◆1「霧のないザイレム」
まずはザイレムについておさらいしておこう。
ザイレムとは、中央氷原付近にある洋上都市だ。
都市といっても、無人兵器が蔓延るだけの廃墟だがな。
かつてルビコン調査技研が建造したとのこと。
本来のザイレムは、ECMフォグによって未知の領域となっていた場所だ。
都市全域が濃霧に包まれており、入る者すべてを生きては帰さなかった魔境である。
だがそのECMフォグは、取り除かれて久しい。
惑星封鎖機構が中央氷原へ介入してきた時期の最中、「壁越えの傭兵」が仕事をしたそうだ。
そのおかげで、安全にザイレムへ侵入して情報収集できるってわけだな。
霧のないザイレムは、通常のフィールド同様に視界が利く。
外部との通信が途切れることもないし、敵性機体に襲われた際のロックオン距離も特に制限はない。
実に快適なドライブができそうだ。
地下に夢中なアーキバスは、ザイレムに興味を示すことはない。
だが俺にはわかる。
ここにはとんでもない何かが眠っている。
◆2「防衛設備」
洋上都市ザイレムには、いくつか防衛設備があるようだ。
ザイレムを探索していて真っ先に目に入るのは、コントロールタワーだな。
ザイレム全域を見渡せそうなあの塔は、その名の通りザイレムの中枢といっていい箇所だと思われる。
調べてみると、そのタワーを護るシールドの存在を確認できた。
タワーの耐久性能を底上げするものと思われる。
今は起動していないようだが、かなり有益な設備だったのだろう。
その他、コントロールタワー近くに支援砲台がある。
こいつはプラズマを発射するタイプのようだな。
プラズマの威力は一級品だが、ここの二台は一度オーバーヒートするとそれ以降動かなくなる欠陥品となっている。
経年劣化によるもので本格的な運用には修理を必要とするだろうが、時間稼ぎの一手程度なら今すぐにでも使えるかもしれん。
ともあれ。
これら防衛設備の存在は、外敵を想定していたことを意味する。
ザイレムが建造された時期のルビコンは、コーラルを根拠に繁栄していた開発期だ。
少なくとも今ほどは物騒ではなかった筈だが……当時のルビコン地表に何か火種があったのだろうか?
あるいは……ルビコン地表以外に、外敵がいたのかもしれん。
そもそもの話"いつ建造されたのか"を、疑うべきかもしれないな。
かなり突飛な理論だが、それなりの根拠はある。
後述しよう。
◆3「アーキバスの特攻兵器」
突然だが、アーキバスのネットワークからニュースが入った。
奴らは地上に興味がなさそうな素振りを見せているが、地下の制圧を済ませたらちょっかいをかけてくるかもしれないので、備えとして記しておこう。
現在アーキバスは、技研都市の探査を進めている。
集積コーラルを筆頭とする大まかなポイントは既に押さえているようだが、広大な都市の辺境はまだまだこれからのようだ。
その一方で、鹵獲した惑星封鎖機構の兵器解析も進めている。
今回入手したのは、その惑星封鎖機構の兵器についての情報だ。
強襲艦。
アーキバスはこいつを多数鹵獲しているのは周知の通りだが、同兵器には"子機"の存在が指摘されている。
高火力なレーザーをばらまくドローンだ。
この"子機"は、基本的に同時に多くのドローンをまいて、レーザーの数で相手を圧倒する兵器である。
が、アーキバスはこれを「特攻兵器」として転用しているようだ。
今でこそ勝利に一番近いアーキバスだが、今までの戦いで多くの人員を失っている。
例えば「壁」の時みたいに有人MT部隊で敵拠点に突っ込む……という作戦を、無策に繰り返すことはしにくい筈だ。
そこを補うために、ドローンに目を付けたのだろうな。
アーキバス製特攻兵器の威力だが、数を揃えた場合は……そうだな、ザイレムのタワーシールドを破壊するだけのポテンシャルはあるようだ。
中枢を防衛する重要な設備を破壊できるかもと言えば、相応の火力を予想できるだろう。
だが拡張機能のパルスプロテクションがあれば、特攻から身を護ることができるかもしれない。
アサルトアーマーによる範囲攻撃も一定程度は有効だろう。
アーキバスと敵対する場合は、これらの拡張機能が生き残るヒントになるかもな。
◆4「恒星間入植船」
洋上都市「ザイレム」。
この姿は、もしかしたら欺瞞されたものかもしれない。
そう思えるだけの情報を手に入れた。
恒星間入植船。
それが、ザイレムの本当の姿なのかもしれない。
どうやら海の中にまだまだ都市の大部分が眠っているようで、地上に見える部分はまさしく氷山の一角というべきエリアでしかないらしい。
だがザイレムが真の姿を晒した時は、都市そのものが飛行できる形へと変形して空を飛ぶ用意があるようだ。
あんまりにも突飛すぎる。
だが、ガセというにはコントロールタワーの防衛が堅すぎる。
それに、上述の情報が真実なら酷く厳重な防衛設備の存在にも説明がつくかもしれない。
宇宙を旅する船であるのなら、そりゃルビコン地表以外の外敵を想定しておくべきだろう。
例えば、宇宙を航行する途中で襲ってくる海賊団とかな。
建造された時期も、ルビコン開発期ではなくそれよりもっと前だったのであれば、色々と想定すべき事柄も多いだろう。
だが厄介なことに、こいつは今のルビコンにおいては最悪の爆弾になりえるだろう。
なんせとんでもない質量が予想できる船だからな……船そのものが物理的脅威になる代物だ。
もしかすればアーキバス優勢の情勢を、大きくひっくりかえせるかもしれない。
……が、流石にこれは手に余るな。
アーキバスにこの情報を売ることも考えたが、今までの前科が重すぎて接触しにくい。
かといって解放戦線やドーザーにこれを扱うほどの余裕もないだろう。
例の技術者集団を多数抱えるRaDなら、あるいは……。
とはいえ、これ以上情勢を動かしても割に合う旨味はないと俺は見ている。
残念だが、この情報は個人的な土産として記すに留めておくよ。
観測データ:独立傭兵ルカについて5
所属不明機から抜き取った観測データ。
高度に暗号化され、何者かによって解除された形跡がある。
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雇用した独立傭兵部隊が全滅したようです。
彼らにはランク圏内相応の教習とパーツを与えたにもかかわらず、探り屋はこれを突破した。
なるほど。
それなりの力は、あるようですね。
認めましょう。
今この瞬間から、あの探り屋もまた我々の敵。
計画における異物、イレギュラーであると。
あれを出すのです。