「サムよ、俺の世界では”醤油”というモノがあってな。”独特の香しい風味で人を惹きつける魅惑の調味料があるんだ」
「しょーゆー?どんなものなんだ?」
「ああ、一度味わったら虜になるぞ。俺は焼とうもろこしや、サザエの壺焼きなんかは醤油は必須と言っても過言じゃない」
「なるほど、やきとーもろだしや、お触りのツボやきというのがどういうものか分からないが、リクがそこまで言うとは、一度味わってみたいな」
だが、俺は醤油の素晴らしさだけではなく、その恐ろしさも伝えた。
「だが、醤油はとり過ぎれば体に悪いんだ」
「なに?しょーゆーは毒なのか?」
「ああ、醤油には"塩分"と言うとり過ぎたら様々な障害を引き起こす物が入っているんだ。最悪、命を落とす事だってあり得るんだ」
「命を…リクの世界は食べるものも命懸けなんだな」
サムは真剣な顔でリクの言葉を聞いていたが、毎日が生き残るサバイバルの様な世界と思い、そんな世界から来た人間だから"勇者"や"聖女"になれるのかと思った。
しかしリクが続けた言葉はサムにそれ以上の障害を与えた。
「醤油はまだ注意してれば防御できる。だがあれは一度魅力されたら抗うことは難しい」
「何だその悪魔の様なものは」
「ふふふ、悪魔か…確かに『マヨラー』にとっては悪魔かもな」
「マヨラー??」
リクの言った言葉をサムは頭に刻んだ。マヨラーっていうのは勇者や聖女と同じ異世界人だけの特別な人間なんだろう。
「それはどんなものなんだ?防ぐ手段は無いのか?」
「その人の好みに左右されるんだ、ある人には”マヨネーズ”の魅力は効かないか効きにくい」
「好みに左右される?どんな人に効きにくいんだ?」
異世界人ですら命の危険があるというものだ。自分たちなら即死だろうが少しでも抵抗できるならと、藁をもつかむ心境でサムが聞いた
「脂っこいものが苦手でヘルシーなモノやあっさりしたモノが好きだったりする人はマヨネーズの魅力が効きにくいんだ」
「それを聞いても特に好きとか嫌いとかはないなぁ…しいて言えばアーネやリーネたちの好みと合ってるという事ぐらいか」
「ついでにいうと、山田は不摂生な生活をしていたようで根っからの”マヨラー”なんだそうだ。好きなものはマヨネーズと醤油かけごはん。お好み焼きには生地が見えなくなるほどのマヨネーズ」
「何だろう…聞いているだけで胸やけがしそうな気がする」
サムが胸のあたりをさすった。
「らっしゃい!らっしゃい!熱々のお好み焼きはいかーすか?」
山田がお好み焼き屋でお好み焼きを頬張っていた。ソースをたっぷりと塗り、マヨネーズを素早く左右に振って縞模様に更にもう一度網目模様にかけていく。 そのあとに青のりと鰹節を振りかけて、鉄板の上でヘラで小さくしてくれた。
「へい、お好み焼き一丁上がり!!」
「キタキタ!いっただきまーす」
山田が出来立てのお好み焼きに齧り付いていた。見ていると山田はラベルに”マイマヨネーズ”と書いた自分のマヨネーズを持参していた。
それをお好み焼きを一口食べる度に直接
「なぁ異世界では調味料を直接飲んだりするのか?」
サムの素朴な疑問にリクが…。
「いや、あの行動こそが”マヨネーズ”に魅せられた”マヨラー”になった証拠なんだ」
聖女が、
「マヨネーズか、恐ろしい…」
「山田はもう手遅れだ、完全にマヨネーズに魅了されている。あのお腹が何よりの証拠だ」
リクの言葉を聞いたサムが「俺が山田さんに証拠を突き付けて目を覚まさせてやる」とリクの静止も聞かず、直球で山田に問いただした。
「山田さん、そっそのお腹どうしたの?」
山田のお腹を指差しながら、最も聞きにくい質問をするサムの姿にリクは思った。 "サムよお前こそ真の勇者だ"
「お好み焼きが美味しくて、
リクが「食べすぎが原因じゃないだろう」と心の中でつぶやいた。