最弱だが、最恐と言われる魔物。それがゴブリンだ。
1体1体は背も小さく力も弱いため人々は侮りがちだが、彼らは徒党を組み繁殖力は旺盛だった。
「きゃぁああああ!!!」
今夜も村のどこかで悲鳴が響いていた。
朝になるとゴン蔵さんが俺とサムを呼んだ。
「リクとサム、よく聞け。夕べも村の娘がゴブリンの餌食になった、王宮はゴブリンの事を重く見て冒険者ギルドにゴブリンの討伐依頼を配布し始めた」
「そんなにゴブリンって脅威なんですか?身体も小さくて力も弱いと聞きましたが」
「俺も聞きました、こう言っちゃなんですがゴン蔵さんが臆病なんじゃないですか?」
ゴン蔵さんは俺とサムの言葉を聞いて激昂した。
「何を甘い事を言ってるんだ!!奴らは見つけ次第殺せ!!ただの一匹たりとて生かすんじゃねぇ!!」
「「はっはい」」
ゴン蔵さんは鬼気迫る形相で俺たちに言った。一体ゴン蔵さんとゴブリンの間になにがあったのだろう?
俺とサムは疑問を抱きながら、ゴン蔵さんの言葉に従った。
「みんなー、ゴブリンは敵だー!」
「「「敵だー!!」」」
「見つけ次第殺せー!!」
「「「殺せー!!!」」」
村はかつてないほど殺気立っていた。
ゴン蔵さんが血の涙を流していた。
「あれは忘れもしない春一番が吹いた日、幼馴染のタエちゃんに勇気を持って告白したんだ」
ゴン蔵さんが突然語り始めた…。
『もう二度とサキュバス先生のお店にもピラミッドにも煩悩3丁目のお店にも行かないと誓う!だから俺とけっけっ…』
『ごめんなさい…私はもうゴブリンのゴブ助さんと将来を誓っているの。彼はカッコよくてお金を持ってて、将来有望で…』
「そして俺はタエちゃんに振られた。ゴブリンは繁殖力旺盛だ、きっとその時はタエちゃんはもうゴブリンのテクニックにメロメロになって…」
「…それって違う理由じゃ…」
「だからこれ以上村の未婚の女性が減らないように…いや悲劇を生まないようにゴブリンは根絶やしにしなければいけないんだ!!」
完全な逆恨みだと思ったが、そこには気づかないふりをした。男の情けというものだ。
ゴン蔵さんの言葉は村の男性の心を1つに集めた。
「ゴブリンは一人残らず根絶やしにしろー!」
「「「根絶やしにしろー」」」
村の男性たちが叫ぶ。すると…
「いい加減にして下さい」
その声を聞いたゴン蔵さんが振り返ると、そこには初老の女性が立っていた。
「タエちゃん…」
「ゴブ助さんは素晴らしい人だったから結婚したんです。ルックスもお金も将来性も、当時私に振られて落ち込んでいた貴方を励ましたのだってゴブ助さんじゃないですか」
「そっそれは…」
「それなのに貴方は逆恨みして、有る事無い事周りに言いふらして。そんな貴方をゴブ助さんは笑って許してくれたのですよ」
ゴン蔵さんは最早何も言えず、たた立ち尽くしていた。
「それにあっちのテクニックだって…」
タエさんは頬を赤く染めてはにかむ様に笑った。
「やはりゴブリンは皆殺しだーー!!」
ゴン蔵さんは顔を真っ赤にして般若の様に怒った。
そんな2人のやり取りを見ていたリクは心の中で叫んだ。「やめて!ゴン蔵さんのHPはもう0よ」
「最近そんな紳士なゴブリン様たちに近づく不届きものが現れたともっぱらのうわさです」
「不届きもの?」
「ハンッ!紳士?あれが?」
ドカッ!
ゴン蔵さんがタエさんに殴られて壁に頭をめり込ませていた。「…ゴン蔵さん、嫉妬でゴブリンが憎くても恋する乙女は怖いぞ」
「それが、ゴブリン様たちは紳士ですが性欲絶倫なので、互いに一人の異性を生涯愛し続ける純愛の種族なのです」
「けっ!な~にが純愛の種族だよ…」
ゲシッ!ゲシッ!
ゴン蔵さんは足で踏みつけられながらも恍惚な表情を浮かべていた。
「それが、その不届きものは1人のゴブリン様だけでは飽き足らず毎晩とっかえひっかえ、最後はゴブリン様たちも恐れ逃げ出すようになったのです。その不届きものの名は…」
「名は…?」
「性女”エレガント・プリンス”」