~Side 日景綺羅~
「...どうぞっ」
「し、失礼します...!」
んあーーっ!
恥ずかしいいい!
なんか恥ずかしいいいい!
「本当にこんなところに家があるとは...」
「四ツ葉さんの妹さんは、よく見つけましたね」
「ホントだぜ~...」
佐月ちゃんのところでクッションやらを買って。
大島の一千子さんのくれたお菓子も皆でわけて持ってきて。
着きました! 我が家!
「ホントに壁の全面が写真だらけじゃないか! なんか怖いなぁ!?」
「ヤダなぁ、怪しいものなんかございませんよぉ☆」
「怪しいやつのセリフだな!」
「アハハッ☆」
まあでも、恥ずかしがったところで!
壁全面に貼られたみんなの写真と!
机と寝床と家電くらいしかない無骨なお部屋なんですけれどねっ!
「わああああ! お写真がたくさんでゲス!!」
「...おい日景。聞き忘れておったが、
「...大丈夫。消したから」
「...すまんな」
...巫呼ちゃんが不安げな目で見てきたけど、大丈夫だ。
31Cの集合写真は、あの日に全て捨てた。
本当に残念だったけど、山脇ちゃんの涙と想いを、裏切ることはできない。
ここにあるのは、ぶんちゃんに見せても大丈夫な写真だけである。
「とりあえず! お菓子と飲み物を机の上に置いて! クッションは好きなのを使ってね!」
「ハーン、では私はこれを」
「じゃあボクはここに」
「飲み物は各自でコップに入れてくださいね」
「あたいにはコーラ入れといてくれよな~」
「各自でと言ったばかりですヨツハさん...仕方ありませんね...」
「おぉ~、今日のブリは優しいじゃね~か~。特上のブリだぁ~」
「...綺羅さん。このまま
「流石にダメ☆ あたしの家シュワシュワになっちゃう☆」
でも怒った顔のブリちゃんもカワイイ☆
パシャッ☆
「ハッ...! 撮られました...!」
「いいのイタダキ☆ キャハハ☆」
「こうして撮られてきた写真たちがこちらですか」
「あたしはこの基地の皆のありのままを大事にしてるからね☆」
「聞こえのいい言葉を並べやがって...ボクも何枚撮られたことか...」
ふっふん! あたしは敏腕カメラマンだからね!
さあさあ、巨匠☆日景綺羅の博覧会だぞぉ~☆
「奏多ちゃんたち31Fはめっちゃビジュアルいいからね~! 何枚でも撮りたい☆」
「...それはわかる。あいつらなんかカッコイイもんな」
「この写真の華村さんとかめっちゃカッコよくない?」
「...雨の中、道端の一輪のお花にしゃがみ込んで寄り添い、どこか憂いた目をしつつも口元は優しく微笑んでいて...はわわ...!」
「おぉ~...!」
「マズい! 小鳥になりかけている! 次だ次!」
「あ! 山脇様でゲス! カッコイイでゲス!」
「随分とノリノリでポーズ決めてるな~...」
「31C部隊長、山脇・ボン・イヴァールさん。こんなひとだったのですね...」
「つくづく変な名前だな!」
「山脇様は天才マッドサイエンティストなんでゲスよ!?」
「天才科学者ですか。いつか数学と科学について語り合いたいものです」
「いいね! よーし次! どんどん行こう!」
「おいいいいい! 真隣のわしの写真にも少しは触れろおおおお!!」
「無視かーーーい!?」
「これは、走る緋雨さんと、菅原さんですか?」
「イエス☆ 全力で逃げる緋雨ちゃんと本気で追いかけてる千恵ちゃんだね☆」
「綺羅もだけど、足速えし体力すげぇよな~。三ねぇのローラーダッシュといい勝負できそうだぞ~」
「珍しくブレているせいでむしろ疾走感が出てる写真になってますね...
あと緋雨ちゃんではありませんっ! 小笠原先輩ですっ!」
そんなこと言っても、緋雨ちゃんは緋雨ちゃんなんだよな~☆
「...なあ綺羅。一つ聞いてもいいか?」
「いいよはーちゃん☆」
ベッドに横になってるはーちゃんから質問が飛んできた。
てかそれあたしのベッド☆ はーちゃんならいいけど☆
「もしかしてだけどよ~。綺羅が触れるひとだけ、明確に下の名前にちゃん付けで呼んでたりしてねぇか~?」
「お、ピンポンピンポン☆ 正解☆」
「だろぉ~」
当てられた☆ あたしのホミツ☆
まあ隠しても無いけど☆
「ああ、やはり明確に呼び分けていたのか」
「ここにいる全員も、手のひらを重ねたあの日からファーストネーム呼びになりましたからね」
「ん? いや、小笠原だけは最初からファーストネームの緋雨呼びだったな」
「...まあ、実は以前から綺羅さんとは少しだけ...」
「つれないこと言わないでよ~☆ 一緒に寝た仲じゃ~ん☆」
「物凄く誤解を招く言い方をしないでくださいーーー!!...事実ですけどー!!」
「はわわ...!」
「はわわ...!」
「おぉ~...!」
「ハワワーン...!」
「あーーー!? 誤解が広がっていくーーー!?」
「っしゃあ☆」
「撮らないでくださいーーー!! 消してーーー!!」
顔真っ赤な緋雨ちゃんゲッチュ☆
これはお宝ものだなー☆
「ん? みんなそんなに何を叫んでいるでゲスか? あちきも良く山脇様と一緒に寝ているでゲスよ。
山脇様と寝ると、暖かくて幸せになるでゲス~!」
「豊後...どうかお前はそのままでいてくれよな...」
「うんうん...」
「そうですね...」
「???
おい、ヘルメットをナデナデするなでゲス...!」
巫呼ちゃんの言葉に、全員で頷く。
うんうん。ごめんねぶんちゃん。
あたしたちが汚れていたね。
君はそのまま綺麗なままでいてね。
× × × ×
「ふ~! 笑った笑った!」
「お菓子もおいしかったでゲス!」
「良かったな豊後」
「ごろごろ~...」
「食べてすぐ横になるのはやめましょう、ヨツハさん」
「ご馳走様でした。たまにはお菓子もいいですね」
「そうだね~」
楽しかった~!
お友達とこんなことするのなんて何年振りかだからね!
そもそもこの家に誰かを呼ぶのなんて初めてだし、当然か☆
「ふ~...ん? その箱はなんだ?」
「箱?」
あっ。
やっべ。
仕舞ってなかったっ。
「きっとお宝でゲス!」
「おい豊後! 勝手に開けるな!」
あ~、止められねぇ~。
「パカッ! でゲス!
これは...写真帳? でゲスね」
中にあるのは、古ぼけた一冊の写真帳。
一ページに6枚の写真が入っているヤツだ。
「豊後おおお! 勝手にひとの者を漁ってはダメだろおおお!」
「ヘルメットをグリグリするなでゲス!」
「...豊後に乗っかるようで悪いが、あの中にも写真が?」
うん。
まあね。
写真帳だしね。
「...それはね、
「...?」
「...綺羅の写真帳?」
やっべ。
もっとヤバイこと言いかけたっ。
「あたしがこの基地に来る前の写真だけ入れた写真帳なのさ。
だから、この部屋にも貼り出してないんだ」
「この基地に来る前の写真ですか...」
「綺羅の過去ってことだな~」
あ~。
恥ずかしさが戻ってきた...!
「...すまん。うちの豊後が勝手に...」
「...ま、しょうがないよ☆」
...でも、折角だしなぁ。
話しても、いいかもなぁ。
ふと、何となくはーちゃんのほうを向いた。
ごろごろしていたはずなのに、なぜかまた
...隠し事、できないなぁ☆
「...ねぇ、折角だし、あたしの話、聞いてもらってもいい?」
「...いいのか? どことなく話したくなさそうな雰囲気だったが...」
「いや、話したくなっちゃった☆
けど、ちょっと...いやだいぶ...? 暗い話もあるから、申し訳ないかもって思っちゃって...」
「なんだ、そんなことか」
おお。
笑顔の奏多ちゃんの手が、あの日みたいに重なる。
暖かい。
大丈夫、ちゃんと暖かい手だ。
「日景。ボクたちに遠慮はするな。
これは部隊長命令ととってもいい。だからお前の話で皆が暗い思いになっても、責任はボクが取る。
だから遠慮せず、話したいことが合ったらいくらでも話してくれ。いいな?」
「う、うんっ」
やだ誰このカッコイイ子。
やっぱ31Fで一番カッコイイの奏多ちゃんだよね、絶対。
「そうですね。私たちはもうお友達ですから」
「ハーン。私もです」
「話が気になるでゲス!」
「お前はもう少し反省するのだぞ...」
皆も聞いてくれそうだ。
はーちゃんを見ると、目はつむっているけど、心なしか口元が笑っている。
...ありがとっ。
「...それじゃ、話すね。
あたしの、ここにくるまでの軌跡を」
この基地で目覚めて、
それをあたしは、ちょっと震える手で、開いた。