一条煌めく希望の星   作:木工用

26 / 26
流れ星の子と消せない記憶

 

 

 

 

 Day24

 

 

 

「オペレーション・プレアデス、開始。

 総員、出撃!!」

「「「「「「「「応ッ!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 〜Side 31A〜

 

 

「カレンちゃんナイス! 後はめぐみんとおタマさんが牽制して、つかさっちとユッキーでトドメだ!」

「了解や!」

「やったりましょう!」

「いくわよ!」

「ああ!」

「次ィ! 次次次ツギツギツギィ!!」

 

 

 

 

 〜Side 31B〜

 

 

「蒼井が受け止めます! その隙をいちごさんとすももさんでお願いします!」

「ハッ! この程度、最強姉妹のぉ!」

「敵じゃ! ないにゃ!」

「私たち31Bは、永久に不滅です!」

「ヴァウ!」

「ってニチアサの戦隊モノみたいになってんじゃねーか!?」

「背後で爆発が起きそうにゃ!?」

「私を巻き込むんじゃないぞ...」

「ビャッコは喋る猫ちゃん枠ですね!」

「ヴァウ!?」

 

 

 

 

 〜Side 31C〜

 

 

「佐月、神崎、天音、桜庭。改めてだけど、私たちは南東方面の掃討よ。準備はいい?」

「勿論だぞ♪」

「行くでござる!」

「抜かりはない」

「万事、恙無く」

「よし。行くよ、豊後。

 私たち31Cこそが最速最強だってこと、世界にもう一度わからせてやるんだから!!」

「はいでゲス!! 山脇様、バンザイ!!」

 

 

 

 

 〜Side 31D・31E・31F〜

 

 

「訓練通り、我々の任務は橋頭堡設立区域に巣食っているキャンサーの殲滅だ。基本は訓練通りだが、異変はいつでも何でも報告するように。頼んだぞ」

「は、はい!」

「やるさー!」

「いい絵が見れそうっスね!」

「待ちに待った絶望の戦場だぜ...じっくり味あわせてくれよなぁ...」

「ケガには気をつけましょうねー♪ いたいのいたいの、メッ! ですからねー♪」

「うっ...! はぁ...はぁ...耐えた...!」

「耐えました...!」

「耐えたさー!」

「普通に話せるっス!」

「ああ...一つ絶望を乗り越えた気分だなァ...!」

「修行の成果が出てる! 無駄なんかじゃ無かったんだ!!

 行ける! 今日は行けるぞ!!」

「あらあら♪ まあまあ♪」

 

 

 

 

 

「二以奈」

「はいっ!」

「三野里」

「おうよ!」

「四ツ葉」

「ん〜」

「五十鈴」

「ああ」

「六宇亜」

「うんっ!」

「...あなた達全員。私がこの世界で一番大好きな妹たちです。あなた達なら大丈夫。無事に帰れると信じているわ」

「いちねぇ...」

「おいおい、一番大事な人を忘れてるぜ?」

「えっ?」

「姉さん。あなたも、私たち全員が世界一大好きな姉さんです。だから絶対に、全員で帰りましょう」

「そうだそうだー!」

「...ええ! 行くわよ、妹たち!!」

 

 

 

 

 

 

 

「本日が本番です。訓練通りに参りましょう」

「用はひたすらキャンサーどもをブチまわしたりゃあええんじゃろ!? しゃらぁ!!」

「...

「若干二名の殺気が怖いな!? まあ、それをキャンサーに向けてくれればいいんだが...」

「大丈夫だよ丸山さん。いざとなっても僕が守ってみせるから!」

「そうだよ奏多くん。こんなに凛々しくも美しい子たちを邪魔してはいけないよ...フフフ...フフフフフフフ...!

「こっちにも怖い奴が!? 柳ぃ〜!」

 

 

 

 

 

 

 〜Side 30G・31K〜

 

 

 

「うへ〜、やっぱり千恵ちゃんの体がいっちばん暖かいなぁ〜⭐️」

「おほぉぉぉ!! おほぉぉぉ!! おおおほほほ!!」

「日本語に深刻なバグが!?」

「落ち着け桐生よ。バグも日本語ではないぞ?」

「...まあいいんじゃないかい? 英気は確実に養えてるんだし」

「...戦う理由はひとそれぞれであろう」

「それもそうですね」

「それもそうか」

「えーー!? これもう当たり前として流されちゃうんですかーーー!?」

「煩いです小笠原さん」

「煩いですわ小笠原さん」

「煩いよ緋雨ちゃん⭐️」

「あーーー!! あーーー!! あーーー!!!」

 

 

 

 〜Side 31X〜

 

 

 

「殺す...殺す...殺す...!」

「あわわわわ...マリアさんがトリップ状態から戻って来ません...!」

「落ち着けマリア! くそっ、どこかに手ごろなキャンサーはいないのか...!」

「居ませんね。近隣ドーム周辺のキャンサーは、ここ最近で狩り尽くしてしまいましたから」

「待機命令、でしたね。ルカの帰りを待ちましょう...ソシテジャマスルキャンサーハコロス...!

「うわぁ!? シャロさんも!?」

「ぬおおおお! 天才軍師たるわらわが、大規模作戦当日に暇を出されるとは...!」

「これも全て! アイリーンとマリアがハッスルし過ぎたせいよ! 私たちが目立たないじゃないの! sh◯t!!」

「これ私のせいなんですかーー!?」

 

 

 

 

 

 作戦は、極めて順調であった。

 31Aと31Bはポイントα、ポイントβと駆け抜け、30G率いる輸送部隊も遅れながらも被害は0。

 31D以下五部隊の殲滅戦も破竹の勢いで、31C抑える南東方面は部隊長の判断で先制攻撃に撃って出て、これを成功。

 ドーム防衛を始めとした緊急事態には31Xが控える理想布陣。

 

 

 結果、護衛・殲滅共に異常なく進行。続く秦野盆地への橋頭堡設立も順調。

 そのまま夜を迎え、周辺制圧を続ける31A・31B部隊は菜の花展望台にて野営を展開する。

 

 

 

 時刻は22:00。31A茅森月歌と31B蒼井えりかは、肩を並べて星空を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~Side 蒼井えりか~

 

 

 

「野営って案外楽しいんだな。旅行みたいだ」

「ふふっ、何でも楽しめるのは、茅森さんらしいですね」

 

 作戦はとても順調のはず。こちらも、橋頭保側も。

 茅森さんたちにも怪我などなく、初めての野営も楽しんでやれているようです。よかったよかった。

 見上げる星空。

 澄んだ空気。

 静かな森の中。

 

 

 

―――作戦は順調だね。

―――このまま寝ていいかな...

―――ダメですよ、起きてないと。

―――蒼井さんの言う通りですっ。もーっ。

 

 

 

「...蒼井?」

「はっ!...また、ぽかーんとしてしまいました...!」

 

 いけないいけない。今は作戦中です。

 余計なことは考えないようにしないとですね。

 今夜のこの状況が、忘れられないあの日に似てるだなんて...

 空でも眺めて、他のことを...

 

「あ...流れ星」

 

 空に一筋、光が流れました。

 流れ星です。珍しいですね。

 

「本当だ。キレイだったな」

「はい。キラキラしてて、綺麗でした...」

「何か、願い事した?」

「はい!

 またあの子と、あの頃みたいにお話しできますように。と...」

 

 流れ星のようなあの子と、また。

 

「昨日話してくれた子のことか。叶うといいな」

「はい! そのために、必ずこの作戦を終わらせましょう!」

「おうっ!」

 

 無事を祈って、また仮眠に戻りました。

 

 

 

 

 そして―――その時を迎えます。

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 Day25 4:00

 

 

 ~Side 白河ユイナ~

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

 

 

 

「総員警戒!」

 

 警戒していたが故に、微かに感じた音。いや、声。

 そして、直感した。

 間違いなく、何かが来た。

 

「菅原よ、聞こえたか?」

「何とか...発生源方向は北、距離は不明で推定5000以上。31Aと31Bの方からですわね」

 

 そして、獣に近しい五感を持つ菅原もこれを捉える。

 天啓を重く見て、私と菅原で寝ずの番をしていたのだ。

 

「っ!!」

「小笠原! 日景を止めておけ!」

「はい!」

 

 予想通り、飛び起きて駆け出しそうになる日景の肩を小笠原が掴む。

 

「離して! 離せっ!!」

「ダメです綺羅さん! 一人では行かせませんっ!!」

 

 日景は小笠原を振りほどこうと体を揺らし、頭の星のアクセサリーも揺れるが、小笠原はしっかりと捕まえられたようだ。

 天啓を信じれば、この子が今回のキーパーソンだということだろう。

 

「日景、31Aと31Bのところへ行くのだろう?」

「ああそうだよ!」

()()()()

「は...?」

「日景さん...?」

「なんだいなんだい?」

「白河よ。何が起きた」

 

 何かが起こる。

 天啓があったのだ。想定外の事態は想定済みだ。

 しかし、この秦野盆地で想定外が起きると思っていたが、31Aと31Bの方であったか。

 遠いな...だが。

 

「30G総員! そして日景!」

「は、はいっ!」

 

 30Gは全員ここに揃い、日景もいる。

 後はそうだ。

 

 

「全力で、音の発生源に向かうぞ!」

 

 

 星を導け、白河ユイナ。

 

 

「白河さん!?」

 

 地図を広げる。

 

「方角は北だ。微かにでも音が聞こえた以上、決して遠すぎることはない。31Aと31Bも向かうはずだ。合流するぞ!」

「い、今から31Aたちに合流ですか!?」

「しょ、正気かい!? 結構遠いよ!? 今すぐ行っても間に合うかどうか...!」

 

 確かに私たち全員では厳しいだろう。

 だが日景の持つ驚異的な足ならばどうだ。

 そこに我々が揃っているのだ。

 不可能ではないはずだ!

 

「そこの車を使うぞ! 蔵! 運転を頼めるか!」

「...ああもうわかったよ! 全員乗りな!」

「蔵よ。運転できるのか?」

「将来やりたいことがあってねぇ! あたいが車で乗りこなせないものは無いよ!」

「頼りになりますわね!」

 

 非常時に備えて置きっぱなしの鍵を差し、待ってましたとエンジンを渋く唸らせるのは、グレーの8人乗りハイエース。

 浅い傷がいくつも刻まれた車体は、それだけ多くの修羅場を潜ってきた信頼の証だ。

 

「行きますよ、綺羅さん!」

「お、おうよ!」

「トばすよ! 掴まりな!」

 

 全員が乗り込み、蔵が思いっきりアクセルを踏み込む。

 輸送車が通ってきた、昨日まで自分達が作ってきた道を逆走し、全速力で北上する。

 拠点予定地は瞬く間に米粒ほどの小ささに見えるまで離れた。

 

「行けるところまで車で行くぞ!

 降りたあとは、日景はただ全速力で音の方向へ走れ!」

「わかった!」

「小笠原! 菅原! お前たち二人が日景よりも先行しろ! お前たちならできるだろう!」

「は、はいっ!」

「何とかですけれどねっ!」

「他の我々四人は途中まで追随した後、それまでに寄ってきたキャンサーを引き連れて離脱する!

 だからお前ら三人は後ろを気にせず、全力で走れ! いいな!」

「はい!」

「わかりましたわ! いいですわね綺羅さん!?」

「...うんっ!」

 

 小笠原と菅原が真剣になっている。そうか、こういう二人は、日景にとっては珍しいのかもな。

 こうなった二人は頼もしい限りだぞ。存分に頼れ、日景。

 

「白河ちゃん後ろ! 6時方向からキャンサーだよ!」

 

 爆走する車におびき寄せられ、颯爽と登場した車輪型キャンサーの群れ。計6体。

 

「桐生! 小笠原! 後続を撃て!」

「承知! 『鳴らせ、退魔の弦』!」

「行きます! 『寄らば斬る』!」

 

 窓を開け。セラフを召喚し、撃ち込む銃弾のいくつかが走るキャンサーを捉える。

 だが流石にカーチェイスしながらの銃撃は慣れがない。躱してきた1体に迫られる。

 

「あたしだって!『流れ星に願いを』!」

 

 飛び上がろうとしたキャンサーを、第3の弾丸が捉えた。

 攻撃しようとしたキャンサーに先んじて初動を潰す、日景の得意技だったな。

 

「ナイスです!」

「エヘヘッ⭐️」

「助かったよ。さあ、もう少しだ!」

 

 そして、あっという間にポイントβ、菜の花台展望台付近までたどり着き、茂みの中に車を隠して停める。

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!』

 

 

 

「っ!?」

「うぅ!?」

 

 橋頭堡で微かに聞こえた声が、今度ははっきりと聞こえた。

 間違いなく、超大型のハブキャンサーが現れたのだろう。

 野営地にひとの気配はない。やはり31Aと31Bは既に出発した後だ。

 

「やはり奴らは行ったか」

「では我々も後を...あれ? 日景さんは?」

「もう行ったぞ」

「何ですって!? うおおおおい少しは待たんかロリータあああああ!」

「あーーー!! 待ってくださいーーー!!」

 

 ...二人が基地での気の抜けた様子に戻ってしまった。

 不安ではあるが、予定通りだ。後は三人を信じて任せるしかない。

 それに、こちらはこちらで大仕事だ。

 

「さて、我々も行くぞ!」

「はい!」

「蔵よ。運転疲れは大丈夫か」

「全く無いよ! むしろ気分最高で暴れたいくらいだね!」

 

 幸い、全員休息は十分のようだ。頑張って見せよう。

 ちょうど通信が入る。

 

『こちら30G白河』

『手塚よ。30Gの状況は?』

『北西方面より、敵の攻撃と思われる爆発音が聞こえた。30G及び視界範囲内に被害はない』

『了解...現時点を持って、オペレーション・プレアデスを破棄します。工作部隊の撤退指揮を執りなさい』

『それは、先ほどの攻撃のためですか。距離と場所は』

『橋頭堡予定地から北西に10000以上。キャンサーの移動によっては危険な範囲内よ。よろしく頼むわ』

 

 方角と、三人が向かった方向のズレは...無し。

 

『...はい、わかりました。31Aと31Bは?』

『彼女らには別行動をとらせているわ。心配無用よ』

『わかりました』

 

 想定通りだ。

 少しは手塚司令官の考えに近づけているようで嬉しい反面、完全に逆らっている現状に後ろめたさはある。

 

 だがこの場は...願いが勝る。

 天啓の光の柱は見えていないが、用は成すべきことを成せということだ。

 

「司令部から連絡があった。オペレーション・プレアデスを破棄し、秦野盆地から撤退せよとな」

「そうですか...では」

「ああ。このまま橋頭保の設立を続行させるぞ。同行している30B以下5部隊にもそう伝えろ」

「ですよね...ってええええええええ!?」

 

 驚愕で桐生の仮面がすっ飛んで行ったが、追いかけている暇はない。

 横からつついてきたキャンサーを鎧袖一触。既に多くのキャンサーが集まってきている。

 

「強引だねぇ白河ちゃん」

「司令部に真っ向から楯突くとはな...」

「どうだ、嫌いになったか?」

「いいや? 大好きだよ」

「お前の指示に是非もない。信じて託すのみだ」

「ふ...そうか」

 

 話しながらも、三人の後に続いて北上する。もう既に先を行く三人とは距離が離れ始めている。流石は生身最強と獣の肉体と日景だ。あれならそう遠くない内に31Aたちと合流できるだろう。

 それまで彼女たちが生きていれば、だが...

 

「白河よ。大変なことはわかっておろうな」

「ああ。先ほどの音の原因は恐らくキャンサーで、大型のハブだろう。橋頭堡の設立に合わせての出現ということは、本命である橋頭堡への攻撃は容易に想定できる」

 

 道を外れ、山道に入った。

 三人は木々とトランスポートを上手く使い、ペースを落とさず進んでいる。

 

 そしていよいよ、小笠原が刀に手をかけた。

 やる気なのだな。頼むぞ。

 

「白河ちゃん! 後ろっ!」

「わかっている!」

 

 振り返れば20体ほどのキャンサーども。車輪のような奴に輪っかのような奴まで様々だ。

 コイツらを日景たちに追随させるわけにはいかない。

 我々はここまでだな。

 

「桐生、蔵、月城。反転して後続を叩き、そのまま車にて橋頭堡まで戻るぞ!

 戦闘中は木々を背にして挟撃にならないようにしろ!」

「はぁ...はぁ...はい!」

 

 走り疲れてはいるが、踏ん張りどころだ。

 こちらはこちらの成すべきことを成す!

 

「ツーマンセルでの行動に変更する。

 月城と蔵はいつも通りで10時方向を頼む。ただ長期戦が予想される故、無我夢中は易々と切らぬように!」

「承知した。蔵よ、いつも通りフォローを頼めるか」

「了解だよ。いつも通り無茶を通すとしようじゃないか、月城ちゃん!」

 

 あちらはセラフ部隊最強コンビだ。これほど頼もしいことはない。

 

「桐生よ。お前は私と2時方向だ。私と二人きりだけのコンビでは不安があるかもしれないが、お前だけが頼りだ。信じているぞ」

「そんな!! 勿体無きお言葉!!

 この桐生美也!! 全力以上で奮起いたします!!

 うおーーー!! テンション上がってきたー!! 美也ちゃーんファイアーーー!!!」

 

 ...日本語がおかしいことを除いて、桐生は非常に調子が良さそうである。頼もしい限りだ。

 

「ふふっ...さあ、後輩ばかりにいい格好をさせてはいられないだろう。

 30G、戦闘開始だッ!」

「「「応ッ!!」」」

 

 さて...ハブキャンサー戦でも橋頭堡でも、後輩たちが頑張っているんだ。

 先輩として、持ちこたえて見せようじゃないか!

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 ~Side 小笠原 緋雨~

 

 

 

「      」

 

 袈裟。逆袈裟。唐竹。真一文字。

 

「      」

 

 右。左。下。右上。左下。足元。

 

「      」

 

 斬る。斬る。斬る。斬る。

 雑念は捨てた。

 有るのは、剣と、前へ進む意思と、少しの呼吸のみ。

 草木生い茂る雑木林を最短で駆け抜けんと、五分前の私が出した答えがそれだった気がする。

 忘我。その寸前まで意識を落とし、無心無色の剣と成る。

 

「キーッ! 服が! 服が汚れるううううう!!」

「ごめんね千恵ちゃん! 帰ったらいっぱい試着に付き合うから!」

「オラァ小笠原ァ! もっとスピード出さんかワレェ!」

 

 背後には、盾を展開して続く菅原さんが続いている気がする。

 私が剣で草木を斬って進み、残骸を菅原さんの盾がはね除け、綺羅さんの道を作るという作戦。だった気がする。

 

 

 ―――視界、正面にキャンサーが映った、気がする。

 ―――即。

 

 

『寄らば斬る』

 

 

 新たに左手に取った()でキャンサーを()った、気がする。

 それを後ろの菅原さんが盾で吹き飛ばした、気がする。

 斬。斬。斬。斬。

 無心で斬り開き、突き進み、前へと走って―――

 

 

 突如、斬るものが無くなった。

 つまり雑木林を抜けた、気が―――

 

 

「...!」

 

 

 開けた視界、その先に見えた、()()()

 超巨大キャンサーの猛威を、たった一人で防いでいる、31B部隊長。

 

 

「えりかちゃん...!?」

 

 

 足が止ま...らせてたまるか!!

 

 

「「綺羅さんッ!」」

「ッ! あ゛あ゛あ゛!!

 

 

 止まりかけた綺羅さんの足が、踏み込みとなって強かに地面を蹴り出し、初速で私たちを軽々と抜き去った。

 行ける。

 行ってくれ!

 

 

 

「「行けえええええええええ!!!」」

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 日景 綺羅~

 

 

 

 

「はあ...はあ...はあ...!」

 

 走る。

 走る。

 走る。

 逃げて逃げて逃げ続けて、こんなに遠くまで来てしまったから。

 

「かはっ...! あ゛あ゛! はあっ...!」

 

 走る。

 走る。

 走る。

 逃げ続けて開いてしまった距離を埋めるために。

 時が来たのだと震い立って。

 頼むから間に合ってくれと願いを込めて。

 

「はあ...! はあっ...!」

 

 走る。

 走る。

 走る。

 あの日、自分が救われた背中を目指して、自らも強くなりたいと願って。走り続けて。

 

 焦げ臭い、煙の中に突っ込んだ。

 

「あ...」

 

 みんなの先に、はっきりと、その背中が見えた。

 今でも鮮明に覚えている、大きな大きな背中が。

 

 あのときは、そうだ。

 みんな、倒れていた。

 倒れて、色も形も変わっていって...

 

「あ...あ...!」

 

 そして今は、その背中が。

 今度はみんなをしっかり守ってる。

 ドーム状に展開された完璧な防御で。

 

 でも、なんだか、あのときより、やばい。

 輝く光の柱は、まるで命を燃やしているかのようで。

 

 イヤな記憶と、巨大なキャンサーに、友達の危機。

 体が震え出す。

 怖い...

 怖い...

 怖い...!

 

「それでも...!」

 

 彼女だってあんなに頑張ってるんだ。

 皆を守りたいって。その一心で。

 

 

 ならその願い、叶えろよ。

 あたしは、日景綺羅(流れ星の子)だろうが!

 

 

『流れ星に願いを!』

 

 

 空にセラフが出現した。

 

 

 

 ―――何ができるの?

 ―――ちっぽけなあたしと、あんなに弱いセラフで。

 

 

 

「それがあたしの願いだからっ!」

 

 それでも、走るんだ。

 走って、飛び上がって。

 赤い衝撃をデフレクタで防ぎながら。

 空を見上げてトランスポート。

 セラフを、掴んだ。

 

 

 

 

 ―――朝焼けの空に、一条の流れ星が煌めいて見えた。

 

 

 

 

 "知ってるか、綺羅。流れ星様にお願いをするとな、優しいお星さまが叶えてくれるんだ"

 

 "綺羅も、誰かの願いを叶えてくれるような、素敵な人になるんだぞ"

 

 

 あの日から待ち望み、そして今まで一度も見れなかった、大好きな流れ星。

 日景綺羅の、そしてあたしの原点。

 

 

「―――流れ星様」

 

 

 頼む、頼むよ...

 たった一度...

 一度だけでいいから...!

 

 

 

 

『私の願いを聞いてッッ!!!』

 

 

 

 

 あたしの願いを、叶えてほしい。

 赤い悪魔に銃を向けた手に、震えはもう無い。

 弾丸を、撃った。

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 ~Side 蒼井えりか~

 

 

 

 

 

「...あ...」

 

 それは、正しく一条煌めく流れ星だった。

 頭上から放たれた星の弾丸は、力の奔流の中を貫き、眼前の悪魔の口を強かに撃ち抜いた。

 

 

 私たちを襲っていた悪魔の力の奔流が、止まった。

 

 

「かはっ...! うっ...!」

 

 口から嗚咽が出る。

 知らず止まっていた呼吸が再開し、同時に意識が朦朧とした。

 地に落ちていく。

 

「蒼井ッ!!」

 

 柔らかく、誰かが受け止めてくれた。

 いちごさんだ。

 

「...良かった、間に合った...! 大丈夫か、蒼井!」

「...スライディングキャッチだなんて、凄いです。いちごさん」

「...まあ...好きだからな、野球」

「そうでしたね、ふふっ」

 

 おかげ様で、体は動きませんが、意識ははっきりしています。

 いちごさんの照れくさそうな顔も、はっきり見えます。

 

「あわわわわ、キラさんが! 不肖この私め華麗に受け止めぐびゃ!?

「はぁ...はぁ...はぁ...! タマちゃん、ありがとっ...!」

 

 そして、やっぱり見間違えじゃない。

 さっきの流れ星は、あの子の...!

 

「よかった...間に合った...! 間に合ったよぉ...!」

「キラちゃん...!」

 

 そして、ふらふらとこちらに歩いて来るのが、キラちゃん。

 あの頃と同じ、輝くような笑顔で。

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!』

 

 

 

 

「っ...!?」

「くそっ...まだかよ...!」

「気を付けろ! 何か来るぞ!」

 

 感傷に浸ってる暇はありませんでした。

 赤い悪魔が唸りを上げ、先ほどキラちゃんの攻撃で止まったままだったエネルギーが、赤い雨となってばらまかれる。

 まさに―――Blood Rain

 私が盾を...無理だ、体がもう...! それにセラフも...!

 

「えりかちゃんっ!」

「蒼井っ!」

「あっ...!」

 

 ―――キラちゃんといちごさんが、体であたしを守ってくれました。

 でもそうしたら、キラちゃんが。いちごさんが。

 そんなのイヤ...! ダメです!

 どうかお願い...! 誰か!

 

 

 

 

 

 

 

「私の綺羅に、手を出すなああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 後ろから跳んできた誰かと、展開された盾に助けられました。

 あれは、30G菅原さんのセラフ!

 

「茅森さん! チャンスです! 一緒に!」

「ひさめっち...! ああ、任せろ!!」

「カレンちゃんも混ぜてえええええ!!」

 

 そして駆けていく、小笠原さんと、茅森さんと、カレンさん。

 

「切り開きます! カレンさん!」

 

 小笠原さんの銃弾が、閉じかけていた口を再び開けさせ、

 

「切り刻めッ! 茅森!」

 

 カレンさんの鎌が、傷口を作り、

 

「ざっと! こんなもんだッ!」

 

 茅森さんの剣撃が、何度も何度も火花をあげて。

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■......!』

 

 

 

 

 奇声を上げて倒れる赤い悪魔と、響き渡るガラスの砕けたような音に、そびえ立つ尖塔。

 一緒にそれを見たキラちゃんといちごさんの体が、とっても暖かくて。目がとろんとしてきて。

 

「蒼井...やったな...!」

「一緒に帰ろう、えりかちゃん...!」

「...はい。みんなで、これからも一緒に...」

 

 眠る前、最後に見たのは、全員が無事と健闘を讃えあう、安寧に満ちた光景でした。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。