人々が寝静まる真夜中に、その者は活動する。
「お気に入りのDVDボックスを買って昨夜から見始めたから、今日は寝不足」
声の主は、部屋に閉じこもってばかりで肌は青白く酷く痩せていた。
更に昔、スプーンを誤って齧ったトラウマで今でも、銀食器が苦手らしい。間違えてスプーンを齧った事がある人はあの不快感は耐えられないよね。
彼女はヴァンパイアのヴァンちゃん、歳は永遠の17歳とのこと。
以前彼女に交際を申し込んだ奴が"ひいお爺ちゃんとは兄弟はごめんだ!"
と、涙を流しながら叫んでいた。
そんな彼女に交際は夏に向けてイメチェンしたいらしく俺と山田に相談して来た。
「なんで俺たちに相談なんだ?アーネやリーネだっているだろ?」
「だって他の村の
「ふふん、この流行アドバイザー"悪役令嬢のエレガント・プリンス"に任せておきなさい!」
「あ、まだ悪役令嬢の設定は残っていたんだ」
リクが突っ込んだ瞬間、山田のボディーブローが炸裂し、それを見たヴァンちゃんが「さすが悪役令嬢、さすあく」などと意味不明な言葉を言っていた。
「で、イメチェンってどんな風に変わりたいんだ?」
「んー、まずこの色白で夜行性なのを治したい。日焼け後を友達同士で見せ合いながら『きゃー、男子のエッチー』ってサムとか社会的に抹殺したい」
…サム、お前何をしたらここまで恨まれるんだよ。
「まあ、サムの話は冗談だけど、夜行性だと授業中眠くて眠くて….色白だからか誰も私の趣味がアウトドアだと信じてくれなくて、今ハマってる"ソロキャンプ"の話をしようとしても誰も聞いてくれなくて…」
「あらいいわね、野外で自分で調理して周りを散策するなんて素敵じゃない。今度一緒に行かない?」
山田がヴァンちゃんの"キャンプ"に食いついた。現代っ子で今流行ってる物には反応がいい。
「それが真夜中だから手元が暗いし、火をつけたら虫どころか魔物が集まってきてちょっとした冒険が始まっちゃう。散策なんて一度迷い込んだら一週間は帰れなくなっちゃう。山岳地を歩くのなんて危なすぎて」
思ったよりワイルドだった。もはや夜行性だとか色白だとか以前の話だと思った。
「何より、真っ赤なアレを欲しがる衝動は治したい」
「確かに、それは体質改善したいですわね」
リクと山田は首筋に牙を突き立てて血を吸う所を想像して身震いした。
そしてリクがシャツの首元を開けてヴァンちゃんの目の前に首を差し出した。
「ほれ、我慢出来なくなったら俺ので…」
それを見た山田は顔を真っ赤にして当事者のヴァンちゃんは困惑していた。
「リク、何をしているの?」
「何って友達が困ってるんだから協力しようと…」
はぁ…と、ため息をついたヴァンちゃんは思い切ってリクと山田に話した。
「我慢出来ないってのは"マンドレイク"よ、一度食べると病みつきになって週に一回は齧りたくなるの。しかも突然」
「じゃあ、真っ赤なアレって…」
「"マンドレイク"を齧ると真っ赤な水分が滴り落ちるの、それで齧ってる所をゴン蔵さんに見られて噂が流れちゃって。何としてもこの体質を治したいの、お願いこの食いしん坊な体質をなんとかして!」