一条煌めく希望の星   作:木工用

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Day12後編 世界の終わりと星の子

 

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

「結局、あたしらが31Aか...」

 

 激戦を制した午後が終わり、あたしたちは31Aの部屋に戻ってきた。

 そう、司令官とワッキーとの話し合いで、3()1()A()は元通りあたしたちが任命された。

 そして、あたしはその部隊長。

 

「実感ねーな...」

「これって、現実よね?」

「現実なんじゃない? ゲームみたいだけど」

「無理ぽ...だめぽ...」

「救世主にとっては、スタートラインや...はは...」

 

 みんな、疲れてる。

 昼飯も途中だったし、日も暮れてきた。

 今日はこのままゆっくりと...

 

 

 

 コンコン

 

 

 

「失礼しまーす♪

 こんばんはー♪ 本日はお疲れ様でした♪」

 

 扉をノックする音。

 開けたら、マリーがいた。

 

「マリー、さっきぶり。お疲れ。どうかしたの?」

「実は...ぶんちゃんのことで話があります」

 

 やけに、真剣な表情だった。

 

「できれば皆さんに、私たち31Cの部屋にお越しいただきたいのです」

「...わかった、行こう」

 

 断る理由もないし、皆で部屋を出た。

 

 

 

 

「おっ、お揃いじゃん⭐️お疲れ様~!」

「キラりん、どうしたのそれ? 写真?」

 

 ちょうど、廊下を歩いてたキラりんがいた。

 手に持った入れ物の中に、大事そうに写真が数枚入っていた。

 

「いえーい⭐️現像が終わったんだぜ⭐️

 本当は昼には終わってたんだけど、あんなことがあったからさ...でも今なら、無事に帰ってこれた祝いってことで、いいなぁって思って!

 あと、終わりがけに撮ったやつも、超早(チョッパヤ)で仕上げてきたぜ⭐️」

「へえ~、いいね。見せてよ」

「わ~! ダメダメ! 一番最初は山脇ちゃんに見てもらう約束なんだから! ダメだよ~」

「あぁそっか、ごめんごめん」

「も~、そんなだから茅森は茅森なんだからな⭐️」

「どういうことだよ、それ。ははは」

 

 マリーの後ろを歩きながら、キラりんと話をする。

 

「キラりんは写真が好きなんだな」

「ん、だね⭐️

 撮った写真を振り替えるとさ。写真の中で、その世界が変わらず生き続けているように思えるんだよね⭐️」

「何それ、素敵じゃん」

「おうよ⭐️

 ちなみに、こっそり今日のキャンサーも撮っておいたから、後で見たけりゃ見せてやるぜ⭐️」

「その流れだとキャンサーが写真の中で生きてることになるから!」

「アハハッ⭐️」

 

 でもそうだね、思い出を振り返られるっていうのは、いいかも。

 

「...写真、ですか...」

「うん⭐️あれ?皆して31Cのお部屋いく感じ? なら佐月ちゃんに渡して、あたしは戻るけど?」

「...いえ、日景さんにも関係があることなので、よろしければ、ご一緒に」

「さんきゅ⭐️よーし、皆でお祝いしようよ!」

「だな!」

 

 よーし! 変なゲームならあたしに任せろ!

 

 

 

 

 

 

「...皆で、お祝い...そうですね、できればそう、したかったです...」

 

 31Cの部屋につき、ドアを開けた。

 

「でも、無理なんです」

 

 振り向いた顔は、少し泣いていた。

 

 

 

「ぶんちゃんの記憶が、これから消えます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ...え?

 

「消えるって、どういうこと?

 どのくらい消えるんだ...?」

「ここにやってくるまで、全部」

 

 ―――そこからは、マリーの話が続いた。

 ぶんちゃんは、新しい記憶が更新されないこと。

 31Cとしての思い出も、戦った記憶も、訓練した経験も、基地での日常も、全部無かったことになるって。

 ユッキーには心当たりがあったみたいだけど、あたしは言われるまで全然わからなかった。

 

 だから、ワッキーが言ってた、幼い頃からのマッドサイエンティストごっこを、ここに来てからもずっと続けてて。

 止めたくても、記憶と矛盾してしまうから、止められなくて。

 

「そんな...」

「イヴァールちゃんが31Aにこだわっていた理由は、活躍して、戦果を上げることで、セラフを産み出すような科学者たちに、直接訴えかけたかったからです」

 

 

「どうだ、うちの豊後は凄いだろうって。だから、こいつを治療して、もう、ごっこ遊びを終わらせてあげてくれないか、と」

 

 

「...ちょうど、ぶんちゃんが眠りにつきましたね...」

「ぶんちゃん...ワッキー...」

「イヴァールちゃんはいつもああしてそばにいて...子供のように、朝まで泣くのです」

 

 

 

 

―――うあああぁぁぁ...あああぁぁぁ...!! ああぁぁぁぅぅああああぁぁああ!!!

 

 

 

 

 

 

 ...泣きだしたワッキーに、あたしは何も言えなかった。

 誰かが近づいていった。視界が滲んでよく見えないけど、星のアクセサリーでわかる。

 キラりんだ。

 

「や、山脇ちゃん...これ、約束の写真、渡しに来たんだけど...どうかな...⭐️豊後ちゃんも、皆も良く写ってるよ...⭐️」

「...ぐすん...ああ、写真ね...現像、終わったのね...ありがとうね...」

 

 話をするワッキーは、いつもの感じじゃなかった。

 多分、こっちが本当のワッキーなんだろう。

 ...全部、演じてたんだ。天才マッドサイエンティスト山脇様を。ぶんちゃんのために。

 

「...うん。よく写ってるね。きっといい腕と機材なんだろうね...」

「アハハ⭐️ありがと⭐️...これ、大事にしてほしいなって。こうして残しておけば、豊後ちゃんとの思い出も残せるかなって思うんだ。どうかな...?」

 

 ...キラりんは、優しいな。

 渡されたワッキーも、笑顔だった。

 

「...へぇ、綺麗に撮れてるのね」

 

 ワッキーは貰った写真を大事そうに見ていた。

 

「うん。31C全員の写真もいいもんだね」

「みんないい笑顔だよ!」

「ああ~、やっぱりこのとき髪ボサボサじゃないか。ちょっと気にしてたんだよ?」

「アハハッ!」

 

 一枚一枚、噛み締めるように眺めていた。

 そして全部見終わった後、

 

 

「ありがとう、日景。

 そして―――ごめんね

 

 

 ()()()()()()()...!?

 

 

「山脇殿!? それは!?」

「ワッキー!? 何を!?」

 

 

 

ビリッ!!

 

ビリッ!!

 

 

 

 

 

「...何って...こんなに良く撮れてる写真、こうするしかないじゃない」

 

 両手で、摘まんで、破った。

 縦に、横に、十字に、細かく細かく。

 

 

 

 

 

ビリッ!!

 

ビリッビリッ!!

 

 

 

 

 

 紙が引き裂かれる音が、何度も、何度も、狭い31Cの部屋に響く。

 

 

『写真の中で、その世界が変わらず生き続けているように思えるんだよね⭐️』

 

 

(世界の、終わる音だ...)

 

 

 やがて原形を失ったそれらは、ワッキーの手からこぼれ、屑籠の中にパラパラと落ちていった。

 その後を、大粒の涙が追って、残骸となった紙屑を濡らしていく。

 

「こんな...写真だなんて...豊後に見られたら、いつ撮られた写真なんだってなって、怖がらせちゃうじゃない...

 だから、残したり、あんたに返したりして、万が一にも、見つかるわけにはいかないのよ...

 だから、こうするしか...こうするしか...ごめん、日景...ごめん...本当にごめん...!」

「イヴァールちゃん!」

「うっ...うぁ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ...あ...ごめんなさい...あたし、そんなつもりじゃ...こんな辛い思いさせるつもりじゃ...!」

「...日景さんは悪くないんです。こちらこそすみません、せっかく写真を持ってきてくださったのに...」

「ぐすっ...ごめん...ごめんね、日景...写真破かれて、嫌だったよね...! ごめんよ...!」

「あ、謝らないで...謝らないでよ! 本当に辛いのは山脇ちゃんで、それなのに、あたしは...! 何も考えず...! そんな...こんなのって...!

 ごめん...! ごめんっ...! ごめんなさい...! ごめんなさい...!

 ごめんなさいっ...!!」

 

 

 

 

バタンッ!

 

 

 

「キラりん!?」

 

 キラりんは、走って部屋を出て行っちゃった...

 

「ごめん...ごめんよ...! 日景...! それに、豊後もぉ...!

 たとえお前が忘れちゃったとしても、お前との写真なんて、本当は全部宝物にしたいんだ...! お前にとっても大切なものになるはずだったんだ...!

 それなのに...こんな...破り捨てるだなんて、私はお前の友達失格なんだろうなぁ...!」

「そんなこと無いですイヴァールちゃん...! みんな、誰も悪くないんです! だからどうか、どうかそんなこと言わないで...!」

 

 

 ワッキーは、ぶんちゃんに背を向けて、床に崩れ落ちているのを、マリーに支えて貰っている...

 

 

 私たちは、何も言えない。

 

 

 こんな彼女たちから、31Aという希望まで奪ってしまった私たちには、何も言えるわけがなかった...

 

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

「みんな、突然だけど、集まってくれてありがとう」

 

 あの後、手塚司令官から、ライブの許可が降りた。

 ありがたかった。今はとにかく歌いたかった。

 皆の思いも、無念も、切なさも、全部を込めて。

 

 悲しみに泣き喚くワッキーにも、全てを忘れて眠るぶんちゃんにも、いなくなってしまったキラりんにも届くように。

 セラフ部隊として、31Aとして、茅森月歌として、あたしとして―――ここから始めよう。

 

 

「聞いてくれ!」

 

 

 

 

 あたしの伝説は、これから始まる。

 

 

 

 

「Burn My Soul !!」

 

 

 

 

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