生者を見ると問答無用で襲ってくると言われる不吉の代名詞リッチ。かの存在は死を振り撒くと言われている。
今、村にかつてない恐怖が訪れる。
「うふふ…あーーはっはっはっ、ハックシュン!」
「お嬢様、お鼻が出ています」
「ん、あんがとマリアンヌ」
ズビーーーー!
「はあ、スッキリ」
侍女マリアンヌがお嬢様から鼻紙を両手で受け取り、
『ペイッ』と道端に捨てた。
「ちょっとなにやってるのよ、マリアンヌ」
「要らなくなったから鼻紙を私に預けたのですよね」
「そうだけど、そうじゃないでしょ!なに道端に捨ててるのよ」
「
「主人の鼻紙をばっちいとか言うな!ほら道端に捨てた鼻紙を拾って」
マリアンヌがしゃがんで人差し指と中指でつまんだ鼻紙を主人の目の前にぶら下げた。
「はいお嬢様、お受け取り下さい」
「だから私に渡さないでって言ってるでしょ」
謎の女の子が侍女マリアンヌから鼻紙を受け取りながら拳を振るわせて叫んだ。
「待っていなさい、アーネとリーネ!あなたたちに受けた屈辱は忘れないわ」
「ふぁ~」
「そこ!あくびなんてしない!!」
「ですが、お嬢様の”屈辱は忘れないわ”は毎日のルーティーンだとばかり思っていたので正直、
「貴女もリッチの一族なら人間を恐怖のどん底に落としてごらんなさい」
「申し訳ありませんが、そのリッチの王族のくせに人間にパシリに使われていたお嬢様に言われても鼻で笑ってしまうかと…ププッ」
「ぬぬぬ、よくも思い出したくない記憶を掘り起こしてくれたわね」
「掘り起こすと言われましても、お嬢様にとっては仲のいい女の子同士の可愛い思い出だと思ってました。リッチちゃん」
「その名前で言うなぁ!」
「可愛いいじゃないですか、リッチちゃん」
マリアンヌの抑揚のない突っ込みに対して、感情の波が激しいリッチちゃんは拳をわなわなと震わせていた。
「100歩譲ってリッチの一族からリッチちゃんと呼ばれてるなら許せるが…」
「そうですね、お嬢様がリッチちゃんとお2人に呼ばれるのは、お金持ちで言わばパシリ(サイフ)にされていた経緯からですからね」
「言うなぁあああああ!!あの2人、事ある毎にやれあれが欲しい、これを買ってとたかりおって」
「女の子同士の微笑ましい話じゃないですか」
「うるさい!私はあの屈辱は死んでも忘れないわ」
「不死の一族なのに死んでもとは面白い冗談ですね」
ご主人に突っ込みを入れる侍女マリアンヌは主人であるリッチちゃんをおもちゃとしか見ていなかった。
そこにアーネとリーネが通りかかる。
「あー、リッチちゃんだ。おひさー」
「あっあの…お久しぶりです」
「しばらく見なかったけどどこに行ってたの」
「あの…王都……に…
「そんな事はどうでもいいでしょ、私たちの熱い友情に…」
「私たちの奇跡の再会に…」
「「美味いもんでも食べに行こうよ、もちろんリッチちゃんのお・ご・り・で」」
完全に委縮してしまった主人を見たマリアンヌはぼそりとつぶやいた。
「…だめだこりゃ(ドリ〇風)」