一条煌めく希望の星   作:木工用

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Day12前編 伝説の始まりと星の子

 

 

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

 

 

「豊後! ハラミは赤みだから醤油ダレって言ったでしょ! なに味噌ダレつけてるの!」

「ハラミはホルモンだわ...」

「山脇様はあまり頭がよくないのでゲスよ!」

「手下がそれ言っていいのか...」

「山脇様は天才マッドサイエンティストなんでゲスよ!?」

「このやりとり何回繰り返すんだ...」

「その錯覚の名を教えてやろう...エコノミークラス症候群だよ」

「デジャブ現象だろ...」

 

 うーん、今日もお昼ごはんが美味しい!

 ワッキーとユッキーとぶんちゃんの話も、見慣れてきたなー。毎日が当たり前のように続くのって、いいよなー。

 

 

「やっほ⭐️今日は決着の金曜日だよね! みんな頑張って!」

「キラりん。ありがとう」

「綺羅さん! 応援ありがとうございます!」

「タマちゃん! がんばってね⭐️応援してるよぉ~⭐️いぇーい⭐️」

「いぇ~い!」

 

 おタマさんとキラりんでハイタッチしてる。

 えっ、二人ってそんな仲良かったんだ。いいなぁ~。

 

「ねね。あたしもあたしも。いぇーい!」

「茅森はダメ」

「がーん! 月歌ちゃーーーん、ショック!!」

「勝ちました。なんで負けたか、明日までに考えておいてください。ほないただきます。ずぞぞぞぞ!

「ラーメンすする音汚な過ぎるやろ...はむっ...」

 

 キラりんに避けられた...もう今日のダンジョンがんばれない...

 

「すまんユッキー。31Aの命運は任せた...」

「なんでだよ。ほら、あたしが応援してやるから、元気出せって」

「元気出た! 超元気出た!

 月歌ちゃーーんチャージ!!」

「単純過ぎるだろ...」

 

「ふん! 私達は焼き肉を美味しくいただくわ! あんたたちはサンドイッチでも食ってパパっと済ますことね!」

「このサンドイッチ美味しい♪」

「ええ! 野菜もたくさんで美容にもいいわね!」

「既に食べてた!?」

 

 うん。どうなるかわからないけど、平和に終わるといいなぁ~って。

 

 

 

 

 

 

 

 

『新宿ドーム哨戒網より入電。

 第二次防衛ライン内にキャンサー集団の侵入を確認。

 映像にてレベル2の個体を視認。確認回します。

 31A、31Cは直ちに出撃準備。準備終了後、格納庫に集合してください』

 

 

 

 

 

「...!?」

「なによ!?」

 

 警報音。

 それとさっきの放送でななみんの言ってた内容。

 ただ事じゃない。

 

「こういうときは了解って言っておけ」

「りょ、了解!」

「了解よ!」

「片付けは任せて、格納庫に急ごう。みんな、準備はいいか?」

「ああ」

「ええ!」

「大丈夫」

「行けます!」

「やったろやないか!」

 

「豊後、佐月、神崎、天音、桜庭。行くよ!」

「はいでゲス!」

「はい♪」

「行くでござる!」

「ふん、仕方ないな」

「導きのままに」

 

 全員で、そのまま格納庫に向かった。幸い、カフェテリアからは出てすぐだ。とりあえず急いだ。

 

 

 あれ?

 キラりんが、気がついたらいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

「揃ったようね。準備に不手際はないわね?」

「完璧よ!」

「大丈夫だと思う」

 

 飯も途中で、正直頭はまとまっていない。

 でも、飯の後はそのままダンジョンに行こうとしてたところだし、抜けはないと思っている。

 デンチョだけは、全員持ってるのを確認した。

 

「七瀬」

「はい。映像解析の結果が出ました。

 レベル2キャンサーは、DeathSlugが一体。

 新宿ドームに向かって進行中」

 

 そのデススラッグってのが、やべー奴ってことか。

 

「あなたたちには、基地周辺の防衛を命じます。

 前線には、先輩部隊に行ってもらうわ」

 

「待って! 31Aはともかく、31Cは前線でもやれるわ!」

「あたしらも前線に行く。あたしらだって十分経験を積んできたからな」

 

 正直、基地周辺の防衛って聞いて、一瞬ホッとしちゃったけど。

 ワッキーのやる気を見たら、負けてられなくなった。

 元から、戦場に出る覚悟はしてんだ。大丈夫。行ける!

 

「...わかりました。確かにあなたたちは我々の想定を上回る速度で成長している。それを信じましょう。

 指示を訂正。31Aと31C両部隊に、DeathSlug討伐作戦への参加を命じます」

「よっしゃ!」

「やってやるわ!」

 

 その後は、作戦の説明だった。

 さっきのデススラッグってのはあくまで先輩部隊にお願いして、私たちはドーム周辺とかの、今までダンジョンで戦ってきたようなキャンサー小集団の掃討任務。

 なるほど、それならできそうだ。

 

「司令官、至急の連絡です」

「何があった?」

「はい。先ほど、ヘリが一機、予定外に離陸しました。向かった先は新宿。新宿ドーム周辺。現地です」

「なんだって!?」

 

「ひぅ!?」

「ひゃい!?」

 

 手塚司令官が今日一番怖い声を上げた。おっかねぇ。

 

「誰!? 何人!? 今はどうしてるの!?」

「ドローンを追跡させています。ヘリの運転士からの証言によると、彼女は一人で降下し、トランスポートで現地に降り立ちました。

 ドローンの映像を映します」

 

 

 

 小さな画面に映し出された映像を、皆でこぞって見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャハキャハ⭐️ ほらほら~、アタシはこっちだよ~?」

 

 

 ドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

「キャハキャハ⭐️ はやくはやく~! おっそ~い!!」

 

 

 ドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 折れたビル。倒れた街路樹。ヒビ割れた道路。

 終焉を迎えた新宿区。その中を、砂埃を巻き上げ大地を揺らしながら疾走する集団が一つ。

 

 総数10体を超えるキャンサーが、跳んで走って進む様は、身の毛もよだつほど気持ち悪く。

 その先頭を、ニコニコヘラヘラ満面の笑みで駆け抜ける、疾風軽快にして小柄な少女が一人。

 

 

「キャハキャハ⭐️キャハハハハ⭐️ ざぁこざぁ~こ♡よわよわキャンサー、ハイ! チーズ♪」

 

 

パシャッ!

 

 

「キャハハ⭐️鬼さんこちら、手の鳴る方へってね⭐️」

 

 

 キラりんが、命懸けの逃走劇を、まるでおにごっこのように楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...茅森さん、山脇さん」

「うん」

「ええ」

 

 手塚司令官が頭を抱えている。

 キラりんがやってくれてるのは、多分陽動なのか。

 ドームから、キャンサーを引き剥がしてくれている。

 たった一人で。

 

「作戦は伝えた通りに頼むけれど...急いで。

 そしてもしも彼女を、日景さんを助けられそうなら、お願いするわ。総員出撃!!」

「ああ、わかった!」

「了解よ!」

 

 何であそこにいるのかとか、そういうのは全くわからないけど。

 とにかく急ごう。キラりんが頑張ってくれている!

 

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 手塚咲~

 

 

 

 

「全く...何を考えているの、あの子は...」

 

 情報も何も知らず、指示もなく。

 ただ一人最前線に降下するだなんて。自殺行為以外の何物でもないというのに。一体なぜ...

 

「...手塚司令官」

「なに」

「彼女の()()()()は、お伝えしないのですか?」

「...ええ。31Aと31Cに余計な不安を与えて、これ以上作戦外の行動をとらせるわけにはいかないから」

 

 そう。彼女のことは伝えられなかった。

 まだ彼女が、十分に実戦経験がある百戦錬磨のベテランであるならば、それこそ、現セラフ部隊最強の月城さんのような者なら、まだあの行動もわかる。

 

 違うのだ。

 彼女にいたっては、まるでその()()()

 ()()()なのだ。

 

「伝えられないわよ...31Kに配属されて以来、彼女が()()()()()()()()()()()()どころか、まだ()()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通信、繋ぎます」

「ええ」

 

 茅森さんたちを送って、すぐに司令室に戻ってきた。

 

「31K部隊長、日景綺羅。

 手塚よ、応答しなさい」

「はーい⭐️こちら31K部隊長、一条煌めく流れ星⭐️日景綺羅だよ! キャハハ⭐️」

「何をしてるの。勝手な行動は許さないわよ」

 

 追跡中、DeathSlugから離れたタイミングを狙って、通信を試みた。

 幸いにも繋がり、声を聞くことができた。

 それだけでも、少し安心した。

 

「新宿ドームが危ないんでしょ?

 とりあえず近かったの引き剥がしておいたから、安心してね~!」

「...貴女、自分を犠牲にして、囮にでもなるつもり?」

 

 安心だなんて、できるわけがない。ふざけないでほしい。

 そんな作戦―――そんな愚策、私にさせるな。

 

「犠牲になんてなるつもりないよ? こんなキャンサー程度、あたしの足なら余裕で逃げられるし! ほら、外での実戦だって、初めてじゃないし!」

()()は事故よ。一方的に逃げ隠れていただけの逃亡劇を、実戦にカウントしないでもらえるかしら」

「いいじゃんいいじゃん⭐️ちゃんと陽動完遂して、しっかり生きて帰るからさ! その時は、あたしをいっぱい褒めてよね⭐️キャハハ⭐️」

 

 ...頭を抱えた。ため息も出た。

 言いたいことは山ほどある。

 でもそれを言うべきは今ではないと、理性で采配する。

 

「...ええ、帰ってきたら言いたいことが山ほどあるわ。だから無理せず、絶対に生きて帰ってきなさい」

「はいは~い⭐️」

 

 ...通信、終了。

 

「司令官。日景さんは、大丈夫そうでしたか?」

「...10体を超えるキャンサーに追われてしばらくだというのに、息すら乱れていなかったわ。彼女は本気で可能だと思っているのでしょうね」

 

 実際、日景さんの走りは相当速い。体力も相当の物。

 アリーナでの訓練でも、逃げと回避行動だけは、30G並みの上手さを感じていた。

 今だって映像を見ていても、地形上どうしてもというときにしかトランスポートせず、それ以外は走力のみで陽動と牽引を可能としている。

 高所からの不意討ちにも余裕を以て対応し、回り込まれることへの警戒と対策も欠かしていない。

 

「茅森さんと山脇さんたちは?」

「ちょうど今、交戦を開始しました。31Aと31Cで別れて、小集団を一つずつ撃破していく動きのようです」

「彼女たちの位置情報と経路予測を日景さんに伝えるわ。あの牽引集団が彼女らにかち合うと危険よ」

「承知しました」

 

 久しく忘れていた忙しさに見舞われている。

 大事は信じて、小事に最善を尽くす。

 

「30Gの到着は?」

「...想定より遅れています」

「...DeathSlugが怖いわね」

「...はい」

 

 頼みはしない。

 無理もしなくていい。

 

 ...無事に帰ってきなさい。

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

 

「あれが、DeathSlug...!」

「バケもんじゃない...! 勝てっこないわ! 後退して迂回するよ!」

「はいでゲス!」

 

 地図を見ながら、小規模集団を潰して、潰して。

 粗方終わったところで、デススラッグを発見。

 

「31A! あんたらもノロノロしてると、死ぬよ!」

 

 ワッキーたちは後退した。

 

「月歌、あたしらも後退しよう...!」

 

 ユッキーは後退を勧めてくれている。

 でも...

 

「...先輩って、いつ来るのさ。この距離じゃ、ドームまですぐだよ」

「...あたしらだけで、行けるか?」

 

 あたしは、行こうと思った。

 覚悟を決めた、その時。

 

 

「待ってください!」

「おタマさん、どうした!?」

「あいつの行き先に...誰かいます!!」

「なんやて!?」

 

 

 言われた通り、デススラッグの目線の先を凝視した。

 かなり遠いが、唯一見えるものがあった―――星のアクセサリーだ。

 

 

「キラりん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『日景さん!? DeathSlugに接近するなんて、何してるの!? 死ぬ気!?』

「違うって⭐️なーに、同期がなんかがんばろうとしてるの見たらさ、あたしにも何かできることはないかなーって、思ってもいいじゃん⭐️」

『あなた、何を...!』

「おーっと手が滑った。通信オフっとな⭐️...さーて、足元にいた取り巻きどもは私に任されろ。

 やるなら今やれ! 31A! タマちゃん! 茅森ィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見たか皆! キラりんがキャンサーを引き付けてくれてる! 今の内にデススラッグを討つぞ!」

「ああ!」

「ええ!」

「待っておったわぁ!!」

「綺羅さん、大丈夫でしょうか...!」

「構うな、タマ。うちらの仕事は、あいつの頑張りに応えて奴を討つことや」

「...はい!」

 

 負けていられない!

 奴を、討つ!

 

 

 

「行くぞ! 戦闘開始だ!」

 

 

 

 

 

 そこから、熾烈な戦いの果てにあたしたちがデススラッグを討つまで、数十分。

 あいつ以外のキャンサーは、一匹たりとも来なかった。

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

 

 

「...やったか」

「...ああ、完全に沈黙した」

「やったのね...」

「すごい...」

「じゅ、準備運動にも、ならへんかったで...」

「めっちゃ息上がってますけどね...! ゼェ...!」

 

 ...勝った。多分。

 なんかでかくて白い木? 塔? みたいなのになって動かなくなった。わかんない、初めてだからわかんないけど。多分勝った。

 

「はぁ...はぁ...あんたら、あいつを倒したっての?」

「ま、まじでゲスか?」

「はぁ...で、でも、あんたらがのんびりデカブツと戦ってる間に...ゴホッゴホッ...討伐数は稼がせてもらったわ...!」

 

「なんやじぶんら、逃げよったわりにもの凄い疲れてんな...」

「ええ...討伐数を稼いだからね...なんなのよあの大群...10体は超えてたわよ...!」

「怖かったでゲス...!」

「しかも、終わったと思って戻る途中、更に6体来たし...こっちも大変だったのよ...!」

「大変だったでゲス...!」

 

 デンチョを確認する。

 確かに、付近の小規模キャンサー集団はほぼ殲滅されていた。

 

「そうだワッキー! キラりんを見なかったか!?」

「日景? 私は会わなかったけど...」

 

 

「呼ばれて参上! キャハ⭐️

 ということで、はい!チーズ⭐️」

 

 

パシャッ!

 

 

「うわっ!?...まーた勝手に写真!」

「キラりん! 無事だったか!?」

「おうとも! 一条煌めく流れ星⭐️日景綺羅ちゃんは健在だぜ⭐️」

 

 良かった...全員無事だ...!

 

「綺羅さああああん!!」

「おっと、タマちゃん。お疲れ様!」

「良かった...無事で良かったです...! ありがとうごじゃいます...! 喉乾いてませんか...? 飲み物ありますよ...!」

「ありがと⭐️じゃあ一口ちょうだい⭐️」

「はい...!」

 

 凄い。

 あれだけ休まず走ってたはずのキラりんなのに、見た目じゃああんまり疲れてるようには見えない。汗はかいてるし、煤だらけではあるけど。

 

「ねぇ、日景。あんたが連れてた大群は?」

「ん?...ん、ぷはぁ~。あっちのほうで撒いて捨ててきたよ⭐️ドームから遠いしいいかなーって」

「おい! あたしらが来たほうじゃない!」

「なら、デススラッグの取り巻きだった奴らは?」

「それなら、あっちらへんに⭐️」

「あちきらが通ったところでゲス!」

 

 あ~...

 ワッキー達の討伐数が増えたのって...

 

「良かったねワッキー。討伐数稼げて」

「アハハ⭐️よくぞご無事で!」

「...ひぃかぁげぇ~...!」

「許さないでゲス!」

 

「逃っげろ~⭐️」

「待てえええええ!!」

「待つでゲスうう!!」

 

 また走って行っちゃった。

 

「ちょうどあっちはドームのほうだな。追いかけるぞ」

「だな。まだキャンサーが残ってる可能性がある」

 

 その後、案の定いたはぐれキャンサーがドーム住民を襲うところを間一髪でぶっ飛ばして、今回の任務は無事に完了となった。

 

 

 

 

 

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