Day9
~Side 手塚咲~
「失礼するぞ」
「浅見さん。報告をお願いするわ」
「ああ。といっても、座学にはあまり進展は無しだ」
資料を渡してきたから、それに目を通しながら、浅見さんの言葉を聞く。
「31Bは部隊長が変わらずテスト満点。だが、研究員としてテスト免除の樋口も含めて、態度がとにかく悪い...
31Dは座学の水準が高いな。互いに教え合う良好な関係を築けているように見える。雰囲気も良くて、31Bの後のあいつらとの授業は憩いのひとときに感じるよ...
31Eも部隊長の点数が良くて、周りへの教え方が上手い。コミュニケーションも勿論問題ない。
まあ一名、授業中によく寝る奴がいるんだがな...
31Fは既に初級教育は修了済みだから割愛する。
31Xは...まあ日本語って難しいよな...」
「ええ。けれど言語は共通にして貰わないと、ブリーフィングの度にいちいち彼女たち用の専用資料を用意するわけにはいかないもの。戦闘訓練のほうは問題ないはずだし、他の31系の座学が終わったら、彼女たちに集中して。
苦労をかけるけど、お願いね」
「ああ、何とかする」
第31期セラフ部隊が入隊して、一週間と少しが過ぎた。
31Aの茅森さんたちと、31Cの山脇さんたちが、昨日からダンジョンで実戦を開始させた。そちらには七瀬をつかせている。
「アリーナ訓練の報告に入る。
31Bは変わらず態度が悪い。そもそも全員集まることが少なく、樋口も遅刻が多くてな...
31Dは戦闘には苦労していてな。部隊長の指示はあまりにも的確かつ詳細だが、部隊がまだ付いていける練度じゃない。だが、諦めずに続ければ間違いなく伸びるだろうとは思う。
31Eは、動きこそ単調だが、連携が素晴らしい。統率も取れている。流石に6姉妹なだけあるな。強敵相手にはまだ無理だろうが、弱いキャンサー相手なら、ある種のパターンのような形を持って戦えるだろう。
31Fは成績事態は一番いい。最も、あれは部隊長が強すぎるだけだがな...だが、部隊の力も決して弱くはないし、態度も真面目で、期待できるな。
31Xはやはりというか当然というか、個の力は群を抜いている。後は連携だが...そちらは一転して...その...」
「絶望的?」
「...すまない。とりあえず日本語を覚えさせて、互いに満足のいくコミュニケーションができるようになるところから始めないとだな...」
資料にも、似たような状況が書かれている。
まあ、許容範囲内ね。
「概ね思っていた通りだから、問題ないわ。お疲れ様」
「ああ...手塚、その、31Cは大丈夫そうか?」
想定外なのは、31Cがダンジョン訓練まで突入していることと、あと一つくらいのもの。
「ええ。私も驚いているのだけれど、31Aよりも進みが速いわ」
「...マジか。凄いな、あいつら」
「本来であれば、ショップの店員を兼ねている佐月さんのこともあって、物資や薬の提供をする後方支援を主目的とした部隊にするつもりだったのだけれどね」
「...初日は悪かった山脇の座学の成績が、次の日には見違えるほど良くなった。
何が起きたと驚いたもんだが、まさかその勢いのままアリーナ訓練、適正試験まで合格して、今や31Aを速さで上回るほどになるとはな」
何が彼女たちをそうさせるのか...彼女たちを知っている私には想像がつく。
だからこそ、期待している茅森さん率いる部隊のAが脅かされることになるとしても、彼女たち31Cにも期待して、そして応援してしまうのだ。
そして万が一、もしもがあれば、それはそれとして心の底から祝福するつもりでいる。
「...それで浅見さん。言いづらいのはわかるけど、
そして、司令官として、
浅見さんがわざと言わなかったであろう、
「...私の教えも悪いのだろうが...まだだ」
「...そう」
予想通りの好成績と良い絆を作る31A。
目覚ましい成長と活躍を遂げる31C。
その裏で、なかなか伸び悩む者だっている。
「
訳を知らない周囲が身勝手に踏み込んで知った口を聞くのが、一番の愚策よ」
「...そうか。他ならぬお前が言うんなら、そうなんだろうな」
「ええ」
普段の姿からは、悩んでいたり、落ち込んでいるようには全く見えないのだけれど。
七瀬から聞くには、毎日毎日、今日もダメだったと、フラフラになって泣きそうなほどに落ち込むのだとか。
「浅見さん」
「なんだ」
「人間って、不思議ね」
「...お前の口からそんな言葉が出るとはな」
「あら、私だって冗談くらい言うわよ」
「...えっ、笑うべきだったのか? すまん」
「浅見さん」
「...なんだ」
「3日間お酒禁止」
「...冗談はよしてくれ」
願わくば。
第31期セラフ部隊が、全員無事に、人類の希望としてあり続けられますように。
そうして、2日、3日と日は経って。
運命の金曜日を迎えた。