一条煌めく希望の星   作:木工用

12 / 17
消せない記憶と蒼い夢
星の子と星空


 

 

 

「ぐっ...! うっ...!」

 

 背後には、守りたい皆。

 目の前には、強大で真っ赤なバケモノ。

 精一杯広げたセラフと、真っ赤な熱線の衝突で、バケモノ以外は、何も見えません。

 

 

 ...余さず紡いできた記憶の果てで、最期に見るのが、こんなのだなんて、イヤだなぁ。

 

 

「さいごは...さいご、は...」

 

 最期は...最期に、もう一度...

 あの子と、お話がしたい、なぁ...!

 

 

 

 

―――その頭上、一条の流れ星が煌めいた。

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 

 

 

 Day2 20:30

 

 

 

 

 ~Side 茅森月歌~

 

 

 

 

「ん~! 今日もいい湯だな~」

 

 ワッキーといろいろお話した後のお風呂!

 髪下ろしてアイパッチ外したワッキー、ビックリするくらい美人。皆にも見せてあげたいなぁ~。

 

「そうね。()()()が掃除してるらしいから、風呂も毎日めっちゃ綺麗だしね」

「風呂専用のセラフ掃除人でも雇ったの?」

「なんでセラフ部隊がわざわざ風呂掃除専門なのよ!?」

 

 ナーイスツッコミ!

 楽しい~もっと欲しい~

 

「知らないのかい? 最近、日景が風呂掃除してるんだよ?」

「キラりんが? なんで? 31Kって風呂掃除専用のセラフ部隊になったの?」

「なってないわ! 風呂掃除専門から離れろ!」

 

「あっ! KってクリーニングのKってこと!?」

「違うわ! ちょっと関連性見出だすんじゃないよ!?」

 

「あっ! クリーニングってCじゃん! じゃあ違うか~」

「そうじゃん! すぐに気づけなかった己のアホさがわからされる...!」

 

「じゃあワッキー達31Cが風呂掃除専門かぁ~」

「イヤだよ!? なら31Aは31アホってことでいいか!? いいんだな!?」

 

「ワッキー達ってアホになりたかったんだ。全然譲るよ?」

「いらないわ!? あとワッキーって呼ぶな!」

 

 あ~、ツッコミでお腹いっぱいだ!

 これが明日を戦う力になるからな。ごちそうさまでした。

 

「で? なんでキラりんが風呂掃除してるの?」

「急にまともになるな...

 あんた達がDeathSlugをぶっ飛ばした日。あん時って日景って無断での出撃だったじゃない? あれで怒られて罰として風呂掃除させられてるのよ」

 

 

 バシャッ!

 

 

「そんなのおかしいよ!!」

「わっ、突然立ち上がるな! あんたスタイル良いから視線に困るから...!」

 

 いいや、立つね。

 おかしいだろ!

 

「行ってくる!」

「どこに!?」

 

 行かなきゃ!

 誰よりもあたしが!

 

「司令官のとこ!」

「服は着てきなよ!?」

「あ」

「忘れるなぁ!? 体拭け! 服着ろ! 髪乾かせ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...で、こんな夜中に殴り込みに来たと」

「そうだよ!」

 

 司令官室のドアを叩いて、ありったけをぶちまけた。

 

「新宿ドームのことだって、キラりんが頑張ってくれたからドームの被害も無かったんだよ! あたしとワッキーたちだけじゃわからなかった!

 それに、あのデカブツ倒すときも、キラりんはキャンサーを何体も引き連れてってくれたんだ! デカブツとやってるとき、もし横から増援に割り込まれてたら危なかった!

 デカブツとキャンサーを倒したのは確かにあたしたちだけど、キラりんの功績だって凄かったろ! 勇気ある行動だったろ! 何で評価してくれないんだ!」

 

 はぁ...はぁ...!

 捲し立てた。ありったけをぶつけた。風呂上がりだからか頭が熱い。

 でも、誰よりも助けられたのはあたしだから。

 

「茅森さんの言い分もわかるわ」

「なら!」

「その上で、後は本人から聞きなさい」

 

 本人?

 と、そのタイミングで、後ろの入り口がコンコンッと鳴った。

 

「失礼します。もうよろしいでしょうか」

 

 入ってきたのは、ななみん。

 

「ええ。グッドタイミングよ。

 今日の結果は?」

「残念ですが、本日も」

 

 本日()

 

「何のことだ?」

「言ったでしょう。後は本人から聞きなさい。

 ほら、隠れてないで出てきなさい。そもそも頭の星が隠れてないわよ」

「ひゅい!?」

 

 開いたままの入り口から、声が聞こえた。

 振り返ったら、頭のお星さまが目についた。

 

「キラりん?」

「...エヘヘ、キラちゃんだぜ。エヘヘ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、おタマさん。やっほ~」

「月歌さん! と、キラさん!」

「やっほ~タマちゃん⭐️」

 

 キラりんを連れて、自販機で飲み物って思ったら、先客のおタマさんがいた。

 

「はっ!? お二人はまさか、夜のデート!? 月歌さん、ユキさんという人がいながら...!」

「違うから! ちょっと夜中にお茶飲みながらお話しするだけだから!」

「それってデートなのでは?」

「ならデートかも」

「違うぞ⭐️」

 

 駄弁りながら、自販機の一番上のボタンを押す。

 

「よいしょっと」

 

 

 ピッ

 ガコンッ

 

 

「ほ~い、お茶」

「ん、サンキュー⭐️有り難く貰うぜ。

 んっ...ぷはぁ~。疲れて火照った体に沁みるよぉ~」

「おタマさんもどう?」

「私がいつか届けと思っていたお茶のボタンをあっさりと...! これが敗北...! なんで負けたか明日までに考えておきます...!

 ほな、いただきます」

「はいよ」

 

 

 ピッ

 ガコンッ

 

 

「は~! お茶がおいしー! 良く冷えてるしー! 豊富なビタミンC! イェイ!」

「イェイ⭐️

 そうだ、タマちゃんにも聞いて欲しい話があるんだけど、今大丈夫かな?」

「大丈夫です! 今まさに用事が終わったところなので!」

「お茶のためにずっと自販機の前にいたの!?」

「そうですが、何か?」

「執念が凄い⭐️

 じゃあ、屋上にでも行こうか。

 天気良いし、空も星が見えて綺麗だからね⭐️」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~。こんなところあったんだ」

「いい場所ですね!」

 

 ということで。

 キラりんと、おタマさんと。

 三人で宿舎の屋上に来た。

 

「あまり知られてないのかな?

 あたしは良く来るけど、他には31Fの柳さんと30Gのユイナさんくらいしか来ないんだよね」

「確かに、やなぎんここ好きそう」

 

 屋上には、景観良く育てられた植栽と、木製の腰掛け。

 その一つに、三人で座った。

 左にキラりん。中央におタマさん。右にあたし。

 

「ほら、空めっちゃ綺麗でしょ⭐️」

「わ~!」

「ホントだ。めっちゃ綺麗」

 

 見上げて、空を見た。

 気にして無かったけど、確かにめっちゃキレイだ。

 

「あたし、星空がめっちゃ好きでさ⭐️

 子供の頃は、いつもベランダから夜空を見てさ。流れ星様が願いを叶えてくれないかな~って、見上げてた」

「いいね、それ」

「ステキです!」

 

 しばらく三人で星空を見上げて、

 おもむろに、キラりんが口を開く。

 

「あたしさ。適正試験に合格できないんだ」

「...うん」

 

 まだ不合格なのは、新宿の日に出撃前に聞かされたっけ。

 なるほど、それで今日()、か。

 あのあとも、ずっとキラりんは必死に頑張ってるんだ。

 

「エヘヘッ。

 セラフは呼べるんだけどさ。なんか、キャンサーに弾が撃てなくって。手も指も震えちゃってさ。

 31Aの適正試験がどうかはわからないけど、あたしの31Kの試験は、ホッパー系の小型キャンサーを一体倒せればそれでいいって話なんだ。

 でもな...それすらも、あたしにはできてないってワケなんだぜ」

 

 キラりんが、星空に開いた手を伸ばす。

 明るくて元気な顔ばかり見るから、こういう悲しそうな顔を見ると、心がとっても痛くなる。

 

「あの新宿の日、手塚さんにはしこたま怒られちまったぜ。

 勝手に命を危険に晒すなって。何かあったらどうするのってな。

 適正試験には何回不合格になっても一度も怒られなかった。手塚さんも七瀬さんも、落ち込むことはない、次は頑張りなさい、合格できるよう祈っているわって言ってくれてさ。

 でも、やっぱ何もできない自分が悲しくて、悔しくってさ。

 新宿のあの日、緊急の連絡が響き渡って、居ても立ってもいられなくって、あんなことしちゃったんだよなぁ~...

 それどころか、この前は山脇ちゃんのことも傷つけちゃっただろうし...ぐすんっ...

 あーあ、お星さまは遠いなあ...」

 

 目元から涙がこぼれ、掲げてた手からも力が抜けて、崩れ落ちる。

 

 

「でも!」

 

 

 その手が落ちきる前に、おタマさんが握った。

 

「私たち31Aは、そんなキラさんの行動に助けられました! 私たちだけじゃなく、ドームのひとたちもきっと、キラさんの行動に救われたんだと思います!」

「タマちゃん...」

「...でも、次も同じことをキラさんがするなら、多分私も悲しいですし、怒ってしまうかもしれません。

 キラさんに、無事でいて欲しいから...!」

 

 キラりんの手を包むおタマさんの両手に、力が籠る。

 

「...ありがと、タマちゃん。茅森もね」

「あたし?」

「司令官室での言葉。実は聞いちゃってたんだよね」

「マジで? めっちゃ恥ずかしい」

「エヘヘッ。

 あたしのために、あの怖い手塚さんにあそこまで言ってくれてさ。嬉しかったよ。

 あんたら31Aが、そんな優しくて強い部隊だってんなら、背中を見るあたしも安心できる」

 

 ...そうか。

 31Aは最前線の斬り込み隊。一番前を行く部隊だから、あたしたちの背中は、みんなを安心させることができるのか。

 また一つ、気づけた。

 

「最前線は頼んだぜ、タマちゃん、茅森。

 あたしも何とか試験に合格して、いつか前線であんたらを救ってやるから!」

「あははっ、もう十分助けられてるけど。

 わかった。楽しみにしてる」

「はい! ご健闘をお祈りいたします!」

 

 あたしたち31Aだけが最前線で辛いわけじゃない。

 キラりんだって、勿論他の部隊の皆だって当然頑張ってるんだ。必死に戦ってるんだ。

 そんな皆のためにも、もっと強くなろう。

 

 

 

 

 

 

「あ、茅森。ついでに一つ」

「ん?」

「実は、風呂掃除って()()()()だったんだよね。

 だから、茅森が手塚さんに怒ってくれたの、無意味⭐️」

 

 えええええええええええ!?

 

 

 

「月歌ちゃーーーーん、ショーーック!!!」

 

 あたしの声が基地中に響き渡った。

 あとで手塚司令官に呼び出されて、あたしもしこたま怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。