10:00
~Side 大島四ツ葉~
「なるほどな~。じゃ~、出撃は午後からになりそ~なのか~」
「ああ。だから午後まで待機しておいてくれ」
ナービィ広場でごろごろしてたら、我らが丸山部隊長のエントリ~。
どうやら午後まで空きみてぇだ~。道が塞がっちまってたからな~。どうするか考えてるんだとよ~。
やったぜ~。そのまま行けなくなったりしね~かね~。
「あたいはラクできて助かるな~」
「...一応、待機中っていう仕事だからな? 寝るなよ?」
「すやぁ~...」
「行ったそばから寝るなーー!?」
あんだよ~、うるせ~な~。
「いいだろ別に~。寝れる時に寝ておかないと、肝心な時に頑張れないぞ~」
「う...それは一理あるが...しかしな...」
「ほら、この広場の芝生、気持ちいいぞ~。一回寝転がってみろよ~」
「...まあ、時間はあるし、一回くらいなら...」
よ~し、一名様ご案内~。ちょろいぜ~。
「どうだ~?」
「...悪くないな」
「だろ~? 今の時間はいい風も吹いてるんだぜ~?」
「...ああ、気持ちいい」
「お~、この良さをわかってくれる仲間がいて、あたいは嬉し~ぞ~」
一緒になってごろごろしてくれるひとは、この基地にもあんまりいね~からな~。
...何なら最近は、
「仲間、か...」
「お~、仲間だぞ~?」
「...なあ四ツ葉。聞いてもいいか?」
「お~、寝言なら聞いてやってもいいぞ~」
「全くお前は...」
しょうがないな~。あたいのせくし~なスリーサイズ以外なら答えてやるよ~。
...冗談はさておき。まあ、両目にクマがあるやつの悩みくらい聞いてやんね~とな~。
これでも二人の妹を持つ姉だからな~。
「...もし、なんだが。
仲間の一人が、仲間にも言いづらいような悩みを抱えていると知ってしまったら...お前ならどうする?」
「お~。ちゃんと悩みだな~」
「......」
なるほどな~。
だから、そんな寝不足な顔になってたのか~。よくがんばるなぁ~。
「ん~...驚かれるかもしれないけど、あたい達31Eって六姉妹なんだがな~」
「それは知ってるぞ」
「知ってたのかよ~」
「何なら大島一知子から挨拶もされたぞ。妹が迷惑かけてないかと」
「いちねぇ...まあそれなら話が早くて助かるけどよ~」
知らないところで心配されてたみてぇだな~...今度またコーラおねだりするかぁ~。
「あたい達六姉妹には、楽しいことも苦しいことも、六人で分け合うっていう決まりがあるんだ。だから、みんな遠慮せずなんでも相談し合えるんだぜ~」
「...なるほどな、姉妹のルールか」
「いいだろぉ~。
でも、あたい達の臨時部隊には、そんなルールなんて無いもんな~。難しいよな~」
「...ああ」
「でもな~? あたい達にも、二つだけルールがあるだろ~?」
「ん...何だ?」
それはな~。
「あたい達が身長140cm未満ってことと、
「...ああ、そうだった」
そうだそうだ~。部隊長~。
「部隊長なら、部隊のやつの悩みくらい、聞いちゃってもいいと思うけどな~?」
「...だが、本人は話したくなさそうで...」
「まあ、あたいにはわかんないけどさ~。
本人からは話したくないことでも、
「...自分からは言いづらいけど、誰かから聞かれたら...ってことか?」
「お~。それそれ~」
なんだよ~。いい言葉知ってるんじゃんか~。
「...自分からは言いづらい。みんなに迷惑だから。弱音を吐くようなことだから。
でも、誰かから寄り添って聞いて貰えるのなら...」
「いいぞいいぞ~。
それに、あたい達は低身長の発展途上どうしだろ~? ちょっとくらいミスってもいいんじゃね~か~?
ガスの中でミスってぶっ倒れた小笠原とか、数字ミスってブリを閉じ込めちゃった豊後とか、お前は嫌いになったかよ~?」
「いや、全然だ。
小笠原には先輩として助けて貰っているし、剣の技も凄い奴だ。
豊後の明るさには救われているし、あいつの好奇心が見つけたダクト図面で、今日の突破口が見えた。
他のみんなもいい奴ばかりだ。一度のミスくらいで嫌いになんかなるもんか!」
「だろ~? ならビビってんじゃね~よ~」
「...ビビってるか。ボクがか?」
眉間に寄ったシワをほぐすようにおでこを撫でる。よしよし~。寝ながらこれされると気持ちいいだろ~?
「理屈も無ぇ、計算も無ぇ。なのに直感的にこれが正しいんだ~ってわかっちまう。
それが
「...!」
「部隊長のやりたいようにやればいいじゃね~か~。
その結果が悪いようになるとは、あたいには思えねぇよ~」
あ~、しゃべり過ぎた~。あごと肺とその他もろもろが疲れたぞ~。
「ぐぅ...」
「言うだけ言って寝るなーー!?
はぁ...そうかなぁ...どうだろうなぁ...
...ぐぅ...」
よしよし、昼寝仲間ゲットだ~。
これで怒られても二人で分け合えるな~。
よ~し...ぐぅ...
「お二人とも、凄く気持ち良さそうに寝ていますね...」
「サボりでゲス」
「ニルヴァーナ...」
「いや死んでないだろー!?
ふんっ、四ツ葉はともかく、丸山は部隊長としての疲労もあるだろう。ここはそっとしておこう」
「否。日景さん。シャッターチャンスです」
「よし来た⭐️」
「フラッシュも許可します」
「やりぃ⭐️」
「起こしてしまうだろ!」
「はい、チーズ⭐️」
「だから、寝顔は100万円って言っただろ~。払えるのか~?」
「やっぱり起きた!? 天才!?」
へへへ~。まだあたいの寝顔はくれてやれね~ぞ~。出直してこいよ~。
「ぐが~...」
「丸山は豪快に寝たままだな...」
「こっちは写真ゲットだぜ⭐️」
「昼寝の修行が足りね~な~」
「ヨツハさん。そんなことしてるのは貴女だけです」
あたいは寝てもいいときは全部寝て、起きるべきときは起きてるだけだ~。
ふわ~、よく寝たぞ~。気分がいいな~。
よ~し、また寝るぞ~。
× × × ×
13:00
~Side 丸山 奏多~
「ぬああああああ...!」
「丸山が丸々になっておる...」
「お団子でゲス」
見られた...!
サボって広場で爆睡してしまったところをみんなに見られたーー!!
一生の不覚だ...! どうして起こしてくれなかったんだ柳...!
「ねねね、緋雨ちゃん。よく撮れてたよね~丸山ちゃんの寝顔~」
「わたしは小笠原先輩ですが、寝顔はよく撮れていましたね。完全に無防備でした。ヨダレまであったところが非常に高得点ですね」
「ひとの寝顔に評価をつけるなああああ!!
うわぁぁん! これまで必死に築き上げてきた部隊長としての威厳がああああ...!」
「そんなものあったでゲスか?」
「豊後おおおおお!!」
「やめろでゲス! お前までヘルメットをグリグリするなでゲス!」
くそっ...くそっ...!
ここから挽回する方法は...入れる保険は...!
「ん゛ん゛っ!
いいかお前ら! 今日のルートを説明するぞ!」
強引に全員の意識を引き戻すぞ!
わざとデカデカと図面を広げてやる! バサァ~!!
「昨日の友愛数のところから入って、ここを通って行くんだ。間違えるなよ?」
「ハーン。理解しました」
「流石ブリだな~。あたいの前を頼むぞ~」
「ヨツハさん。最初から全部を丸投げはよくないです」
「適材適所だろ~?」
「......」
「ま、まあ! ボクは完璧に覚えているからな。不安ならボクについて来るだけでもいい」
昨晩と今日の朝、このダクト図面は丸暗記してきた。迷ったり、突然小型のキャンサーに襲われたときの逃走ルートなど、脳内シミュレーションは積み重ねてきた。
こんなの、柳のテストよりは簡単だからな...うん...
「流石です、頼もしい限りですね」
「よしっ! カリスマのパラメータが!」
「それは上がりません」
「そんなぁ!?」
小笠原の評価が厳しいな!?
バッサリと斬ってくるな!?
流石天才剣士ってことか!?
やかましいわ!!
「丸山ちゃん変な顔~⭐️カメラがあったら撮りたいな~⭐️」
「やめろおお!!...ん? カメラは置いてきたのか?」
「イエス⭐️手塚さんの話が気になってね。バッテリーとかメモリとか壊れたらイヤだし...」
「ああ、そうか」
今日の出撃前、手塚司令官が言っていた。
『研究所の最下層には、電子機器に干渉する正体不明の何かがあると司令部は見ているわ。
無線等の機器も使えなくなると予想される。いざというときに救援信号が出せない、極めて危険な行軍をあなた達に強いてしまうことになるわ』
「でも今日の写真が撮れないのは残念だなぁ~」
「そうか...ボクも残念だが、仕方がない」
そうか...今日の写真は後で見れないのか...
「...丸山ちゃんも残念なの?」
「ん? そりゃあな。後で現像してくれるんだろ?
踏んだり蹴ったりではあったが、皆で過ごした二日間はとてもいい思い出だ。上手く行けば今日にでも、この作戦は終わってしまうだろう。
その日々が、写真として確かに残るのは嬉しい限りだ。ボクら
作戦後にどうなるかはわからないが、ボクはこの臨時部隊がずーっと続いてくれとさえ思っている。
そうだ、そうすれば、日景も一人でいなくてもよくなるしな。
「...うん。あたしも嬉しい。あたしの写真を喜んでもらえて、よかった」
「ああ。今日もよろしく頼むぞ。カメラは無くても、レポートの作成や調査など、助かっているからな」
「ん、あいよっ⭐️キラちゃんガンバるよ!」
口を大きく開き、手を腰に当て、全身で作られるコイツの笑顔、僕は結構好きだ。まさに煌めく星のようなのだ。たとえ強がりで作られた笑顔であるとしても。
...なのに僕は結局、日景の恐怖症をどうにかする方法は昨日の今日では考え付かなかった。
四ツ葉は聞けばいいとは言っていたが、いかんせん皆のいるところでは...
早く何かしてあげたいのに...ぐぬぬ...!
「...カナタさんの眉間のシワの二次関数式は...」
「ぬわあああああ!! 変なところ見るなあああああ!!」
...作戦が終わった後にでも、コッソリ聞いてみるとするか。
そのために、今日もみんなで生きて帰ろう。
「『センスの違いを見せてやる』!!」
「『世界征服開始でゲス』!!」
「『忘却は死、追憶に生きよ』!!」
ババンッ ババンッ
パリィン...!
「お~...」
「『頑張らない!』」
「『寄らば斬る!』」
「『数こそ万物の根源』!」
ババンッ ババンッ
パリィン...!
「よし、全部やっつけたな」
「キャンサーは殲滅でゲス! けっひっひ!」
前回行ったダクトの入り口まで、残ったキャンサーを倒して進む。
通った道だから慣れたものだな。気持ちも軽い。
「いやー、やっぱカッコいいね⭐️拍手拍手!」
「そうか? 慣れたものだが、改めて言われると照れるな」
こうして雑談しながらでも進んで行けるというものだ。
あっ、また四ツ葉が寝てるのをヴリティカが起こしている。これも見慣れた光景だな。
「特にセラフィムコードってカッコいいよね! 皆それぞれの言葉で、味があるというか!」
「まあ言ってると恥ずかしいところもあるがな...」
「そう?」
「そうですよ!!!」
「うわぁ!?」
いきなり来るな小笠原!
「なんで銃なのにセラフィムコードが『寄らば斬る!』なんでしょうね!! これ言って出てくるのが銃セラフで!! 恥ずかしいんですよ!!」
「アハハハハッ!」
「笑い事じゃないんですーー!! しかもこれ言う度に、
(もしかしたら今回だけは剣が出てきてくれたりしないかな~♪)
とか考えさせられて!! やっぱりいつもの銃が出てきてショボン...ってなるんですよ!?」
「わかった、わかったから落ち着け。いらん内心まで吐露しちゃってるからな?」
小笠原...お前ほんとにそういうところだぞ...
「ひうぅ...そういえば、日景さんのセラフィムコードって何でしたっけ?」
「...そういえば聞いてないな。教えろ日景。一方的にボクらの恥ずかしいコードだけ知っているのずるいぞー」
「そうですよそうですよー!」
この感じ、小笠原も知らないらしいな。
まあ実践でセラフを使ってないなら当然か。
どうなんだ日景っ。教えろっ。ういっ。
「ん~...いや、やめとく~⭐️」
「えぇ~!?」
「なんでさ!?」
「ほら、あたしって戦闘行為禁止だし~? セラフィムコード言っちゃってセラフを召喚しちゃって、後でバレたら手塚司令官に怒られちゃうし~? また風呂掃除しなきゃだし~? ダメかな~って⭐️」
「ぐっ...!」
「ズルいです! ズルですよ日景さん!」
軍規を盾にするなんて...! 卑怯だぞ!
「アハハッ⭐️教えてあげないよっ!
まあ機会があるまでお預けってことで⭐️」
「くそぉ...! 覚えていろよ...! いつか絶対に聞いてやるんだからな...!」
「おうよ⭐️エヘヘッ⭐️」
覚悟しておけよ...!
恥ずかしいセラフィムコードだったら小笠原と一緒に思いっきり笑ってやるんだからな...!
「いてててて...」
「まさかダクトが下り坂とはな...」
「でも楽しかったでゲス~♪」
「あたいもたくさんごろごろできて~、満足だぞ~」
ダクトの中に入り込み、滑り降りる形でだが、何とか最下層付近に到着したようだ...いてて...
しかも降りてすぐキャンサーに攻撃された。厄介だったが、すぐに撃破したぞ。流石はボクたちだな!
「ハーン。最下層はこの先のようです」
「よし、みんな無事だな。気をつけて行くぞ」
「はい!」
「うむ」
「行くでゲス!」
ガスも中和され、防衛機構も何も無い廊下を、ボクたちはどんどん進んでいく。
作戦もいよいよ大詰めだ。少しだけ緊張してきた...
ビリッ
「...!」
「どうした~?」
「刀が、帯電しています...」
「っ! みんな、電子軍人手帳を確認しろ!」
「バッテリーが、おかしな減り方をしている...」
「ドローンの急激なバッテリー切れは、このことのようですね」
間違いない。この先に、この研究所の研究対象がある。
いや、あの研究日誌に基づいて考えれば、何かが
「肌がピリピリするでゲス!」
「空気も帯電しているな...」
「カメラ持ってこなくて正解みたいだねぇ...」
これでは電子機器は役に立たないな。この時代に電気を使えなくする研究対象なぞ、さぞもて余したに違いない。
バッテリー系の計測機器も、日景のようにカメラを使うことも難しいのだから。
正しく、未知の存在だ。
「止まってください。
この先に、大きな動くものの気配があります」
「お出ましのようだな...」
「怪獣でゲスか...?」
「ゆっくり確認しよう...」
それでも、行かなくては。
ボクたちは人類を守るセラフ部隊なのだから。
扉を、開いた。
× × × ×
「これは...」
「キャンサー...なのか...?」
扉を開けた先には、一本の杭とたくさんの管がぶっ刺さっている、一匹のキャンサーがいた。
管は一本いっぽんがボクらの腕よりも太い。それが何個も突き刺さっている。
そして、体を縦に真っ直ぐ貫いている杭は、ボクらの体の倍以上に太い。
それらに縫い止められるように体を貫かれ、一匹孤独にずっとここにいて...とても痛く、苦しそうだ。
「...セラフで傷を与え、そこにあの杭と管を刺したのでしょう」
「...なんて醜悪な研究...」
「...原因不明の電力の正体はわかった。わしらの任務はこれで終わりと言ってもいいが...丸山、どうする?」
「あの杭のせいで、身動きはとれないようです...」
...セラフ部隊としてボクらの成すべきこと。理屈で執るべき選択。合理的な解答...
わかっている...
わかってはいるんだが...!
「何を悩んでいるでゲス?」
「...ボクは...!」
「おかしな奴でゲスね。お前は部隊長でゲスよ?
お前がやりたいことをやればいいんじゃないでゲスか?」
「そうだぞ~? 言っただろ~?」
「っ、そうだったな...」
...ありがとう、豊後。四ツ葉。
「...おかしなことを、言う。
みんなお願いだ。どうか―――
―――ボクと一緒に、救うために、あいつを倒してくれないか...」
そこからボクは、おかしな話をした。
研究対象としてこのまま軍に引き渡すこともできるというところを、あいつを哀れみ、救いたいから殺したいという話だ。
あまりにも馬鹿げた、くるくるぱーな話だ。
「おかしなことだとはわかっている...ボクがどうかしているんだと思う...!それでも...!」
「ん、大丈夫だよ、丸山ちゃん⭐️ほらっ!」
『世界征服開始でゲス』!
『忘却は死、追憶に生きよ』!
『頑張らない!』
『数こそ万物の根源』!
『寄らば斬る!』
「みんな...!」
「あたしたち、思いは同じだよっ⭐️」
...こんな話に、みんなは同意してセラフを手にしてくれた。
柳...ボクは本当にいい仲間を、友達を得ることができたぞ...!
「みんな...ありがとう」
「お前も、もたもたするなでゲス!」
「...そうだな! 行くぞみんな!
ボクの...いいや、ボクらの!」
『センスの違いを見せてやる』!!
六人。ヴリティカ以外全員銃をつきつけるこの光景も、みんな心は一つってことでカッコいいものだろう。
「日景は後方で警戒しつつ待機だ!
行くぞ! 丸山部隊!!」
「はいでゲス!」
「うむ!」
「お~」
「ハーン」
「はい!」
「ごめんね! 頼むよ!」
油断せず、構える銃口はキャンサーへ。
「行くぞ...お前を解放してやる!」