冰龍の魂を宿す者。異世界《ホロノア・ユクモ》の巨大ギルドの歌姫たちとの日常 作:レリ
はじめまして、レリと言います!
今回、この作品を投稿する事を決めました!まずは第1話です。楽しんでいただけたら幸いです。
【注意・免責事項】
本作は「ホロライブ」「にじさんじ」の二次創作ガイドラインを遵守したファンタジー小説です。登場するタレントの方々は、あくまで本作独自のキャラクターとして登場します。実在の配信者様本人、および運営会社様とは一切関係ございません。
【読者様へ】
本作は『モンスターハンター』とのクロスオーバーであり、主人公最強設定およびハーレム展開が含まれます。独自設定や独自解釈を多数含みますので、これらが苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。
冰龍の魂、始まります。
「これで白上もカナ君と同じで氷の魔法が使えるね!」
「そうだな」
「この魔法をどんな風に使おうかな~♪ねぇ、カナ君はどんな……カナ君?」
使えるようになった魔法にワクワクしながら振り向くと、少年はこちらを向きながら微笑んでいた。
「どうしたの?カナ君」
「……ごめんな、フブキ」
そういうと、少年は後ろを向き、どこかに向かって歩いて行く。
「今度はそっちで特訓するの?」
少年は何も答えない。
ただ、自分の中にはこのままでは彼がどこかに行ってしまうという考えがいっぱいだった。だからこそ―――
「待ってカナ君。白上も行くよ」
着いて行こうとした。でも、彼との距離は縮まらない。むしろどんどん離されていく。
「待って。お願い、待ってカナ君。カナ君……待って。待って!カナ君!!白上を置いていかないで!!」
必死に走り、手を伸ばすが彼との距離はどんどん離されていく。
「カナ君!カナ君!!」
▽▲▽
「待って!!」
伸ばした手は、見慣れた天井に向かっていた。
「……ハァ……ハァ……ゆ、夢……?」
荒い息、伸ばした手が震え、先ほどまでの光景が夢だった事がわかると、手に力が抜けてポスッと音を立ててベッドの上に落ちた。そして、頬を伝う涙を感じながら白狐、白上フブキはゆっくりと起き上がった。
「もう、あれから数十年経ったっていうのに、あんな夢を見るなんて……」
フブキは涙を拭い、枕を力強く抱きしめた。
「……会いたいよ……カナ君……」
フブキの力が無い、か細い声は静かな部屋に誰にも聞かれる事なく、消えたのだった。
▽▲▽
その後、フブキは着替えて準備をしてから、ギルド『ホロライブ』が所有するギルドメンバーの宿泊施設から出た時に見慣れた景色と暖かな風、そして桜の花びらが出迎えた。
この世界の名は《ホロノア・ユクモ》
そして中央都市『都(みやこ)』。『都』の中心部には一年中咲き誇る巨大な桜の木、《神祖の御神木》と呼ばれる桜の木がある。この桜の木はこの世界の魔力の源(龍脈)を守っており、その根元に二大ギルドである『ホロライブ』と『にじさんじ』の総本部が隣接して建っている。
桜の周囲は広大な広場になっており、ギルド『ホロライブ』と『にじさんじ』のメンバーがゲリラでライブを行ったり、『にじさんじ』のメンバーが屋台を出していたりする賑やかな場所である。
そして、都の北側には両ギルドが管轄する巨大な天然温泉街がある。激しいダンジョン攻略や日々の疲れを癒す場所だ。
都を一歩出ると、異なる季節の風景が広がっている。
北に位置する常冬の霊峰『氷神岳(ひがみだけ)』。常夏の島『宝鐘海域』。秋の風景が続く『紅葉の古道』と言われる場所に分類されている。
フブキは、一度その場で伸びをしてから歩き出す。目的地は自分が所属するギルド『ホロライブ』の総本部である。
「ハァ……。夢であんなの見ちゃったらなぁ……。今、どこにいるんだろう。カナ君は……」
先ほど見た夢でフブキは気持ちが上がらずにいた。自慢の耳は倒れ、尻尾は元気無く垂れている。今のフブキの心情を表していた。
「おはよ、フブキ」
「んぇ!?あ、おはよ、ミオ」
突然声をかけられて驚いて変な声が出てしまったフブキ。振り返ると同じギルドに所属するメンバーの大神ミオがいた。
「ん?どうしたの?フブキ。なんか元気無いけど」
「あ、う、うん……」
ミオに指摘され、誤魔化してもすぐにバレるのでフブキは素直に頷いた。
「何があったの?」
「……まあ、昔の夢を見たってだけだよ」
「どんな夢さ」
「……小さい頃に魔法を教えてくれた子がいたんだけど、その子が白上の前からいなくなる夢。小さい頃も何度かその夢を見てたんだ」
「……フブキにとっては悪夢みたいなモノなんだね」
「まあ、そうなるかな……。でも、夢とはいえ、好きな人が目の前に現れてくれるのは嬉しいって思う。目の前からいなくなるけど……」
「あ、その子の事好きなんだ?」
「うん」
「あっさり認めるね?」
二人で話ながら歩いていると、上空からピュイと音が聞こえ、見上げると1羽の鳥が結構な速さで飛んで行った。
「今のって……いろはの伝書鳥だよね?あんなに急いでてどうしたんだろ?」
「ござるに何かあったのかな?」
「急ご、フブキ」
「……うん」
そういってミオは走り出した。
だが、フブキは急いで飛び去る鳥の影を見送りながら胸が不自然にざわついたのを感じた。
「……なんだろう。今の、嫌な予感じゃなくて……こう、胸の奥が、熱いような……」
「フブキ?」
「あ、ううん!なんでもない!急ごう!」
そういってフブキも走り出し、二人は急いで『ホロライブ』の総本部に向かったのだった。
▽▲▽
その頃、ギルド『ホロライブ』内ではギルドマスターであるときのそらとその秘書の悠仁英(ゆうじんえい)、そしてギルドメンバーのロボ子、さくらみこ、星街すいせい、アズキが揃っていた。
「で、ギルドマスターであるそらちゃんはかの存在、最強の氷の使い手を勧誘するつもりなの?」
聞いたのは、星街すいせい。すいせいは自慢の武器、バトルアックスをテーブルに立て掛けながら頬杖をしていた。
「そのつもりだよ」
「協力関係にあるギルド『にじさんじ』もかの存在を狙ってるって情報です」
「『にじさんじ』もか~。協力関係ではあるけど、欲しい人材はやっぱり奪い合いになるか」
「そこはしょうがないと思うにぇ」
「でも、かの存在は噂だと龍神の化身なんて言われてるよ」
「はぁっ!?龍神の化身!?」
アズキ、みこが話し、ロボ子が噂で聞いた事を言うとすいせいが驚愕の声をあげた。それも当然である。なぜなら……
「龍神の化身なんて言ったら……!?」
「すいちゃんの考えてる通りだよ。この世界にある神々の一つ。そんな存在だと言われてる」
そらの言う通り、この世界にある神々の一つであり、とてつもない存在だと言われているのだ。
「でもさ、その存在はどこにいるの?みこはその辺は知らないしさ」
「聞いた話だと、北にある霊峰『氷神岳』にいるって」
「あんな一年中猛吹雪の所に?」
「それは昔の事で今はほとんど吹雪いていないよ。天候も晴れ。ただ、やっぱり寒いのは変わらないみたい。今そこにいろはちゃんとクロエちゃんに偵察と情報収集をお願いして行ってもらってるよ」
「あの二人なら大丈夫だね」
ギルド『ホロライブ』の中でも偵察や情報収集に長けている二人に行ってもらっている事を言うそら。そこに1羽の伝書鳥が現れた。
「噂をすれば。いろはちゃんからの伝書が届いたよ」
いろはの伝書鳥がそらの腕に捕まり、足に付けられている管の中に入れてある伝書を取り出すそら。そして伝書鳥を英に預け、英は伝書鳥にお礼として餌をあげ始める。
「……ふぅん」
「いろははなんて?」
伝書を読んでいたそらが驚愕ともとれるリアクションをした事に、すいせいたちが気になった。
「どうやら、かの存在は噂通りのとんでもないみたいだね。二人が偵察できるギリギリの所で気配を消していたのに既にバレていた事。しばらくしたら、身体を凍てつかせる程の視線と悪寒を感じ、直後に二人して全速力でその場から退避したって書いてある」
「二人が退避する程の視線!?」
「しかも始める前からバレてるとか……」
「恐ろしすぎるにぇ……」
「まあ、二人が無事なのは良かったね」
「そうだね」
そんないろはからの伝書に全員が恐れていると、ギルドの扉が開かれた。
「おはみぉーん」
「……おはよ」
フブキとミオの二人だった。
「おはよう。フブキちゃん、ミオちゃん」
「はろーぼー」
「にゃっはろ~」
「おはアズキ~」
「……とんでもない事になってきたなぁ。あ、おはよう。って、フブちゃん?元気ないけど、どうしたの?」
それぞれ挨拶していくが、すいせいがフブキの状態に気づいて聞いてきた。
「え、あ、うん……ちょっとね……」
「……ちょっと悪夢を見たらしくてね」
答えずらいと思ったフブキ。思わず言葉に詰まってしまうが、すかさずミオがフォローし、詳細を話さずに説明してくれた。
「悪夢?そりゃ元気がないわけだわ」
「無理しないでね?フブキちゃん」
「うん、ありがとう」
「あ、そうだ。フブさん、最強の氷の使い手について何か知ってる?」
「え?」
「ほら、フブさんって氷の魔法使うじゃん?なら知ってるかなって思って」
「……ごめん、みこさん。白上はあまり知らないかな」
「そっか~。詳しい事がわかるかなって思ったけど」
「ごめんね」
「大丈夫!みこもほとんど知らないから!」
「それは胸を張って言えることか?」
みこの言葉にミオがツッコミをいれるが畜神が出ている。
「ねぇ、さっきいろはの伝書鳥がすごい勢いで飛んで行ったの見たけど、なんかあったの?」
先ほど見た伝書鳥の事を聞くミオ。これはフブキも気になっているので返答待ちをしている。
「いろはちゃんとクロエちゃんに最強の氷の使い手について偵察と情報収集に行ってもらってるの。その伝書を届けてくれたんだけど……」
「いろはとクロエの二人か。でも、二人がミスをするなんて考えられないけど」
「それがねぇ……」
「相手が悪かったって事だにぇ……」
「本当に何があったの……?」
▽▲▽
「二人が全速力で逃げたぁ!?」
その後、伝書にあった事をフブキとミオにそらが説明したのだが、予想外な事になっていた事に驚き、ミオは思わず叫んでしまった。
「二人は大丈夫なの!?」
「なんとかね。この伝書も逃げた後に送ったらしいし」
そらから二人は無事だという事を聞いたフブキとミオは安心した。
だが、フブキとミオは偵察に長けている二人が逃げたという事に驚きを隠せなかった。それほどまでにかの存在は凄まじいという事なのだろう。
「よし、それじゃあ行こっかな」
唐突にそらが言った。
「行くってどこに?」
「いろはちゃんたちの所」
「は?」
そらの言葉に英が聞くと、そらは当然だというように答えた事とそらの言葉が理解できず、英は呆気にとられた声をあげた。
「……はぁ、やっぱそう来ると思った。そらちゃんは言い出したら止まらないし」
呆れながら言うすいせい。だが、すいせいは立ち上がり、バトルアックスを手に取って刃の確認をしだす。
「いやあの軽すぎじゃない?そら」
「そうかな?」
「いろはさんからの伝書見たでしょ?そんな軽く行くもんじゃないでしょ」
「でもあの二人をここまでする相手なら私が行くべきじゃない?」
「そうかもしれないけど私が言いたいのはそこじゃない……!」
そう言って英は頭を抱えた。
「無理だよ英ちゃん。英ちゃんなら知ってるでしょ?こうなったそらちゃんなら……」
「わかってます……わかってますよ……!だけど言わないと気がすまない!」
すいせいが言うが英はそらの古き友であるため、そらの事はこのギルド内で一番よく知っていると自負している。だからこそこうなったそらは言うことを聞かない事をよく知っている英だった。
「……はぁ、わかった。そらが行くなら私も行くわ」
「すいちゃんも行くよ」
「わかった」
ため息をしながら英は同行する事を言い、すいせいもバトルアックスの手入れが終わったのか肩に担ぎながら英と同じように同行を申し出た。
だがそんな中、フブキはいろはとクロエの二人が氷神岳にいると聞いてからずっとある胸の奥の熱が強くなったのを感じた事が気になっており、フブキは―――
「……そらちゃん。白上も連れていってほしいの」
同行を申し出た。その事に英とすいせいは驚いた。だが、そらだけは
「……うん、いいよ。フブキちゃんも『何か』を感じたんだね」
そう言って同行を快諾した。
「ありがとう。そらちゃん」
「ならウチも。今のフブキはどこか放っておけないし」
「ミオちゃんも?う~ん……」
「いいんじゃない?」
「すいちゃん?」
フブキだけでなく、ミオも同行を申し出た事にそらは少し驚くが、現地でいろはとクロエの二人と合流する事になると結構な大人数で行く事になる。それを考えたそらは返答を渋ったのだ。だが、ミオの同行を許したのはすいせいだった。
すいせいは自分のバトルアックスを振り回している。
「フブちゃんとミオちゃんは火が使える。相手が龍神の化身でも氷が相手なら火を使えるメンバーがいた方が良い。それに単純な破壊ならすいちゃんでも大丈夫だけど、もしもに備えて戦力は多いに越した事はない。でしょ?」
すいせいの言う通り、単純な火力ならすいせい一人でどうにかなる。それほどの実力をすいせいは持っている。だが、相手は最強の氷の使い手。しかも龍神の化身なんて呼ばれているとなるとすいせい一人では心許ない。ならばこそ、火の魔法を主に使うミオ、氷の魔法の他に狐火を得意とするフブキがいればもし戦闘になれば氷に有効な火で戦う事ができる。そうすいせいは判断したのだ。
「……確かにすいちゃんの言う通りかな。わかった。ミオちゃんも行こっか」
「ありがとう!」
「行き先が氷神岳となるとすぐに出ないとマズいよね?」
「それなら大丈夫。いろはちゃんに転移石を持たせてるからここからいろはちゃんたちの所に転移するよ。無くしていたとしてもあそこにはあの子がいるから転移石に困る事はないけどね」
「あ、そっか。氷神岳の麓にいるんだっけ」
「それにござるにも転移石を……もしもを見越して二人が使えるように持たせてた感じかな?」
「それもあるね。じゃあすぐに行くよ」
『了解』
そして、そらと英、すいせい、フブキ、ミオの五人が転移石を使い、いろはとクロエがいる場所に転移したのだった。
▽▲▽
「マジで死んだかと思った……」
「同感でござる……」
雪で覆われた大地。そこにある丘のような場所の麓に踞っている二人がいた。
ギルド『ホロライブ』で偵察、情報収集に長けている二人、風真いろはと沙花叉クロエである。
二人は先ほどまでそらに依頼された存在に偵察をしに行ったのだが、いろはとクロエの二人が相手を偵察できるギリギリの距離の位置に着きはしたものの、直感で相手が既に自分たちの存在に気づいていることを感じていた。
まさかと思いながらも偵察任務を行っていたのだが、しばらくしたら突然自分を凍てつかせる程の視線と悪寒を感じ、恐怖とこれ以上その場にいれば確実な死を悟った。直後に二人は気配なんて全く考える事なく全速力でその場から逃げたのだ。だいぶ離れたのか、視線と悪寒は感じなくなり、丘を見つけたのでその影に隠れるように逃げ込んだ。
この状況をいち早く知らせなくてはといろはは自身の伝書鳥にそらにできるだけ速く伝えてと頼み、飛ばした。直後に二人して緊張が解けたのか、足に力が入らなくなり、座り込んでしまい、今に至る。
「るしあさんが言ってた事、まさかここまでとは……」
「るしあさんから聞いて覚悟は決めてたつもりでござったが……あんな視線と悪寒なんて初めて感じた……」
氷神岳に入る前に、氷神岳の麓に住んでいる『ホロライブ』の元ギルドメンバーである潤羽るしあの元に二人は訪ね、ここに住まう存在を調べているるしあから何か聞けないかと行っていたのだ。結果としては、詳しい事は聞けなかった。彼女もネクロマンサーとして死霊たちを使って情報を集めていたらしいがある一つの場所に近づいた全ての死霊たちが凍らされ、消滅した事だけを聞いたのだ。
るしあは何度もその場所に死霊を送ったが全て消滅した為、その場所が龍神の化身が住まう場所なのかもしれないと予想し、いろはとクロエにその座標を教え、行くのなら覚悟を決める事を伝えたのだ。
その時、いろはが持つ転移石が輝きだした。直後にいろはとクロエの目の前に転移魔方陣が現れ、そらと英、すいせい、フブキ、ミオの五人が転移してきた。
「……え?二人とも?」
ミオが言った。他のメンバーも驚いている。
今のいろはとクロエは、顔面蒼白で震えているのだ。二人のそんな姿を今まで見たことがないそらたちは驚愕したのだ。
「いろは!クロエ!」
「……あ、そらさんたち。転移してきたんですね」
「……偵察任務、失敗しちゃいました。あはは……」
顔面蒼白で震えているのに、そらたちを心配させまいと平常を装うが、それがそらたちにとっては胸が締め付けられてしまう。
それを見て、フブキとミオが黙っていろはとクロエを抱きしめた。
そこで限界だったのか、いろはとクロエは泣き出してしまい、フブキとミオは抱きしめる力を強め、もう大丈夫だと何度も呟き、頭を撫で続けたのだった。
▽▲▽
「すみません、フブキ先輩、ミオ先輩///」
「落ち着いたでござる///」
「そう?」
「もっとウチの胸で泣いていいんだよ?」
「「これ以上はホントに無理(でござる)!!」」
フブキとミオの胸で恐怖で泣いていた二人だったが、落ち着いたようで顔を赤くしながら二人から離れるがフブキとミオの包容力に堕ちそうになるが全力で抗ういろはとクロエ。もし堕ちたら自分は使い物にならないと直感で悟る二人だった。
「にしても、二人をここまで恐がらせるなんて」
「やっぱり私が来てよかった。他の子だと心配だし。いろはちゃん、クロエちゃん。私が偵察任務なんて任せたせいで恐い思いをさせちゃってごめんね?」
「謝らないでくださいそらさん!」
「そうでござる!風真たちももっと覚悟を決めるべきだったでござる!るしあさんから注意されていたのに、風真たちが浮かれてたせいでござる」
「るしあの所に行ったんだね。何か言ってた?」
ミオに聞かれ、いろはとクロエはるしあに言われた事をそのまま伝えた。座標も、全て。
「るしあさんの死霊まで凍らせるなんて……」
「とんでもない化物かな。で?どうするの、そらちゃん」
「もちろん行くよ。その為に来たんだもん」
「だよね」
るしあの死霊まで凍らせる力に英は戦慄し、すいせいはいくら龍神の化身と言われていてもやってる事がもう化物にしか見えなくなっている始末である。
「風真も行くでござる」
「沙花叉も」
「え、でも……」
「そうだよ。二人は無理しないで待ってても大丈夫だよ?」
いろはとクロエが突然一緒に行くと言い出し、フブキが言葉に詰まるが、そらが無理する必要はないと伝える。現に二人の足が震えているのだ。まだ恐いのだろう。
「確かに、逃げたいのは山々です」
「逃げるのは恥じゃない。時にはその選択も重要だとすいせい先輩たちから教わってきたでござる。でも……」
「今逃げれば、いつかまた同じような事を感じた時にこの恐怖を思い出してまた足が震えてしまう……」
「そしてまた逃げてしまう……そうはなりたくない」
「この恐怖を乗りきってこそ、沙花叉は……」
「風真は……」
「「強くなれると思うから」」
二人の覚悟。震える足を叩き、立ち上がった二人は今ある覚悟をそう語った。これにそらたちは後輩の覚悟に胸を打たれ、無理はしているだろうがここまでの覚悟を見せた後輩を蔑ろにする事をそらたちは絶対にしない。
「……強くなったね。二人とも」
「それでこそ、すいちゃんたちの後輩だね」
「二人の覚悟、ちゃんと伝わったよ」
「いざって時はウチたちが守るからね」
「「ありがとうございます!」」
「……うちのギルドは安泰ね、そら」
二人の覚悟に同行を許可したそら。後輩の成長にこれ程嬉しいものはない。でも、また恐怖で動けなくなった時、その時は全員で守ると誓った。
そして、いろはとクロエも混ざり、合計七人で氷神岳の龍神の化身が住まう場所に向かったのだった。
▽▲▽
雪に覆われた大地を歩む七人。先頭にそら、次にすいせい、そして英、英の後ろにいろはとクロエ、殿としてフブキとミオという態勢で進んでいた。
「皆、気づいてる?」
「そりゃね」
「進む事にだんだんと強くなってるわよね……」
「もうウチたちに気づいてるって事だよね」
「……まだ……相手からしたらこれはまだまだ序の口です……」
「さっき感じた悪寒をまだ感じないでござる……沙花叉の言う通り、この程度の威圧はさっきとは全然弱いでござる……」
「……(胸の熱が、強くなってるのを感じる)」
先頭を進むそらが歩きながら聞いてきた。それに対して、すいせいがすぐに答えた。彼女たちは先ほどから若干な威圧を感じており、冒険者としてではない英ですら感じる威圧となると、相手がどれほどのものなのかと考えてしまう。
何より、威圧を感じるという事はミオの言う通り、相手がこちらに気づいてる証拠である。
いろはとクロエは先ほど感じた凍てつかせる程の視線と悪寒を感じてないので、これはまだ弱い方だと感じている。だが、二人はまだ少し震えている。
六人が威圧を感じて緊張してる中、唯一、フブキだけが胸の熱がだんだんと強くなってるのを感じていた。この胸の熱がなんなのか。なぜ近づくにつれて強くなっているのか。それがわからず、フブキはその正体を知りたいと思っていた。
「止まって」
突如、先頭のそらが停止を指示した。何があったのだろうか。
「どうしたの?」
「あれ見て」
すいせいがそらに聞くと、そらは前方を指差した。
全員がその先を見ると―――
「なに、これ……?」
そこには、歪に並ぶたくさんの雪の塊があった。
なぜこんなモノがあるのか。規則正しく並んでいるのなら何かの像だったりと予想出来るのだが、歪に並んでいるとなると予想が出来ない。
「あ、これは風真たちも気づいてたでござる。敵意を感じなかったし、動く事もなかったからスルーしてたでござる」
雪の塊がある所まで進むそらたち。そこで偵察してたいろはが思い出したように呟いた。
「確かに敵意を感じないね。むしろ、何も感じない」
獣人族であるミオが感じている事を呟いた。これは同じ獣人族のフブキも感じていた。
その時、英が一つの雪の塊に近づき、触れた。触れた事で雪が剥がれ落ち、中身が現れ、それを英は見えた。
―――見てしまった。
「ヒッ!?」
「英ちゃん!?」
悲鳴を上げ、後ずさった英にそらとすいせいが反応した。英の前に背負った大太刀に手を添え、いつでも抜刀できる状態のそら。バトルアックスを構え、いつでも戦える状態のすいせいが出た。
「どうしたの!?」
「……こ、これ……ただの雪の塊じゃない……」
「え」
震えながら言う英。その言葉に疑問符を浮かべる皆は、英はなにを見たのかと思い、すいせいがバトルアックスの切っ先で英が触った雪の塊に触れ、雪を剥がした。その中身は―――
「こ、これは……」
「ゴブリン?」
「氷漬けになってる……」
緑色の体をしたモンスター、ゴブリンだった。そのゴブリンは氷漬けにされており、生きている事はない。
「雪を剥がしたら氷漬けのゴブリン……ってまさかここにあるのって!?」
クロエが一つの答えにたどり着き、叫ぶと全員が同じ答えにたどり着いた。すぐにフブキとミオ、いろはが別の雪の塊に近づいて雪を剥がすと、どれも氷漬けになったゴブリンだった。
「これ全部がゴブリンだなんて……」
「いくら危険度が一番低いとはいえ、この数を氷漬けにするなんて……」
「しかも見る限りこの数を一瞬で氷漬けにしてるよね?」
「そんな相手にウチの火、勝てるのかな……」
「(氷漬け、か……。なんなんだろう。この胸に感じる熱は)」
英が戦慄し、そらがすぐにゴブリンの危険度を思い出すが、数が多いと苦戦する相手を氷漬けにした事に驚き、すいせいはこの数を一瞬で氷漬けにした事に相手の強大さを感じていた。ミオは得意とする火の魔法が効くのかわからずにいた。
だがフブキはこの氷漬けにされたゴブリンを見て何かを考えていた。直後―――
「「っ!?来ます!!」」
いろはとクロエが叫んだ。直後にとてつもない強さの突風が吹き、全員は風にあおられて少し後ずさるが、すぐに吹き飛ばされまいと踏ん張り、腕を顔の前に交差して顔を守る体勢をとった。
突風により、氷漬けのゴブリンが全て吹き飛んでいく。そんな事なんて気にする事ができないそらたち。
すると、上空から何者かが高速で飛来し、大きな翼を羽ばたかせ、そらたちの前に着地した。着地した時に翼を一度大きく羽ばたかせて風ととてつもない威圧を放つ。その威圧にそらたちは動けず、英は震え、いろはとクロエは先ほどよりも強い威圧に恐れていた。
羽ばたかせた翼を大きく広げ、威嚇ともとれる行動をする目の前の存在。
その存在がなんなのか、そらたちは気づいていた。目の前に現れたのが自分たちが会いに来た存在であり、龍神の化身と言われている存在。そして、自分たちでは手も足も出ずに先ほどのゴブリンたちのように一瞬で氷漬けにされる事を。
「……………………何の用だ」
「っ!?」ドクンッ!
目の前の存在が呟いた。声質的に男だと感じたそら。だが一人、別の事を感じた者がいた。
「わ、私たちは、中央都市『都』から来た―――フブキちゃん?」
「フブキ?」
恐れながら、そらは自分たちがどこから来たのか、なにをしにここまで来たのかを説明しようとした。が、中断してしまった。理由は相手の威圧で動けないのに、フブキがそらたちの前に出たからだ。そらは驚きながらフブキを呼び、ミオも焦りながらフブキを呼ぶ。だがフブキは答えない。どんどんと相手に近づいていく。
相手も近づいてくるフブキを警戒している。そして、フブキが目の前に立った。相手もフブキを見ていると、唐突に驚いたように目を開かせた。
「……まさか……フブキ、なのか……?」
相手がそう呟いた。そらたちはなぜフブキの名を知っているのかわからず、呆然とした。だが、フブキだけは違う。
「……カナ……君……?本当に、カナ君……なの……?」
蘇るは幼い頃の記憶。懐かしい雰囲気、声。そのどれもがフブキがずっと感じていた胸の奥にある熱が強くなり、目の前の存在が、ずっと想っていた相手であると直感が囁いている。
「…………どうやら、そうみたいだな。久しぶりだな、フブキ」
「……カナ……君……本当に、カナ君だ……カナ君…………カナ君……!カナ君……!!」
涙を流しながらフブキは幼い頃の記憶とは違い、白銀の翼と尻尾を持つカナに抱きついた。
抱きつかれたカナもかつては『冷気で傷つけてしまう』と触れられなかった彼女を、今は制御された力で優しく、温かく抱きしめ返した。
そらと英、すいせい、ミオ、いろは、クロエは普段とは違い、まるで子どものように泣きじゃくるフブキとフブキを優しくかつ、絶対に離さないと言わんばかりに抱きしめる相手、『氷神カナ(ひがみかな)』を見て、二人の歴史と事の重大さを悟った。
そして、そらは泣きじゃくるフブキとそんな彼女を抱きしめるカナを見てなにがなんでも自分のギルドに連れていくと決意したのだった。
お読みいただき、ありがとうございました!
話し方とか違和感あるなと思われる方がいるかもしれませんが、ご了承ください。
カナとフブキの再会。そして今後の展開はどうなるのか。ご期待ください。
異世界『ホロノア・ユクモ』はその名の通り、モンハンのユクモ村をモチーフにしており、世界観は和風となっています。桜が舞う場所に彼女たちは映えると思ったので。
また、そらちゃんの武器ですが、当初はフブキと同じ刀を考えていたのですが、個人的に刀より大太刀の方が合ってそうと思い、大太刀にしてみました。
それでは以上!レリでした!