普通科ですが   作:リクルート7

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第三話です
文字訂正指摘してくださった方ありがとうございました。
今回はあの男の登場です。


第三話

 

目を覚まして引寄は時計を見てみると普段と変わらない朝の時間だった。

昨日色々あって眠いはずなのにいつも通りに起きてしまった。

 

寮のリビングに行くとクラスメイトの何人かがテレビに釘付けになっていた。

 

引寄「おはよう…何かあったの?」

 

「ああ引寄か、体調は大丈夫か?ちょっとテレビ見てみろよ」

 

クラスメイトに言われるがままに見てみるとそこにはエンデヴァー、ホークス、ベストジーニストが映っていた。

どうやら記者会見のようだ。

 

エンデヴァーとヴィランの荼毘が親子であり、告発動画の内容が真実であると、ホークスの過去や今回の戦いでホークスがヴィランを殺してしまったこと、蛇腔市の多くの市民の命が救えなかった事。

 

記者達はエンデヴァー達に罵詈雑言を飛ばす

『責任を取れ!』と、『それがヒーローだろ!』と

 

引寄もその様子に目が離せなかった、自分もその現場にいて大切な人を失ったのだから。

 

罵詈雑言に対しエンデヴァーは社会の不安を取り除くことが自分の償いだと言った。

 

エンデ『みんなで俺を見ていてくれ』

 

その一言でその記者会見は終了した。一応納得したのだろう。

 

♢♢♢♢

 

引寄はテレビを見終わった後、寮の庭のベンチに座っていた、一晩考えさせてくれと自分で言ったからには答えを出さなくてはいけない。

 

自分に出来るのだろうか?死ぬ可能性だってある。

いろんなことが頭の中で渦巻いている。

 

本校の方には人がずらずらと歩いているのが見える

さっきの記者会見で言っていたが、雄英を始めとした各地の施設で避難場所にするらしい。

 

その様子を眺めていると不意に後ろから声をかけられた。

 

???「あーちょっといいかな」

 

引寄は声のする方に振り返ってみるとそこには普通科なら誰もが知っている有名人、C組の心操人使だった。

 

心操「引寄…蓄真くんだよね?」

 

引寄「あーそうだけど、君は心操くんだよね?」

 

心操「俺のこと知ってるんだ」

 

引寄「そりゃ普通科では1番の有名人だし、俺のクラスも『普通科の星』なんて言ってたし」

 

心操「そこまで期待されると困るけどまぁ嬉しいかな」

 

心操くんは照れくさそうにしている。

 

引寄「それで心操くんが俺に何か用?」

 

心操「心操でいいよ、同い年だし」

 

引寄「じゃあ俺も引寄でいいよ」

 

心操「あっじゃあ引寄、実は校長先生に様子を見てきて欲しいって言われてさ」

 

どうやら昨日の件のようだ。

 

心操「あまり思い悩んでいるなら断ってもらっていいよって言ってたよ」

 

引寄「……」

 

結局一晩では答えが出なかった、頼られたことの嬉しさと自分の命を天秤にかけてずっと揺らいでいた。

 

心操「俺も話はある程度聞いたよ、大勢の人を守ったんだよね?素直にすごいなって思ったよ」

 

心操「俺の個性は人を守れるものじゃないから羨ましいよ」

 

体育祭での緑谷と心操との試合での言葉を思い出す。

 

引寄「…心操はさ、何でヒーローになろうと思ったの?」

 

初対面の相手に聞くことじゃないかもしれないが、どうしても聞いてみたくなった。

 

心操「ずっと憧れだったんだ子供の時から、テレビに映るヒーロー達が多くの人を助けてさ、感謝されているのを見て俺もって…まぁよくある動機だよ」

 

引寄「でも羨ましいな、子供の時からの夢があって、俺には夢なんてなかったよ」

 

心操「だけど学生時代に思い知らされたよ、俺の個性はヒーローどころかヴィラン向きだって」

 

心操の個性は『洗脳』確かにヒーローかヴィランかと言われればヴィラン向きな個性なのだろう。

 

心操「普通科に入った時には俺も諦めてた、しょうがないんだって、でも体育祭で俺を認めてくれた人たちがいた、君の力が必要だって、そして相澤先生が俺に手を伸ばしてくれて俺を鍛えてくれた、合同演習にはA組やB組と戦って改めてヒーローになりたいと思ったよ」

 

心操「だから俺は俺を必要としてくれる人たちのために戦うよ」

 

引寄「…やっぱり心操はすげーな」

 

心操「それは君もだろ」

 

引寄「…」

 

人を助けたい、その想いはお互い同じなのだろう。

 

??「あのー、すいません」

 

不意に声をかけられ振り返る、今日はよく話しかけられるな。

そこには女性が立っていた、どこかで見たことがあるような、ないような?

 

引寄「あっえっと…」

 

女性「覚えてないですか?蛇腔市で助けてもらった…」

 

引寄(そうだ思い出した!あの時は必死だったし、ばあちゃんのこともあったからあまり覚えてなかった)

 

引寄「えっと…何でこんな所に?」

 

心操「今雄英や各地で避難をしている人が大勢いるんだよ」

 

女性「はいさっきここに到着して、関係者の人に聞いたら引寄さんがここにいるって聞いたので」

 

引寄「俺に?」

 

女性「あの時、助けてもらってから改めてお礼を言いたくて、でも避難所も別の場所だったみたいで…誘導してくれたヒーローに聞いたらここの生徒だと聞いたのでそれでここまできたんです」

 

引寄「そうだったんですね」

 

女性「ありがとうございました!貴方がいてくれたから私は今も生きています、貴方は私にとってのヒーローです」

 

女性は深々と頭を下げる。

 

引寄「あっいや、あーどうしたしまして」

 

突然のお礼にむず痒くなり、無難な返答しか出来なかった

 

女性「ここの学校の生徒ってことはヒーロー志望ですよね、もし引寄さんがヒーローになったら私、応援しますね、それじゃ失礼します」

 

女性はまた頭を下げてその場を立ち去った。

 

引寄「いや、俺はヒーローじゃ」

 

心操「もういないよ」

 

引寄「…マジか」

 

心操「これはもうヒーローになるしかないね」

 

心操がニヤニヤしながらこっちを見てくる。

 

引寄「ニヤニヤすんな」

 

心操「でも俺もヒーローになった君と一緒に活動してみたくなったよ、じゃあ俺も行くよ」

 

引寄「…おう」

 

一人になった引寄は以前よりも落ち着いていた。

 

引寄(ばあちゃん、俺ばあちゃん以外にも期待してくれる人が出てきたよ、人に期待されることがこんなに嬉しいとは思わなかったよ…どこまでやれるか分からないけど俺は…)

 

♢♢♢♢

 

引寄は校長室に訪れていた。

 

根津「やぁ引寄君、昨晩はよく眠れたかい?」

 

引寄「はい、何とか」

 

根津「それはよかった、ここに来たということは答えが出たのかな?」

 

引寄「はい!」

 

引寄は一呼吸置いてから答える。

 

引寄「俺、戦います、将来ヒーローになるかどうかはわからないけど今俺の個性を必要としてくれるなら俺もヒーロー達と一緒に戦わせてください!」

 

根津「うん、いい返事だ、ありがとう、君の勇気と覚悟に感謝するよ」

 

根津は引寄に頭を下げる

 

根津「引寄君が共に戦ってくれるのならこちらも全力で君をサポートしよう、今日から早速個性伸ばし訓練をしていきたいのだけどいいかな」

 

引寄「個性伸ばし訓練?今日からですか?」

 

根津「ああ、君の個性をさらに強力なものにするためにね、本当はもっと段階を踏んでからにしたいんだけど決戦の日はそう遠くない日に来ると思う、だから1日だって無駄にしたくないんだ」

 

引寄「…分かりました、頑張ってみます」

 

根津「じゃあ場所を変えよう、君はTDLまで行ってくれるかい?」

 

引寄「TDL?…えっ遊びに行くんですか?それに校長先生がTDLまで行くと行くのは何か色々とマズイ気がするんですが」

 

根津「えっ?あー違う違う、ごめんねTDLというのは体育館γのことだよ」

 

引寄「あっそうなんですか?ほとんど利用したことが無かったので、名称なんて知らなかったです」

 

根津「ヒーロー科が中心で普通科が使う機会があまり無いからね、僕は君を指導してくれる人を呼んでくるから先に行っててくれるかい」

 

引寄「分かりました、それでは失礼します」

 

引寄(指導の先生?そんな人いたかな?)

 

引寄は疑問に思いながらTDLに向かう。

 

♢♢♢♢

 

引寄はTDLの前で待っていた。

TDL、雄英教師セメントス考案の施設で『トレーニングの台所ランド』の略で生徒たちの個性訓練のための施設らしい。

主にヒーロー科が利用しているため行く機会はほとんどない。

 

引寄(TDLか… 中々攻めた名前だよな、入ったことは無いけどどんなだろう?)

 

根津「やぁ待たせたね」

 

根津に声をかけられ振り返ると

 

引寄「あっいえそんなに待ってないです…あれ?13号先生?」

 

13号「やぁ引寄君」

 

根津「彼女が君の個性の指導役だよ」

 

引寄「13号先生がですか?」

 

確かに13号のブラックホールは何でも吸い込むことができる個性だ、吸い込むという点では同じだが根本的には違うような気もするが。

 

根津「君の個性と同じような人はそうそういないからね、でも彼女なら必ず君の力になってくれるよ」

 

引寄「分かりました、13号先生よろしくお願いします」

 

13号「うん、こちらこそよろしく じゃあ行こうか」

 

引寄と13号は、TDLへと入っていく

初めて入ったが、中はだだっ広い空間だった あとで聞いた話だが、この建物はセメントス先生の個性で好きに地形を変えられるらしい。

 

13号「しかし、君の活躍を聞いた時は驚いたよ、あの死柄木の崩壊も吸収できるなんて、僕の個性は光までも吸い込むことが出来るけど衝撃波までは出来ないからね、君には期待してるよ」

 

引寄「ありがとうございます!頑張ります!」

 

13号「じゃあまずは吸収したものを放出する事を出来るようになろう、聞いた話によるとここ最近不意に出来るようになったらしいね」

 

引寄「はい、あの時吸収の許容量を超えて、咄嗟にって感じです」

 

13号「うんうん、自分でも理解してない力ってのは結構あるからね、まずはこの入れ物の水を吸収して隣の入れ物に放出するところからやってみよう」

 

こうして引寄の個性訓練が始まったのだった。

 

一回出来たとはいえ、今まで出来ていなかったことを当たり前にすることは中々に難しい、あの時の感覚を思い出しつつ、放出するイメージを常に持ちつつ掌から放出しようとする。

何度も何度も繰り返し、ようやく少しの水が放たれた

 

引寄「…中々難しいですね」

 

13号「うーん、こればっかりは僕もアドバイスが難しいね、繰り返しやっていこう」

 

結局この日は吸収した水の5分の1ほどが放出できる程度で終わってしまった。

あまり達成感がないまま、寮に帰宅した。

また明日は同じ訓練だろう。

 

「あれ?引寄今日また何処かに行ってたのか?」

 

引寄「…ああうん ちょっと先生に呼ばれてね」

 

「また無茶なことしてないよな?」

 

引寄「大丈夫大丈夫 別に大したことはしてないから」

 

このことはあまりベラベラと話すべきではないだろう

 

「……」

 

♢♢♢♢

 

次の日も朝から訓練が行われた、今日こそは放出をものにしないとこの先やっていけないだろう。

だが、そう簡単にできるわけもなく時間が経つにつれ、引寄に焦りが見え始めた。

 

引寄「クソッ!なんで出来ないんだよ」

 

13号「少し休憩しよう、根を詰めてもしょうがないよ」

 

引寄「いえ、大丈夫ですもう少しやらせてください」

 

13号(…焦ってるな、お願いされた責任感から何とかしようとする思いが強すぎる、今の僕では放出のコツを教えるのは出来ない、他のヒーロー科かプロヒーローを呼ぶ?ヒーローが少なくなった今、ここばかりに人員は割けない)

 

13号も頭を悩ましていた、するとTDLの扉が突然開いた。

 

「初めてここ、入ったな、あっ引寄いた!」

 

「引寄!そんなんじゃヒーロー達と肩を並べれないぜ」

 

「俺たちの力が必要なんじゃないか?」

 

「そうだそうだ水くさいぞ」

 

引寄が振り返るとE組のクラスメイトが勢揃いで入ってきた

 

引寄「あれ?みんな」

 

13号「君たちE組の 何でここに?」

 

根津「僕が連れてきたんだよ」

 

13号「校長!」

 

時は少し遡る

 

♢♢♢♢

 

E組の寮

朝早くから引寄は寮を出て行った。

 

「……なぁまた引寄出てったけど何処行くか知ってる?」

 

「いや、でも基本は寮で待機しろって言われてるから見つかったら叱られるんじゃないか?」

 

「でも昨日も外行ってたけど何も言われてないよね」

 

「そういえばこの前ヒーローが負けた時にも引寄いなかったよな、あの戦いの現場にいたらしいけど詳しい事は俺知らないんだよな」

 

E組が引寄について話し合っていると一人の女子が口を開く。

 

「…あまりこの事話していいのか分からないけど、私引寄君と先生があの日の事話しているの聞いちゃったの…引寄君のおばあちゃんあの戦いで亡くなったみたいなの」

 

「「「「……?!」」」」

 

全員が黙ってしまった

しばらく誰も口を開かなかったが、ようやく一人が口を開く

 

「あいつ一人で苦しんでたんだな」

 

「俺、入学当初あいつの事変な奴ってずっと思ってたんだ、雄英に入学したのにヒーロー科受けずに普通科に入ろうとしたり、ヒーローにも興味なさそうだったけど、話してみたら案外いいやつでさ、皆んなに色々と気使ってくれるのに……」

 

「でも俺らは引寄が一人で抱え込んでいたなんて知りもしなかった、なんか情けねーな」

 

「じゃあ今からでも聞きに行こう!本人が教えてくれないのなら全員で知ってる人からさ、大きなお世話かもしれないけどな」

 

「「「「「うん!!」」」」」

 

♢♢♢♢

 

根津「それでみんなで僕のところまで来たってことかい?」

 

「はい!お忙しい中で申し訳ないですが教えてください!引寄の身に何があって、今何をしようとしているのか」

 

根津「…」

 

「俺ら、引寄のクラスメイトとして友達として、1人で抱え込んでいるあいつを見過ごしたくないんです」

 

「「「「お願いします」」」」

 

クラスメイト全員で根津に頭を下げる。

 

根津「ふー、僕の生徒達にここまでお願いされたら話さないわけにはいかないね、でも彼のプライバシーのためにも他言無用で頼むよ」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

根津はE組生徒達にこれまでのことを説明した、ヴィランとの抗争のこと、そこに居合わせた引寄のこと、そして彼の個性のことを。

 

 

 

「引寄のやつ本当はすげー奴だったんだな」

 

「僕には真似出来ないな…」

 

引寄の功績に皆がざわつく

 

「…でもあいつ今一人で頑張ってるんだよな」

 

「「「「……」」」」

 

「校長先生!俺たちも引寄の手伝いをさせてください」

 

「僕たちができることなんて微々たるものですけど引寄の力になりたいんです」

 

根津「今は13号先生が面倒を見てくれている、君たちの出番はないかもしれないよ?」

 

「それでも構いません!」

 

「俺たちは普通科だけど…それでも一度はヒーローを夢見ていました、今の日本の状況はわかっているつもりです、多くのヒーロー達が戦っている中で俺たちが何もできないのは耐えられないんです」

 

「私たちは戦地で戦えなくてもヒーロー達の手助けぐらいなら出来ます」

 

「それが俺たちなりのヒーロー活動です!」

 

根津「!!」

 

根津「……ヒーロー科だけじゃなくて、君たち普通科もこの一年で随分たくましくなったね、僕は嬉しいよ…うん分かった、引寄君のところまで行こうか」

 

♢♢♢♢

 

根津「というわけさ」

 

13号「なるほど理由はわかりました、まぁしょうがないですね」

 

二人は引寄達の様子を見守ることに。

 

「引寄!放出について悩んでるんだよな?俺手から水を出す個性だからアドバイスできるかも」

 

「俺も俺も」

 

「じゃあ私は狙う的を作れるよ」

 

引寄「あっちょっと待ってそんなにいっぺんには…」

 

引寄の周りにクラスメイトが集まり、先程よりも賑やかになり、引寄の顔にも笑顔が戻ってきた。

クラスメイトのお陰もあってか、放出の個性訓練も順調にいっていた。

 

しばらく訓練を続けているとTDLの扉が開き、ヒーロー科一年B組の生徒達と担任であるブラドキングが入ってきた

 

ブラド「校長!この時間は我々B組の使用時間なのでは?」

 

根津「やぁブラド君、すまないがTDLのスペースを少し使わせてもらうよ」

 

ブラド「それは構わないですが一体何をやってるんです?」

 

根津「僕らの新しい希望のため…かな?」

 

ブラド「希望ですか?」

 

根津「ブラド君、13号君僕はね今回の件で気付かされたよ、ヒーローの卵は何もヒーロー科だけじゃないってことをさ、僕たち教師は色んな可能性を見つけてあげることが大切なのさ」

 

ブラド「校長…」

 

根津「この戦いが終わったら改めてこの学校の教育システムを一から見直すよ」

 

13号「そうですね、そのためにもこの戦い必ず勝ちましょう」

 

ブラド「……」

 

拳藤「ブラキン先生?」

 

ブラド「…あっ?ああすまん各自訓練を始めてくれ」

 

ブラドは必死に訓練をする引寄をじっと見つめていた。

 





次回もよろしくお願いします

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