士が休息をとっているテントの半分が吹き飛び、多くの兵士が手足を吹き飛ばされるなどの重傷を負っていた。
「目が……目が見えねぇ!!誰か!誰か!」
「腕は………俺の腕が………何処にあるんだよ!」
「おい!物資が燃えてるぞ!」
積み上げられていた武器や食料などの物資の大半が燃えていた。
ジューン「急いで消せ!あれが燃え尽きたら我々は……」
ジューンフィルアは急いで消火の指示を出し、軽傷者と無傷の兵士が水や土を燃え上がる物資に掛け必死に消火に勤める。
同じ頃 上空
先行して飛び立っていた爆撃隊と護衛戦闘機隊は高高度を維持し、E2Cホークアイによる航空管制を受けながら、ギムに向けて飛行していた。
「実にいい眺めだ」
B-17の操縦席に座る隊長が辺りを見回しながら言う。
爆撃隊の左右には信頼のおける日本陸軍の隼オスカーと鍾馗トージョーが守りを固め、前方には誰もが羨ましく思う航空自衛隊のF-15CJ改*1とFV-2が先行して飛行しているのが遠目からでも分かる。
「羨ましい……隊長、自分達もあんなジェットファイターならぬジェットボンバーに乗る日は来るんですかね?」
「さぁな。それは日本次第だな、段階を踏んで俺達に技術を与えてくれるそうだ」
「ちぇっ。それじゃあ俺が退役する頃になりそうじゃないですか」
「まぁそうぼやくな、本国じゃあジェット機じゃないが新型の爆撃機を開発・製造してるそうだ。早ければ来年の5月ごろには俺たちのところにも来るそうだ」
「新型が⁉︎それは楽しみだな……!」
一方で603飛行隊所属のE2Cからの指令で、爆撃隊の護衛に就いていた201飛行隊所属のF-15改は、高度を下げる。何故なら敵のワイバーンを捕捉したからだ。
E2Cからのデータリンクにより、ギム周辺を飛行するロウリア軍のワイバーン部隊の状況はリアルタイムでF-15改全てに伝わっている。
『こちらモール1、目標を補足。これより攻撃を開始する』
F-15に搭載されたレーダーが、ギムを周回するワイバーン部隊を補足し、ミサイル攻撃のため火器管制システムを起動、全機がワイバーンに向けてレーダーロックを掛けた。
『レーダーロック、Fox-1、fire!』
パイロットが操縦桿のトリガーを引くと、F-15改の胴体下の半埋め込みステーションに搭載されていた92式空対空誘導弾『AAM-4』中距離ミサイルが発射され、超音速で目標に向かって飛び去っていった。
その頃、ギムにあるロウリア軍本部では…………
「まだ偵察隊からの連絡は取れないのですか⁉︎」
本日何度目となる副将『アデム』の質問に部下達は冷や汗をかいて応える。
先程東部諸候軍から「敵の遠距離による断続的な爆裂魔法により被害甚大」との報告を受けて以降、本部は蜂の巣を突かれたような様相を呈していた。
「現在、調査中でして……」
アデム「具体的にどのように調査しているんだ⁈」
「それは……現在、別の偵察隊を向かわせる準備をしております…!」
アデム「だったら早く出さんかぁ‼︎これでは全く状況が分からないではないかぁ⁉︎」
既に冷静さを失っているアデムを宥めるように、侵攻軍の指揮を努める『パンドール』将軍が口を開いた。
パンドール「落ち着くんだアデム君。ここで冷静さを欠いていてはどうにもならん」
アデム「ははぁ!大変失礼しました、閣下…」
パンドールの言葉にアデムは冷静さを取り戻し、指揮所内は静まり返る。
パンドール「兎に角今は出来る事をしよう。直掩のワイバーンはどれくらい上げている?」
「はい、50騎程上げております」
パンドール「50騎も………少し多くはないか?」
「いいえ。現在の状況を考えますと、敵がいつ何処から攻撃してきてもおかしくありません。万が一にも我々が壊滅してしまっては、今回の作戦は破綻してしまいます。ここは念には念を入れて掛かりましょう」
パンドール「………………そうだな。用心する事に越した事はないな」
パンドールは今までの事態から、本格的に事を構えないと足元を掬われると感じ、ギムに駐留する全部隊に警戒体勢を敷くように命じる。
ここで一度休憩を命じ、外の空気を吸おうとパンドールは指揮所から外へ出た。
パンドール「綺麗な夜空だ……」
上空をふと見上げてこの状況下で平常心を保てている事が何処か不思議に思った。
その瞬間までは
突然、夜空に爆発の炎と煙の塊が無数に点滅し遅れて爆発音が辺りに響いた。
パンドール「⁉︎」
「何だ!?」
上空に居たワイバーンが一気に20騎近くが落とされ、本陣は再び蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。
パンドール「何なんだこれは……一体何が起きたんだ⁉︎」
彼の目の前で精鋭のワイバーン部隊が、何も出来ずに落とされていく現実に、彼は理解が追い付かなかった。
『こちらエクセル、敵航空戦力消滅を確認。爆撃隊は目標へ突入せよ』
ギム周辺の航空脅威を排除した201飛行隊に変わり、FV-2・B-17・B-25が高度を下げてギム上空に到達した。
『骨董品のアメさん達、遅れるなよ』
「誰が骨董品だ‼︎そっちこそ失敗するなよ、ヴァルキリーさん達よ‼︎」
速度差で先行したFV-2はエアインテイクの右に取り付けられているレーザー指示目標ポッドのカメラがギムにある敵司令部に向けてレーザー光線を照射する。
『用意……投下‼︎』
主翼下のパイロンから、GBU-54LJDAMレーザー誘導爆弾が投下され、目標からのレーザー反射を捉えて誘導装置とリンクした制動翼が小刻みに動き、爆弾本体を目標に向けて落下させていく。
投下されたLJDAMは、見事に敵司令部を直撃した。
LJDAMの熱波と爆風はパンドールやアデムを含めた軍幹部をまるごと、この世から消し飛ばしてしまった。
『敵司令部は壊滅した。大掃除は任せた!』
FV-2が翼を翻して飛び去っていくのと入れ替わりに、今度はB-17・B-24の大群がギム上空へと到達する。
「なんだよ敵の司令部は丸潰れじゃねえか」
「隊長、いいですね?街までやる事になりますよ⁉︎」
「構わん!どうせ後で日本がインフラ整備するんだ。やりやすいように更地を増やすだけよ‼︎」
機首の照準席に座る爆撃手が照準機を覗いて地上に残る敵の兵舎や物資に狙いを定める。
「ターゲット視認‼︎ready……go‼︎」
投下スイッチを押して機体の爆弾倉から定番の落下音と共に大量の爆弾が落下していく。
「に…逃げろぉぉ‼︎」
それを見て危機を察した兵士達であったが、時既に遅く次々に炸裂する航空爆弾に身を隠した家屋ごと吹き飛ばされたり爆風で人体をバラバラにされていく。
F-2
征途世界では空自もヴァルキリーを保有し、海自が正史よりも遥かに強大な為、必要性が薄れて開発されなかった………という感じで本作ではお役御免
90式自走榴弾砲
征途世界がベースなので兵器の開発が多少早まっても良いと考えました。
ワイバーン
大戦中に「夜間戦闘機」なるものがあったので「夜間ワイバーン」なるものがあっても面白そうだなと。
設定的には夜間飛行向けに訓練されたり、視力を調整された種です。
まぁ主役達の敵になるかと言うと……