◆1「フィゲラス4」
ルビコン星系を脱してから暫く経った後。
俺は惑星「フィウミチーノ」を訪れていた。
この惑星はもともとアーキバスの支配下にあったのだが、先の一件でアーキバスは弱体化している。
これをチャンスと見たフィウミチーノ側は、独立運動をはじめた。
おかげで現在フィウミチーノは思いっきり火が点いている。
燃え残った全てが燃え上がり、支配体制を維持したいアーキバスとの全面戦争に発展しているのさ。
独立傭兵にとっては、最高の職場だ。
そんなある日、俺はコロニー「フィゲラス4」の防衛依頼を請け負うことになった。
フィゲラス4は、かつてアーキバスの処刑人「ダリ」によって粛清されたコロニー「フィゲラス3」の生き残りを収容したコロニーだ。
その性質上監獄としての側面があり、その存在は秘匿されていたとのこと。
が、フィウミチーノによる独立運動で早期に解放されたコロニーでもある。
現在のフィゲラス4は、希望の象徴として栄える軍事基地となっているのさ。
だからこそ、アーキバスもここを落とそうと躍起になる。
詳しいことは俺にもよくわからんが、まぁ地政学的に重要な要衝なんだそうだ。
そんなフィゲラス4の防衛依頼を請け負ったきっかけは一つ。
この界隈で最も有力な傭兵の一人「サルバドール」から協力を要請されたからだ。
◆2「サルバドール」
サルバドール。
ルビコン3で活動をはじめた独立傭兵だ。
あの騒乱の地獄を生き抜き、そしてルビコン3から飛び出して各地で傭兵活動をしていたとのこと。
とりわけシュナイダー製パーツを使いこなすことで知られている一方、基本的にはアーキバスグループとは距離を置いている微妙なスタンスでも知られていた。
グループ製のACパーツそのものは、うまいこと人脈やツテを用いてやりくりしていたようだな。
だが惑星フィウミチーノによる独立運動が起こり、コロニー「フィゲラス4」が解放されるや否やすぐ同コロニーの防衛を担った。
流石に個人の事情だから詳しく詮索はできていないが……フィゲラス4の元となる「フィゲラス3」は彼の故郷だったようだ。
かつてのヴェスパー「ダリ」に焼かれた故郷を、独立傭兵「サルバドール」は救おうと足掻いていた。
まぁそういうわけで、彼はアーキバスグループのパーツを使いこなしつつ、そのアーキバスとは徹底的に敵対する立場にいたわけだ。
他方で、サルバドールはかなり優れたパイロット適性の持ち主だ。
皮肉にも彼には「元ヴェスパー番号付き」という噂があって、それを裏付けるかの如く比較的最新型の強化手術を施されている。
だからか、あらゆる型のACを使いこなしている。
基本的にはシュナイダー製の軽逆機を使っているようだが、時にはタンク型や中量二脚機も用いる。
そして俺が実際にサルバドールと共闘した時に至っては、彼は"四脚AC"を使っていた。
いずれの型も、トップランカーやそれに準ずるほどの結果を叩きだしていて、そしてそれは今回の四脚ACでも例外ではなかった。
AC「ガラ」。
右肩の可変式レーザーキャノンで敵の装甲を砕き、両手のプラズマライフルで広範囲を爆撃し、敵からの反撃はパルスシールドで的確に耐えるACだ。
姿勢を崩されそうになれば、拡張機能のパルスアーマーを展開する。
上述のEN兵装も専用のジェネレータで超強化しているようで、まさしく攻撃・防御共に最高級の空中要塞というべき機体だった。
ただし。
サルバドール曰くその四脚ACは、僚機AC……特に二脚や逆関節機……との協働を前提としたシロモノらしい。
本来の機体は、今までの作戦で大破して使えない。
だから今回の四脚ACを用いることになった際は、知り合いの傭兵と共に仕事に臨むつもりだったそうだ。
だがその傭兵との合流は、敵によって妨害された。
そこで、今度は俺に声がかかったってわけだ。
◆3「ブランチ」
現在アーキバスは弱体化している。
コーラルを逃し、ヴェスパー部隊も全員生死不明。
まともな戦力などない。
だからなのか、フィウミチーノにおいては独立傭兵を駆使していた。
その中でも一番有力なのが「ブランチ」だ。
ブランチは、四人組の傭兵集団だ。
ルビコンでも活動していた集団だが、同集団はメンバーを入れ替える特徴を有するため、おそらくは別人が名前を使っているだけだろう。
だが恐ろしいことに、トップランカー同然の実力は据え置きだ。
当時は、三機のACを用いてフィゲラス4を攻める立場にいたよ。
逆に言えば、ブランチの三人を撃退するのが、当時の俺とサルバドールの仕事だった。
まず、中量二脚ACが突撃してきた。
こいつは俺が請け負った。
それからすぐ、タンク型と四脚型のACが続いてきた。
こちらはサルバドールが相手どった。
戦況は、サルバドールが優勢だった。
二機を同時に相手にしているにもかかわらず、ほぼ互角に渡り合っていた。
それどころか、気が付けば片方を落としていたよ。
だが、そのタイミングで俺がしくじった。
俺が相手していた二脚ACが、いつの間にかサルバドールの後ろを陣取っていて、そのままサルバドールの死角をパイルバンカーで撃ち抜いた。
その一撃でサルバドールの四脚ACはスタッガーに陥り、もう一機の追撃を受けたことで、サルバドールのACは落ちた。
言い訳の余地もなく、俺の失態だったよ。
◆4「伝言」
サルバドールは落ちた。
だが、一応防衛作戦だけは成功させたよ。
サルバドールとの戦いで、敵側は大きく消耗している。
その隙をついて、残った方のACを一気に撃破した。
残りは、俺が相手していた中量二脚機のみ。
そいつは何故かベイラム製のパイルバンカーを主兵装としており、そして二連グレネードを使いこなす兵だ。
まさしくそいつとのガチンコを強いられたわけだな。
だがその中量二脚機は、噂に聞くレイヴンほど強くはない。
少なくとも、ルビコン3で活躍していた「壁越えの傭兵」の評判程じゃなかった。
であれば、俺でも隙を突くことができる。
最終的に、相手のアサルトアーマーを避けた後の反撃でスタッガーに追い込んで、その後の追撃で仕留めたよ。
今までで一番生きた心地のしない戦闘だったがな。
こうして、作戦の目的であるフィゲラス4の防衛には成功した。
だが、やはりサルバドールはダメだったよ。
ACを落とされてから暫くの間はまだ生きていた。
でもそれは辛うじて命が繋がっていただけで、そこから生還する可能性は残っていない。
そういう状況だった。
けど、サルバドールは俺を恨んではいなかった。
むしろ礼を言われてしまったよ。
……それだけ、フィゲラス4の存在は特別だったのだろうな。
顔は見ていないが、比較的満ち足りた声で息を引き取った。
察するに、独立傭兵としてはかなりの大往生だろう。
勝手な感想ではあるが、彼の長い旅路がようやく報われた……そのような終わり方に見えたよ。
最後に、サルバドールから伝言を受け取ったことを追記する。
無粋かもしれないが、備忘録も兼ねてあえてここに記す。
「ワンダラーのマイナー。貴様と食べたあのカタラーナは、本当に絶品だった。感謝する」
当初予定分はこれで以上です。
ここまで応援・感想・誤字脱字報告を頂くことができたのは、本当に幸運で嬉しい限り。
お付き合いくださり、本当にありがとうございました。
以下、例によってサルバドールとACのデータをまとめてあります。
例の如く長文注意ですが、よろしければ楽しんで頂けると幸いです。
サルバドール
ルビコン3で活動をはじめた独立傭兵。
ルビコンの騒乱を生き延びたサルバドールは、その極めて優れたパイロット適性を活かし、あらゆる型のACを扱う。
特にシュナイダー製パーツを用いた軽量逆関節機や、アーキバス製パーツを用いる四脚機などを用いるという。
その性質上「元ヴェスパー番号付き」という出自を疑われている。
趣味は各地の店を食べ歩くこと。
ルビコン3を飛び出してから目覚めた、新しい趣味であるという。
AC // ガラ
サルバドールが用いる、中量四脚AC。ガラとは、スペイン語で祝祭などを意味する。
VCPL製プラズマライフル二丁・アーキバス先進開発局製の可変式レーザーキャノン・アーキバス製パルスシールドを装備する。
フレームは、VP-44D・VP-40S・VP-46D・VP-424の組み合わせ。いずれもアーキバス製フレームであり、派生パーツや四脚パーツを多用する改造機。
内装はFLUEGEL/21Z・FCS-G2/P05・VE-20Cの組み合わせ。特にVE-20Cは「128ジェネ」として有名で、今回はプラズマライフルやレーザーキャノンの威力を底上げした。
拡張機能はパルスアーマー。
二丁のプラズマライフルと、右肩の可変式レーザーキャノンの暴力で全てを焼き尽くす戦法を主軸とする。
四脚型特有のホバーを用いることで、空中からの範囲攻撃や、レーザーキャノンによる構え回避を可能としている。
先述通り128ジェネによりそれら兵装は強化されているため、並大抵のACはENの暴力によって焼き尽くされるしかない。
またパルスシールドとパルスアーマーの組み合わせで防御性能も高めており、空中要塞としての戦闘能力はかなり高い。
もし二脚や逆関節機と協同した場合、さらに性能を底上げすることができる。
弱点は相手をスタッガー状態に追い込む性能に難があること。
EN兵装を128ジェネで強化することで補っているが、やはり衝撃力に優れた兵装を持つ僚機と組むことで火力面においても真価を発揮する。
メタ解説
「一般ルビコニアンデス傭兵の話」及び「砂漠のアウトサイダー」に登場した、元ヴェスパー番号付きサルバドールの、まさかの四機目。
たびたび登場する「ダリ」という名前は、サルバドールのヴェスパー時代の名義。つまりダリが秘密裏に独立傭兵へ転身した時の名前がサルバドール。
今までの三機はそれぞれ逆関節・タンク・二脚を採用したため、それらと差別化するべく今回は四脚を採用。
なお出自の都合上アーキバス製中四となるが、同脚部パーツは「2脚/逆関節ACとの協働を想定したもの」であり「ホバリングによる空中支援を実現」するためのパーツとなる。
なのでそのフレーバーに忠実になるよう、今回の機体も空中からプラズマを降り注ぐ空中要塞として設計した。
似たような空中要塞型となるホバータンク機との違いは、機動力が高くなったことで格段に小回りが利くようになった点にある。
その分装甲も弱くなったが、パルスシールドの採用である程度は補っている。
一方エピソードのコンセプトは「サルバドールのエンディング」。
そもそもサルバドールとは、ヴェスパー時代にアーキバスの命令で己の故郷である「フィゲラス3」を焼いており、その件でアーキバスに嫌気がさしていた。
それ故にルビコン3の時期にヴェスパーを抜けて、ワンダラーのマイナーとの縁で食べ歩きの趣味を得るという軌跡をたどっている。
即ちキャラクターとしての原点は「故郷」にある。
故にこそ、かつての故郷に縁のある「フィゲラス4」を命の限り護り通すことで、その人生の清算を為した。
何もなせぬまま戦場に消えていく傭兵が多いアーマード・コアの世界においては、まさしく大往生に等しい最期だったと思われる。