星の子と星空
「ぐっ...! うっ...!」
背後には、守りたい皆。
目の前には、強大で真っ赤なバケモノ。
精一杯広げたセラフと、真っ赤な熱線の衝突で、バケモノ以外は、何も見えません。
...余さず紡いできた記憶の果てで、最期に見るのが、こんなのだなんて、イヤだなぁ。
「さいごは...さいご、は...」
最期は...最期に、もう一度...
あの子と、お話がしたい、なぁ...!
―――その頭上、一条の流れ星が煌めいた。
× × × ×
Day2 20:30
~Side 茅森月歌~
「ん~! 今日もいい湯だな~」
ワッキーといろいろお話した後のお風呂!
髪下ろしてアイパッチ外したワッキー、ビックリするくらい美人。皆にも見せてあげたいなぁ~。
「そうね。
「風呂専用のセラフ掃除人でも雇ったの?」
「なんでセラフ部隊がわざわざ風呂掃除専門なのよ!?」
ナーイスツッコミ!
楽しい~もっと欲しい~
「知らないのかい? 最近、日景が風呂掃除してるんだよ?」
「キラりんが? なんで? 31Kって風呂掃除専用のセラフ部隊になったの?」
「なってないわ! 風呂掃除専門から離れろ!」
「あっ! KってクリーニングのKってこと!?」
「違うわ! ちょっと関連性見出だすんじゃないよ!?」
「あっ! クリーニングってCじゃん! じゃあ違うか~」
「そうじゃん! すぐに気づけなかった己のアホさがわからされる...!」
「じゃあワッキー達31Cが風呂掃除専門かぁ~」
「イヤだよ!? なら31Aは31アホってことでいいか!? いいんだな!?」
「ワッキー達ってアホになりたかったんだ。全然譲るよ?」
「いらないわ!? あとワッキーって呼ぶな!」
あ~、ツッコミでお腹いっぱいだ!
これが明日を戦う力になるからな。ごちそうさまでした。
「で? なんでキラりんが風呂掃除してるの?」
「急にまともになるな...
あんた達がDeathSlugをぶっ飛ばした日。あん時って日景って無断での出撃だったじゃない? あれで怒られて罰として風呂掃除させられてるのよ」
バシャッ!
「そんなのおかしいよ!!」
「わっ、突然立ち上がるな! あんたスタイル良いから視線に困るから...!」
いいや、立つね。
おかしいだろ!
「行ってくる!」
「どこに!?」
行かなきゃ!
誰よりもあたしが!
「司令官のとこ!」
「服は着てきなよ!?」
「あ」
「忘れるなぁ!? 体拭け! 服着ろ! 髪乾かせ!」
「...で、こんな夜中に殴り込みに来たと」
「そうだよ!」
司令官室のドアを叩いて、ありったけをぶちまけた。
「新宿ドームのことだって、キラりんが頑張ってくれたからドームの被害も無かったんだよ! あたしとワッキーたちだけじゃわからなかった!
それに、あのデカブツ倒すときも、キラりんはキャンサーを何体も引き連れてってくれたんだ! デカブツとやってるとき、もし横から増援に割り込まれてたら危なかった!
デカブツとキャンサーを倒したのは確かにあたしたちだけど、キラりんの功績だって凄かったろ! 勇気ある行動だったろ! 何で評価してくれないんだ!」
はぁ...はぁ...!
捲し立てた。ありったけをぶつけた。風呂上がりだからか頭が熱い。
でも、誰よりも助けられたのはあたしだから。
「茅森さんの言い分もわかるわ」
「なら!」
「その上で、後は本人から聞きなさい」
本人?
と、そのタイミングで、後ろの入り口がコンコンッと鳴った。
「失礼します。もうよろしいでしょうか」
入ってきたのは、ななみん。
「ええ。グッドタイミングよ。
今日の結果は?」
「残念ですが、本日も」
本日
「何のことだ?」
「言ったでしょう。後は本人から聞きなさい。
ほら、隠れてないで出てきなさい。そもそも頭の星が隠れてないわよ」
「ひゅい!?」
開いたままの入り口から、声が聞こえた。
振り返ったら、頭のお星さまが目についた。
「キラりん?」
「...エヘヘ、キラちゃんだぜ。エヘヘ...」
「おっ、おタマさん。やっほ~」
「月歌さん! と、キラさん!」
「やっほ~タマちゃん⭐️」
キラりんを連れて、自販機で飲み物って思ったら、先客のおタマさんがいた。
「はっ!? お二人はまさか、夜のデート!? 月歌さん、ユキさんという人がいながら...!」
「違うから! ちょっと夜中にお茶飲みながらお話しするだけだから!」
「それってデートなのでは?」
「ならデートかも」
「違うぞ⭐️」
駄弁りながら、自販機の一番上のボタンを押す。
「よいしょっと」
ピッ
ガコンッ
「ほ~い、お茶」
「ん、サンキュー⭐️有り難く貰うぜ。
んっ...ぷはぁ~。疲れて火照った体に沁みるよぉ~」
「おタマさんもどう?」
「私がいつか届けと思っていたお茶のボタンをあっさりと...! これが敗北...! なんで負けたか明日までに考えておきます...!
ほな、いただきます」
「はいよ」
ピッ
ガコンッ
「は~! お茶がおいしー! 良く冷えてるしー! 豊富なビタミンC! イェイ!」
「イェイ⭐️
そうだ、タマちゃんにも聞いて欲しい話があるんだけど、今大丈夫かな?」
「大丈夫です! 今まさに用事が終わったところなので!」
「お茶のためにずっと自販機の前にいたの!?」
「そうですが、何か?」
「執念が凄い⭐️
じゃあ、屋上にでも行こうか。
天気良いし、空も星が見えて綺麗だからね⭐️」
「はい!」
「へぇ~。こんなところあったんだ」
「いい場所ですね!」
ということで。
キラりんと、おタマさんと。
三人で宿舎の屋上に来た。
「あまり知られてないのかな?
あたしは良く来るけど、他には31Fの柳さんと30Gのユイナさんくらいしか来ないんだよね」
「確かに、やなぎんここ好きそう」
屋上には、景観良く育てられた植栽と、木製の腰掛け。
その一つに、三人で座った。
左にキラりん。中央におタマさん。右にあたし。
「ほら、空めっちゃ綺麗でしょ⭐️」
「わ~!」
「ホントだ。めっちゃ綺麗」
見上げて、空を見た。
気にして無かったけど、確かにめっちゃキレイだ。
「あたし、星空がめっちゃ好きでさ⭐️
子供の頃は、いつもベランダから夜空を見てさ。流れ星様が願いを叶えてくれないかな~って、見上げてた」
「いいね、それ」
「ステキです!」
しばらく三人で星空を見上げて、
おもむろに、キラりんが口を開く。
「あたしさ。適正試験に合格できないんだ」
「...うん」
まだ不合格なのは、新宿の日に出撃前に聞かされたっけ。
なるほど、それで今日
あのあとも、ずっとキラりんは必死に頑張ってるんだ。
「エヘヘッ。
セラフは呼べるんだけどさ。なんか、キャンサーに弾が撃てなくって。手も指も震えちゃってさ。
31Aの適正試験がどうかはわからないけど、あたしの31Kの試験は、ホッパー系の小型キャンサーを一体倒せればそれでいいって話なんだ。
でもな...それすらも、あたしにはできてないってワケなんだぜ」
キラりんが、星空に開いた手を伸ばす。
明るくて元気な顔ばかり見るから、こういう悲しそうな顔を見ると、心がとっても痛くなる。
「あの新宿の日、手塚さんにはしこたま怒られちまったぜ。
勝手に命を危険に晒すなって。何かあったらどうするのってな。
適正試験には何回不合格になっても一度も怒られなかった。手塚さんも七瀬さんも、落ち込むことはない、次は頑張りなさい、合格できるよう祈っているわって言ってくれてさ。
でも、やっぱ何もできない自分が悲しくて、悔しくってさ。
新宿のあの日、緊急の連絡が響き渡って、居ても立ってもいられなくって、あんなことしちゃったんだよなぁ~...
それどころか、この前は山脇ちゃんのことも傷つけちゃっただろうし...ぐすんっ...
あーあ、お星さまは遠いなあ...」
目元から涙がこぼれ、掲げてた手からも力が抜けて、崩れ落ちる。
「でも!」
その手が落ちきる前に、おタマさんが握った。
「私たち31Aは、そんなキラさんの行動に助けられました! 私たちだけじゃなく、ドームのひとたちもきっと、キラさんの行動に救われたんだと思います!」
「タマちゃん...」
「...でも、次も同じことをキラさんがするなら、多分私も悲しいですし、怒ってしまうかもしれません。
キラさんに、無事でいて欲しいから...!」
キラりんの手を包むおタマさんの両手に、力が籠る。
「...ありがと、タマちゃん。茅森もね」
「あたし?」
「司令官室での言葉。実は聞いちゃってたんだよね」
「マジで? めっちゃ恥ずかしい」
「エヘヘッ。
あたしのために、あの怖い手塚さんにあそこまで言ってくれてさ。嬉しかったよ。
あんたら31Aが、そんな優しくて強い部隊だってんなら、背中を見るあたしも安心できる」
...そうか。
31Aは最前線の斬り込み隊。一番前を行く部隊だから、あたしたちの背中は、みんなを安心させることができるのか。
また一つ、気づけた。
「最前線は頼んだぜ、タマちゃん、茅森。
あたしも何とか試験に合格して、いつか前線であんたらを救ってやるから!」
「あははっ、もう十分助けられてるけど。
わかった。楽しみにしてる」
「はい! ご健闘をお祈りいたします!」
あたしたち31Aだけが最前線で辛いわけじゃない。
キラりんだって、勿論他の部隊の皆だって当然頑張ってるんだ。必死に戦ってるんだ。
そんな皆のためにも、もっと強くなろう。
「あ、茅森。ついでに一つ」
「ん?」
「実は、風呂掃除って
だから、茅森が手塚さんに怒ってくれたの、無意味⭐️」
えええええええええええ!?
「月歌ちゃーーーーん、ショーーック!!!」
あたしの声が基地中に響き渡った。
あとで手塚司令官に呼び出されて、あたしもしこたま怒られた。