文書データ:ルカの傭兵活動ログ   作:上代わちき

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番外ログ「アービトレーター・ティグラン」

 

 

 

◆1「アービトレーター・ティグラン」

 

 こいつは俺がまだルビコンで活動していた頃の記録だ。

 

 まだ汚染市街や「壁」周辺での動きが活発だった頃、ドーザーの方でも独自の動きを見せた者達がいた。

 その代表者が「アービトレーター・ティグラン」だ。

 

 

 

 先述通り、この爺さんはドーザーだ。

 とりわけグリッドの解体に携わる職工であり、AC「アラマズド」も土建用パーツや解体用兵装を組み込んでいた。

 自ら廃材を集め、RaDへ売りさばいて食い扶持を稼いでいたようだな。

 

 一方で、ティグランはアンチ解放戦線として有名なドーザーでもある。

 グリッドの作業途中で解放戦線のMT部隊を見つけると、問答無用で焼き殺したりチェーンソーでズタズタにしたりしていたそうだ。

 

 

 よっぽど解放戦線のことが嫌いらしく、自らの手勢ともども独立傭兵として解放戦線を攻撃する作戦にも従事していたようだ。

 企業にとっても解放戦線は打破すべき相手だったから、それぞれ利害が一致していたわけだ。

 

 

 

 解体工事の傍らに独立傭兵を営む、ドーザー勢力の長。

 それがアービトレーター・ティグランだったのさ。

 

 

 

◆2「レッキングボール」

 

 レッキングボール。

 本来は解体用の鉄球を指す言葉だ。

 クレーンとかに取りつけて、建物を破壊するためにぶん回すアレだ。

 

 一方で、ルビコンではあるドーザー勢力を指す単語となる。

 

 

 解体職工系ドーザー勢力「レッキングボール」。

 先述したアービトレーター・ティグランが率いる組織だ。

 

 規模はジャンカー・コヨーテスやRaDと比べると小さめだが、当時のグリッド解体や廃材集めと言えばこの組織の存在が真っ先に出る。

 RaDの発明品の"素材"は、もとを遡ればこの組織の作業によって捻出されたものも少なくないらしい。

 

 まぁドーザーらしくコーラルドラッグを通貨代わりにしたり、ギャンブルに興じていたりするならず者集団だな。

 ただ、頭目であるティグランの手腕故か、ジャンカー・コヨーテスの末端よりはまともだったそうだ。

 

 

 

 それから、構成員の一部が独立傭兵として活動していたようで、よく企業の依頼で解放戦線を攻撃していたそうだ。

 だから、RaDや企業から覚えがいい一方で、解放戦線からは蛇蝎の如く嫌われていたな。

 

 そもそもレッキングボール側も、解放戦線に恨みがあるような連中がよく出入りしていたようだ。

 思想的に解放戦線と敵対していたルビコニアンコロニーの出とか、何らかの理由で離反した者とか、な。

 

 

 

 だがそんなレッキングボールは、いつの間にか姿を消した。

 少なくとも企業が中央氷原に進出した頃には、組織として破綻してしまったようだ。

 自然、組織そのものも空中分解して闇に葬られた。

 

 理由はごく単純。

 頭目たるティグランが、死亡したからだ。

 

 

 

◆3「解放戦線との小競り合い」

 

 AC乗りとしてのティグランは、ランク上位にも匹敵する強者だったそうだ。

 何故アリーナ上位にその名を連ねなかったのか、今でも疑問だ。

 何か裏取引でもして、悪目立ちしないよう立ち回っていたのか……?

 

 

 まぁともあれ、ティグランはRaD製土建用ACを、BAWS製パーツで改造していた。

 かなり俊逸な改造を施していたようで、特にチェーンソーの威力が馬鹿げた仕様だったようだ。

 火炎放射で相手を翻弄し、バーストライフルと二連六分裂ミサイルで姿勢を崩し、必殺のチェーンソーに持ち替えて仕留める。

 

 そんな機体を駆使して、解放戦線を追い詰めていったようだ。

 

 

 

 だがある時、解放戦線は捕虜救出作戦を成功させた。

 「壁」の直後ぐらいの時だ。

 

 捕虜救出作戦の後に、ティグランは解放戦線を襲撃したそうだ。

 何者かの情報提供を受けて、ACで強襲したとのこと。

 

 

 

 だが、解放戦線は「サム・ドルマヤン」という戦士を繰り出した。

 よりにもよって軍事指導者であるあの爺さんを、だ。

 もしかしたら、ドルマヤンの独断だったのかもな。

 

 そうしてティグランとドルマヤンは激突し、そしてティグランは敗れたそうだ。

 サム・ドルマヤンもまた、ACに精通した優れた戦士だったからな。

 結果ドーザー勢力「レッキングボール」は頭目を失い、破滅への道をたどり始めたのさ。

 

 

 

◆4「ルビコニアンのインデックス」

 

 当時としてはドーザー勢力と解放戦線の小競り合いでしかなかった、ティグランとドルマヤンの決闘。

 だが後年色々調べていくうちに、どうやら古い因縁が絡んだカードであった可能性が出てきた。

 今更この件を取り上げてログに記したのは、これが理由だ。

 

 

 アービトレーター・ティグラン。

 この爺さんは、かつて「ルビコニアンのインデックス」とも呼ぶべき人物であったらしい。

 

 "インデックス"の称号自体は、当時は解放戦線のダナムが名乗っていたようだから、ティグランについてはさしずめ「先代インデックス」とでも呼称すべきか。

 

 

 

 先述したサム・ドルマヤンは、青年期を流浪のドーザーとして過ごしていた経歴を持つ。

 その時に、同じ釜の飯を食っていた仲間の一人と思わしいのがこのインデックス・ティグランなのさ。

 

 俺の掴んだ情報が正しければ、ティグランとドルマヤンは古い親友同士だ。

 

 

 

 だが仲の良かった二人は、喧嘩別れすることとなる。

 コーラルに酔ったドルマヤンが"幻聴"を見たことで、仲がこじれた。

 人格が壊れ始めたドルマヤンを、ティグランは見限ってしまったのだろう。

 

 こうして二人は道を違え、いつしか組織単位で互いを憎み合うようになった。

 仮に二人の間に友情が残っていたとしても、互いの率いる組織同士の遺恨は深い。

 なんせレッキングボールはアンチ解放戦線の集まりで、解放戦線もレッキングボールの攻撃で人員を失っていたからな。

 

 

 

 和解の道は残されておらず、結局は殺し合うしかなかったのさ。

 

 

 

◆5「終わりに」

 

 おおよそは以上だな。

 

 

 アービトレーター・ティグランは、もともと流浪のドーザーの一人「ルビコニアンのインデックス」だった。

 サム・ドルマヤンとも仲が良かったこの爺さんは、しかしいつしかそのドルマヤンと喧嘩別れしてしまう。

 

 いつしか二人は互いに殺し合う末路を辿り、ティグランが敗れた。

 今回はそういう話だ。

 

 

 

 まぁ当時としてもそこそこの規模のドーザー勢力が空中分解して、まぁそれなりにゴタゴタしたもんだ。

 が、どいつもこいつもそれどころじゃなかったのは、当時のルビコンを知る者にとっては常識だな。

 

 企業が中央氷原に進出して、惑星封鎖機構が本格的に介入してきたんだ。

 ティグランとレッキングボールは、そんな戦場の炎によって闇に葬られたのさ。

 

 

 

 だから、せめて俺だけでも彼がいた記録を残しておくことにする。

 一人の独立傭兵として、まぁ仕事先で縁ぐらいはあったからさ。

 

 頑固なところはあったが、気持ちのいい爺さんだったよ。

 

 

 





 アービトレーター・ティグラン


 ドーザー勢力「レッキングボール」の頭目。

 ティグランはグリッド解体を専門とする職工であり、よく廃材をRaDに卸すことで食い扶持を稼いでいた。
 一方で解放戦線とは敵対する姿勢で知られており、時には独立傭兵として活動することもある。 

 その戦術は、どこか古いルビコニアン的であるという。



 AC // アラマズド

 ティグランが駆る二脚AC。RaD製土建用ACを、BAWS製パーツで改造したもの。
 機体名「アラマズド」は、アルメニア神話の創造神を指す単語である。

 武装はバーストライフル・火炎放射器・二連六分裂ミサイル・チェーンソー。
 フレームはRaD製土建用フレーム「3000シリーズ」で統一、とみせかけて腕部パーツだけBAWS製BASHOへ換装している。
 内装は「AB-J-137 KIKAKU」「FCS-G2/P05」「AG-T-005 HOKUSHI」の組み合わせ。
 拡張機能はアサルトアーマー。


 見た目はドーザーらしい土建用ACだが、よりにもよって腕部パーツを芭蕉にしてやがるせいでブルートゥを超える殺意機体に仕上がっている。
 火炎放射器でAC装甲を溶かし、バーストライフルとミサイルで姿勢を崩し、持ち替えたチェーンソーで相手を仕留めるスタイル。
 先述通り「近接武器適正」に優れる芭蕉腕で超強化されているため、チェーンソーでズタズタにされた敵ACは瀕死に陥るか即死する。
 インデックス・ティグランもまた、ルビコニアンのミドル「ワンダラーのマイナー」や、ルビコニアンのリトル「ガリラヤ」にも匹敵する、優れたコーラルの戦士であった。



 メタ解説
 今回の機体テーマは「ドーザー系BAWS機体」。実はサイレンス・イヴやモール、パシッグ以来の久々なRaD系機体。
 「砂漠のアウトサイダー」にてルビコニアンのリトル枠を消化したことで、唐突に「先代インデックス」を描きたい欲が湧出。
 その先代インデックスには、サム・ドルマヤン本来の出自であるドーザー由来のパーツが相応しいと今回判断した。
 原作インデックスが元職工なので、そこをオマージュしてそれっぽいパーツを採用した側面もある。

 パイロット側のコンセプトは「マイナーさんのバッドエンドIF」といったところ。
 喧嘩別れした後、改めて決別する結末は同じでも、その実態は大きく異なる。
 組織を有するところと、組織単位でのドルマヤン憎しの感情を他者に利用されたことで明暗を分けた。
 「アービトレーター」は"仲裁者"を意味する単語だが、それが正しい称号であるかどうかは本編の通りである。

 本作では「一般ルビコニアンデス傭兵の話」では描けない機体を三機描くことも目標としているが、そのうちの一機が今回の機体。
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