Day0 入隊式と星の子
「...このように本基地は...
詳細は後ほど...」
「あんたはどんなすげーやつなんだ?」
「音楽にかける情熱だけは誰にも負けない」
「あんたは?」
「オーキッドって、ハッカー集団の腕利きだ」
時は入隊式。
第31期セラフ部隊、その初日。
「オーキッド! あんたオーキッド好きなのかい!? ギャイアグレイーイボドドドゥドーーーーッ!! って叫び散らして魂を震わせる!!」
「違うよ...なんだよそのテンションの変わり方...」
「そこ、ギャーギャーうるさいぞ」
「ぎゃーぎゃーなんてひとことも言ってねぇよ! 魂の叫びなんだよ!」
「初日からキレるな!」
(前の奴ら、怒られてもうてるやん)
(ぎええええええ!?)
(えっ? 何があったの?)
(早くゲームやりたいなぁ)
今はまだ雛ではあるが、将来の人類の希望。その華々しい門出。
だというのに、よりにもよって上官である司令官と激しくやり合う新人セラフ部隊が現れた!
(面白すぎる!
撮りたい。できるだけ鮮明に鮮烈に、この瞬間の世界を残したいッッ!!)
後方より構えられた、鉄の塊。
向けられたのは問題児、茅森月歌。
「うお!?」
「ま、眩し...」
「なんやねん今の!」
迸る閃光と、聞き馴染みのある独特の音。
「おい、そこ。問題行動を畳みかけるな。
貴女、静かに撮る分には構わないけれど、フラッシュまで使うなら、出ていってもらうことになるわよ」
カメラの撮影音とフラッシュであった。
「へへっ、怒られちゃったぜ⭐️
これも記念資料ってことで! 許してくれよな、手塚司令官さん?」
「資料としてなら有り難く頂戴してもいいけれど、私的利用するというなら遠慮なく没収するわよ」
「どのみち手元に残らないじゃん⭐️」
「当然よ。この入隊式だって機密事項なのだから」
「ひえー、怖いコワイ⭐️」
そしてその持ち手は、第31系セラフ部隊の座る席、その遥か後方で、ニコニコヘラヘラと笑っていた。
でっかい星形のアクセサリーがついたカチューシャをつけた、背のちっさい女の子だった。
「なんだ、アイツ...」
「あいつらヤバいヤツにゃ。姉さんは関わらないほうがいいにゃ」
「...あの...いいえ...」
「あの星! カッコよくてキレイでゲス!」
「そうだねぇ。でもお前には立派なヘルメットがあるんだから、安心しな!」
「...好敵手...!」
「なんだ!? いきなり目をかっぴらくな! コワイだろ!」
「眩しい! 眩し過ぎる! アタシにはあんな奴見れねぇよ! ぐわぁ!?」
「お、おい...大丈夫か?」
「まるで夜に輝く星のよう...! それに比べて私は路地裏のゴミ...はっ! ゴミがお星さまと比較になるわけないですよね、すみません...!」
「うふふ、大丈夫ですよ~♪」
「姉さん。カメラですよ、カメラ。あれが手に入ったら、美しい私の姿がいつでもレンズの中に...!」
「ふふっ、安心して。貴女の姿なら、私がいつでも美しく描いてあげるわ」
「...うぅん、なんだよ~うるせ~な~、起きちまっただろ~」
「四つ葉が縦になった!?」
「...おい、アイツとボク。どっちのほうが高い」
「目測ですが、1cmと6mmほどお嬢様の背のほうが高いかと」
「細かいな!? 執事凄いな!? あと誤魔化したんだから背って言わないで欲しかったな!?」
「可愛い子じゃないか。今夜私の部屋に...」
「...騒々しい...」
「ワオ、ジャパニーズカメラマンね! ダークヒーローのワタシの勇姿を、思う存分撮るといいわ!」
「身長から導いたカメラの座標(x,y,z)を定数αとし、距離と角度から写真の写る範囲Aを計算...貴女は頭髪の約8%しか写っていません」
「WHAT!?」
「ふむ...どちら様でしょう? 同期ですかね? それとも先輩...?」
「うるさい。殺すぞ」
「すみませんすみません! どうせ後で自己紹介とかありますよねその時に聞いてみます!」
「静粛に。ほら、貴女のせいでザワついてしまったわ。静かにしてもらえるかしら」
「ごめんごめんて、手塚さん⭐️
ま、イイ写真も撮れたし、満足だぜ⭐️
失礼いたしました! キャハハ⭐️」
得体の知れない星の少女は、そのまま体育館より去っていった。
「何だったんだ、アイツ...」
「ちっさい子でしたね!」
「お前も十分ちっさいで」
× × × ×
~Side 七瀬七海~
「.........」
緊急の連絡。第二次防衛ライン突破の報せ。
手塚司令官の命によると、私には、ここに来る方々を前線へご案内せよ、とのこと。
なので、ずっとお待ちしているのですが...
「出撃先は右だからな?」
「はいよー」
「おい待て、右って言ったろ。あっちだ」
「はいよー」
「待て待て待て、あっちだあっち。あの塔があるだろ。あっちだ」
「はいよー」
「おい! わざとか!? 指さしてるだろ! あっちだ!」
「はいよー」
「わざとだよな!? もう背中押してやるから、あっち行くぞ!?」
「はいよー」
「物理に反逆するな!? 左じゃなくて右だ!」
「はいよー」
「あーーーーーーー!! もーやだーーー!! 勝手にしろーーー!!」
「はいよー」
「勝手にしろって言ったら右に行った!? まるで私が悪いみてぇじゃねーか! つーかさっきから右とか左ってなんなんだ!?」
...視界の先には、いらない言い争いをしている方々が。
入隊式のときにも一番前で大声を上げていたお二人ですね。
不安ですが、この場を離れて声をかけに行くのも...
あ、別の人が走ってきました。ピンク髪に帽子を被った方です。
「セラフ部隊の新人の方ですね。ご案内します。現在第二次防衛ラインが突破されたため...」
「そうですか。ありがとうございます。行くぞーーーー!! うおーーーー!!」
「第三次防衛ラインは...あ、そちらでは」
...話を聞かずに、完全に別方向へ走って行ってしまいました。あちらはフレーバー通り...まあ戦場ではありませんから危険で無いので、放っておきましょうか...
そして、先ほどからこちらやらあの二人やらをパシャパシャと撮っている不審人物が...
「キャンサーが第二次防衛ラインを突破しました。退避してください」
「げげっ!? バレちまってるぜ⭐️」
木の上から、いつもの星を頭に付けて降ってきた方。変わりませんね。
「それだけ目立っていれば当然です。退避してください」
「キャハ⭐️七瀬さんが辛辣⭐️
じゃ、行ってくるねー! あの二人の案内よろしくねー!」
「あ、そちらは第三次防衛ラインで...」
そして言うや否や、凄いスピードで走っていってしまいました。
誰も言うことを聞いてくれません。悲しいです。顔には出ませんが。
× × × ×
~Side 手塚咲~
「ふぅ~、ざっとこんなもんか」
「まぁ、だいたいこんな感じ?」
「諜報員を舐めないでよね!」
敵性、なし。オールクリア。
今日は31期セラフ部隊の入隊式だってのに。
キャンサーどもは待ってはくれないわね。
あるいは今日を狙われた可能性...30Gの討伐報告にあった狼の鳴き声のキャンサーの件もあるし、近くにハブがいるかもしれないわね。誰かに捜索の指示を出しておきましょう。
「お疲れ様。筋はいいわね」
「はっ、光栄であります!」
「情緒どうした? さっきまで反抗してた奴と本当に同一人物か?」
とりあえずこの危機は脱したわけだし、素直に喜ぶとしましょう―――パシャパシャ⭐️―――はあ...
「カメラじゃなくてセラフを持ちなさい。貴女もセラフ部隊でしょ」
「「てへぺりんこ⭐️♪」」
「なんで茅森さんも反応するのよ。貴女は戦ってたでしょ」
「いやー、なんか血が騒ぎまして」
「わかるー! なんか言わなきゃってなったよね⭐️」
「ヤバい...こいつら混ぜたら手に負えなくなるぞ...なああんた...」
「えっ、あたし? なんのこと?」
「ヤバい...こいつもダメだ...」
はぁ...一応ここはまだ戦場だってのに...
まあ、初日はこんなもんね。これからビシバシ徹底的に鍛えてやらないとね。
「手塚さん手塚さん⭐️」
「なに」
「付近一帯さらってきたけど、キャンサーはもういなかったよ⭐️大丈夫大丈夫⭐️」
「...そんな命令をした覚えは無いのだけれど。勝手な行動はよしてくれるかしら」
「キャハ⭐️怒られる前に逃っげろー!」
去り際にまた写真を一枚撮られた。
はぁ...彼女も要注意人物ね...
「ねえねえ司令官。あの子って誰?」
「あなたたちの
電子軍人手帳に、あの子も含んだ名簿が入ってるわ。他にも、RINNEというコミュニケーションツールやらいろいろな機能があるから、落ち着いたら見ておくように」
「はーい」
とにもかくにも。
第31期セラフ部隊が、本日より行動開始となったわけで。
ふぅ...忙しくなるわね。
「茅森さん」
「ん? なに?」
どうか彼女が。
いいえ。
「大変だろうけど、あの子とも仲良くしてあげてね」
「うん、いいよ。おっけー」
「おい、情緒。さっきまでの丁寧さどこ行った...」
「え? あたし? なんのこと?」
「お前じゃねーわ!!」
この子たちも、他のセラフ部隊の者も、それをサポートする士官や施設まで。
この基地全てが、人類の希望で有り続けられますように。
オリ主ちゃんの見た目については、アーさんを一回り小さくしたくらいの姿をご想像していただければと思います。