当初予定分は前回のサルバドール回で最後です。
が、案の定ネタを思いついたので延長戦です。
今回は大豊系のオリジナルAC乗りのお話。当然一話完結型。
◆1「九寨街」
ルビコン3には高層建築物「グリッド」が、空を覆うかのようにある。
場所によってはドーザーの巣窟になったり、かつての物流網が垣間見えたりと、色々な顔を見せてくれるものだ。
そんなグリッドの一角には、独特な雰囲気のスラムがある。
「九寨街」だ。
九寨街は、全体的に大豊の影響が強いスラム街だ。
企業として正式に影響力がある地というわけではないが、その筋の人間が多く出入りしている。
脛に傷がある奴やドーザー、一部は非公式で企業の連中も個人的に入り浸っていたほどだ。
有名な例だとG3五花海が、数回ほど九寨街を訪ねていたって話があるな。
そういうわけで、街の中には非合法の店や工場が所狭しと並んでいる。
どうにも上下水道や電気といったライフラインを、住民達が勝手に増設していく有り様だったようでな。
ハチの巣みたいに建物が積み重なっていく景色が、あそこでは展開されていた。
もとよりルビコン自体が行政も何もない荒れた惑星だったわけだが、この街はそれ以上に闇の側面が強い場所だったよ。
だがそれだけに知識と人脈さえあれば色々と便利な場所でな。
大豊の美味しい中華料理をルビコンでも食べるならここだった。
麻婆豆腐やタンタンメン、小籠包に酢豚、エビチリと紹興酒……非合法にしてはかなり美味い店があそこにはあったんだよ。
今となってはいい思い出さ。
さて。
そんな九寨街には、俺のなじみが一人いる。
そいつは九寨街の隅の、小さなゲームセンターを根城にしている。
いっつもそこでクラフトビールやら変なハンバーガーやらをかっ食らっている飲兵衛だが、その正体は小さな会社の長を務める若き女社長さ。
彼女の名は、双龍海。
ランク圏外の中では腕がある……事実上ランク圏内に相応しいAC乗り。
今回のログは、そんな彼女についての記録さ。
◆2「双龍海」
俺と双龍海の出会いは、戦場だ。
ルビコン以前で、敵同士として出会った。
ルビコンの時の俺はランク圏外のふりをしていたが、当時はそんな事情もなかったからな。
あっさり倒してやったよ
双龍海はランク圏内に相応しい実力者とは言ったが、せいぜいがDランク……噂のG3五花海やG5イグアス辺りと同程度の奴だ。
ただ倒す分には、そんなに苦じゃない相手だったよ。
が、どうやら悪運が強い女だったらしい。
気が付けば二回目があった。
二回目の時は互いに撤退を目的としていた状況で、そこまで積極的に殺し合っていなかった。
それどころか、第三勢力の乱入すらあった始末で、場を切り抜けるためにタグを交付し合って共闘することになった。
その縁で、気が付いたらつるむようになったんだ。
仕事の都合で敵対することはあっても、命までは獲らない談合になる有り様さ。
双龍海は、表向き重工会社の社長だ。
オレンジ色のテトラポッドをあしらったロゴが有名な重工会社なんだが、実は裏の顔がある。
彼女は、闇の船商人の一人だ。
惑星封鎖機構の目を掻い潜れる密航船を何隻も持つ、物流網の一角を握る人物だ。
その実、ルビコンに大豊由来の細々とした品が流れていたのは彼女のおかげだ。
俺の目には、そんな彼女の顔がとても魅力的に映った。
だから時には俺のこの武力を使ったり、ハッキング能力だったりを使って彼女とその物流網を助けていたわけだ。
そしてその関係は、ルビコン3でも続いた。
その中で最も印象的な仕事は、やっぱりルビコンを実際に脱出する際の脱出船防衛だな。
◆3「登龍門」
当時オールマインドからの刺客を退け、V.Ⅲオキーフと共に返り討ちにした後。
俺は星系の外へ出ることとなった。
その際頼ったのが、当時の時点でもまだ九寨街に残っていた双龍海だったよ。
宇宙を旅する船なら、やはり彼女が一番だ。
そういう事情で船に乗せてもらえたわけだが、その対価として仕事を請け負うことになった。
それこそが脱出船防衛というわけだ。
双龍海としても、当時のルビコンには見切りをつけていた。
だが街との付き合いもあり、どうしてもその時期までルビコンを出ることができなかったようだ。
その結果、ルビコンから撤退する時にはもうアーキバスの襲撃を避けられない状況に陥れられた。
当時のルビコンを支配していたのはアーキバスだからな。
下手に動きを見せれば、問答無用で襲撃されて金目の物をむしり取られる情勢だった。
幸か不幸か、彼女のAC「登竜門」は僚機の存在を前提としている。
何せ上空に居座ってミサイルやグレネードを降り注ぐ、空中要塞型の四脚ACだったからな。
普通のランク圏外とは比べ物にならない上質なACではあったが、船を護るならもう一手必要だ。
だから、俺の武力が役に立ったわけだ。
当時としては「ルカは死んだ」状態だったからいろいろ気を遣う仕事になっちまったが、まぁそこは彼女と一緒にうまいことやりくりした。
後は実際に脱出船を護って、そのままルビコンを脱出するだけだ。
◆4「脱出船」
双龍海が脱出船を動かせば、案の定アーキバスが動き出した。
最初に出てきたMT部隊は、双龍海のグレネードが薙ぎ払ったよ。
メリニットの笑い声が聞こえてきそうな程に気持ちのいい爆発だった。
その次に出てきた特攻兵器は、俺のACで対処した。
運よくアサルトアーマーを装備していた機体だったから、それでまとめて吹き飛ばしてやったよ。
かと思えば狙撃型LCや、高火力型LCまで出てきた。
前者は俺が対処して、後者は双龍海が分裂ミサイルで足止めして、リニアライフルのチャージショットで仕留めて排除していた。
まぁこの辺りはどうにでもなるところ。
本題はここからだ。
LC機体を排除すると、アーキバスはACを二機投入してきた。
片方はV.Ⅵメーテルリンクの「インフェクション」。
そしてもう片方はG3五花海の「鯉龍」だ。
当時の時点でこの二人は表舞台から退場していた筈だから、多分ファクトリーの産物と思われる。
そうじゃなきゃ、よくできたコピーだ。
けど、アーキバスの策の効果はあった。
双龍海は、五花海の弟子だったという。
具体的にどういう師弟関係だったかは聞いていないが、作戦当時は相応に動揺していたよ。
間の悪いことに戦場じゃ思い通りにいかないことが常だ。
俺がメーテルリンクと激突し、彼女は五花海とぶつかる構図になっちまった。
五花海のAC「鯉龍」もまた、ランク圏外とは質の異なるACだ。
双龍海にとってはそれだけできつい相手だろう。
けどまぁ、うまいこと粘っていたよ。
双龍海のAC「登竜門」には、拡張機能としてパルスアーマーが仕込まれている。
そいつで五花海の分裂ミサイルを凌いでいた。
それでもAPを削られて苦しい展開だったようだが、どうにか間に合わせたよ。
俺の方でできるだけ早くメーテルリンクを撃破して、救援に駆け付けた。
双龍海の事前工作のおかげで、俺の本気を出せる戦場だったからな。
後は二人がかりで五花海も撃破して、防衛任務を成功させた。
あの時、あの師弟にどういうドラマが展開されていたのかは知らない。
けど、弟子は生き残った。
それがよかったんだろう。
この仕事の後の彼女は、さらにいい顔になった。
まったくもって、魅力的な美女だよ。
双龍海
グリッド内のスラム「九寨街」を拠点とする独立傭兵。
G3五花海の弟子だったという双龍海は、しかし詐欺師の才に恵まれなかった。
結果、五花海からの勧めで闇の船商人となったという。
こうしてまた一つ、ルビコンへの物流網が増えた。
AC // 登龍門
双龍海が駆る四脚AC。大豊製パーツを主軸とした、ベイラム系AC。
AC名は師匠の機体名に肖ったもの。
武装構成は軽リニアライフル・分裂ハンドミサイル・二連六分裂ミサイル・大グレ。
フレームはメランダー頭・天槍コア・天槍腕・ベイラム製四脚。
内装は「BST-G2」「FCS-G2/P05」「DF-GN-06 MING-TANG(明堂)」
拡張機能は「パルスアーマー」
基本的にホバーで空中に居座り、眼下への敵へ分裂ミサイルの雨を降らせる空中要塞型。
四脚の利点を活かして、動き回りながらチャージショットやグレネードを叩きこむ割とパワフルなタイプ。
いざという時はパルスアーマーで防御力を高めて救援を待つ、僚機の存在を前提とした機体。
メタ解説
今回のテーマは「G3五花海のIF」。それに合わせて機体も彼と同じベイラム系四脚型を採用。
パイロットも彼の弟子とすることで同人物との繋がりを強化しつつ、彼の結末に対する対比も強化。
相方のメーテルリンクを助けることはなく自分も果てた師匠に対して、相方のルカに助けられて生還した弟子の組み合わせ。
実際の五花海がどういう男だったかは原作では「ベイラムを裏切った」以上の描写がないので不明だが、ヴォルタの件もあるので多分面倒見はよかったと定義。
余談だが今回出てきた五花海(とメーテルリンク)は、機体だけ同じの偽物。
多分アーキバスに入り込んでたAM公が事前になんかうまいことやった結果だと思うの。とりあえずアーキバス支援しまくってた頃の名残的な。
他方で、彼女は筆者過去作「一般ルビコニアンデス傭兵の話」に登場した"闇の船商人リヒター"のセルフオマージュ枠でもある。
出会いは戦場であったり、共闘を経た後は談合を繰り返す腐れ縁になるところとか、そもそもルビコンの物流網の一角を担うところとかがそれ。
アーキバス系の船商人がリヒターなら、ベイラム系の船商人が今回の双龍海ちゃん。
社長モードしてない時はアルノさんやイヴとも違うタイプのぽわぽわお姉さん。
他にもいろいろなところからいろいろな影響を受けまくっている話とかあるが、キリがないのでこの辺にて。
最後の余談として、筆者中国語ダメなので正しい読み方とかわかりません。
AIさん曰く双龍海とは「シュアンロンハイ」と読むらしいですが……。ちなみに機体名「登竜門」は「ドンロンメン」。
でも調べた先が調べた先だから鵜呑みにしちゃだめよ。筆者との約束()