◆1「G6レッドの行方」
このところアーキバスやヴェスパーの話題が多いが、実はごく最近になってレッドガンの番号付きの情報を掘り出すことにも成功した。
この辺りで一度記しておこう。
まず前提として、ベイラムはアーキバスに敗れてルビコンから撤退している。
その際に専属AC部隊「レッドガン」の関係者が、地下に取り残されてしまったそうだ。
大抵はそのまま地下に葬られるか、個人的な読みだが、運が良ければエルカノ辺りに保護されて匿われているかもしれない。
エルカノにはベイラム製実弾オービットの件があるから、もしかしたら何らかの裏取引があってもおかしくない……というのが俺の意見だ。
そんな中で、少なくとも"当時"の「G6レッド」はかなり凄惨な状況に陥れられていたようだな。
G6レッドは、レッドガンの六番手だ。
ルビコンにおいては、傭兵雇用担当として活動していたことが知られている。
個人としては、総長ミシガンに憧れる新兵……といった印象が強いな。
それでも、下手な傭兵よりは強いだろう……ってのは今更だがな。
ベイラムが地下に突入する際は、レッドもまた他のAC乗りと共に実働部隊として地下に潜ったようだ。
だがその後、アーキバスの作戦によってミシガンが斃れ、ベイラムはルビコンから撤退して地下に取り残されたという。
以降の消息は不明だが、もしかしたら何らかの形で戦闘データだけは掘り出されたかもしれない。
レッドのAC「ハーミット」は、ベイラム製量産フレームを用いた中量二脚機だ。
二種類のミサイルで相手を翻弄し、ハンドガンとバズーカで相手へラッシュを仕掛ける近距離射撃機のようだ。
ミシガンを筆頭とした高ランカー機ほどの最適化はされておらず、実際の実力も弱くはないが強くはない……といった程度だが、データとしては貴重だろう。
前述のエルカノに救出されたわけではないのなら、オールマインドによって解析・統合される末路を辿ったのかもしれないな。
◆2「ヴェスパーのコピー」
傭兵支援システムである「オールマインド」だが、どうやらとんでもない本性を隠していたらしい。
優れたAC乗りを謀殺した、あるいはしようとした疑いがある。
それと関係あるかは不明だが、何やら奴は既存のAC乗りのデータをもとに、新たな兵器を生み出していたようだ。
詳細は不明だが、アーキバスのヴェスパー部隊の機体をコピーした機体が存在する。
現在明確に表舞台から排除されたとわかっているのがV.ⅦスウィンバーンとV.Ⅵメーテルリンクのみで、残りメンバーは生死不明か残存しているとのこと。
とはいえ、戦闘データ自体は各ログに残されているから、これらメンバーの機体もコピーされていてもおかしくはないな。
一方で、オールマインドの本性を察するにコピーの対象となったのがヴェスパーだけとは思えない。
もしかしたら、レッドガンの機体もコピーの対象にされたかもしれないな。
そして、オールマインドが解放戦線の重鎮の直接排除を試みたという情報も見られたことから、ともすればこちらも対象とみていいだろう。
これらコピー機は、いずれも無人型としての運用を想定しているようだ。
だから実際の性能は、それぞれのコピー元ほどは優れていないと思われる。
だが、そうだな……有人ACのサポート役に用いるか、いっそ数を揃えてしまうのなら、まぁ中位ランカーを数人排除する程度の力はあると推察可能だ。
この予想が真実だった場合、オールマインドもまた物騒な組織だったといえるな。
こんな手勢を揃えたオールマインドの目的は不明だ。
明確な武力を保持する以上、間違ってもただ傭兵支援を続ける……だなんて平和的なものではないだろうとは思うが、どこを目指しているかは判然としない。
集積コーラルを押さえたアーキバスを乗っ取るつもりなのだろうか?
◆3「オールマインドAC」
別のログでも記した通り、オールマインドはACパーツの開発もしている。
そのパーツを組み込んだ新しいACの情報を入手した。
ベースはおそらくG5イグアスのAC「ヘッドブリンガー」。
もしかしたら、彼を地下から救出して自陣営の駒として運用するための機体なのかもな。
実際にイグアスが救出されたかどうかはわかっていないが、少なくともオールマインドが同人物へ接触を試みたところまでは確実だろう。
わざわざ単なる旧世代型を選んで、接触を試みた意図はわからないが……まぁ戦闘データの抽出ぐらいはしていそうだ。
肝心の機体だが、フレームはオールマインド製のもので統一されている。
同メーカー製換装パーツによる強化が施された中量逆関節機で、とにかく射撃戦を強く意識した性能らしい。
射撃戦を意識しているという点は、まさしくイグアスのヘッドブリンガーにも通ずるものがある印象だ。
特に腕部パーツは反動性能も射撃武器適正も高い、射撃武器特化型というべきシロモノさ。
これはイグアスも愛用するベイラム製マシンガンとの相性がいい。
これを受けてか、俺が入手したデータの機体は、まさにそのベイラム製マシンガンと専用のマルチENライフルを組み合わせるダブルトリガー機となっている。
そこへさらにレーザーオービットを搭載することで、精密な弾幕を展開できるよう調整されているようだ。
この情勢とオールマインドの本性を思えば、この機体との遭遇戦も決して絵空事ではない。
データによると無人ACを僚機とする「物量による制圧」を想定しているようだから、実際に戦闘する場合は、相手の数を減らすことが肝要となるだろう。
◆4「シースパイダー改修機」
惑星封鎖機構が運用するC兵器「シースパイダー」。
多脚型の形態と、さながら松ぼっくりの如き空中機動型の形態を組み合わせる怪物だ。
こいつはコーラルを武器として打ち出す兵器で、例えばグリッド086の上層などで運用されていたという。
だが、オールマインドがこれを鹵獲して改修したという情報を得た。
「ALLMIND ORBIT」というそうだが、まぁ個人的には「シースパイダー改修機」と呼称する方がわかりやすいな。
文字通りシースパイダーをベースにした改修機で、最大の特徴としてコーラルではなく通常のENを動力・攻撃手段としている。
要するに、コーラルの代わりにレーザーをぶっ放すシースパイダーってことだ。
コーラルから通常のENへと換装する利点としては、機体の制御が最適化される点にあるだろう。
なにせコーラルには未知の部分がありすぎるから、制御する側としては使いづらい部分があると思われる。
ただし、オールマインドはアーキバスほど改修のノウハウがないようだ。
同兵器はベース機ほどの装甲がない。
EN動力へ換装する際に、何かへまをしたかもしれないな。
また行動制御も言うほど最適化できていないようで、イレギュラーが起こらない代わりに、攻撃性も低くなっている。
地上を走る多脚型形態もオミットしているため、意外とできることに制限が多そうだ。
ただそれでも、下手に放置すれば手痛いEN攻撃を喰らっちまうだろうから、油断はできないな。
「物量による制圧」の一手として繰り出されたら相応の脅威となるだろうことは想像に容易い。
何とかして僚機か何かを用意できれば、このシースパイダー改修機への対応も楽になるだろう。
◆5「謎の改修機」
ここまで数々のオールマインド機を記してきたが、どうやら他にも切り札を隠しているらしい。
これは別のログにも記した、大型人型兵器を改修したものだそうだ。
……もしくは、そいつとは別に存在する同型機の改修機なのかもしれないがな。
この機体はどうやら「SOL 644」というそうだが、そいつの装備であるコーラル兵器を全面的にEN兵装へ改修するものだそうだ。
必然的にコーラル属性特有の危険性が薄まり、耐EN防御性能による対策が可能となるわけだが、そこを補うかのように多数の独自改修を試みるつもりらしい。
その最大の特徴は、ベース機以上の機動力を発揮できるよう調整されている点だな。
瞬間移動ともいうべき機動を、連続で何回も繰り出せるよう用意されている。
そしてこの機動は、上下運動を繰り返す三次元機動をも可能としているようだ。
その分ベース機の機能を一部殺してしまうようだが、乗り手の腕前次第ではまさしく"イレギュラー"というべき力を発揮できるだろう。
俺の想定では、こいつこそが最強最悪の機体である可能性が高い。
だからといって、黙って殺されるつもりもないがな。
……実のところ、俺のこのログはオールマインドに監視されていたようだ。
もしかしたらデータを引き抜いた機体の残骸経由で、外部に漏れているかもしれないな。
まったく、我ながら酷い道化だよ。
そして、奴らは俺を消そうとしている。
今まで何度も刺客を差し向けられて、そしてこれから"本命"との戦いが待っているというわけだ。
ともすれば、上述の機体がそうなのかもしれないな。
もしこれを見ているのが俺の想定通りオールマインドや盗人の類なら、このログはそのまま宣戦布告ということになる。
俺は、ただの独立傭兵らしく返り討ちにするだけだ。
だがこれを見ているのが、オールマインドとは志を異にしている者ならば。
どうか、この記録を託させてほしい。
奴らは俺を消そうとしている。
そしてその戦力は、おそらく今までの比ではない。
それを返り討ちにするってんだから、まぁそれなりに無謀だ。
もしかしたら、このログがそのまま遺言になるかもしれない。
だから、その時は俺のことを後世に伝えていってほしい。
その時は「好奇心の強い阿呆がそのまま呑まれて死んだ」と、そう笑い飛ばしてくれても構わない。
それでいい。
それ"が"いい。
俺と他の傭兵との違いは、この好奇心の強さと、その成果を記したこのログの存在だ。
だからこそ、こいつがそのまま俺の生きた証となる。
このログこそが、俺の魂の場所なのだから。
……さて、そろそろ出撃の時間だ。
なんだかんだで楽しいルビコンでの傭兵活動だったが、それもそろそろ終わりだ。
本来は個人的なログのつもりだったのに、最後はメッセージ然としたものになったのはそれなりの誤算だな。
だがまぁ、意外と悪い気分ではない。
繰り返しになるが、俺は独立傭兵らしく最後まで戦い続けるよ。
機会があれば、またどこかで会おうぜ。
『真実の探求者』ルカ